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福島第一原発、竜巻が来ても大丈夫か−専門家の間で懸念
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M60B9A6JTSE801.html
2012/06/22 17:44 JST ブルームバーグ
6月22日(ブルームバーグ): 「東京電力・福島第一原子力発電所を秒速100メートルを超える竜巻が来たらどうなるのか」。専門家の間で使用済み核燃料プールがむき出し状態になっている上に、施設内タンクに貯蔵している汚染水が満杯の原発の危機管理対策を問う声が高まっている。
今週、台風4号が日本列島を縦断したが、1カ月前には、福島第一原発から約170キロメートル南西の茨城県つくばで竜巻が発生、長さ17キロメートル、幅500メートルにわたって被害をもたらした。男子中学生1人が死亡したほか、約50人の負傷者、住宅約300戸に被害が出た。専門家の中には、竜巻が発生した場合、水素爆発で建屋の屋根部分が吹き飛ばされた使用済み核燃料プールへの影響を懸念する声が出ている。
九州大学の工藤和彦特任教授(原子力工学)は「3号機と4号機の使用済み燃料プールは今、むき出しの状態」のため、つくばを襲ったような竜巻が直撃すれば、使用済み燃料プールの水が巻き上げられる可能性があるとの懸念を示した。工藤氏は原子力安全・保安院の意見聴取会でこの懸念を東電側に伝えたという。
工藤氏は、原子炉を解体し廃炉にするまでは何十年もの長期にわたるため、例え短期的には可能性が極端に低いとしても、東電は余震や津波だけではなく竜巻や大型台風に対する対策をとる必要があると主張した。工藤氏は東電の信頼性向上対策に係る実施計画に関する意見聴取会の12人の委員のうちの1人。
■竜巻リスク
東電の松本純一原子力・立地本部長代理は5月7日、記者団に対し「今後福島地区、浜通りでどういった竜巻が起こりうるのか、ということも含めて調べていく必要はあろうかと思っているが、現在、何か活動し始めることはない」と述べた。
気象庁によると、間部の多い日本の場合、竜巻は海岸線沿いで発生する傾向がある。竜巻が最も発生するのは9、10月。
日本気象協会の下山紀夫気象予報士はインタビューで、「つくばの竜巻が珍しいのではなくて、最近はこういった竜巻、ダウンバースト(下降噴流)、突風被害が増えている」と語り、原因として温暖化などに伴い大気が不安定になっていることを挙げた。
2010年の竜巻発生件数は37件で、気象庁が突風や竜巻に関する調査を強化した07年以降では最高だった。米気候データセンターによると、国土が日本の約25倍の米国では、1991年から2010年までの間に年間平均1253件の竜巻が起きている。
■放射能汚染水
九州大学の工藤教授によると、福島第一原発で懸念されるもう一つのリスクは施設内で貯蔵されている放射能汚染水の存在。炉心溶融を起こした原子炉を冷却化するために大量の水が注入されているが、大部分が原子炉建屋の地下に漏れている。東電によると、約10万トンの高濃度のたまり水が福島第一原発に存在する。
この高濃度汚染水を除染する中で出てきた「濃縮塩水」には 高濃度のストロンチウムが含まれており、原発敷地のタンクに貯蔵するほかない。これが14万トン以上存在する。
東電が5月12日に保安院に提出した報告書によると、9月末までに「多核種除去設備」の設置を行い濃縮塩水に含まれているストロンチウムなどの放射性物質を除去することで、15年9月までに全ての濃縮水を処理するとしている。
福島第一原発を現地視察したことがある工藤氏によると、原発敷地内は「タンクが林立」している。「竜巻で倒壊とか、本体壊れないまでも、つないでるホース類とか一番弱いところが壊れて、大量に漏れ出してそれが広がっていく」恐れがあると述べた。
東電広報の小畑新司氏は電話で、東電はタンクの周囲にせきを設置するなど必要な対策を検討中だと述べた。小畑氏によると、5月30日時点で、福島第一原発敷地内には858基のタンクがある。
東電の試算によると、昨年3月26日から9月30日の間に1万1000テラベレルのヨウ素131、7100テラベクレルのセシウム134・137が海に放出された。
■設計リスク
東京工芸大学の田村幸雄教授(耐風工学)の調査によると、つくばを襲った竜巻の風速は局所的に100メートルを超えた可能性があった。
田村氏は「昔から竜巻というのは日本の建物の設計に考えられてない。1つの建物に着目したとに建物に遭遇する確率は4万年に1回程度。それに対して設計をするのは不経済」のためだと述べた。日本で発生する竜巻の多くは沿岸部で、そこには原発や液化天然ガス(LNG)ターミナルがあり、竜巻などによる強風に対する安全基準を強化すべきだと強調する。
田村氏は「原子力発電所が健全な状態でもパイプや送電ケーブルにぶつかったりというのは十分考えられる。そういったことによって配電や配管関係がやられると、今回の福島の事故の例を見ると大きな事故につながる可能性」もあると指摘した。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 Tsuyoshi Inajima tinajima@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:大久保義人 yokubo1@bloomberg.net;Peter Langan plangan@bloomberg.net
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