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2012.06.29
原発マフィアの原発マフィアによる原発マフィアのための株主総会
6月27日、沖縄電力を除く電力会社9社の株主総会が開催された。北海道から九州まで、どこの会場の周りでも「再稼働反対」のデモや抗議行動が行なわれ、すべての総会で良識ある株主たちから「脱原発へ向けた議案」が複数提出されたが、各電力会社が事前に用意していた多数の仕込みの参加者とカネで集めた白紙委任状によって、すべての議案が否決された。
そして、東京電力以外の8社の社長は、口をそろえて「原発推進」「原発再稼働」を公言した。以下、北から順番に、それぞれの社長の発言をダイジェストでお届けするので、あまりの厚顔無恥ぶりに開いた口からエクトプラズムが抜け出て幽体離脱しちゃわないように、口を押えながら読んでほしい。
北海道電力の川合克彦社長 「泊原発が動いていない今は非常事態。通常の状態に戻すために、泊原発1、2号機の再稼働を最優先課題として取り組み、11月までには再稼働したい」
東北電力の海輪(かいわ)誠社長 「女川原発の再稼働に向けて、地域の皆さまの理解をいただけるよう粘り強く取り組みたい」
北陸電力の久和進社長 「原子力は供給安定性、経済性に優れ、発電時に二酸化炭素を排出しないので、ベース電源として今後も引き続き重要。志賀原発の安全強化策を実施して、再稼動を実現する」
中部電力の水野明久社長 「引き続き原子力を重要な電源として活用する。浜岡原発の再稼働は中部電力にとって不可欠だ」
関西電力の八木誠社長 「大飯原発以外の原発もできるだけ早期に再稼働したい。脱原発は絶対にない」
中国電力の苅田知英社長 「当社の原発比率は全国平均より圧倒的に低いので、原発比率を上げて他社とのバランスを取りたい。島根1号機は廃炉にせず再稼働を進める。上関原発の計画も引き続き進めていく」
四国電力の千葉昭社長 「伊方原発の再稼働が大幅に遅れているため、創業期以来の赤字決算となり極めて厳しい状況が続いている。これでは経営が成り立たない。9月に規制庁が発足してからでは間に合わないので、その前に伊方原発の運転正常化を早期実現したい」
九州電力の瓜生道明社長 「原子力の重要性は(福島の事故後も)エネルギー安全保障や地球温暖化対策の面から変わらない。このまま原発を再稼働できない状態が続くと、来春には経営が厳しくなり電気料金の値上げの可能性も出てくる」
‥‥そんなワケで、今日は「いかがお過ごしですか?」は割愛してスタートしちゃうけど、各電力会社のあまりの自分勝手ぶりに、口を押えて読んでても指の隙間からエクトプラズムが抜け出て幽体離脱しちゃった人もいるだろう。北海道みたいに道知事がエネルギー庁とベッタリ癒着してるような地域はともかくとして、福島第一原発の大事故の被害で未だに自宅に帰れない人たちが何万人もいる東北電力でさえも、女川原発を再稼働させるために「地域の皆さまの理解をいただけるよう粘り強く取り組みたい」なんて抜かしてる。
北陸電力にしても、今どき「原子力は供給安定性、経済性に優れ、発電時に二酸化炭素を排出しない」なんていう3.11以前の妄言を繰り返してるし、中部電力なんて、あの「日本一危険な原発」として悪名高い浜岡原発を再稼働させると鼻息を荒くしてる。中国電力は「電力不足」でも「燃料代」でもなく「全国平均よりも原発比率が低い」ってことを理由にして、老朽化で廃炉にすべきと言われてる島根1号機を再稼働し、まったく必要のない上関原発の計画も進めると言う。
四国電力に至っては、電力は有り余ってるのに、9月に規制庁が発足してからじゃ再稼働の手続きに時間が掛かりそうだからって、是が非でもその前に強引に再稼働しようとしてる。そして、すべての電力会社を総括する電事連の会長でもある関西電力の八木社長は、これほど全国で、世界で、大飯原発の再稼働に批判が集中してるのに、そんな声などどこ吹く風で、平然と「大飯原発以外の原発もできるだけ早期に再稼働したい」などとノタマッた上に、「脱原発は絶対にない」などと世界の流れに逆行する時代錯誤なセリフまで付け足す始末。もはや厚顔無恥を通り越して支離滅裂だ。
