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原発再稼働決定に福島から警鐘を鳴らす人々
日本は地雷原の上でカーニバルをしているのか
藍原 寛子
2012/06/20
先週末、関西電力大飯原発(福井県おおい町)の再稼働が決まった。
大飯原発再稼働「反対」54%、「賛成」29%(朝日新聞5月19、20日実施)
「賛成」43%、「反対」47%と拮抗(読売新聞6月11日)
「賛成」49.2%、「反対」43.4%(産経・FNN6月11日)
新聞各紙は「賛成」「反対」の拮抗か、あるいは「再稼働反対」が上回った結果となっている。世論調査を見る限り、強い支持があったうえでの再稼働ではない。
我が国は「原子力帝国」になっている
まして福島第一原発事故により、いまだ15万人以上が避難生活を送る福島県民は複雑な心境だ。
在職当時から、国や原子力安全保安院の対応、原発の安全政策に対して問題提起を続けている前福島県知事の佐藤栄佐久氏に6月15日、再稼働の問題点を聞いた。
佐藤氏は今年3月、EU議会の会議でも発言したように「我が国は『原子力帝国』になっている。エネルギー政策は民主主義の熟度を測るものだが、民主主義からかけ離れてしまった」と改めて国、原子力安全保安院の問題を指摘する。
「原発のチェック機関は文部省の科学技術省にあったが、2001年1月1日の省庁再編で原子力安全保安院を作り、経済産業省に入れてしまった。これが『原子力帝国』と指摘する理由の一つだ。(当時知事だった)私は、この省庁再編から5日後の1月6日、200人以上の課長以上の県職員を前に訓示した。省庁の『省』は『三省』(何度も反省すること)、そして『省くこと』(節約)だと。そして県庁の『庁』は旧字体で『廰』、つまり『家で聴く』と書く。つまり、県民の声を十分に聞くように、と。ところが国はそうなっていない」
さらに今回の福島第一原発事故は「人災である」とも語る。
「原子力安全委員長が事故から10日ほど後にテレビで会見したが、『今回の事故を起こさないための対応をしたら、天文学的な数字(の予算)がかかる』という、まるで『事故が起きても仕方がない』というような発言をしていた。ところが多くの人が警鐘を鳴らしていた。1つは2006年、原子力安全委員会・耐震指針検討分科委員で地震学者の石橋克彦氏が、『同分科会が耐震指針を変えない』との結論を出したことに対し、問題を指摘、辞任した。このことに関しては先月、原子力安全保安院が原子力安全委員会に対して『古い耐震指針であっても安全性に問題はないと表明するように』求めていたことが分かった。また、脱原発団体などの皆さんが質問しているが、2010年6月17日、福島第一原発2号機がメルトダウン寸前までいき、まるで今回の原発事故の予行演習をやったかのような状況が起きたこと。こういった点からも、人災であると言える」と、その理由を述べた。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20120619/233482/?mlp&rt=nocnt
原子力委員会は今年3月24日、福島第一原発事故廃炉に関する「福島県民の声を聴く会」を郡山市で開催した。佐藤氏は同会に出席し、フロアから発言した。
「ブルドーザーのように進めるな」
同会が開かれることは、地元の被災者にほとんど知らされず、300人の会場にわずか2、30人しか来ていなかった。「当日、友人が『郡山で会議が開かれているが、知っているか』と自宅に来たが、私も開催を知らなかった。大きなホテルが会場になっているので、200人か、300人ぐらい来ているのだろうと思って会議室に入ると、広いフロアの傍聴席には20人いるかどうか。県民に開催を広報しないまま開かれていたのではないかとさえ思った。このように、郡山での開催でさえも、こそこそと進めることに対して、非常に憤りを感じる」
「私は2004年12月22日の原子力委員会で次のように述べた。『私にとって一番大切なのは、発電所の周りで生活している住民、万が一放射能漏れでもあったら、会津も含め全部農作物も売れなくなる』『原子力政策は民主主義の熟度を測る素材で、欧州の多くの国では国会の議決や国民投票で決められている。しかし我が国では原子力長期計画は原子力委員会で決定したあと、閣議報告のみで決められている』と。現原子力委員長の近藤駿介氏は2004年も同職で、3月24日の聴く会にも出席していた」
「もんじゅの事故の際、私は、『国はブルドーザーのようにそこのけ、そこのけと進めないでほしい』と言った。2004年には『戦車のように進めるな』とも言ってきた。国民の意見を聞かずに『(日本のために原発は)必要だから、安全だ』という話は信じられない」と、世論を無視した再稼働への怒りで語気を強めた。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20120619/233482/?P=2
安全確保のために言い過ぎることはない
「私は反原発、脱原発ではないが、原子力の安全確保を徹底するためには、言い過ぎることはないと言う立場で行政マンを勤めてきた。厳しく言う人がいて、初めて抑止効果が生まれる。国家がエネルギー政策として原子力を推進している以上、東電は国家の擁護下にある。原子力に関しては、いくら言っても言い過ぎることはないという考えだ」
