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昨日(21日)夜に放送されたNHKスペシャル「メルトダウン連鎖の真相」の内容を考えてみたい。
ポストしようと思ったら、ありがたいことに、gataroさんが番組をアップされていた。ご覧になっていない人は、是非とも、ご参照いただきたい。
※ 「<NHKスペシャル>メルトダウン/連鎖の真相」
http://www.asyura2.com/12/genpatu25/msg/777.html
まず、これまで、巨大津波後ほとんどの破滅的事故が同時に起きたかのように語られることもあった福島第一原発の超過酷放射能放出事故について、当該NHK番組が、2号機と3号機のメルトダウンにそれを防ぐ時間的余裕があったことを前提に解説したことを評価したい。
また、事故原因や事故対応の問題点などの全容を明らかにしないまま、原発の再稼働に踏み切った野田政権を批判して締めくくったことも評価したい。
その上で、メルトダウンを防ぐための時間的余裕があった3号機及び2号機を、メルトダウンからメルトスルーに至らせた原因解析については大きな問題を指摘したい。
事故発生からすでに1年4ヶ月が経過しているので、再確認の意味で、各号機のメルトダウンに至った日時を番組から引用する。
[各号機のメルトダウン日時]
1号機:3月12日01:09
2号機:3月14日19:01(メルトスルー20:12)
3号機:3月13日10:45
※ メルトダウンの日時は、ほとんどの核燃料のジルコニウム被膜管が溶けてしまい、内容の核燃料物質と核分裂生成物質(FP)が溶け落ちた時点であろう。番組がメルトスルー日時を示したのは2号機のみ。
番組は、2号機で起きたメルトダウン・メルトスルーとその結果としての格納容器の一部破損(NHKはドライウェル(格納容器:フラスコ型)とウェットウェル(圧力抑制室:ドーナツ形状)の連結配管部分のどこか1箇所と想定)が、3.11に起きた福島第一原発事故で最大量の放射能放出につながったと解説した。
損傷箇所は別として、私自身もそのように考えており、1号機及び3号機は、メルトスルーが“チャイナシンドローム”的に進行したために、どちらがいいというわけではないが、大気中への放射性物質の放出は抑えられたと考えている。
■ 3号機のメルトダウンは「物資調達問題」で起きたという戯言
番組は、2号機問題に大半の時間を割き、その後に3号機問題に移るという構成だったが、メルトダウンの発生時系列と問題の“やさしさ”から3号機問題を先に取り上げたい。
NHKは、驚くことに、3号機がメルトダウンした原因を「12Vバッテリーの調達遅れ」に収斂させた。
NHKが真顔でそう思いホントウに確信しているのなら、国会事故調をはじめ様々なところで言われている「官邸の過剰介入」問題とは比べものにならない政府の事故拡大重大責任を意味することだから、徹底的な調査報道をしなければならないはずだ。
要点を言えば、3号機は12Vバッテリーが10個あればSR弁を開けてメルトダウンを防げたのに、12VバッテリーがF1に到着しなかったためにメルトダウンに至ったという話である。
この結論は、他のもっと重要な問題を隠蔽してしまうことに通じているのだが、物資調達という問題をまず考える。
3号機でメルトダウンという危機的状況が3月11日の夕方に起きたのなら、それでもだが、緊急に必要な物資が手に入らなかったという経緯を受け容れられないわけではない。
しかし、緊急物資が調達できなかったのは、巨大津波が福島第1原発を襲ってから1日半も経過した13日未明なのである。
しかも、NHKによれば、福島第一から55kmしか離れていないいわき市小名浜の備蓄基地には1千基の12Vバッテリーが積み上がっていたという。
その一方で、福島第一にすぐ届けられるJヴィレッジ(物流拠点)には、あまり使い道がない2Vバッテリーが大量に積み上がっていたという。
このような状況について、東電の現地幹部は、「優先順位をつけている状況ではなく、とにかくわずかでもあるものがあったら、みんながかき集めて持ってくるという状況での手配でしたから、このものが優先だとか、優先じゃないとかというかたちの選別はなかなかできない状況でした」とインタビューで語っていた。
