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原発事故と病気   「福島を切り捨ててはならない 」    山田 真(小児科医)   救援連絡センター第8回定期総会講演
http://www.asyura2.com/12/genpatu24/msg/514.html
投稿者 無知むち鞭ぃー 日時 2012 年 6 月 08 日 10:09:26: pyWt5yq99IwqY
 

http://qc.sanpal.co.jp/info/1520/


たね蒔きジャヤーナルの音声が先日投稿されてました山田真医師の講演会記録です。
(いま福島の子供たちに起こっていること 山田 真 氏 たね蒔きジャーナル (とある原発の溶融貫通) 
http://www.asyura2.com/12/genpatu24/msg/502.html
投稿者 赤かぶ 日時 2012 年 6 月 08 日 01:08:17)


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http://qc.sanpal.co.jp/info/1520/

第8回定期総会講演 「福島を切り捨ててはならない 」    山田 真(小児科医)


2012年5月20日 @ 4:36 PM    shaco

放射能を感じることが重要

今この会場の線量は0.06マイクロシーベルト。放射能はその存在を忘れてしまいがちだが、私たちのまわりにはいっぱいある。忘れてしまうと国や東電の責任を免罪してしまう。私は線量をいつも計るようにしている。私の持っている測定器は10万円ほどの器械。高価だから個人で持つのは大変かもしれないが、グループで持って測って放射能を実感したほうがいい。

放射能について国はいいかげんな計測しかしていない。東京都は新宿で測っている値を発表しているが、このところ0.05マイクロシーベルトくらいになっている。しかし江東区は0.15〜20マイクロシーベルトくらいある。国民は正確な情報を知らされていないので、嘘になれてしまっている。福島は「あきらめた」という状態になっている。国・県・専門家、誰も信用できないから要求もしない。自分たちだけで守っているので限界があるが、国や県に要求するとろくなものが返ってこない。このごろ福島に行くと「それでいいのか」と思い、切ない気持ちになる。



救援連絡センター設立のころ

救援連絡センターができたころは、東大闘争からはじまる全国学園闘争があり、市民や労働者の闘いがあり、日常的に逮捕者やけが人が出た。1968年の東大闘争のとき私は卒業して医者になっていた。医療救対ということでデモ隊について救急箱を持って一緒に走ったが、とても処置できないので、慈恵医大を拠点にして一時的な野戦病院を作り、救援活動をしていた。なりたての医者を集めたが、人のけがを縫ったこともない医者もいた。けがをした人のなかには、あそこで縫うよりは捕まったほうがいい、という話もあった。かなり滅茶苦茶な医療をやっていた、と今思う。

そういうなかで、共産党系の国民救援会はあったが、対抗するものを作ろうと救援連絡センターを作った。亡くなられた水戸巌さん、郡山吉江さん、私が医療側ということで3人くらいで始めた。今回、水戸さんのことを思い出したが、水戸さんが生きていたら嘆かれたろう。水戸さんは、原子力の専門家で原発に反対し、原発労働者の被曝問題にも関わっていた。水戸さんが生きていたら今回の原発事故は起きなかったかもしれない。

獄中医療については、拘置所に毎週かよったこともある。制限時間なしに接見していたが、実際には金網越しにしか見ることができなかった。先進国といわれる国のなかで、日本の獄中医療は劣悪だ。私が関わっていた30、40年前から良くなっていない。獄中にいる、存在することで起きる病気を「獄原病」という名前をつけた。「現代用語の基礎知識」の今年のキーワードというので載ったこともある。外の医者が行って治療する、その判断によって本人が希望する病院で治療するということを確立しなければいけない。密室治療は恐ろしいと思うそんな経験をしてきた。



