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甲状腺被曝の実態は未解明、福島県の意向で調査中止も
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12/07/11 | 00:05 東洋経済オンライン
福島県が進めている「県民健康管理調査」。その中で202万人の全県民を対象に実施されているのが、原発事故直後からの行動記録を基に外部被曝線量を推計する「基本調査」だ。
ところが、同調査の回答率は2割強にとどまる。事故当日の2011年3月11日から4カ月間にどこに何時間滞在したかを細かく記入してもらう反面、「問診票」と題しながらも既往歴や体調の変化を記入する欄がない。そのため、「健康への配慮が乏しい」と感じて提出しない人が少なくない。
その一方で、小児甲状腺検査や県民健康管理調査とは別に県が実施している、放射性セシウムによる内部被曝レベルを把握するホールボディカウンター(WBC)検査への関心は高い。
しかし、県によるWBC検査は人員や機器の不足でいつ順番が回ってくるかわからないのが実情。南相馬市立総合病院や一部民間病院は独自に機器を導入し検査を進めている(写真)。こうした動きは甲状腺検査でも起こりつつある。
南相馬市立病院は、今年に入って東京都内の伊藤病院に甲状腺検査の技能習得を目的に3人の検査技師を派遣。わが国で最も多くの甲状腺疾患患者を診療している同病院は、いわき市内のときわ会グループからも1人の技師を研修で受け入れている。
「行政の動きを待っていられないので子どもの甲状腺を診てほしいという保護者が被災地から大勢訪れている。福島県の取り組みに協力する一方、当院でも小児患者の増加に対応すべく、医師や看護師の確保など検査体制の充実に努めている」(伊藤公一院長)
■謎に包まれる甲状腺被曝
子どもを持つ親が不安を抱くのは、放射性ヨウ素による甲状腺被曝の実態がつかめていないからでもある。
政府は昨年3月下旬、いわき市、川俣町、飯舘村で1000人強の子どもを対象に甲状腺被曝状況の調査を実施。1歳児の甲状腺等価線量100ミリシーベルトに相当する毎時0.2マイクロシーベルトを超えた子どもはいなかったと発表した。ただ、簡易検査だったため、放射性ヨウ素による被曝線量を直接測ることはできていない。
精密な機器を用いて放射性ヨウ素による甲状腺の被曝状況を測定したのが、弘前大学被ばく医療総合研究所の床次眞司教授らのグループだった。
床次教授らは昨年4月12〜16日に、南相馬市からの避難者45人および浪江町津島地区の住民17人、計62人の甲状腺中の放射性ヨウ素を測定。46人から放射性ヨウ素が検出されたものの、呼吸による摂取時期を3月15日と仮定した最新の分析結果では、「乳幼児を含む全員で(IAEA〈国際原子力機関〉が定めた安定ヨウ素剤服用の基準である)50ミリシーベルトを超えていなかったと考えられる」(床次教授)という。
そのうえで床次教授は、「当時、津島地区に多くの乳幼児が避難で滞在していたと仮定すると、50ミリシーベルトを超える子どもがいた可能性は否定できない」とも指摘。「ハイリスクの子どもを特定したうえで、継続的な健康支援が必要だ」と強調する。
惜しまれるのは、被災者への個別調査を嫌う県の意向を受けて同調査が5日間で中止を余儀なくされたことだ。
国は事故直後の初期被曝の実態解明に取り組もうとしているが、放射性ヨウ素が減衰した現在では新たなデータ取得は不可能。初期に集められたあらゆる手掛かりを用いて当時の被曝線量を推計するしかないのが実情だ。
(週刊東洋経済2012年6月30日号)
記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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