番組でも、駐車場の自家用車からバッテリー取り出して事故対応に利用するという涙ぐましい場面が何度か出てきてきた。
しかし、このような言動をする東電の幹部社員は、恥知らずの極まりだと言いたい。
福島第一でバッテリーが最重要調達物資であることは、全電源喪失状態に陥った時点で、一般社員にもわかる“優先序列”である。
逆に、そのようなことさえわかっていない幹部社員が物質調達の責任者だとしたら、原子炉を動かすどころか触ることさえ許されないのだから、現地幹部及び任命権者の役員は、揃って打ち首獄門であろう。
NHKは、視聴者がこの状況でも12VバッテリーがF1に届けられなかったワケをもっともらしく思ってくれるよう腐心したようだ。それで持ち出したのが、F1敷地境界の放射線量値である。
NHK自身が番組で示した値(対数グラフ)だが、福島第一の敷地境界(正門付近)放射線量は、事故発生から日付が変わった12日未明から徐々に上昇し、ベントなどもあったが、2号機の“格納容器”が損壊するまで、平均的には10μSv/h未満であった。15日夜明けから放射線量は急上昇したため1000μSv/h(1mSv/h)に達し、午後には10000μSv/h(10msV/h)が恒常的な値となった。
そのような放射線量の推移でありながら、NHKは、それほど放射線量が高くなった13日のなかでとりわけ高い値281μSv/h(0.281mSv/h)を持ち出し、「4時間で年間許容被曝量を超えてしまう放射線量」と説明した。
そうは言っても、福島第一の敷地内では、時間制約はありながらも(被曝線量のインチキ管理が横行していたが)、昼夜を分かたず数千人が事故対応に勤しんでいたのである。
NHKは、物資調達についてわざわざ米国の原発を取材し、“化学防護隊”もおり、どんなことがあっても必要な物資は届けるというコメントをとっていた。
3.11夕方以降の福島第一は、いち東電が対応する大事故ではなく、国家が総力をあげて対応する日本の危機に直結する未曾有の事故として位置づけられていた。
官邸は24時間体制で臨み、自衛隊のみならず米軍も出動した国際対応の事故だったのである。
そうでありながら、NHKは、「放射線量も高く、55kmほど離れた小名浜備蓄基地にあった12Vバッテリーを10台さえ届けられなかったから、3号機はメルトダウンを起こした」と結論づけているのである。
このような結論を、“笑い話”以外のなにと言えばいいのだろうか。
NHKが取材した米国の当局者が語った“化学防護隊”は、日本の自衛隊にも存在する。核攻撃や毒ガス攻撃に対応する大宮の化学防護隊である。
東海村で起きたJOC事故でも大宮の化学防護隊は出動したが、10km圏には入らないまま待機行動をとった。関東軍ではないが、先々に起こるかも知れない重要な局面に対応するため、戦力を温存したということだろう。
そこまでの重装備がこの段階(13日未明)では必要とは思わないが、大宮化学防護隊には対応するための装備はある。
化学防護隊を将来に備え温存したいのなら、他の部隊の自衛隊員や警察官さらには消防隊員などから物資輸送の志願者を募れば、12Vバッテリー10台を福島第一原発の正門まで届けるという献身的な方は数多く現れただろう。
何より、東電幹部や心ある従業員は、否応もなくその物資輸送のために身を捧げなければならないはずだ。
もっと言えば、70台近くに及んだとも言われている電源車が福島第一に到着していながら、13日になっても14日になっても15日になっても通電できなかったワケはまったく説明されていない。電源車が電力を供給できていれば、バッテリー不足問題も発生しないのである。
3号機のメルトダウンを「物資調達」問題に矮小化することは、他の問題を隠蔽することに通じるのである。
「12Vバッテリー」は、SR弁(主蒸気逃がし弁)を開閉動作に必要なものである。
12Vバッテリーが届いていればメルトダウンが防げていたというのなら、SR弁の開閉ができていればメルトダウンを防げたということである。
さらに一歩進めば、SR弁操作を行うのは、原子炉の冷却材(水)が枯渇してメルトダウンに向かわないよう、原子炉を減圧して消火系から注水ができるようにするためである。