日本が放射能に無警戒なのは何故か

昨年、3月11日に福島原発で大事故が起きたが、その半年くらい前に「母の友」という雑誌の連載で医療被曝のことについて書いていた。日本人は放射能について警戒心がない、という問題提起をしていた。広島・長崎を経験していながらどうして医療被曝のことが問題にならないのか不思議だった。5、6年前、ヨーロッパの科学者が世界中の医療で使われる放射線の現状について調べた。日本はレントゲンを撮る率がきわめて多い。学校で全員がレントゲン検査をやることは、日本しか行っていない。欧米では労働者への検診は、被曝するデメリットと診察のメリットを考えると意味がない、ということでやられていない。

最新の機械であるCTの時代になってアメリカなどと比較して日本が何十倍も被曝している。CTの3分の1は日本にある、といわれている。日本人は欧米に比べて何十倍か被曝している。ヨーロッパの専門医達が不思議がるのは、日本は広島、長崎で被曝して放射能の怖さを知っている国民であるはずなのに、放射能を警戒しないのはどうしてか、ということ。ヨーロッパの科学者達が計算すると、治療のメリットと被曝のデメリットを比較すると発ガンのデメリットのほうが大きく、レントゲンということがプラスになっていない。にもかかわらず日本では話題にならないのはどうしてか、と言っている。日本の専門家達はヨーロッパから言われるけど放射能の危険性についてどうやって計算して出すのかと言う。広島の被曝者の資料しかなく、広島の被曝の仕方と医療の被曝はスタイルが違う。だから、広島を資料にして危険だ、と言われても耳を傾ける必要がない、と言うのが日本の科学者の態度。

日本が放射線に無警戒なのは何故か、これまで解らなかったが、今回、3・11福島原発事故ではじめて解った。日本は被曝国だから、放射能に対する発言権を世界で一番持っている。核保有国としては、日本人に一番安全だと見てもらわなければ困る。それで、原爆が落とされて以降周到にアメリカによって作られたABCCという機関を通じて、被曝の実態をなるべく小さく見せてきた。福島で起きたことは、広島、長崎、第五福竜丸、東海村臨界事故という一連の流れの中にある。広島、長崎、第五福竜丸、東海村臨界事故の人々が受けてきた過酷な隠蔽工作が福島で明らかになった、ということである。



福島の子どもたちの現状

福島の現状は、被害を訴えているにもかかわらず、見捨てられようとしていることが明らかになってきた、ということだ。私は昨年6月にはじめて福島に行き、その後10回くらい行った。福島の子どもたちの健康相談会をやっているが、実際には子どもたちのからだに大きな変化は今のところは起きていない。だが今起きていないというのが実は怖いことで、10年、20年たって起きても何の補償も出ない可能性がある。広島よりもひどい状態が起きるのではないか、相談会でも親御さんはそれを心配している。多いときは10人くらいの医者が集まって相談会を担当するが、1人1時間くらいひたすら聞く。そして、私たち医者ができることは多くない。大丈夫だと言うわけにもいかないし、こんなふうに危険だとも言えない。一緒に続けて闘おう、子ども達をきちっと見続けようとしか言えない。最初のころは「避難しようかどうか」という相談が主だった。そして、避難できる人たちは福島を離れた。自主避難する人を非難する人がいるが、それはおかしい。避難する人たちは基本的に正しい。

ところでぼくの自宅へ昨日までモンゴルの人たち五人ほど来客があった。モンゴルの人達が日本に観光でやってくるのは危険かと聞かれて私は答えることができなかった。どうしても返事をしろ、東京は安全かと聞かれたら、「小さい子はこないほうがいい」としか言えない。



福島現地で起きている分断

福島では最初のころも分断が起きていた。大きな事故が起きるとさまざまな差別が起きる。福島は3つの地域に分かれている。原発のある浜通り、福島から郡山へ向かう中通り、そして会津という地域。原発があれば豊かになるよと宣伝して、浜通りという貧しい所へ原発を持って行った。

浜通りは回復できない、と国は思っているだろう。会津は福島の中では東京並に線量が低い地域が多いのに福島とひとまとめにされて、農産物も売れず困っている。中通りは深刻な状態にあって、さまざまなところがある。福島市は完全に沈黙させられているが、郡山は闘いが組めている、いわきは復興を目ざしている、というふうにさまざまなのだ。

