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いまさら大々的に報じても完全に手遅れ 朝日新聞一面トップ記事「米情報 避難に生かさず」
http://diamond.jp/articles/-/20328
2012年6月19日 週刊 上杉隆 ダイヤモンド・オンライン
「相変わらずの恥知らずだな」
生放送直前、北海道U型テレビ(UHB)の出演者控室で、朝日新聞の一面トップ記事を教えられて、思わずそうつぶやいた。
番組終了後、朝日新聞を読んだ。実際、それはまったくひどいものだった。
記事の内容のことを言っているのではない。記事は正しい。問題は、一面トップのそのニュースは一年前に既知のもので、いまさら大々的に報じても完全に手遅れなのである。
〈米の放射線実測図、政府が放置 原発事故避難に生かさず
東京電力福島第一原子力発電所の事故直後の昨年3月17〜19日、米エネルギー省が米軍機で空から放射線測定(モニタリング)を行って詳細な「汚染地図」を提供したのに、日本政府はこのデータを公表せず、住民の避難に活用していなかったことがわかった。放射性物質が大量に放出される中、北西方向に帯状に広がる高濃度地域が一目でわかるデータが死蔵され、大勢の住民が汚染地域を避難先や避難経路に選んだ。
政府の初動対応では、汚染の広がりを予測する緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)の試算結果の公表遅れが問題となった。同システムの予測値と決定的に違うのは、米エネルギー省のデータが放射能の拡散方向を示す実測値だったことだ。
米エネルギー省は原発事故直後の昨年3月17〜19日、米軍機2機に、地上の放射線量の分布を電子地図に表示する空中測定システム(AMS)と呼ばれる機材を搭載して、福島第一原発から半径約45キロの地域の線量を計測した。
その結果、福島県の浪江町や飯舘村などを含む福島第一の北西方向に、30キロ超にわたり1時間当たり125マイクロシーベルトを超える高い線量の地域が帯状に広がっていることが判明。この線量は8時間で一般市民の年間被曝(ひばく)線量の限度を超える数値だった。
外務省によると、測定結果を基に作製された汚染地図は3月18日と20日の計2回、在日米大使館経由で同省に電子メールで提供され、同省が直後にメールを経済産業省原子力安全・保安院と、線量測定の実務を担っていた文部科学省にそれぞれ転送した。文科省科学技術・学術政策局の渡辺格次長ら複数の関係機関幹部によれば、同省と保安院は、データを公表せず、首相官邸や原子力安全委員会にも伝えなかったという(以下略)〉(朝日新聞6月18日朝刊)。
記事の内容を読めば、もはや官僚による犯罪行為だ。それはそれで大問題で一面トップにふさわしいのだが問題は別のところにある。
それは、こんなことは一年前に知っていたことなのだ。しかも、朝日新聞の記者も知っていたはずだ。なにしろ東電会見で当の朝日新聞記者が質問をしている。
一年以上前、私の予告した通りのことが進行している。日本の記者クラブメディアは決定的な誤報があった場合、まずは時間稼ぎをし、ほとぼりの冷めたころに巧妙に修正し、そして最後は「わかった」報道によって責任を逃れるはずだという指摘通りのことをまたしてもやったのだ。
■今朝になって各紙が朝日の後追い
案の定、今朝になって各紙が朝日新聞の後追い記事を掲載した。
〈東日本大震災:福島第1原発事故 米放射線情報、活用せず 提供受けた保安院・文科省
東京電力福島第1原発事故直後の昨年3月、米エネルギー省が放射線の航空機モニタリング結果を日本政府に提供したにもかかわらず、経済産業省原子力安全・保安院と文部科学省が政府内で共有せず、住民避難に活用していなかったことが18日、分かった。「縦割り行政」が原因で、緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)と同様、改めて政府の初動体制の稚拙さを浮き彫りにした。
米エネルギー省は昨年3月17〜19日、米軍機2機を使って原発から半径50キロ圏を測定。その結果は米側から外務省経由で保安院に同18日、20日、文科省に20日にそれぞれメールで送られた。
20日の資料には、福島県浪江町など原発の北西方向で毎時125マイクロシーベルト超の高線量地域が地図に明記されている。当時の日本政府は、車による測定が中心で、こうした空間的な広がりは十分解明されず、航空機モニタリングを始めたのは25日からだった。
保安院は、政府の原子力災害対策本部の放射線班に資料をメールで転送したが、災害対策本部全体でも共有されず、住民避難を指揮していた首相官邸に届けなかったという〉(毎日新聞6月19日 東京朝刊)
本当にうんざりする。記者クラブメディアはいつになったらこうした欺瞞を止めるのだろうか。これはいまにはじまったことではない。もう何十年も続いていることだ。
