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2012.07.08
「節電要請」という茶番と「計画停電」という脅し
7割以上が「再稼働すべきでない」「再稼動は時期尚早」と回答している世論調査の結果を無視して、首相官邸前に集まった20万人(日本野鳥の会調べ)の「再稼働反対!」の声を無視して、専門家による「原子炉の真下に活断層と連動して動く可能性のある破砕帯が走っているから早急に調査すべきだ」という指摘を無視して、有識者らの「ベントも耐震事務棟もなく防潮堤の嵩上げもしていないのに再稼動は危険すぎる」という指摘を無視して、大飯原発の前で6月30日から7月2日未明まで丸2日間もがんばった有志たちの非暴力の訴えを無視して、野田首相と関西電力は大飯原発3号機を再稼働させた。
何のために?
政府と関電の説明によれば、「原発を再稼働させないと電力不足になる」からだそうだ。たぶん、今でも多くの人が、この「電力不足」って理由を信じてるだろう。あたしはずっと前から「電力不足は原発を再稼働させるためのタテマエ」「原発など動かさなくても電力は有り余ってる」って言い続けてきたし、その根拠となるデータも紹介してきたけど、未だにツイッターとかメールとかで「あなたが原発に反対するのは自由ですが電力不足になったら多くの人が困るんですよ」なんて突っかかってくる人がいてヘキエキとしてる。
で、そんな人たちにも「電力は有り余ってる」ってことを理解してもらうために、今日は、大飯原発が再稼働してからの関電と政府の対応を取り上げようと思う。分かりやすいように、時系列で書いてみる。ちなみに、これは、すべて大手新聞で報じられた内容で、関電が自ら発表した内容だ。
7月2日 大飯原発3号機の制御棒を引き抜く。
7月3日 核分裂が始まったことを確認。
7月5日 大飯原発3号機の発電を開始。フル稼働したら火力を最大で8基停止すると発表。
7月6日 火力6基(合計300万KW)を停止。
7月7日 大飯原発3号機の出力が100%に達したため、9日にはフル稼働で118万KWを発電できると発表。関電はさらに2基の火力を停止する予定。政府は「9日に大飯原発3号機がフル稼働すれば関電管内の節電目標を15%から10%に緩和する」と発表。
この流れを見れば分かるように、関電は原発1基(118万KW)を再稼働させた代わりに火力6基(合計300万KW)を停止させたのだから、トータルの電力供給量は182万KWも少なくなった。さらに2基の火力も停止すると言ってるんだから、もっと少なくなる。それなのに政府は「節電目標を15%から10%に緩和する」って発表したのだ。
ようするに、節電なんてまったく必要ないってことじゃん。つーか、それ以前に、原発を再稼働させた代わりに火力を止めるのなら、もともと電力不足の心配なんてなかったワケじゃん。「このままじゃ電力不足で大変なことになる!原発を再稼働しないと大変なことになる!」って大騒ぎしてたのに、何これ?
百歩ゆずって、118万KWの原発を再稼働させた代わりに118万KWの火力を停止した‥‥ってのなら、まだ多少は理解の余地もあるけど、あれほど「電力不足」って言葉を連呼してたのに、118万KWの原発を再稼働させた代わりに300万KWの火力を停止して、さらにあと2基も停止する‥‥って、もう一度言うけど、何これ?
その上、電力供給量が182万KWも少なくなったのに「9日に大飯原発3号機がフル稼働すれば関電管内の節電目標を15%から10%に緩和する」って何?‥‥って感じの今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、関電は「大飯原発3号機がフル稼働したら火力を最大で8基停止する」って発表したのに、フル稼働する前にトットと6基もの火力を停止した。これについて関電は「火力は燃料コストが掛かるから」と説明してる。
はあ?あんた自分が何言ってるか分かってるの?