地域的な分断のほかに、いろいろな対立がある。避難していた人と残った人、家族の中でもお母さんは子どものために避難したいと思う、お父さんは仕事があるから避難できない、おじいちゃん・おばあちゃんは「たいしたことないと言われているから、ここに残っていても大丈夫だ」と言う。家の中でも意見が違い、家族のなかでも厳しい状況がある。私たちは「小さな子どもたちは避難したほうがいい」と言っている。

6月のころは相談会もなごやかな雰囲気だった。7月になって戒厳令になったという気がした。福島では放射能が不安だと言うとバッシングを受ける状態になっていた。とりわけ福島市が強くいろいろな規制をしている。外に出ている子どもに対して、「早く教室へ入ったほうがいい」「長袖のシャツを着ていたほうがいい」くらいの注意をした教師に育委員会から指導が入る。それで、何人かの学校の先生が辞めている。



医師会は放射能を無視

福島市の医師会は全員「放射能は心配ない」と口裏を合わせることになっている。最近は子どもを連れたお母さんが受診して、放射能と一言いうと横を向き診てくれないという状態になっている。山下俊一教授という悪名高いピエロがいるが、実は悪の中枢ではない。前面に出てきて非難されても英雄気取りになっている山下みたいのはどこにでもいる。亡くなった重松逸浩とか長崎大の長滝重信とかもっと悪い人がいる。昨年9月に福島で国際会議が開かれ「もう福島は収束した。将来も健康被害はない」と宣言されてしまったが、主催したのは日本財団だった。福島では健康被害なしとするため山下などが動いている。

福島の個人病院で健康診断をしようとしたら、福島市からストップがかかり、「山下さんと相談してからやれ」と言われた。山下としては自分たち以外の健康診断はやらせない。勝手にやった健康診断で被害はなし、将来も大丈夫と言ってしまう。他のところでやるとそういう結果は出ないわけだから、自分たちの健康診断のおかしさが暴露されてしまうから止めている。それで、福島の医者は動きがとれない。



食物による内部被曝を減らしたい 

外部被曝を避けようとしてずっと家にこもっているわけにもいかないので、まず、食べ物・飲み物による内部被曝を減らしたい、と思っている。福島の小中学生が日本で一番福島産の食材を食べている。総理大臣がカイワレを食べたという下らないパフォーマンスはあるが、そのパフォーマンスを福島の子どもたちが集団でやらされている。ただちに被害は出ていないから「大丈夫だろう」と微かな期待をかけさせられ、福島の子どもたちが福島産の食材を食べさせられ、牛乳を飲まされている。福島産以外の食材を使ってほしいと要求する親はまわりの保護者から非難される、というとてもつらい状況になっている。

何とか避難できる人たちは避難した。福島で運動してきた人もかなり福島から引っ越した。これまで、福島が危険だと言いながら福島を出ないということで、「危険だと言いながらいるのだから、本当は危険ではないのではないか」という声が浴びせられた人もいる。「残るも地獄、出るも地獄」と言われている。東京に避難している人たちも楽に生活しているわけではなく「福島に帰りたい」と思っている。避難先も1位は山形で、2位は米沢で、3位は新潟、4位北海道という順序になっている人が多い。一旦出ると、例え将来線量が減ったとしても帰れないと思っている人が多い。

また、福島出身ということで差別されるのではないか、という気持ちが非常に強い。実際に子どもを幼稚園に入れようと連れて行ったら「福島の人は遠慮して下さい」と断られた例がある。人権問題にしようと思ったが、お母さんが「幼稚園の名前は絶対に言わない」と頑なに拒否するのでそれ以上できていない。