原発立地町の富岡町の生活環境課(原子力担当の課)課長を務め、東電の一連の不祥事をきっかけに設立された「福島県原子力発電所所在町情報会議」で長年、事務局長を務めた白土正一さん(現在は退職)も、原発再稼働後の状況を懸念する一人。震災直後、郡山市内の巨大避難所「ビッグパレットふくしま」で4カ月避難生活を送り、その後はいわき市内の民間借り上げアパートで生活している。最近の一時帰宅でも、自宅室内が5〜6マイクロシーベルトの線量で、「今は、帰ることは考えられない」という。
白土さんは「再稼働の前にすべきことがある」として、以下の3点を挙げた。
(1)定期検査で十分かどうかの検証。全電源喪失になったら原発は深刻な事態になることが今回初めて分かった。非常用ディーゼルの早急な高台移設も必要
(2)配管の破断状況の情報公開と検証。原発の生命線が経たれるような問題を抱えているのではないかという疑問もある。高経年変化の影響の検証も必要
(3)厳しい検証が行われていない断層問題の分析
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20120619/233482/?P=3
さらに「今回の再稼働で、はたして安全が最優先なのか、供給が最優先なのか、はっきりしない。電力が足りなくなると言って再稼働するが、大いに疑問がある。原子力がシビアアクシデントを迎えたら、国家そのものがどうなるのか。滅亡するような事態に陥る可能性もある。現時点ではまず、最大限の安全確保をすべきではないのか。全国の原発を廃炉にしろとは言わないが、代替エネルギーや再生可能エネルギーをどうやって増やすか、エネルギーに関して国民的な議論を深め、将来のビジョンを検討すべきだ」と安全確保が確認できないままの再稼働への疑問を訴えた。
ビビリ振動に危機的状況を直感
「震災のその時、とっさに、『これは“ビビリ振動”だ。原発がヤバい』と思った。それが原発震災の始まり。あとで、原子炉建屋内にいた労働者から『激しい揺れと共にコンクリート壁がひび割れ、建屋内が真っ白になった』と聞いた。日本では同じような地震が今日、あるいは1時間後、30秒後に起きるかもしれない。原発の真下に活断層がある可能性も否定できない。それなのに『大丈夫だ』と言う希望的観測だけで動くのは、おかしい。亡国政策だ。経済が優先で、人命が二の次に置かれている」
0.1秒から0.5秒の短周期の強い揺れは、固い原子炉建屋と共振してしまう“ビビリ振動”といって注意が必要だと言われてきた。その瞬間に危機的状況を直感した人がいる。40年以上も地元富岡町で原発反対運動をしてきた石丸小四郎さん(双葉地方原発反対同盟代表)だ。息子夫婦は関西に避難してしまい、現在はいわき市内で1人避難生活を送る。石丸さんも再稼働を批判する。
「とにかく何が頭にくるかといえば、熱狂的に原発を推進してきた人にも、反対してきた私たちにも、分け隔てなく放射能が降り注いだということだ。推進してきた人たちと一緒に私たちも逃げなくてはならなくなった」
「とにかく再稼働しようと言う人は、決定的に想像力が欠如している。想像力を働かせれば、他の原発でも福島と同じような事故や被害が起きる可能性がある。この狭い日本で、『自分には放射能は降り注がない』と思っているのだろうか。自分は常に安全地帯にいてこの状況を眺めていて、再稼働しようという感覚は異常だ」
「しかも福島県民の声を無視している。震災後、764人もの人が震災関連死しており、このうち避難区域11市町村の住民が650人、全体の8割を占める。人口減少、避難生活、自殺、病気、介護、出産、障がい者施設の苦難や子どもの屋外活動制限、そして放射能による環境汚染。放射能によって苦しんでいる人々の思いに少しでも目を向けたら、再稼働はあり得ない。それに福島第一原発4号機の燃料プールの問題。いつ崩壊するかもしれない危険をはらんでいる」と問題を指摘した。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20120619/233482/?P=4
しかし一方で、地元として原発を容認してきた反省もあると語る。
「(原発立地地域の)双葉郡の人たちは、貧しい所で暮らしていたが、原発マネーで生活が一変した。物価は上昇し、ごみ袋一つとっても他の地域より高かった。『原発がなくなったら、元の生活に戻る』とインプットされたが、全国の立地自治体はわずか23市町村。それ以外の自治体が果たして現在も40年前の生活をしているのかというとそうではない。こうした事故が起きたのも、東電のやることに何の疑問も持たずにいたことによるもので、ある意味自業自得かもしれない。反原発を大きなパワーに変えられなかった我々の反省も、もちろんある」と肩を落とした。
ある外国人記者が石丸さんに言ったという。「日本は地雷原の上でカーニバルをしているようだ」。石丸さんはこの言葉を衝撃を持って受け止めた。「まさにその通りだと思った。命が二の次になっている。命を最優先に考えられない、そういう考え方の延長線上に、日本の衰退の原因があるのではないか」
「福島の声」を教訓に
政府や国会の事故調査委員会が事故原因の調査を終えていない段階で進められる再稼働に、疑問や不安を抱く福島県民の声があるのは当然といえよう。政策に対して厳しい意見を持つ人々も国民の1人。現状の原子力政策への「警鐘を鳴らす人々」だ。
嫌な話、厳しいことほど、耳をふさぎたくなるものだが、彼らは今も放射能で汚染されたその土地に踏ん張って、懸命に警鐘を鳴らし続けている。そのことだけは、ぜひ忘れないでほしい。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20120619/233482/?P=5
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