これじゃあ「このままでは電力不足になってしまうので原発を再稼働します」じゃなくて「このままでは火力の燃料費で赤字になってしまうので原発を再稼働します」ってことじゃん。何よりも、電力供給量が182万KWも少なくなったのに、7月1日から関電管内で実施されてきた15%の節電目標が10%に緩和されたっていうトンチンカンな状況を見ただけで「もともと電力不足なんて嘘でした」ってことを証明しちゃってるじゃん。
だいたいからして、当初は、政府も関電も「2年前と同じくらいの猛暑になった場合、真夏のピーク時に電力不足になる」って説明してたんだよ。つまり、例年並みの気温なら原発を再稼働しなくても問題ないって言ってたんだよ。枝野さんだって今年1月の時点では「今年の夏は原発がなくても何とかなる」って言ってたほどだ。
だけど、5月に気象庁が「今夏の長期予報」を発表して「今年の夏は例年並みか例年以下」ってことが分かると、突然、政府も関電も「2年前と同じくらいの猛暑になった場合」って部分を口にしなくなり、ついでに「ピーク時に」って部分も口にしなくなり、とにかく何が何でも「このままだと夏に電力不足になる」って連呼し始めた。そして、「このままだと夏に電力不足になる」から「大飯原発の再稼動は絶対に必要」だと言い出した。
高まる世論の批判に対しては「電力不足になって停電になればお年寄りが熱中症で亡くなってしまう」だの「自宅で人工呼吸器を使っている人たちの命に関わる」だの「中小企業が次々と倒産してしまう」だの、とってつけたような脅し文句が続き、挙句の果てに仙谷さんなどは「原発を再稼働しなければ日本中が集団自殺だ!」「江戸時代のローソク生活に戻りたいのか!」などと支離滅裂な恫喝を始める始末。
百歩ゆずって政府や関電の言う通りに電力不足になったとしても、計画停電するのは「真夏のピーク時」、つまり、日中の2〜3時間ほどなんだから、ローソクなんか点けなくても十分に明るいよ!アホ!‥‥なんてのも織り込みつつ、前回のブログから、あたしは、どんなに最低最悪な相手でもキチンと「さん」付けで書くことにしたので、変態セクハラ強欲オヤジのことも一応は「仙谷さん」なんて書いてるので、ナニゲにストレスが溜まってくる(笑)
‥‥そんなワケで、世論の批判の声が大きくなってくると、今度は「大飯原発を再稼働できなければ計画停電をすることになる」って言い始めた。とうとう「計画停電」という水戸黄門の印籠までチラつかせて管内の電力利用者を脅し始めたってワケだ。そして、関電管内では15%、他のエリアも「関電に電力融通をするため」って理由で5%ほどの節電目標が決められた。これらは何のデータも示さずに関電が勝手に言ってるだけのデタラメな数字を元にした節電目標だ。
さらには、大飯原発の再稼働の予定日が近づいて来ると、今度は「大飯原発を再稼動しても電力は不足するので節電だけでなく計画停電も必要だ」って言い始めた。今までは「原発を再稼働すれば計画停電はなくなる」と思ってた人たちはビックル一気飲み状態になった。でもこれは、関電の株主総会での八木社長の「大飯原発以外の原発もできるだけ早期に再稼働したい」って言葉を聞けば簡単に理解できるだろう。ようするに、「大飯原発を再稼働させてもまだ電力は足りない。だから次の原発も再稼働させる」っていうシナリオに沿ったものだ。
とにかく、あたしが細かいことを説明しなくたって、7月2日に大飯原発3号機の制御棒を引っこ抜いてから7月7日にフル稼働するまでの「まるで事前にシナリオができてたような手際のいい流れ」を見れば、子どもだって「何これ?」って思うハズだ‥‥ってなワケで、結局は「このまま火力が大きな割合を占める状況が続くと赤字が膨らんでしまう」ってのがホントのとこの「原発再稼働」の理由であることは火を見るよりも明らかだ。何しろ関電は、6月末の株主総会で、原発の再稼働の必要性を説明する上で、「電力不足」の代わりに、こうノタマッてる。
「当社の原発11基がすべて停止したままの状態だと、9000億円という膨大な燃料費と代替コストが掛かってしまい継続的な経営が難しくなる」
とりあえずは「電力不足」で大衆を脅して最初の1基を再稼働させる。1基でも再稼働して既成事実を作っちゃえば後はどうとでもなる‥‥ってのが電力会社と政府の考え関電の株主総会に来てるのは、もちろん全員が関電の株主だから、関電の経営状態が悪くなれば株価が下落して自分たちが損をするって思ってる人たちだ。だから、そうした人たちに原発の必要性を訴えるためには、「電力不足になる」なんて嘘をつくよりも、本音で話したほうが話は早い。