福島で健康相談会をはじめて驚いたのは、400人くらいきたこと。東京でも沢山くるだろうと思って東京で相談会を開いたが30人くらいしかこなかった。福島の人たちは避難先で福島出身ということを明かさない、としているようだ。例えば江東区の東雲(しののめ)に固まって避難している人たちは、福島出身だということがわかっているはずだが、それでも外と連絡をとりたくない、という人が多い。広島の被曝者が被曝者であることを隠してきた、ということを福島の人たちが知っているわけではないと思うが、直感的にわかるのかと思う。福島のお母さんと話していると、女の子は福島とわかると結婚できなくなる、子どもを生めないのではないかと心配している。福島という名前で差別されるということを実感している人たちが多くなっている。



被曝と補償の関係

福島に残った人で「心配だ、不安だ」という人には風評被害だ、という非難が集中するというつらい状況にある。どうして山下俊一教授が活躍して「なんでもない」と言うかというと、補償の問題があるからだ。平凡社新書で出ている「被ばくと補償」という直野章子さんが書いた本がある。「広島、長崎そして福島」と書かれているが、広島での補償の状態が書かれている。

広島で被曝した人たちについて、いろいろな形で書かれている。直接、爆心地近くに入って動き回った人たちも被曝の対象になっているが、遺体を10体以上収容・処理の作業をした人が被曝者と認定されている。9人の遺体を処理した人は被曝者にならないけれども、10人を処理した人は被曝者になっている。あとから被爆地に入って遺体を収容したお母さんや、背中に負ぶわれていた子どもで被曝の対象になるのは2歳以下の子ども。実際に赤ちゃんを背中に負ぶったお母さんが小学校の子どもの手を引いて被曝者10体以上の収容を手伝ったが、赤ちゃんとお母さんは認定されたが、小学生はどこにも入らなかった。3人連れで歩いていながら、小学生だけ認定されない、という悲惨なことが起きている。

実際に今問題になっているのは、内部被曝、低線量被曝であり広島では補償されていない。沢山の被曝者が切り捨てられている状態で、今、低線量被曝について語ることができるのは、肥田舜太郎さん、矢ヶ崎克馬さんといったお医者さんたちだが、この人たちは被曝者の訴訟に関わってきた人。そういう人たちしか低線量被曝した人たちに寄り添ってこなかった。ほかの人たちは、多くの専門家たちは低線量被曝、内部被曝はない、ということにしてきた。

1991年に亡くなった中川保雄さんという人が書いた「放射線被曝の歴史」という本や、チェルノブイリのあとカール・Z・モーガンという国際放射線防護委員会で最初の委員長だった人が1994年に書いた「原子力開発の光と影」という労作がある。モーガンという人は、低線量被曝、内部被曝を告発したから委員長をおろされた。「モーガンは立派な人だが、精神状態に異常をきたして変なことを言うようになった」という情報が日本に入ってきたが、この本はモーガンが九一歳の時に書かれたもので立派な本。モーガンやゴフマンなどは追放されている。ロシアでもチェルノブイリで真実に近いことを伝えた学者たちは、ほとんど追放された。旧ソ連の学者ではヨーロッパに亡命している人もいるし、汚職をデッチあげられて禁固刑になった人もいる。放射能の健康被害について告発した人たちは、ことごとく抹殺されてきた。今回の福島についても最初から被害隠しが行われている。



研究材料としての健康診断

国は勝手に健康診断して、あとになって「なんでもなかった」という結果を出してくる。東海村の臨界事故で3人の作業員が高線量の被曝をしているが、2人亡くなって1人はその後どうされたかよくわからない。それ以外に二百数十名の人が被曝している。この人たちは体の中のナトリウム量を調べ、1番多い人で42シーベルトだった。それで、50ミリシーベルト以下では将来にわたって影響はない、ということで事故調査委員会は終わりにしてしまった。蓋はしてしまったが、この人たちは毎年健康診断をしている。広島もそうだが、治療の対象ではなくて研究材料にされている。アメリカにとって広島・長崎は爆弾の威力を計る実験だったわけで、放射線の被害を浴びた人たちがどんな状態か知りたかったはず。そういう意味では調査・研究はするが、「健康被害が出るかもしれない」と言うと拙いのでそういう言い方はしない。東海村事故の時も毎年やる健康診断については、「健康被害はないのだから毎年やる必要はないが、住民の中に不安を持つ人がいるので不安を解消するために健康診断をやる」と言っていた。