たとえば、私が外務大臣就任前の田中真紀子衆議院議員の数々の「疑惑」や「正体」を「文藝春秋」や「週刊文春」で書き始めたのはもう10年以上も前のことだ。
当初、私はでたらめな記事を書く人物というレッテルを貼られ、出演するテレビやラジオには抗議が殺到するありさまだった。
だが、結果はどうか。いまや誰もが疑う余地のないほど、田中さんの政治能力には疑問符がついている。
一方で当時、私の取材記事を信じてくれたのは「週刊文春」と「文藝春秋」はもちろん、あとは「産経新聞」と「日刊ゲンダイ」、そして「東京スポーツ」だけだった。
あとのメディアは「あり得ないことだ」と完全否定するか、吹き荒れた「真紀子ブーム」の前に沈黙するだけだった。
私の知っている限り、そのころから記者クラブメディアのやり口は一向に変わっていない。そう、アンフェア、いや卑怯な手法で自らの正当性を求めるのに必死なのだ。だがもちろんそれは欺瞞に満ちた正当制だ。
私は朝日新聞を読んですぐ、おしどりのマコさんとケンさんの顔が浮かんだ。
彼女たちが、今回の朝日のスクープ記事だという情報をDOE(米国エネルギー省)のサイトから発見したのはもう半年以上も前のことである。
当時、彼女たちはすぐにそのデータを政府対策統合本部の記者会見でぶつけた。驚いたことに彼らは知らなかった。その二回目のやり取りをおしどりさんの当時の連載コラムから振り返ってみよう。
■半年前に記者会見で質疑されていたデータの存在
〈11月14日の統合対策室合同会見にて。
――前回、DOEのデータを文科省として手に入れられたかどうか、というのをお聞きしましたが、10月21日にNNSAのほうで恐らくDOEの生データをホームページ上で公開しておられます。それは入手されてご覧になっておられますでしょうか。
それは本当に生データですのでものすごく見づらいものになってますが、それは何か分かり易く解析などはされてるのでしょうか。宜しくお願い致します。
文科省・伊藤審議官「おしどりさんからご指摘のDOE のホームページ確認させていただきました。あの、今回の公開されてるデータというのは一つは空間線量のデータ、もう一つはダストのデータ、それからあの、土壌のデータ、もう一つは画像データでして、いわゆる航空機モニタリングによってサーベイしたところを――まあ以前からホームページにも載ってたかと思いますけれども、ま、そういうようなデータがありました。で、それは全て文科省として入手していたものではありませんので、改めて今、原子力研究(開発)機構のほうでどういう活用ができるのか、内容についても精査していただいてるところであります」
――わかりました。それはDOEではなく NNSAのホームページ上で10月21日にリリースされていたものでしょうか。
文科省・伊藤審議官「ええ、DOEの中のその NNSAのページからダウンロードできるものであります」
――ちなみに、そのデータは何日ぐらいに入手されたのでしょうか。
文科省・伊藤審議官「あの、前回の指摘を受けてから確認をしたので、ここ数日ということです」
――わかりました。
では、現在福島県民の方が行動記録を書いて、その問診票(のデータ)で、外部被曝の線量評価をするソフトが放医研(放射線医学総合研究所)のほうで立ち上げられておりますが、それは、3月15日以降のデータは、文科省の2kmメッシュのデータを使用することになっております。事故直後のデータは文科省はあまり詳細なデータがない、と仰ってましたので、このNNSAのデータは参考にされる、ということなんでしょうか。
文科省・伊藤審議官「放医研の方で作成して、外部被曝線量の推定プログラムについては、文科省の方でデータを取り始めて以降は実測値を基にして線量を推定すると。そして、事故直後から3月の――ちょっと忘れましたけど、数日間についてはSPEEDI を回して外部線量を評価するというシステムになってます。
今回DOE――NNSAの方で公開されてるデータについて、基本的にはさっき申し上げたような線量とか、土壌のデータ、ダストのサンプリングデータが含まれてるようですけれども、その内部被曝に使えるようなデータがあるのかどうかも含めて今確認しているところです。ただ、恐らくはですね、我が方でSPEEDIの推定に使ったような期間のデータでですね、十分な数があるのかどうか、そこは一度確認してみないと分からないと思います」
――その線量評価のソフトは、3月11日から13日迄が SPEEDIの試算結果、そして14日以降が文科省のモニタリングのデータを使用となっております。以前、まだ伊藤審議官がおられない頃に「安定ヨウ素剤の配布について文科省が、どれくらい初期のデータをどの段階で持っていたか」を繰り返し私は質疑していたのですが、ヨウ素のダストサンプリングは3月23日からの測定とのことでした。ですので明らかに文科省は、初期の事故直後のデータは数がなかった、と仰っておられましたので、このNNSAのデータは住民の方々の被曝線量を評価するのにものすごく有用だと思われるのですが、如何でしょうか。
