83. 2012年7月05日 20:54:37
: JWS6kA4qYk
<73. 2012年7月04日 23:14:37 : v60f0TwDTE それと、高レベル核廃棄物を地震国の日本での地層最終処分も無理だからなぁ。 使用済み核燃料は再処理されたり、中間貯蔵施設で温度が十分に下がるまで保管されます。そして最終的には、ガラスの中に固めてガラス固化体として処分されることになります。このガラス固化体は非常に強い放射線を放ち、とても危険な高レベル放射性廃棄物になります。この高レベル放射性廃棄物の処理をめぐって、さまざまな議論がなされています。 反原発運動家の人々がよく批判しているのが、高レベル放射性廃棄物に含まれる放射性同位体の中には半減期が数億年に達するものがあり、そんな半永久的に放射線を出し続けるものを、人間の都合で作り出していいのか、というものです。それでは、それが本当に大きな問題なのかどうか考えていきましょう。 まず最初に、このような半減期の長い放射性同位体は、実は自然界にありふれた存在だということを知っておくべきでしょう。 たとえばウラン235の半減期は約7億年ですが、逆にいえば、半減期が非常に長いので我々人類がすぐに取ることができる地表近くにまだたくさん「残っている」わけです。46億年前に地球が誕生した当初は、地表にマグマが噴き出し、さまざまな放射性同位体が存在したと考えられます。それが時間と共に徐々に少なくなっていったのです。 今では天然ウランの中に0.7%しか存在しないウラン235の濃度は何十億年も前はもっと高かったのです。そうするとウラン鉱の中でウラン235が偶然に適当な形に配置されると臨界が起こり、天然の原子炉が出来てしまいます。実際に、アフリカのウラン鉱などに、このような天然の原子炉の形跡が発見されています。ということは、原発から作り出される高レベル放射性廃棄物は、自然の中でも作られていたということです。 また、ウランというのは世界の海の中に45億トンも溶けていることが知られています。ウランが枯渇した後に、海中からウランを取り出す方法も盛んに研究されています。 天然の核融合炉である太陽から降り注ぐ強烈な放射線は地表に届く前に、その多くが大気により遮られますが、この地球表面のとても薄い大気層を抜けると、そこは放射線の降り注ぐ危険な世界です。宇宙飛行士は、被曝量をコントロールするためにさまざまな制限の中で活動しているのです。 また、地球内部に目を向けると、そこはまさに何十億年も熱を発し続ける使用済み核燃料そのものです。温泉などの熱源や地球上のダイナミックなプレートの動きは、地球内部の核崩壊により生み出されるエネルギーなのです。実際にマグマが固まってできたような地域は、自然放射線が他の地域より多くなります。 ソーラーパネルは太陽の核融合でできた光のエネルギーから電力を生み出しますし、地熱発電は地球内部の核崩壊のエネルギーを利用しているのです。実は人類が利用しているエネルギーのほぼ全てが元をたどれば天然の原子力なのです。 高レベル放射性廃棄物を考える時に、非常に重要なポイントは、その重量や体積などが他の産業廃棄物と比べて圧倒的に小さい、ということです。これは同じ質量のウランと石油や石炭などの化石燃料では、エネルギー密度が数百万倍違うという物理的な性質によります。 日本の巨大な電力産業で、その発電量の3分の1を担う日本の原発が排出する核燃料廃棄物の総量は年間1000トンほどです。日本で、化石燃料を燃やすことにより生み出される廃棄物は、CO2という気体だけで年間12億トンです。これは核燃料廃棄物の120万倍です。環境省によると、日本は様々な産業廃棄物を年間4億トンほど処理しなければなりません。核燃料廃棄物の40万倍です。 原発1基を1年間フル稼働(稼働率100%)させると、約30トンの使用済み核燃料が発生します。これは再処理を経て、最終的には半径20p、高さ1m程度の程度のガラス固化体30本ぐらいの量になります。原発1基というと、300万世帯分の電気を供給できます。これだけの電気を生み出して、廃棄物は小さな倉庫に収まる程度しか排出されない、というのは驚異的です。 先進国に住む人が一生の間に必要なエネルギーを全て原子力で補った場合に、ひとりが排出する核廃棄物は、なんとゴルフボールたった1個分なのです。これぐらいの廃棄物は、現代人はそれこそ数分ごとに排出しています。原子力とはそれほど廃棄物が少ない技術なのです。 