今回の福島についても18歳以下の甲状腺癌の調査をやる、ということを発表した際に、東京新聞の記者が山下教授に聞いたら、「健康被害はないのだから、本当はやる必要がないのだが、住民の不安に応えるため」と言った。健康診断をやる場合、最初から「全員異常がでない」ということなら健康診断などやる必要はない。今、福島では「ない」と想定した上で、健康診断をやっている。

最初、浪江地区とか大熊地区とかの強制避難地域の住民には、60ページの分厚いものが渡されて、3月11日以降の、行動記録、食事記録を全部書けと言う話だった。そんな周辺の人たちは11日から14日くらいほとんど何の情報もなく、食事のことなど覚えていない。私たちが東京で水素爆発の状況をテレビで見ていた時に、水素爆発を知らなかったという人があの地域に多数いる。ほとんど噂がネットで伝わったという状態で、電話も電気も使えない状態だった。

3月12日の沢山の放射能が降り注いでいる状態で、背中に赤ちゃんを負ぶって屋外で待っていた、というお母さんが何人もいて悔やんでいる。東電や国を責めるのではなく、自分を責めている。自分がうかつで情報をつかめなかったために、この子をこんなにしてしまった、と思っている。お母さんの責任ではなく、国や東電が悪いのだが、実際にはそういう人たちが多い。避難所にいれば、食事の状態なども分かるのだが、日常生活の延長は特別なことがないから覚えていないし、書けない。回収率は悪かったのだが、行政が書けというのでかなりの人が書いた。その結果、勝手に線量が1人1人出され、「このくらいの線量しか浴びていないので一生健康については問題ない」と書かれたものが返ってきている状態。こんなものが信用できるわけはない。



全ての問題は被曝の問題だ

結局、全ての問題は被曝に対してどう補償されるのかという問題であり、現地の人達も私たちも被曝手帳を早く作れと言ってきたが、作らないし、被曝者認定はしていない。実は被曝者という言葉は使わない方がいい、という意見もある。被曝者と言うと証明しなければならない。どのくらいの線量を浴びたという線引きがされてしまう。それは被害者を限定することになる。実際には被曝量はわからない人が多い。被曝者というより被害者というほうが正しい、と思う。そして、最低限、一生にわたる補償をしてくれないと困る。

国は補償を少なくするためには被曝者を最小限にしようとする。結局チェルノブイリでも、国際的には被害を最小限にして子どもの甲状腺癌だけが被害であるように言ってきた。しかし、それ以外に大人にも子どもにも各種の癌が増えているし、免疫力の低下や循環器の異常などさまざまな被害が出ている。しかし、因果関係が証明されないということで、原発の被害ということになっていない。甲状腺癌については隠しきれなかったということだが、日本では甲状腺癌さえも隠そうとしている。

補償の問題になると因果関係の立証ということになるが、放射能が原因ということを証明することはほとんどできない。どれが原因か明らかにする力は今の医学にはない。放射能特有の症状というのはないので、ある地域で年間1人しか甲状腺癌が出なかったのに、10年後に10人に出たとしたら、影響があったと認めなければならない。だが、1人1人放射線の影響があった、なかったと見分けることは医学の力ではできない。そうすると、全ての子どもに放射線の影響はないとして切り捨てるか、全ての子どもに影響があり補償の対象にするか、どっちかしかない。加害者側がそうじゃないと証明できないかぎり、全ての人に補償すべきである、というのが森永ヒ素ミルク中毒事件、水俣病でやられてきたもの。これが福島では非常にしにくい。ひとつは地域が限定できない、そして被害者が非常に多いことが要因である。



