http://www.asyura2.com/12/genpatu25/msg/821.html
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「「SR弁」・「配管漏れ」・「物資調達」を持ち出したNHK「メルトダウン連鎖の真相」のマヤカシ度やデタラメ度を検証(前編)」(http://www.asyura2.com/12/genpatu25/msg/781.html)で、NHKが、3号機のメルトダウンは「物資調達問題」で起きたという“子供だまし”の検証結果を提示したことを批判した。
(後編)を書こうと思っているのだが、日本を代表するクオリティ放送局とされるNHKのあまりのひどさとそれが見逃されかねない日本の情況を考えると愕然として筆が進まない。
だからというわけではないが、3.11以降、福島原発事故に自衛隊がどう対応したのかが気になり、調べてみたので報告させていただく。
NHKは、この問題で米国までわざわざ取材に出向き、米国では原発事故が発生し緊急に必要な物資があれば「化学防護隊」がどんなことをしてでも届ける体制になっているとのインタビューを得て、日本における原発災害時の物資輸送体制の不備を問題にした。
日本の自衛隊にも「化学防護隊」はある。現在の正式名称は、「中央特殊武器防護隊」で、大宮に駐屯している。
中央即応集団に属している「中央特殊武器防護隊」の他に、師団直轄の化学防護隊(特殊武器防護隊)も編制されている。
NHKの「メルトダウン連鎖の真相」で、敷地境界が高い放射線量ゆえ、10台の12Vバッテリーを福島第一に運び込めなかったことが3号機のメルトダウンにつながったとなれば、究極的に指弾されるのは自衛隊の「化学防護隊」ということにもなりかねない。
3号機がメルトダウンに至った原因が物質調達にあるとしたNHKは、東電はいつ12Vバッテリーの必要性を認識したのか、東電はいつの時点で政府に12Vバッテリーの手配を依頼したのか、東電は小名浜備蓄基地に12Vバッテリーが積まれていることをいつ知りそれをF1に運び込もうと試みたのはいつなのかなどを明確にする必要がある。
NHKは、3号機のSR弁操作が可能になる12Vバッテリー×10台は、福島第一が高い線量の放射線に晒されていたがゆえに届けられなかったと結論しており、米国取材まで行いそのような状況でも緊急物質を運ぶ体制を問題として提起したのだから、官邸の原子力災害対策本部を通じて「化学防護隊」に依頼していなければ辻褄が合わない。
「化学防護隊」に依頼もせず、ただおろおろとバッテリーがないと嘆いていたために3号機がメルトダウンに至ったとしたら、東京電力の無能が原因ということであり、NHKの検証はデタラメということになる。
NHK的な総括は、東電が政府に12Vバッテリーを福島第一に届けてもらうよう依頼していながら、それが実行されなかったときのみ有効である。
政府(防衛省)及び自衛隊も、NHKの検証結果に対応する義務があると思う。
12Vバッテリーの輸送依頼を受けながら高い放射線量ゆえに断念したのか、それとも、12Vバッテリーの輸送依頼なぞなかったのかを明確にしなければならない。
この問題は、防衛省(自衛隊)の存在意義がかかっているとも言える。
このようなことを考えながら、「化学防護隊」を含む自衛隊が、福島第一&第二で事故が発生した3.11以降どのように動きをしたのか調べてみた。
■ 福島原発事故でも「化学防護隊」による輸送態勢はあった!
● 福島原発事故に対応した自衛隊の動き
遅すぎるとはいえ3月11日19時03分に内閣総理大臣が原子力緊急事態宣言を発令しているから、放射能防禦機能を有する自衛隊に動員がかかるのは当然である。
後述する「緊急災害対策本部・原子力災害対策本部のレポート」に、防衛省(自衛隊)の事故対応が時系列で示されており、原子力緊急事態が宣言される前の18時35分には既に中央即応集団110名と化学防護車4台が朝霞駐屯地で待機命令を受けている。
以下の内容は、いわゆる「官邸レポート」として知られる「緊急災害対策本部・原子力災害対策本部レポート」からのものである。
当該レポートには、3月11日夜の原子炉の水位や圧力といったその段階では非公表だったプラントデータや敷地内MP(モニタリングポスト)の放射線量も掲載されているという貴重な情報源だった。
しかし、そのレポートの入手は、当時から、最後のPDFファイル名を手で入力して掘り出すという異様なかたちでしかできなかった。
今ではアクセス不能のものが多く、「哲野イサク地方見聞録」サイト(http://www.inaco.co.jp/isaac/)でレポートのPDFファイルを見ることができる。
今回引用元として利用するのは、2号機が最大量の放射性物質を噴出させ4号機建屋も大きく傷ついたあとに発行された「3月15日17:00版」である。(http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/pdf/201103151700.pdf)
このレポートから、自衛隊の事故対応の主要部分を列挙したい。
参照できるレポートの中程に、「原子力発電所事故への政府の対応」という枠があり、P.31からが「2.各省庁の体制」という項の「・防衛省」となっている。
なお、先頭に◎が付いた項目は住民避難などの官邸対応、○が付いた項目は事故推移に関するもので、引用するレポートには含まれていない。
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【防衛省(自衛隊)の事故対応】
[3月11日]
18:45 福島の44普通科連隊の80名が福島第一原発のオフサイトセンターに向け出発
(※ このオフサイトセンターは、F1から5kmほどの場所にあったが機能できなかったことから、代替となった福島市の県庁と思われる)
◎19:03 原子力緊急事態宣言発令
19:30 原子力災害派遣命令を受け、大宮駐屯地の陸上自衛隊化学防護車を福島第一に出動