結局、玄海原発を再稼働させるための「やらせメール」が発覚した九州電力だけが、さすがに具体的な再稼働計画は口にできなかったけど、それでも「原発を再稼働できなければ電気料金を値上げする」という表現でヤンワリと圧力をかけてる。唯一、福島原発の大事故という世界最悪の人災を起こした東京電力だけは、強気の姿勢での「原発推進」は口にしなかったけど、良識ある株主や猪瀬副都知事が提出した「脱原発」や「経営正常化」に関する議案は、すべて否決された。
ちなみに、翌28日の文化放送「大竹まことのゴールデンラジオ」で、実際に東電の株主総会に出席したというリスナーからのメールが紹介されたので、あたしが記憶してる範囲でご紹介する。
リスナーからのメール 「昨日、東電の株主総会に行ったのですが、東電が事前に用意したと思われる参加者が大半を占めていて、どんな議案も否決されてしまいました。猪瀬副知事の発言中も酷いヤジばかり。これが東電体質なのですね」
(文化放送「大竹まことのゴールデンラジオ」6月28日)
実際には、もっと長いメールで、東電が仕込んだ参加者たちの酷い妨害について具体的に報告されてたけど、フランク・ザッパな主旨としては、こんな感じだった。東電だけでなく、どこの株主総会でも「脱原発」に関する議案にはチンピラヤクザさながらの酷いヤジが飛びまくったみたいだから、すべての電力会社が、仕込みの参加者を日給いくらかで大量に雇ったんだろうね。もちろん、利用者から徴収した電気料金で。
‥‥そんなワケで、東電の株主総会では「原発の輸出事業から事実上撤退」という報告があったと報じられ、ツイッターでは「その点だけは評価できる」としたつぶやきが散見された。だけど、あたしは「そんなこたーないだろう」って思ってた。だって、東電が政府に提出した再建計画書には、柏崎刈羽原発の再稼働を筆頭に、これまで通り「原発推進」の計画がてんこ盛りだからだ。つまり、株主総会に来た「脱原発派」の株主たちのガス抜きをするために、心にもないことを口にしただけだってことだ。
で、翌28日のこと、27日の株主総会を最後に退任した勝俣恒久会長と西沢俊夫社長のアトガマ、新会長の下河辺(しもこうべ)和彦と新社長の広瀬直己が就任の挨拶をした。社長に就任した広瀬直己は東電の常務だった人だからエスカレーター式に繰り上がっただけだけど、会長に就任した下河辺和彦は「原子力損害賠償支援機構」の運営委員長だったバリバリの推進派だ。だから、就任の挨拶で、こんなことをノタマッた。
東京電力の下河辺和彦会長 「柏崎刈羽原発の再稼働は総合特別事業計画に盛り込んだ新生東電の根幹のひとつ。再稼働できなければ極めて悪い方向でのインパクトがある。電気の安定供給の面からいっても、原発に頼らない東電など考えられない」
そして、前日の株主総会で報告された「原発の輸出事業から事実上撤退」については、社長に就任した広瀬直己が見解を述べた。
東京電力の広瀬直己社長 「原発の輸出事業については、福島第一原発事故の対応で人員などの制約があるが、可能な範囲で引き続き国と協力して進めていく」
‥‥そんなワケで、この新会長と新社長の挨拶を見れば分かるように、東電は原発計画を見直す気なんて毛頭ないどころか、反省の「ハ」の字もないってワケだ。そして、今回の大事故を引き起こした元凶の勝俣恒久は、とうとう一度も福島県に謝罪に行かないまま、東電の会長の座から解放されたのだ。以下、29日付の「福島民報」の記事を引用させていただく。
「勝俣前会長は謝罪せず 事故後、一度も本県来訪なし」
原発事故当時から会長を務め、27日の東京電力の株主総会で退任した勝俣恒久氏は一緒に謝罪に訪れなかった。記者団から「忙しいから訪問できないというのは理由にならないのではないか」との質問があった。これに対して広瀬社長は「新体制のわれわれが今まで以上に足を運ぶ。新生東電として福島を最優先課題として取り組む」と答えた。勝俣氏は会長時代から一度も本県に謝罪に訪れていない。
「福島民報 6月29日付 WEB版より引用」
http://www.minpo.jp/news/detail/201206292211
ちなみに、26日付の「河北新報」には、もっと厳しい論調で書かれてる。
「東電・勝俣会長、あすの株主総会で退任 事故後福島入りゼロ」