マスコミの状況と避難問題

今、渡利地区が問題になっている。しかし、こうした現地の情報が全国に伝わらない。東京新聞、共同通信くらいは現地に入って取材しているが、ほかのところは現地取材をしないで記者クラブ情報だけ。福島民報は県の御用新聞みたいになっているので「福島は大丈夫・安全」「全ての検査をしたが何の被害も出ていない」という報道しかしない新聞になっている。その受け売りをしている東京の新聞を読んでも、福島の状態はわからない。

渡利地区は福島の中心部に近い地域、阿武隈川をはさんだ向かい側が官庁街という立地。渡利地区を汚染地区にすると、福島市全域を避難地区にせざるを得ない。福島市全体を避難地区に指定すると、20万人規模の人達が補償の対象になる。渡利地区は線量を測ってみると4マイクロシーベルトという東京から見れば100倍くらいの線量があったりする。実際に2月に相談を受けたおじいちゃんは「家の中であちこち線量を測ったら20マイクロシーベルトもある場所があった」という、恐ろしい地獄のようなところで暮らしている。福島が避難地区と認められないと、それより少し低い郡山などは到底認められない。渡利地区は橋頭堡のところであり、渡利地区を認めさせることができれば、もう少し避難地区を広げられる。そのへんのところで闘いが止まっている、というのが今の状態である。

実際に水俣病の闘いのことなど考えれば、今度の事故で東電という会社の入口は座り込まれて、機能停止になっていても当たり前だと思うが、敵が国なのか東電なのか見えにくい状態になっている。私は、もはや国が相手ではなくて核保有国・国連レベルの問題であると思う。基本的には、アメリカの問題だと思う。情報もアメリカが流していい、という情報は流せるが、流していけない、という情報は流せない状況であって、山下俊一教授をはじめ専門家といわれる人達もアメリカの傀儡だと思う。ABCCの流れを酌み放射能の被害をできるだけ低くするように、世界規模で押さえつけている。福島原発事故は非常に大きな事故であって、世界的に見て大変なことが日本で起こっているのだ。



集団訴訟を起こし、福島を切り捨てない

これから何をするかだが、非常に大きな問題が沢山あって、とにかく早いうちに集団訴訟を起こすことが必要だと思う。今は10何人の訴訟が行われているが、もっと大きな訴訟にする。東京など被災地だと思っている人達を集めて大きな訴訟にしていかないと、風化し新聞社も関心を失っている状態になっていく。とくに今年になってから、避難という言葉もあまり使われなくなり、かわりに保養をすすめようということになってきた。

これまで、子どもたちを1週間、10日と疎開させるということをやっていたが、その程度のことでは間に合わない。子どもたちの体の中からセシウムを出すために、北海道と福島の学校が提携し、1年生が北海道の学校に通って1ヵ月したら帰ってきて、その後2年生が行くとか、長期の月単位の保養をしていこうという話になっている。それは、国が何もしない、補償の見通しもない、生活を立て直してくれるという方向性も見えないなかで、悲しい選択だと思う。

私たちは、沖縄を切り捨て、広島を切り捨て、長崎を切り捨ててきた。そして何もなかったかのように復興してきた。福島についても、福島を切り捨てた上で復興しようという姿勢が国に見えている。その中で切り捨てられまいとして、福島があがいているというのが今の状態だと思う。福島の問題は福島だけの問題ではない。私たちは、沖縄、広島、長崎、第五福竜丸を切り捨ててきたという歴史を今こそ断ち切らなくてはならない。
 

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コメント
 
01. 2012年6月08日 11:45:24 : fmjd8Bth4U
多くがここに入ってる。倒幕しかないだろう。

で、、、保障もあるが、わざと人口を減らそうとしてると感じるが。


02. 2012年6月08日 12:45:56 : QkivKZWicQ
>因果関係の立証ということになるが、放射能が原因ということを証明することはほとんどできない。
>どれが原因か明らかにする力は今の医学にはない。
>放射能特有の症状というのはないので、・・・