◎20:50 福島県対策本部がF1−1号機の半径2km圏住民に避難指示
◎21:23 首相がF1から半径3km圏住民に避難指示と半径10km圏住民に屋内退避指示
22:15 自衛隊80名が現地到着(※ 18:45に出発した44普通科連隊と思われる)
[12日]
03:35 中央特殊武器防護隊(朝霞)の先遣隊2名がオフサイトセンターに到着
04:50
・ 中央特殊武器防護隊(朝霞)の主力約22名と車両7両がオフサイトセンターに前進中
・ 44普通科連隊約50名が原発地域で電源運搬支援を実施
・ 44普通科連隊約50名がオフサイトセンター周辺で救護活動を実施
・ 第6化学防護隊(郡山)の約10名が駐屯地を出発
・ 中央特殊武器防護隊の主力約90名前進準備中
◎5:44 首相指示により福島第一原発10km圏内に避難指示
06:48 東北方面の約100名と車両50両がオフサイトセンター到着
◎07:11 菅前首相がヘリで福島第一原発視察(到着)
◎07:45 首相が福島第二原発半径3km圏住民に避難指示、半径10km圏住民に屋内退避指示。
08:30
・ 中央特殊武器防護隊の車両7両(化学防護車4両を含む)がオフサイトセンター到着
・ 第6化学防護隊(郡山)の8名が駐屯地を出発
○15:36 1号機水素爆発
17:35 自衛隊ヘリ7機が10Km圏内に取り残されている人たちの救出に向かう。
◎17:39 首相が福島第二原発半径10km圏住民に避難指示
◎18:25 首相が福島第一原発半径20km圏住民に避難指示。
21:14 航空自衛隊輸送機が冷却タービンを空輸
23:36 航空自衛隊航空機がヨウ素剤などの物資空輸(木更津発)
[13日]
08:05 原発冷却水支援の水タンク車9台が四倉町(いわき市)到着
09:25 福島県の要請で陸自12旅団第12化学防護小隊が二本松に除染所開設
15:00 オフサイトセンターに80名を派遣
17:57
・ 福島原発で空中散水を目的とした放射線モニタリングを16:15から実施する予定だったが、3号機の水素爆発の危険性を考慮し、モニタリング及び空中散水を一時中止
・ 空自給水車両10両が福島第二原発に到着、作業開始(20:28作業終了)
21:40 中央特殊武器防護隊10名が川俣町体育館で住民100名に除染支援(〜01:00)
[14日]
01:30 空自による福島第二原発での給水作業(第2回目)開始(05:00終了・06:45給水活動・10:27冷却水注入)
09:42 安全性の確保ができたためポンプ車両7両で第1原発3号機に向かう
○11:01 3号機水素爆発(※ レポートには未記載だが隊員4名が負傷)
20:56 第1原発2号機が危険な状態のため、全員御夫妻とセンターから郡山駐屯地に移動
[15日]
○06:10ころ 2号機圧力抑制装置損壊&4号機建屋火災
◎11:00 首相が福島第一原発半径20〜30km圏の住民に屋内退避を指示
13:05 福島医大の要請で、防衛省の除染設備の輸送手続き中
14:20 福島県庁で中央特殊武器防護隊27名が除染支援を実施(〜16:46)
15:52 冷却水を注入するために必要なポンプの燃料を福島第二原発に輸送完了
22:20 福島医大病院に中央特殊武器防護隊15名で除染所を設置
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● 「化学防護隊」による福島第一への12Vバッテリー輸送条件
3号機のメルトダウンは、3月13日10:45とされ、その前提となる冷却機能が失われたのは13日未明の02:44である。
検証としてはデタラメではあるが、NHKの事故検証に従うと、12日夜までに12Vバッテリーが運び込まれていれば、3号機のメルトダウンは防げたことになる。
時系列でわかる自衛隊の動きをみれば、1号機で15:36に水素爆発が起きた12日夕方から夜にかけて、果敢に事故対応をしていることがわかる。
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[12日]
17:35 自衛隊ヘリ7機が10Km圏内に取り残されている人たちの救出に向かう。
21:14 航空自衛隊輸送機が冷却タービンを空輸
23:36 航空自衛隊航空機がヨウ素剤などの物資空輸(木更津発)
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さらに、対放射線防御を有する12Vバッテリー×10基を運べる程度の陸上輸送手段であれば、12日朝の時点でオフサイトセンターに準備されていた。
1号機のベントや水素爆発で敷地内の放射線量は上昇しているとは言え、15日以降とは比較できない“低レベル”であり、弁当や飲料水など事故対応作業者に必要な物資はちゃんと輸送されていたが、NHK的な放射線防御の観点から条件を高めて考えた。
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[12日]
08:30
・ 中央特殊武器防護隊の車両7両(化学防護車4両を含む)がオフサイトセンター到着
・ 第6化学防護隊(郡山)の8名が駐屯地を出発
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このような態勢を考えれば、東電が政府(原子力災害対策本部)に12Vバッテリーの輸送を依頼していれば、小名浜備蓄基地にあった12Vバッテリーは必要数だけ福島第一に届けることができたと判断できる。
このことからも、NHKが「メルトダウン 連鎖の真相」という番組で示した「3号機のメルトダウンは、SR弁を開閉操作するための12Vバッテリー10基が届けられなかったことが原因」とする検証はデタラメであることわかる。
自衛隊の動きに関連して、「物資調達」問題よりも深刻な問題を見出したので、追って投稿したい。
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