文科省・伊藤審議官「あの、いつからのデータが入ってるのかも含めて――何種類かのデータが入っておりますので、どのようなものであるのか、使えるのかどうかを今、専門家の方々に検討していただいてるところです。
で、実は前回の質問でですね、NHKの石川さんからも『例えば航空機モニタリングのスペクトルを分析すれば、当時のヨウ素の沈着とかが分かるのではないか』というようなお話もいただきました。それも含めてですね、専門家の方で検討をお願いしておりますけれども、今回公開された中には残念ながら、スペクトル、エネルギーまでは、入っておらなかったようで、そういったことについて必要であればアメリカ側にもデータの提供のお願いをしていきたいと思っております。
それからあの、放射線医学総合研究所で SDEEDIで実測データを用いたのは14日ではなくてもう少し後だったかと思います。文科省がデータを取り始めたのは15日からで、16日から公表してたと思いますので」
――ありがとうございます。放医研の住民の方々の線量を評価するソフトは10月から運用段階になってまして、その線量を評価する線量評価委員会は7月22日に第1回が開催されたのみで、線量評価についての検討は以後行なわれておりません。で、これからも第2回の線量評価委員会が検討される予定はないとのことです。もしその(もとになる)データが替わる場合、その問診票からの線量被曝を返すということは10月から始まっておりますので、文科省として何らかのアナウンスを、放医研もしくは線量評価委員会にされるご予定はあるんでしょうか。
文科省・伊藤審議官「あの、放医研の方で開発したのは外部被曝線量の評価のプログラムで、それは実際県の健康管理調査の方で使われておりますので今後どうされていくかにもよりますけれども。仮に、そのDOEのデータの方がですね――ご質問の趣旨は『内部被曝(の評価)に使えないか』というふうに受け取ったんですけれども」
――あの、内部被曝と同時に外部被曝も過小評価されないように、できるだけ精度の高い詳細なデータがあるべきだと思うのですが。外部被曝も同様に評価してほしいということです。
文科省・伊藤審議官「そこについては、繰り返しになりますけれども新しく使えるデータがあるかどうかも含めて専門家の方で見ていただいてるところです」〉(「脱ってみる」http://www.magazine9.jp/oshidori/111207/index.php)
私もこれに続いた。DOEのデータを元に別途、政府関係者に当たったのだ。結果は同じだった。文部科学省を除いて彼らは本当に知らないようだった。だが、問題は別のところにある。
いつものことだが朝日新聞を含む記者クラブの記者たちがこのやり取りを聞いていながら、少しも報じようとしなかったのだ。
彼らが報じるのを待っていたら、半年から一年はかかるだろう。その間、福島の住民には事実が知らされないことになる。
そこで、私はいつものようにテレビやラジオ、あるいは講演などで、その情報を広める役割を買って出て、大いに広報することにしたのだ。
「DOEのサイトを見てください。事故直後、米軍は飛行機を飛ばし72時間以上の航空サンプリングを行い、1000箇所近くのモニタリングポストの数値で詳細な分析を行っています。それは人道的見地から公開されています。仮に、国賠になった場合は重要な情報となるはずです。政府や東電、マスコミには騙されないようにしてください。日本政府よりも米軍情報の方が相対的に信頼できます」
朝日新聞の記事の出た月曜日、きっと憤慨していることだろう、慰めてあげようと思い、札幌からおしどりの二人に電話を掛けた。
「えー、今頃ですか? 昨年、朝日の○○さんも、○○さんも、○○さんも会見にいましたよ」
あの3月11日以来、私が記者クラブメディアも「加害者」であり、それまで存在していてもいいと認めていたこのシステムを、つぶさなくてはと方針を転換させた理由もお分かりだろう。
この腐敗したシステムがある限り、日本の言論空間の未来はない。
火曜日、本件とは別だが、脳科学者の茂木健一郎さんもツイッターでこうつぶやいている。
〈にめ(4)記者クラブや、「政局部」の弊害については言い尽くされた感がある。しかし、そこには生身の記者がいるはずだ。ところが、政治記事の「定型性」の中に閉じ込められて、記者たちの生の感性が伝わってこない。まるで人工知能、あるいはゾンビのような記事になってしまっているのだ〉(@茂木ツイッター)。
日本の記者たちはいつまでシステムの奴隷でいるつもりなのか。
私が拙著「ジャーナリスト崩壊」で「記者クラブの開放はクラブ記者の解放につながる」と論じてからすでに五年になろうとしている。
朝日新聞はじめ日本の大手メディア記者たちが、自らのその鎖を断ち切ることはもうありえないだろう。
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