実は、現在のところ世界で高レベル放射性廃棄物の最終処分場は本格的には、まだ始まっていません。高レベル放射性廃棄物は、使用済み核燃料の再処理施設や、中間貯蔵施設などに保管されています。これらの嵩は非常に小さいので、スペースの観点からいえば、保管場所に困ることは全くありません。 現在はコスト的な問題があり、使用済み核燃料から有用な物質を取り出し再利用することはあまり積極的には行われていません。しかし、たとえばビル・ゲイツなども私財を投資しているアメリカの第4世代原子炉の開発プロジェクトや、本当に化石燃料やウランが枯渇した時の切り札である高速増殖炉などで、現在の軽水炉による使用済み核燃料を再利用できるようになるかもしれません。技術革新を待っているとすれば、これら使用済み核燃料は人類にとって有用なエネルギー源になる可能性があるのです。それほど最終処分を急ぐ必要もない、というのが現状です。 フィンランドやスウェーデンなどでは、すでに最終処分場の用地を決定しており、2020年頃までにはガラス固化体の地層処分を開始する計画です。ガラス固化体を地下数百メートルの施設に埋めて完全に閉鎖します。これによって人間社会から完全に隔離します。 実は、昔は核燃料廃棄物は海洋投棄されていました。ロシアや中国などは、かなりの量を日本海に埋めたと言われています。これは感覚的には非常に大きな問題のように感じますが、海というのは非常に大きく、そこにはすでに莫大な量の放射性物質も溶けているわけです。また、ウランやプルトニウムというのは非常に重い原子なので海底深くに沈んでいきます。現在、海洋投棄はロンドン条約により全面禁止されていますが、それほど悪いアプローチではないでしょう。核燃料廃棄物は、その量が非常に少ないことから、過去に問題になった水銀や重油などの海洋汚染とは、また違う危険性なのです。ガラス固化体にして、頑丈な容器に入れ、海溝に沈めれば、やがてプレートといっしょに地球内部に巻き込まれていきます。国際的に厳しい規制のもとで、環境に十分配慮しながら、海溝にガラス固化体を沈める、というのはひとつのオプションとして残しておいていいのではないかと思います。 日本のように、自由に利用できる土地が少なく、政治的なコストも大きいのなら、ロシアや中国、モンゴルなどの、人間が住んでいない膨大な土地が余っている国と国際共同プロジェクトを組めば、ビジネスとしてWin-Winの関係を築くことも可能でしょう。 ところで、まさに廃棄物の観点から、地球環境保護運動のリーダーであるガイア理論で有名な地球物理学者のジェームズ・ラブロックは原子力を強力に推進しています。化石燃料から常に排出される廃棄物のひとつであるCO2による、将来の気候変動のリスクを非常に深刻に受け止めているからです。しかし人類は大量エネルギー消費社会を止めることは決してできません。大量のエネルギーの消費なしで、生きていくこともできない人口をすでに地球は抱えているからです。化石燃料によるエネルギーがなくなれば貧しくなる、というレベルの話ではなく、世界の人口の何割かがすぐに死滅するような問題なのです。 その中で唯一、気候変動リスクを低減させながら、エネルギーを供給できるのが原子力だと、ラブロックは考えています。しかし彼は原子力の科学的な利点を人々に理解してもらうことは非常に難しい、ということも認めています。そこでラブロックは「世界中の高レベル放射性廃棄物を自分の私有地に引き受けてもいい」と宣言することにしました。 彼は、イギリスの田舎の、小川が流れ、森が茂る広大な土地を購入して、そこで暮らしていますから、確かに「物理的には」嵩の小さい世界中の高レベル放射性廃棄物を本当に自宅に受け入れることは可能です。 反原発団体が、よくこの高レベル放射性廃棄物を理由に原子力を批判していますが、正直言って、何が問題なのかさっぱりわかりません。反原発団体は、何世代にもわたり危険な放射性物質を埋めておくのは、危険だと言いますが彼らの想定を聞いていると、何千の間に一国の文明が一時的に滅び、その後にやってきた子孫が発掘して被曝して癌になったら大変だということらしいのです。 百歩譲って、そういう可能性がゼロではないとして、数千年後に一人か二人が死ぬようなリスクを気にする前に、現に毎年100万人以上が大気汚染で死亡し、地球温暖化も引き起こしている、今そこにある化石燃料の危険性を考えた方がよほど建設的ではないでしょうか。
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