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政府、電力債の担保廃止検討 原発賠償の円滑化狙い
起債条件、新電力と公平に
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS18007_Y2A810C1MM8000/
2012/8/19 2:05 日本経済新聞 電子版
政府は電力会社が発行する債券(電力債)に認めている特殊な担保を廃止する方針だ。担保があると、債券の保有者が優先的に資金を回収でき、原子力発電所事故が起きた場合などに被害者への賠償の妨げになると判断した。担保を持たない新電力(特定規模電気事業者)との競争条件を公平にする狙いもある。発送電分離など経営改革を進める場合には例外も検討する。
経済産業省が今秋に議論を再開する電力システム改革専門委員会(委員長・伊藤元重東大教授)で詳細をつめる。来年の通常国会にも提出する電気事業法改正案に盛り込む。早ければ2014年度にも実施する。
普通の企業が発行する債券は担保がないことが多いが、電力債には「一般担保」という特殊な担保が付いている。特定の不動産を担保にする場合などと違い、発電所や送電線など電力会社の資産全体が対象になる。電力会社の経営が行きづまっても、電力債の保有者は他の債権者に優先して資金を回収できる。
資金を取りはぐれる恐れが小さいため、電力債は普通の社債よりも金利を低く設定できるとされる。高度成長期の電力不足を解消するため、担保により電力会社が有利な条件で資金調達できるようにして、発電所の建設を促す狙いだった。
今回、電力債の担保を廃止する理由の一つは再び原発事故が起きた場合、被害者に円滑に賠償できるようにするため。電力会社が事故で巨額の賠償債務を負って法的整理になった場合、被害者の持つ賠償債権には担保がない。電力債の資金回収が優先され、被害者の債権はほとんどカットされる。
原発事故を起こした東京電力の再建策で初めから法的整理の選択肢が排除されたのは、社債が担保で守られ、カットできないため、十分な賠償資金を捻出できない事情があった。政府は将来、原発事故が再び起きた場合に電力会社を法的整理すると決めているわけではないが、柔軟な対応ができるようにする。
今後の電力自由化をにらみ、新電力と電力会社の競争条件を公平にする狙いもある。仮に新電力が債券を発行しても担保が付くことはなく、資金調達で電力会社より不利になっていた。
担保廃止によって電力会社の社債は原則無担保となる。市場関係者の間では「原発を保有する電力会社の債券の発行金利は跳ねあがる可能性がある」(大和証券の大橋俊安チーフクレジットアナリスト)との見方もある。
ただし、電力制度改革を進めるための例外設置も検討する。例えば、電力会社が事業部門ごとに会社を分け、グループに「送電会社」を設立すれば、例外的に送電会社が出す社債には一般担保を認める。政府が推進する風力発電などの普及には、今後も送電線への投資が欠かせないためだ。
焦点はすでに発行済みの電力債の扱いだ。政府内には発行済みの電力債にも何らかの見直しを加える案もあるが、電力債の発行残高は今年3月末で約13兆円あり、社債市場全体の2割を占める。制度変更の影響が大きいため、慎重に検討を進める。
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