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元原子力プラント設計技術者、後藤政志さん
「技術者として考えれば、原発の安全性に絶対はない」 元原子力プラント設計技術者、後藤政志さん<「どうする?原発」インタビュー第4回>
http://news.nicovideo.jp/watch/nw340431
ニコニコニュース(オリジナル):2012年8月16日(木)10時18分配信
人には扱えるものと、扱えないものがある。技術者はそれを判断し、線引きしなければならない――。原子力発電所の心臓部分である原子炉圧力容器を覆う「原子炉格納容器」の設計に携わってきた経験から、後藤政志さんはこう断言する。「技術者として考えれば、安全装置は確実に作動するものでなければならない。でも、原発の安全装置が絶対作動するかは保証できないんです」
■「安全」より「世論」を気にする日本の原発
1989年から東芝に勤め、新潟県柏崎刈羽原発や静岡県浜岡原発、宮城県女川原発の設計を担当した。その時のことを反省する。
「原発は安全だと言われていました。でも、本当に安全なものをわざわざ『安全です』とは言わない。危険性があるからこそ、安全だと強調します。外で安全と言い続ければ、中の技術者もだまされ、安全だと思い込んでしまう。これが、安全神話。事故を防ぐことができなかった。だからこそ、再稼働は許されない」
後藤さんはいつ原発の安全神話を疑うようになったのか。設計を担当していた格納容器は、原発が事故を起こした際の「最後の砦」だ。たとえ原子炉の内部がどうなろうとも、格納容器さえ無事なら、放射性物質が外部へ洩れる心配はない。だから、当時の格納容器には圧力を外部へ逃がすための「格納容器ベント弁」が取り付けられていなかった。「安全だから事故は起きない」という前提だった。
「ところが、1992年以降、『格納容器ベント弁』が取り付けられるようになった。もし、何かの事故で数台のポンプがすべて止まれば、内部の圧力が上がってしまう。それを外へ抜く『ベント』をしなければ、爆発を起こし、格納容器が破壊する。そうなると、ダメだと思いました」
さらに疑問があった。「弁にはフィルターが付けられていなかった。もしもベントしたら、そのまま放射能をまき散らします。1986年のチェルノブイリ原発事故以降、ヨーロッパではフィルターは標準装備。日本の原発ではなぜ、フィルターを付けなかったか。目立つからです。安全だと主張しているのに、『あれは何だ?』と聞かれたとき、『これは過酷事故対策です』と言ったら反対派がうるさい。そして現在も日本中、どの原発にもフィルターはついていない。安全より世論を気にする。これが現状です」
技術者として原発の安全神話を疑いながら、匿名で問題点を訴えてきた。しかし、2009年に退社、福島第一原発の事故を受け、ネットなどを通じて積極的に情報発信を始めた。福島第一原発の現状は依然、厳しいと警告する。
「直接、中を見られないので推測ですが、溶けた燃料が今、原子炉の中にある。あるいは格納容器の床に落ちている可能性が高い。そして、いまだに冷却し続けないといけない。つまり、事故はまったく収束していない。1979年の米国スリーマイル島ではメルトダウンを起こしましたが、圧力容器の底は何とか抜けずに済んだ。それでも、原子炉の中が分かるまで10年近くかかった。福島の場合は格納容器自体がひどく汚染されていて、人が立ち入れる状態はもっと先になるでしょう」
■再稼働「大飯原発」の直下に活断層の可能性
懸念は、福島第一原発だけではない。原子力安全・保安院が原発の耐性を調査するストレステスト。後藤さんは現在、その評価を議論する意見聴取会の委員を務めている。7月に活断層の可能性が指摘された石川県志賀原発を現地視察。意見聴取会では、徹底的に調査すべきという結論になった。しかし、福井県大飯原発直下でも、活断層の存在が疑われているにも関わらず、再稼働した。