>だが、1人1人放射線の影響があった、なかったと見分けることは
医学の力ではできない。

う〜〜〜〜む。これだ悶菜ァ。(タメイキ)

山田真先生までもが
狐(コン)な前世紀の理解論を今だにおっしゃってルン?!(チトガックリ↓)

山田真先生がたの傑出した精神と行動力に感謝し敬意と支持を表明します。

が、先の「できない」論はいけません。山に登る前に「登れない」と結論づけてしまっているからです。
@バンダジェフスキーの臓器セシウム濃度論を無視してる?
福島原発事故被爆者の臓器セシウム濃度を個別に測って見て下さい。
新たに発症した人、亡くなった人達の濃度は何ベクレルだったか?ちゃんと調査してあるのでしょうか?
A医学生物学研究へのコンピュータ導入以降の急速な進展はどう活かされているのか?
近年、長足の発展をした分野、病気と患者DNA突然変異との関係が考察されていないかのようだ。タンパク質の合成などは生活習慣によっても容易に影響を受けて仕舞うことが解っている。ある特定のDNAの変異ないし時間的発現程度などを、患者から調べることで患者がどう云う外力をDNAに受けたかが特定のできる。

放射線によるDNA断裂は修復されずに、DNA保存機構によってかえって保存されて仕舞う場合がある。
児玉先生もふれていた特定の甲状腺癌とDNA断裂部位との相関関係もこの例です。
人類の全DNAが解読されている。ある患者の特定の疾患に関わるDNAが変異を受けていて先祖にはその変異がなく、身体にフクイチ放射能が放射線を飛ばしたことが判明する場合には、当然福島原発事故の放射線影響であると言えるわけです。


患者のDNA・タンパク質影響からその疾病と疾病の原因を理解・究明出来る。
この分野をどうか被爆者救済に適用・利用してほしい。


03. 2012年6月08日 15:21:38 : a9GzL2pA5I
以下、情報が来ました。
ご協力いただける方は宜しくお願いいたします。


みなさん、ご存知の「ふくしま集団疎開裁判」の近況ですが、抗告人(原告=郡山市の子どもたち)の主張に対して、郡山市側は仙台高裁に「反論のため2〜2ヶ月半期間を与えて欲しい」との申し入れがあり、高裁は7月末までの猶予を認めました。

郡山市側は、抗告人側の周到な立証に危機感をおぼえ、大袈裟にいえば原子力村の総力を結集してカッコ付きの「科学」論争を挑むようです。

わたしたちが求めるものは、原子力村の虚偽と隠蔽を明るみに出すことですので、公の場での論争は大歓迎です。しかし、市民の論理が正しくとも、声が大きくならなければ、厚顔な体制側はびくともしません。

ふくしま集団疎開裁判がネット上に開設している「世界市民法廷」は、市井の市民の声を拡大するための装置です。わたしたちはみなさんのご協力を切に求めています。


世界市民法廷ガイドブック
http://fukusima-sokai.blogspot.jp/2012/02/blog-post_4997.html


追伸・以下、削除される前にどーぞ。

真実はどこに?―WHOとIAEA 放射能汚染を巡って
http://www.youtube.com/watch?v=oryOrsOy6LI


04. 2012年6月08日 23:19:26 : Fs0jRe5HRg
よく判るお話でした。山田医師と投稿者に感謝します。
このような話を、医師から続々と公表・明言されることを望んでいました。

事故をなるべく小さく見せ、放射能の害を意識させないようにすれば、人口削減の効果は抜群でしょうね。

『もっと大きな訴訟にする』ことに賛成です。関東圏に住んでいる私も実際被害者だし、放射能汚染マップを見れば、日本全国汚染が均一化してきてるのがわかります。大阪あたりも、立派に関東並みの線量になっています。
http://new.atmc.jp/