ようするに、ザックリと言っちゃえば、本音は「金儲けのための再稼働」なんだけど、そんなこと株主以外には言えないから、とりあえずは「電力不足」で利用者を脅して最初の1基を再稼働させる。1基でも再稼働して既成事実を作っちゃえば後はどうとでもなる‥‥ってのが電力会社と政府の考えってワケだ。
‥‥そんなワケで、この「火力は燃料コストが掛かるから原発を再稼働させないと経営が苦しくなる」って説明は、関電だけじゃなく、北海道電力や四国電力を始め、多くの電力会社が今回の株主総会でおんなじセリフをノタマッた。利用者に対しては「このままでは電力不足になるから原発を再稼働したい」と言い、株主には「このままでは赤字になるから原発を再稼働したい」と言う。まさに「本音と建前の使い分け」の顕著な例だ。
そして、原発推進派の多くも、この「発電コスト」っていう経済的な理由を口にする。だけど、あたしが以前から指摘してるように「原発は発電コストが安い」なんてのは電力会社が原発を推進するために捏造したマヤカシだ。「原発はCO2を出さない」ってのも、所詮は「発電時にはCO2を出さない」ってだけの話で、全工程を見れば大量のCO2を発生させてる上に、大量の温水を海へ排出してるために、それが地球温暖化を加速させてる。
これとおんなじで、原発の発電コストにしても、電力会社は「発電時」のコストしか計算していない。そんなインチキ計算をすれば、燃料を使い続ける火力のほうが発電コストが高くなるに決まってる。たとちえば、石炭火力の場合は、燃料である石炭が燃え尽きたあとの焼却灰の処理費用まですべて計算して、1KWの電力を1時間発電するためにいくら掛かるのかっていう発電単価を試算してる。だけど、原発の場合は、使用済み核燃料の処理費用をまったく計算に入れてないのだ。
また、火力を始めとした原発以外の発電の場合は、その施設が老朽化した場合の建て替え費用なども計上して計算してるのに、原発の場合は老朽化した場合の廃炉費用を計算に入れてない。
使用済み核燃料は、未だに処理方法も場所も決ってないほどデタラメな状況だけど、仮に国内のどこかで地層処分することが決まったとしても、その費用は10兆円とも20兆円とも言われてる。老朽化した原発の廃炉費用は、原子炉1つで約5500億円、原発を11基持ってる関電は、廃炉費用だけでも約6兆円を計上して発電コストを試算しなきゃならない。
こうした「原発に必要な費用」をすべて計上して正しく試算すると、発電コストは火力の数倍になる。さらに言えば、今回の福島第一原発の事故のような予定外の費用も掛かる場合があるんだから、各電力会社がこれからも原発を使い続けるつもりなら、こうした「もしもの事故の場合の処理費用」だって発電コストに上乗せして考えるべきだろう。
事故を収束させるための費用、被害者への賠償、放射能汚染してしまった広大な面積の土地の除染費用、海洋汚染によって今後他国から請求されるであろう賠償、そして、数年後から多発する可能性が危惧されている被曝による健康被害への賠償、こうしたすべての費用を足し算して、それで原発の発電コストを試算すべきだろう。
‥‥そんなワケで、日本で唯一原発を持たない沖縄電力は、原発を持つ他のエリアよりも電気料金が高い。じゃあ、どれくらい高いのかって言うと、契約形態や使用料によって多少の差はあるけど、ごく一般的な家庭の平均値を例にとると、29.04円/KWH(キロワットアワー)だ。一方、あたしが住んでた東京で東電が原発をフル稼働させてた時の電気料金一般家庭の平均値は、24.13円/KWH、わずか5円の差だ。つまり、原発をすべて止めたって、5円しか変わらないのだ。その上、原発を持たない沖縄電力は、使用済み核燃料の処理費用も老朽化した原子炉の廃炉費用も掛からないから、長い目で見たらどこよりも電気料金が安いってことになる。結局、「原発を再稼働しないと電気料金が大幅に値上がりする」なんてのは「節電要請」や「計画停電」とおんなじで、すべては「再稼働ありき」のための脅しだってことだ。だから、ネットをやらないお年寄りとかが、これ以上、電力会社や政府の嘘に騙されないように、このエントリーをプリントアウトして、配ってあげてほしいと思う今日この頃なのだ。
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