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高レベル放射性廃棄物:地層処分、安全性に懸念 放射能、1000年後地上に
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2012-06-17 13:17:46 原発問題
高レベル放射性廃棄物:地層処分、安全性に懸念 放射能、1000年後地上に
◇地震、隆起で甚大な被害も
日本原燃(青森県六ケ所村)の使用済み核燃料再処理工場が実質稼働したことから、来年にもウランやプルトニウムとともに、高レベル放射性廃棄物である「ガラス固化体」が大量に生み出される。強い放射能と熱を出す核分裂生成物(死の灰)をステンレス容器に詰めたもので、地中深く埋める地層処分が計画されている。しかし、1000年後とはいえ将来的には放射能が地上にしみ出す可能性があり、環境への影響を懸念する声も出ている。【中村牧生】
■地下に10万年
ガラス固化体に人が近づけば数秒で致死量の放射線を浴びる。このため10万年以上は人から遠ざける必要がある。
地層処分はガラス固化体を深さ300メートル以上の地下に埋め、10万年以上にわたって岩盤が放射能を閉じ込めてくれることを期待する方法だ。
六ケ所村の再処理工場が本格操業すると、ガラス固化体は年間で約1000本、40年間で約4万本が作られる予定。これとは別に日本が再処理を委託した英仏からの返還分2200本もある。
核燃料サイクル開発機構(現・日本原子力研究開発機構)が「地層処分は技術的信頼性がある」と報告したのを受け、国は00年に法律を整備して実施を決定。国の認可で設立された「原子力発電環境整備機構」が実施を目指し、全国から処分候補地を公募している。
再処理工場からアメリシウムなど超ウラン元素(TRU)を含む放射性廃棄物もドラム缶で年間8800本出るが、これもガラス固化体と一緒に「併置処分」する検討が進んでいる。
■水溶性物質も
ガラス固化体は30-50年は地上で貯蔵し、放射能と崩壊熱の減少を待ってから地中に埋める。地中では周囲を金属製の壁(オーバーパック、厚さ約19センチ)と粘土(同約70センチ)で二重に囲む。この「人工バリア」に加え、安定した地質という「天然バリア」で、放射能を長い間、人の生活環境から隔離する。
オーバーパックの耐用年数は1000年程度で、それ以降は地下水が浸透して放射能の一部が地上に到達することが予想される。それでも原研機構・地層処分研究開発部門の梅木博之・研究主席は「地上にしみ出す放射能のピークは80万年後と予測され、レベルも自然界の放射線の100分の1以下。TRU廃棄物も数百メートル離しておけば併置処分しても問題にならない」と話す。
しかし、報告書を詳細に検討した神奈川工科大の藤村陽・助教授(物理化学)は「非常に極端な場合として、1000年以前に地震が直撃してオーバーパックが割れ、その断層を地下水が上昇して放射性物質が地上に漏れる可能性を考える必要がある。またTRU廃棄物にはヨウ素129など水溶性の放射性物質が含まれ、地上への影響はガラス固化体より大きい。甘く見ない方がいい」と指摘する。
■場所選定難しく
さらに地震などで地層が隆起し、万が一にも地上にガラス固化体やTRU廃棄物が出てきたら被害は甚大となる。このため処分場は10万年間で300メートル以上隆起しないことが選定条件とされるが、地震学者からは「10万年間も安定な地層は日本のどこかにあるかもしれないが、事前の調査で選定するのは無理」との意見もある。
地層処分の場所が決まり、埋め立てが開始されるのは早くても60年ごろとされる。候補地の立候補受け付けは02年末から始まっているが、いまだに手を挙げた自治体はない。(毎日新聞 2006/05/22)
核のゴミ 地下処分の研究本格化
深さ1000メートルに施設 腐食防止策など難題山積
原発などから出る高レベル放射性廃棄物を地下に埋める地層処分の研究が本格化してきた。海外からの返還が始まったが、2040年代には最終処分を始めるという国の計画は、「とても実現しそうにない」と言う専門家もいる。高速増殖原型炉「もんじゅ」の事故や再処理工場の設備縮小など、国の原子力政策の軸になる核燃料リサイクル計画の「輪」がほころぶ一方、「核のごみ」の後始末にも多くの難題が待ち構えている。
岐阜県の瑞浪市と土岐市にまたがる地区に、動力炉・核燃料開発事業団(動燃)が「超深地層研究所」を建設する。地下約1000メートルと、世界で最も深いところにある研究施設という。
地元との協定で、放射性物質を使わず、高レベル廃棄物を地下に埋めたときに、周りの岩盤や地下水などとどう影響し合うかなどを調べる。
高レベル廃棄物は原発の使用済み核燃料を再処理すると出る。放射能が弱まるまでに数万年かかる物質も含まれ、それを漏らさず、長期間管理する技術開発が目的だ。同じような施設を北海道幌延町に造る計画は地元の反対で行き詰まっており、動燃は「これで欧米の研究と肩を並べられる」と期待する。
だが、地下深くで放射能が漏れないようにする技術の開発は難しい。
高レベル廃棄物をガラスと溶かして固めたガラス固化体にし、緩衝材(粘土)、オーバーパック(炭素鋼)などで覆う「多重バリアシステム」という処分方法が検討されている。
が、何万年もの間、緩衝材などが腐食や地下水の侵食に耐えられるか、よくわかっていない。
放射能がどう漏れ出すか、動燃がコンピューターでシミュレーションをしたら、「1000年後には腐食でオーバーパックに穴が開き、ガラス固化体が地下水と接触することがわかった。放射性物質が漏れだし、そのピークはセシウム135なら400年後、アメリシウム243では7万年後という。
これとは別に、オーバーパックなど金属の腐食の様子を古代の銅鐸(どうたく〕を使って調ベているが、せいぜい2000年ほどたった様子しかわからない。
また茨城県東海村に、地下深くの地下水の動きなどをシミュレーションできる試験施設を造ったが、「地層の複雑な変化をつかむには、おもちゃのような施設。いまの研究ペースでは、100年かかってもわからない」と専門家は指摘する。
科学技術庁や動燃では「超深地層研究所の地下の地質は花こう岩。性質の違うたい積岩の地質でも、同じような施設を造って試験をする」と話している。幌延町の地質はたい積岩だ。(朝日新聞 1996/01/24)
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