出典は後述する投稿内で示しているが、3号機がメルトダウンに至る経緯は津後のようなものである。
「3月12日
11:36 RCICトリップ(停止):水位広帯域200mm
12:35 HPCI“自動”起動(L−2) :水位広帯域マイナス1220mm
12:45 原子炉圧力降下傾向(7.53MPa(12:10)→5.6MPa)
20:15 原子炉圧力降下傾向(0.8MPa)
※20:36 水位計電源切れ:水位(広帯域1350mm・燃料域400mm)
3月13日
02:42 HPCI停止
※3:00 DD(ディーゼル駆動消火ポンプ)でFP(消火ライン)による注水開始
※3:51 水位計の電源回復:広帯域マイナス3600mm・燃料域マイナス1600mm
04:15 原子炉水位が有効燃料頂部(TAF)に到達したと判断
05:10 HPCIが停止したため、RCICによる原子炉への注入を試みたが、RCICが起動できなかったことから、原災法第15条事象(原子炉冷却機能喪失)に該当すると事業者が判断
06:00 原子炉水位マイナス3500mm(ワイド:広帯域)」
この経緯をかいつまんで説明すると、3号機は、当初、2号機と同じように、RCIC(原子炉隔離時冷却装置)が作動していたが止まったため、仕組みとしては似ているHPCI(高圧注水系)が自動的に起動した。(両方とも、弁開閉動作以外では電源を必要とせず、原子炉の崩壊熱で生まれる高圧高温の蒸気を利用して循環用のタービンを回す)
そのHPCIが、13日未明に停止したことで、3号機は重大局面を迎える。そして、13日10:45にメルトダウンに達した。
SR弁開操作は、原子炉の圧力を下げて、原子炉の破壊を防ぐとともに、メルトダウンを防ぐために外から注水ができる条件をつくるためのものである。
消防ポンプ並みであれば、10気圧以下になっていなければ、内側からの圧力に負けて注水ができないと言われている。
時系列データを確認するとわかるが、12日の12:45から原子炉の圧力が降下傾向を示し、20:15には消防ポンプで注水が可能な10気圧以下(絶対圧0.8MPa=8気圧) になっている。
しかし、この時点で、3号機の原子炉には注水が行われていないのである。実際に3号機原子炉に注水が始まったのは、13日3時からで13日に390Klの注水が行われている。(たぶん水素爆発が起きた11:01までの実績だろう)
このようなおかしな動きになった理由は、おそらく、事故対応にあたっていた現場責任者や東電本店そして官邸が、3号機のHPCI(高圧注水系)が動作していると“過信”して、メルトダウンを防ぐためのもう一つの手段である消火系を利用した注水を怠ったことにあるのだろう。
(後編)で取り上げるが、NHK自身が取り上げている地震による「配管損傷(漏れ)」は、この3号機でも起きていた可能性が高いのである。
その「配管リーク」のために、3号機のHPCIが停止した疑いが濃厚なのである。
「配管リーク」で原子炉圧力が低下したことで、原子炉で発生する蒸気でタービンを回して復水と注水を行っているHPCI(高圧注水系)の能力が低下し、原子炉に注水できる量も自然に減少していき、気づいたときには時遅しで、メルトダウンに至ったと推測している。
どんなときにも必要な物資が届けられる体制を築くことは間違いなく重要だが、3号機のメルトダウンは、その不備ゆえに起きたとは言えないのである。
逆に、3号機のメルトダウン原因をそのようなおかしな話に求めることは、肝心な事故原因を隠蔽することにつながりかねないのである。
この問題に関する説明は、次の投稿を参照していただきたい。
※ 「3号機「高圧注水系配管損傷」説を否定した東電の“理”を検証:デタラメな説明とウソの主張でIAEA報告書を覆そうとする不遜」
http://www.asyura2.com/11/genpatu15/msg/202.html
(後編)で、NHKが2号機でメルトダウンが防げなかった要因として提示したことを検証したい。
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