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【肥田美佐子のNYリポート】
福島原発行動隊が全米行脚「東電よ、作業員の被ばく軽減のためにシニアを活用せよ」
2012年 8月 17日 16:34 JST
米東部時間8月14日(日本時間15日午前)、ボランティア団体「福島原発行動隊」の山田恭暉(やすてる)理事長がニューヨークで講演し、東京電力福島第1原発で働く若手作業員の被ばく量を減らすべく、引退した技術者などで構成する同団体のマンパワーを生かすべきだと、英語で語りかけた。
福島原発行動隊の申し出を「今のところ人手は足りている」として受けつけない東電や動かない日本政府に対し、米国の専門家やメディア、市民への訴えを通して「ガイアツ」をかけるのがねらいだ。
多重下請け構造の下で、約400社が3000人の作業員を派遣する現況では、統一された指揮管理に基づく現場での適切な人員配置や安全管理など不可能だと、山田理事長(73)は、本コラムの取材に答えて話す。
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「若手作業員の被ばく軽減のために、引退した熟練作業員が福島第1原発で働けるようにすべき」と書かれたスクリーンを背に、時折ジョークも交えながら英語で訴える山田理事長(筆者撮影)
同団体は昨年4月、放射能への感受性が若年層より鈍いシニア世代が原発の事故収束作業を担うべきだ、という主張の下で発足。現場での作業を希望する人は700人近くに達し、支援者も含めると、現在、約1600人のメンバーがいる。
米国の活動家や専門家の間で、原発推進や反原発、再生エネルギー派など、立場や主張を乗り越えて団結し、フクシマを世界の問題としてとらえ、危機を解決していこうという動きが加速するなか、福島原発行動隊の全米行脚は、「驚くほど温かく迎えられた」と、山田理事長は相好を崩す。
滞在24日間のうち、ホテルでの宿泊予定は帰国前夜のみ。連日、面識もない米国人が自宅で歓待してくれるという。行動隊が、フクシマを介して米国で新たに生まれつつあるネットワークの推進役として期待されていることのあかしだろう。
今回、7月28日にサンフランシスコ入りした山田理事長は、複数の講演や米議員との面談をこなし、シカゴを経て首都ワシントンに移動。4号機使用済み燃料プールの危険性を指摘するワイデン米上院議員(民主党)のスタッフとも、約1時間にわたって議論を交わした。30分の面談予定が倍近くに伸び、「その熱心さに驚いた」と、山田氏は言う。
ニューヨーク講演にも、一般の米国人や邦人、報道関係者などが80余名集まった。山田理事長は、東電は、米ゼネラルモーターズ(GM)のように国営化されたものの、依然として営利目的の企業であり、現場での適切な人員管理には、東電を事故収束作業から切り離すべきだと主張。「国家プロジェクト」として、世界の専門家による英知を結集し、統一されたプロジェクトマネージメント(計画管理)の下で国際監視チームを結成する必要がある、と訴えた。
共同講演者である、米非営利組織「社会的責任のための医師の会」(PSR)元代表のジェフリー・パターソン医師は、核や放射能の危険性などを強調。第二次大戦下の米核兵器開発・製造計画「マンハッタン・プロジェクト」からも分かるように、真実を「隠す、ごまかす、最小化する」のが原発業界の常であり、今、日本でまさに起こっていることだと、原発規制当局や日本政府の対応を一刀両断した。
また、必要な医療行為とはいえ、たった1度のレントゲン撮影やCTスキャンでも、年月を経てガンになる確率が高まるリスクがあることに触れ、健康に害を及ぼさない「安全な線量」などというものはないと、再三強調。権力や核兵器と三位一体である原発業界のリスク軽視体質を糾弾した。
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真剣なまなざしで聴衆の質問や不安に答える山田理事長とパターソン医師(福島原発行動隊提供)
一方、放射能の怖さは、放射性物質を取り込んだ魚や動物などを通して、半永久的な食物連鎖を招くことでもあると指摘。体内被ばくや遺伝子変化など、長い年月を経なければ結果が分からないにもかかわらず、原発業界は、リスクに目をつむり、いちかばちかの賭けをしていると批判した。実際、福島県などのチョウに遺伝的な異常が現れるなど、原発危機の影響は、すでに顕在化し始めている。
今春には、米西海岸沖で微量の放射性セシウムを含むマグロが見つかったが、講演後の質疑応答では、西海岸産の食材や東海岸沖でとれた魚はいっさい買わないという女性から、「アラスカとノルウェーのサーモンは、どちらが安全なのか」といった質問も飛び出し、フクシマが日本の問題にはとどまらないことが、改めて裏づけられた。
最後に、山田氏への個別インタビューの要旨を以下に紹介する。
――ワイデン議員のスタッフには何を訴えたのか。
山田理事長 まず、4号機1点に絞るよりも、下請けや孫請けの構造を壊し、事故収束作業を東電から切り離す、という全体的な議論展開にすべきだと提案した。現在は応急処置のみで、長期的展望に基づいた体制づくりができていないのが問題だ。防潮堤も石積みのままで、あと40〜50年はコンクリートにする予定もない。
何人もの議員関係者に会ったが、ワイデン議員のスタッフが最も熱心だった。多層下請けの問題について、リポートを出すよう言われた。手ごたえがあったと感じている。米国から声を上げ、日本政府にプレッシャーをかけてほしいと訴えた。
――渡米最大の収穫は?
