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「原発事故は人災」なのに、この怠慢 検察が告発20件を無視 アエラ
(アエラ2012.7.23書き起こし、一部省略)
検察が原発事故の捜査から逃げている。
20件を超える国民の告訴・告発を一つも受理していない。その背景は。
東日本大震災から1年3ヵ月にあたる6月11日。
東京電力福島第一原発の事故で影響を受けた福島県の住民1324人が、
勝俣恒久・東電会長(当時)、班目春樹・原子力安全委員会委員長ら33人を
業務上過失致死傷などで福島地検に刑事告訴・告発した。
実は、1ヵ月を経た7月12日現在、検察はこの訴えを受理していない。
「書類を提出した際、『預かり書』を手渡された」(同告訴団)
預かり書は「受理」ではない。
文字通―書面を「預かった」ことを示すだけ。
検察は今、訴えを棚ざらしにしている状態だ。
<元検察幹部も首ひねる>
関係者によると、3・11以後、福島第一原発の事故に関して20件を超える刑事告発、刑事告訴が寄せられている。検察は一つも受理してぃないのだ。
例えば、脱原発運動に取り組んできた盛岡市の永田文夫さんらは今年1月、
公害罪で勝俣元会長ら3人を東京地検に刑事告発しようとした。
公害罪とは、「業務上必要な注意を怠り、事業活動に伴って人の健康を害する物質を
排出し、生命や身体に危険を生じさせた」ものを処罰するものだ。
1月24日に告発状を郵送したが同27日付で同地検特技部から返事がきた。
「この法律は公害排出規制を強める目的で制定されたもので、過去の複数の最高裁判例をみると、たまたま有害物質を排出してもこの罪にあたらない。
原因究明は関係機関でおこなわれており、送付された書面をお返しします」
永田さんは東京地検に電話で問い合わせたが「取りつくしまもなかった」という。
この「特捜部の手紙」について、かつて東京地検特捜部副部長や同公安部長を
歴任した若狭勝弁護士は首をひねる。
「最高裁で判例になったということは、そこが争点になったということ。
判例は変更されることもあり、受理しない理由にはならない。
原因を関係機関が究明していることも受理、不受理とは直接関係ない」
若狭弁護士によると、一般に刑事告発や刑事告訴を受理しないのは犯罪日時や場所、誰がどうしたのかが特定されていない場合か、まったく合理的でない事実が書かれている場合だ。
それ以外は、たとえ起訴が困難でも、いったん受理した上で「罪とならず」「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」などの判断を下す。
告訴・告発は刑事訴訟法に明記された国民の権利だ。
冒頭の告訴団の代理人・河合弘之弁護士は噴る。
「受理は当たり前。捜査をきちんとするかが焦点だ」
だが、検察は「異例の対応」で、原発捜査を意図的に避けている。
検察関係者は弁明する。
「東電や国の関係者を公害罪や業務上過失致死傷で起訴することは法的に困難です。
例えば、業務上過失致傷で言えば、被曝がどの程度人体に影響があるかは、はっきりしない。
いったん受理してしまえば、不起訴にしても検察審査会が控えている」
<警察と押し付け合いも>
実際、河合弁護士は「不起訴の場合は国民が判断する検審に申し立てる」と言う。
そうなると、検察は国民が納得する捜査をしなくてはならない。
「事情聴取は社会的な反響があまりに大きい。国や国会の調査報告書も参考にして受理、不受理を判断したい」(検察関係者)。
検察と警察の間でどちらが中心になるか、押し付け合いもあったという。
福島の原発告訴団は、業務上過失激発物破裂罪でも告発する方針だ。
これは業務上必要な注意を怠り建物などを爆発させたことを罪に問うもので、人体への影響を検証する必要はない。
「国や東電の関係者に個人としての責任をとらせなくては、むちゃくちゃな原子力政策は止まらない」(河合弁護士)
及び腰の検察が結論を先送りする間にも、公訴時効は進む。
国会事故調査委員会も「人災」と断定した福島第一原発事故。
検察は重い腰を上げる時が来ている。編集部三橋麻子
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