東京電力の勝俣恒久会長(72)が福島第1原発事故後、一度も福島県に入らないまま27日の株主総会で退任する。社長時代は原発再稼働の地元同意を取り付けるため、何度も福島県庁や原発立地地域を訪れた。「地域との共生」を強調しながら、事故後は一転して現地入りしない態度は、避難生活や風評被害で苦労する福島県民にどう映るのだろうか。勝俣氏が事故後、記者会見に応じたのは昨年の3、4月の2回だけだ。東電は、勝俣氏が表に出ない理由を「多忙」と説明してきた。
「河北新報 6月26日付 WEB版より引用」
http://www.kahoku.co.jp/news/2012/06/20120626t61003.htm
ここで再読してほしいのが、過去にも何度か紹介したけど、2007年7月に日本共産党の福島県議会議員団や「原発の安全性を求める福島県連絡会」などが連名で送った東電への申し入れ書、「福島原発10基の耐震安全性の総点検等を求める申し入れ」http://www.jcp-fukushima-pref.jp/seisaku/2007/20070724_02.htmlだ。
これを読めば分かるように、日本共産党は今回の事故の4年前に、福島第一原発と第二原発が「大地震による津波によって原子炉が冷却できなくなり大事故が起こる可能性」があると指摘し、早急に対策を講じるようにと東電に申し入れをしてたのだ。そして、この申し入れ書の宛て先には、次のように明記してある。
「東京電力株式会社 取締役社長 勝俣恒久様」
しかし、当時の社長だった勝俣恒久は、「福島原発の安全対策は万全だ」として、この申し入れを突っぱねたのだ。今さら「たら・れば」の話をしても遅いけど、責任の所在を明確にするためにあえて言わせてもらうと、この時、勝俣恒久がキチンと対応して安全対策を講じていれば、今回の事故は回避することができたかも知れないし、事故が起こったとしても被害を最小限に食い止められたかもしれない。
そして、ここからがさらに呆れ返る話なんだけど、この申し入れを突っぱねた翌年の2008年2月、勝俣恒久は、柏崎刈羽原発のトラブルの責任を取って社長を引責辞任する。で、引責辞任してどうしたのかって言うと、皆さんご存知の通り、東電の会長に就任したのだ。こんな「引責辞任」なんて聞いたことがないよ、まったく!
ここまでの流れを整理すると、勝俣恒久が社長時代に日本共産党の申し入れを突っぱねたことが今回の大事故の原因の1つになっている可能性が濃厚ミルクなのに、会長時代の2011年3月11日に起こった歴史的人災に対して、とうとう会長を退任する2012年6月27日まで、ただの一度も福島県へ謝罪をしに行かなかった!‥‥ってことなのだ。
たとえば、自分は何も関与してなくて、顔も名前も知らない末端の社員が起こした事故だったとしても、企業のトップとして謝罪に行くのが普通の感覚だろう。それが、今回の事故は、自分自身が原因の1つを作ってる可能性があるんだから、何を置いても真っ先に福島へ謝罪に行くのが人として最低限のモラルじゃないのか?事故直後には「自分が福島へ出向くとマスコミが殺到して現場がパニックになるから」などと苦しいイイワケをして、当時の清水社長だけを謝罪に行かせてたけど、あれから1年3ヶ月、結局はずっと謝罪から逃げ回ってたってことじゃん!
‥‥そんなワケで、この「勝俣ヒストリー」を見れば分かるように、今回の退任劇のカラクリも、答えは簡単だ。ようするに、勝俣恒久を会長の座に据えたままでは、さすがに原発の再稼働や他国へのセールスは難しい。今もなお大被害を受けている福島の人たちの目があるからだ。そこで、勝俣恒久を退任させ、新たな原発推進派の下河辺和彦をアトガマに据えたってワケだ。ちなみに、勝俣恒久は、去年の事故後の2011年6月に「日本原子力発電」の取締役に就任してるので、東電の会長を辞めても原発マフィアの中枢に居座り続けてることになる‥‥ってなワケで、これほどツラの皮の分厚い人たちなら、毎時1万ミリシーベルトの場所でも防護服なしで半日くらい作業できそうだから、とりあえず福島第一原発に行って収束作業に従事してもらうのが一番いいと思った今日この頃なのだ。
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