05. 2012年6月09日 11:53:15 : LdvYLDby1E
>>02さん、誤解です。
山田さんが述べているのは、病理的に、ガンであれ遺伝子障害であれ、発症した個々のものを、放射線要因かどうか病理的には区別できないという意味です。
放射線は、強力な電離作用で人体を損傷しますが、それは、主に、DNAの直接破損(DNA直撃による共有結合の寸断、体内に6〜7割ある水分の電離による活性酸素発生(この一部がDNA破損、他の一部は、他の様々な人体損傷)、それ以外の身体の組織や酵素など無数もののの破壊―――からなっています。
ところで、このDNA破損にしても、活性酸素にしても、放射線によって損傷されたもの、放射線によって発生したものと、他の要因によって損傷・発生したものと、損傷・発生が起こってしまったあとは、まったく区別できないものです。
山田さんが言っているのは、この意味です。

山田さんも「ほとんど」できないといっているように、被曝―病理組織の変化―発病の過程を綿密な検査・観察で追ってゆけば、ほぼ間違いない因果関係を語ることは可能でないにしても、これは、被曝過程から膨大な施設・労力を必要とする研究・監察過程におかなければならず、実際上は不可能なこのような想定でも、完璧な証明はできないはずです。

山田さんが言っているように、それでも、確率的な類推はできます。
しかし、この点でも、症状の有無がある程度はっきりしていて致死性の高いガンなどは統計的に捉える事が比較すれば容易です。
しかし、おそらく、それに劣らない損傷・被害をもたらす活性酸素由来の広範な健康障害(活性酸素は、感染症以外の9割の病因、免疫低下、老化促進、血管がもろくなる、等々無数の要因になります)、中枢神経損傷などを統計的にとらえるのは非常な難しさがあります(できる限り行ってゆく必要がありますが)

また、原子力村とでは、捉え方の根本的な違いがあります。
原子力村は、煙草の被害と比べてどうの、自動車事故の確率と比べてどうの、と持ち出します。彼らにとっては、一人一人の健康被害など問題でないので、このような数字のもてあそびでことをすませます。
しかし、一人ひとりにとって、われわれにとって、根本的に問題なのは、放射線が原因なのか、他のことが原因なのかの分別ではなく、放射線の障害が加算されて、健康障害が深刻化し、あるいは、死期が早められる、等々のことです。

被曝の一頂点である福島市渡利の住民、子どもたちが被曝を免れる権利を獲得しなければ、他の地域も救われないというのは、現下の核心です。
賛同します。

原発事故の現場、福島県で、佐藤県政や山下俊一グループが、住民を流出させたくないという彼らの利害・利権もあって、避難指定を拒んだり「自主避難」を妨害したり、自発的な健康診断を妨害するなどをしています。これは、すでに起こってしまった原発事故を「深刻」なものとは見せないことに最大の利害をもつ原子力村にとって、最大の恩恵です。
すでに厳しい局面になってしまいましたが、再稼動の阻止と、「避難の権利」実現をはじめとする子どもたち住民の高線量被曝からの解放を、ともに進めることがどうしても必要です。

山田さんのこの提起は、そのための重要な力です。


06. 2012年6月09日 15:43:05 : 36qhO5SxHE
フクシマの方々のご不幸と苦難な戦いには、程度の差はあれ同じ被曝者として同情します。

しかし、私には02さんの発想がありがたい。
正直、他の方々の努力は認めるとしても、私たちはその方々の手段かと思ってしまう。

私たち被曝者は、何かのお題目のための道具ではありません。
それが右であれ左であれ。推進であれ反であれ。
私には、この山田さんの言葉が、人間になりえていない人間の叫びに聞こえます。

私の祖母は武家と公家の混血でした。
助けるものの優先順位を誤った部族は滅亡すると、妙な話ですが、ハムラビ法典を典拠に話を聞かされました。
屏風と人は直ぐには立たぬ、何回も何回も諭されました。

助けるものの優先順位をつけられないような、弱い心の民族は、外部敵対勢力に体よく利用されて、「かっこよく」滅亡する。
この1年間、夢の中で、死んだ祖母の声が毎晩のように響きます。

非戦闘員のつぶやきでした。


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