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2012年06月07日(木)
社説
政府は関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働方針を固めたが、地元同意の判断は先送りされた。福井県の西川一誠知事が野田佳彦首相に原発の必要性を国民に説明するよう求めたためだ。
政府が原発政策でいまだに地元の信頼を得ていない実態が露呈したと言えよう。そもそも東京電力福島第1原発事故の十分な究明がされておらず、新しいエネルギー政策や安全対策も示さないまま、しゃにむに再稼働へと進む政府に拙速のそしりは免れない。
そうした中で、地元だけが安易に再稼働に同意すれば「悪者扱い」される懸念があろう。西川知事は同意の前提としてエネルギー政策における原発の位置づけの明確化と、再稼働に反対する大消費地関西の説得などを政府に迫っていた。
しかし、「脱原発」か「基幹電源に位置づける」かの国の根幹に関わるエネルギー政策の具体的戦略はまだ示されていない。新たなエネルギー基本計画に盛り込む2030年時点の原発比率についても検討段階だ。なのに原発の位置づけの明示など、どだい無理な話と言わねばなるまい。
野田首相は先月末の関係閣僚会議で「原発は引き続き重要」と発言、知事向けのメッセージを込めたが、空々しいばかりだ。何を根拠にそう言い切れるのか。知事が求める国民向けの説明をしたとしても、説得力を持ち得ない。
首相は「私の責任で判断する」と言うが、万一の場合、どのような責任をとるつもりなのか。首相退陣や議員辞職などで済む問題ではないことを指摘しておきたい。
一方、関西広域連合は再稼働に反対し、政府に安全最優先の要求を突きつけておきながら、事実上の容認姿勢に転換した。再稼働を望まない一般市民の頼みの綱だっただけに、残念でならない。
夏場の電力不足を乗り切る「期間限定」の稼働が条件との立場だが、政府は時限的稼働を否定している。いったん稼働すれば、再び止めるのは至難となろう。甘い対応と言わざるを得ない。
政府は早くも大飯原発の再稼働を想定し、7月から関電管内で求める節電目標を引き下げる検討に入った。本来原発稼働ゼロを前提にした節電目標であり、脱原発依存社会への道筋を見通すはずだったものだ。企業や住民の節電意識が緩むのは避けられまい。
ようやく新たな原子力規制組織発足の見通しが立ったとはいえ、新しい安全基準や再稼働のルールづくりはこれからだ。経済優先でなし崩し的に再稼働を進める手法は看過できない。これを許せば、同様のやり方が大飯原発以外の原発にも広がる「アリの一穴」になりかねない。
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