山田理事長 米関係者とのネットワークづくりだ。フクシマは、もはや日本や米西海岸だけの問題ではない。われわれには、これを国際的な問題にしていこうという共通の一致点がある。反原発派ばかりとはかぎらない。考え方や宗教上の違い、生活レベルやライフスタイルの差を乗り越え、かんかんがくがくの議論が行われている。
――今後の活動について教えてほしい。
山田理事長 米国を起点にして(作業員の安全性確保の問題を)世界に広め、それをまた国内で広げていきたい。これまでは孤立してやっていたが、今後は(他の組織などとも)連帯し、福島原発行動隊の活動をいかにして世間に広めていくかが課題だ。
――究極の目標は何か。
山田理事長 多重下請けの構造をぶち壊すことだ。現在のように、下請けや孫請けの会社1社につき10人弱の作業員がバラバラに派遣されている状況では、この人はこうしたスキルがあるから、ここに配置しようといった、しかるべき現場での人員配置などできない。
――仮に東電が事故収束作業から離れたとして、あとは政府が引き継ぐべきだと?
山田理事長 「ナショナルプロジェクト」とは言っているが、具体的にどのような形をとるかについては、まだ抽象的な提案しかできていない。だが渡米前、民主党内の福島原発事故対策プロジェクトチームと話し合い、ナショナルプロジェクトを具体化する動きは、すでに始まっている。
原発収束は後始末の仕事なので、うっかりすると優秀な人材が集まらなくなる。きちんとした訓練機関をつくり、原発技術者を優遇するなどして優秀な人を集めていく、といったことが討議されている。
――多重下請け構造を壊すには何年くらいかかると?
山田理事長 10年はかかるだろう。これは、日本の重工業が高度経済成長の過程で発展させてきたものだ。日本の産業構造にかかわってくることなので、そう簡単にはできない。だが、今回の渡米で、ますます腹が据わった。帰国後は、27日に自由報道協会で会見を予定している。
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肥田美佐子 (ひだ・みさこ) フリージャーナリスト
Ran Suzuki
東京生まれ。『ニューズウィーク日本版』の編集などを経て、1997年渡米。ニューヨークの米系広告代理店やケーブルテレビネットワーク・制作会社などに エディター、シニアエディターとして勤務後、フリーに。2007年、国際労働機関国際研修所(ITC-ILO)の報道機関向け研修・コンペ(イタリア・ト リノ)に参加。日本の過労死問題の英文報道記事で同機関第1回メディア賞を受賞。2008年6月、ジュネーブでの授賞式、およびILO年次総会に招聘され る。2009年10月、ペンシルベニア大学ウォートン校(経営大学院)のビジネスジャーナリスト向け研修を修了。現在、『週刊エコノミスト』 『週刊東洋経済』 『プレジデント』『ニューズウィーク日本版』などに寄稿。『週刊新潮』、NHKなどの取材、ラジオの時事番組への出演、日本語の著書(ルポ)や英文記事の 執筆、経済関連書籍の翻訳にも携わるかたわら、日米での講演も行う。翻訳書に『私たちは“99%”だ――ドキュメント、ウォール街を占拠せよ』、共訳書に 『プレニテュード――新しい<豊かさ>の経済学』『ワーキング・プア――アメリカの下層社会』(いずれも岩波書店刊)など。マンハッタン在住。 http://www.misakohida.com
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