「原子力安全・保安院はお墨付きを与えて、再稼働することしか考えていません。電力会社のいうことをそのまま追認する格好。原発は一度、事故を起こしたら、福島のように大勢の人達が故郷に帰れなくなります。活断層の疑いがある中での再稼働は、考え方が根底から腐っています」
後藤さんは語気を強める。
「今度、原発事故をやったら、日本は経済的にも壊滅します。数十年の単位で負の遺産を受け継ぐことになるのです」
技術者として、「安全とは何か」を常に考えている。福島第一原発の事故は、地震と津波が原因だったが、原発の特性も原因にあるという。事故が起きた際は外部から電源を持ってくるという緊急対策がとられていた。これは、原発の「多層防護」「多重防護」という考え方に由来する。
福島事故以降も原発の弱点は変わっていない。弁をつければよい。フィルターをつければよい。格納容器が守られればよい。万が一に備え、何重にも原子炉を守るための対策が立てられている。「しかし、それも絶対ではない。思わぬ故障や人のミスが重なることが避けられない。事故の起こる確率は低くすることはできても、ゼロにはならない。そういうものに頼って、原発を稼働させてよいのかというのが疑問なのです」
日本の環境的な問題もあると後藤さんはいう。「海外に比べて、地震や津波に対して、きわめて厳しい。日本は世界で一番、危険な原発といってもいい。日本はアメリカのカリフォルニア州と同じぐらいの面積と言われていますが、その中に50基を超える原発を作るなんて、アメリカ人に言わせれば『クレイジー』。最悪、原発事故で影響が及ぶ範囲は200〜300キロは読んでおかないといけない。日本中、安全な場所はありません」
■人間がコントロールする範囲の線引きが必要
1984年、インドのボパールで起きた史上最悪といわれる化学工場事故を例に挙げる。大規模な農薬工場のタンクから有毒ガスが流れ出し、数千人が死亡。被災者は20万人を超え、現在も住民の苦しみは続いている。「これは、有害物質を閉じ込めることに失敗したため、起きた事故。所詮、人間のやることなので、管理に失敗してしまう。危険なものを確実に閉じ込めることは人間にはできないというのが私の結論。もらしてはいけないものを、扱ってはいけない。以降、有毒ガスの大量貯蔵は止めた。しかし、原発は放射能を避けられない」
そこで、人間がコントロールできる範囲を線引きする必要があるのだという。「気を付けながら扱うのか、やめておくのか。歴史的に見ても、技術者として見ても、大量の放射能がある原発を完璧に扱うことは無理だと思っています。しかし、安全性について皆さん、関心がない」。そこで、技術者や専門家の声を伝えるために4月、NPO法人「APAST」を立ち上げた。「オルタナティブ・パスウェイ」。つまり、「科学技術のもうひとつの道」という意味だ。
「人間は、科学技術とどう付き合っていくべきか。広い視点が必要で、きちんとコントロールできないと人類の未来はない。そういう観点から仲間で立ち上げました。もちろん、原子力の問題も含まれています。どうしても、科学技術には専門性が必要ですが、そういう人たちだけで決めればいい話ではなく、知識と情報を提供し、議論して合意形成しなければならない。そのために、頑張っていきたいと思っています」
■後藤政志(ごとう・まさし)
元原子力プラント設計技術者・NPO「APAST」理事長。1989年から10数年間、東芝で柏崎刈羽原発、浜岡原発、女川原発の原子炉格納容器の設計に携わる。2009年に退職。著書に「『原発をつくった』から言えること」、「福島原発事故はなぜ起きたか」(共著)など。工学博士。芝浦工大、国学院大、早稲田大などで非常勤講師も務める。
◇関連サイト
・[ニコニコ生放送] <どうする?原発>科学者・菊池誠が語る「トンデモ・デマから身を守る方法」- 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv103478592?po=news&ref=news
・特集「どうする?原発」
http://ch.nicovideo.jp/channel/genpatsu
(猪谷千香)
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