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反原発デモの効果、「普通の人」が続々参加
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12/08/16 | 00:00 東洋経済オンライン
夕闇の中、永田町にあふれる人の波──。
首相官邸前で毎週金曜日に行われている反原発デモは開始から4カ月経っても熱気が冷める様子はない。政府が原発再稼働の方針を固めた4月に始めた際の参加者は数百人程度だったが、徐々に増加。関西電力の大飯原発再稼働直前の6月29日には、主催する市民グループ「首都圏反原発連合」発表によると、20万人が詰めかけた。7月29日に行われた国会議事堂前のデモも同様の規模になったと主催者は見る。
1960年代の安保闘争以来の大規模デモとされるが、決定的に違うのは今回のデモ参加者の「行儀よさ」だ。デモ中、「サイカドウ、ハンタイ」とシュプレヒコールを上げるものの、参加者は主催者の指示に従って整然と列を作り、終了時刻になればただちに解散。これまで参加者が暴徒化した例はほぼ皆無だ。
「参加しやすさ」追求
首相官邸前のデモに参加した20代の女性は「マナーがいいので足を運びやすい」と話す。実際、主催者側は“普通の人”が参加しやすいように工夫を凝らす。平日のデモは会社員が集まりやすい金曜日の夜6時に設定し、政党や団体などののぼりやビラ配布は禁止した。さらに子連れ参加者を想定して「ファミリースペース」も設置する。共産党や労働組合が中心となった従来型の脱原発運動と一線を画したことで、子連れの女性や会社員など、これまで脱原発運動とは疎遠だった人々が集まりだした。
日本の脱原発デモの参加者数は震災前まで、チェルノブイリ事故直後の2万人が最大。福島第一原発事故後、ドイツやスイスでは20万人以上の参加者が集まったが、日本では6万人と一ケタ規模が小さかった。それがここにきて参加者が急膨張。福島第一原発事故の原因究明が不十分な中での再稼働に対する怒りが根底にあるものの、“成功”は主催者側の仕掛けによるところも大きい。
平和的すぎるデモに懐疑的な見方もあるが、主催者の一人、ミサオ・レッドウルフ氏は「政府が音を上げるまでしつこく何度もやるには、安全にやることが大事」と話す。
実際、開始当初、メディアの関心は薄かったが、大規模化に伴って大手メディアが相次ぎ報じ始めている。また、首都圏反原発連合は4月以降、野田佳彦首相との直接対話を要求。7月末に開かれた菅直人前首相など脱原発を目指す超党派議員との会合で、菅氏は「野田首相はデモに大きな影響を受けている。主催者との対話にもやぶさかではないとの姿勢だ」と明かし、近く面会が実現される見通しだ。
とはいえ、デモが実際に政策決定などに影響を及ぼすかは不透明だ。主催メンバーのほとんどは「プロ活動家」ではなく会社員で、デモのある日にはそれぞれ会社を早退するなどして対応している。大規模化に伴って誘導係なども多数動員しており、人材確保や訓練なども必要になってくる。世論を動かすには脱原発以外の意見を持つ人々の理解や共感が必須だが、現状ではこうした層へのアピールも弱い。
また、超党派の議員と交渉を続けているが、7月末の会合では新設の原子力規制委員会の人選をめぐり、首都圏反原発連合と議員たちの意見が衝突。異議を唱えることに消極的な議員たちに対して、反原発連合のメンバーがいらだつ場面も目立った。
主催者は「超党派議員との会合はあくまでスタート。首相との面会もゴールではない。全原発停止まで活動は続ける」(レッドウルフ氏)とするが、デモの大規模化で国民の関心が集まる一方、デモの効果を発揮するには新たな壁も見えてきた。
(麻田真衣 撮影:今井康一 =週刊東洋経済2012年8月11-18日合併特大号)
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