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【原発】原発は不良債権 〜異常な原子力予算〜
http://blog.goo.ne.jp/humon007/e/22e3911b524e0278c5069be4cc1ae1a5
2012年06月03日 語られる言葉の河へ
(1)東京電力「総合特別事業計画」(5月9日政府/経産省認定)
電気料金値上げと東電・柏崎刈羽原発の再稼働がセットになっていることも問題だ。が、もっと本質的な問題は、原発事故被災者を見殺しにし、既に実質破綻しているゾンビ企業=東電を国民負担(公的資金+電気料金)でどこまでも救い続けなければならないことだ。
放射能汚染の賠償費用さえ、電気料金に上乗せされ、国民の負担にされようとしている。
「失われた30年、40年」になりかねない。
(2)東電の現況
東電の自己資本は8,000億円だが、イカサマの上に成り立っている。
東電は、原子力損害賠償支援機構に賠償費用を申請し、交付される。実際には、何ヶ月もかかる。その間、東電は架空の「未収金」という資産を帳簿に載せて乗り切っている。
すでに2.4兆円が交付されているが、これでは賠償費用を払えない。事故処理費用もまだ膨らむ。今後、銀行からの借り入れと社債発行ができないと、毎年1兆円kらいの借入金の返済が4、5年続く。とても持たない。すでんい日本長期信用銀行と同じ状態だ。しかも、電気料金値上げと原発再稼働がなければ1年で債務超過になる。
(3)事業計画の問題点
(a)この計画には巧妙なトリックが隠されている。「援助には上限を設けず、必要があれば何度でも援助し、原子力事業者=東電を債務超過にさせない」ととした2011年6月14日の閣議決定を「参考資料」として掲載している。
これがなぜ問題か。原子力損害賠償支援機構成立(2011年8月)の際、付帯決議第10条で、この閣議決定の支援の枠組みは「役割を終えた」とされ、「見直し」を求められた。その上で、賠償支援機構法自体に「国民負担の最小化」と「利害関係者全ての負担」が盛り込まれた。
しかるに、事業計画には、見直しを求められた閣議決定を平然とそのまま掲載している。国会決議を無視したものになっている。
しかも、これは「参考資料」であって、経産相の認定の範囲ではない、と東電は言っている。つまり、経産相は、事業計画の本文だけを認可した形にしている。
(b)金融機関が東電に貸し出す際、担保をとれる「私募社債」の発行が検討されている。私募社債は、電気事業法第37条で優先弁済が規定されている。福島県民へn賠償金の支払いより金融機関の返済が優先されている。これでは、被災者救済ではなく、銀行救済だ。金融機関の倫理が問われる。
(c)放射線量20mSv/年未満は住民全体が「帰宅する」ことを前提にして賠償費用を再計算し、なと4,344億円も削減している。20mSv/年未満で帰宅の人には避難費用も出さない可能性がある。
(d)除染費用を一切計上していない。除染するつもりはない、ということだ。この再計算も「参考資料」でやっている。
(e)福島県知事は福島第一、第二原発すべての廃炉を求めているが、第一原発1号機から4号機までの廃炉費用1兆1,500億円しか計上していない。つまり、第二原発を再稼働するか、ツケを先延ばしにする計画だ。
(4)原発は不良債権
電力不足キャンペーンはまったくの嘘。原発依存度の低い中国電力と原発がない沖縄電力は黒字だ。
東電の場合、作円の燃料費値上がり分は、ほとんど家庭用料金値上げですでに吸収している。
なぜ電気料金値上げを目論むといえば、原発が不良債権化してしまっているからだ。
原発は、1機数千億円の建設費がかかり、それを借金で建設しているから、多額の返済コストがかかっている。事故の収束もできないので、民間の損害保険会社から損保加入を拒絶されている。しかし、電力会社が潰れないためには、安全性が担保できないその不良債権を無理やりにでも雨後かさなければならない。不良債権化した原発を抱える電力会社の経営が成り立たなくなるので再稼働しようとしている。
電力会社の決算を見ると、原発依存度によって違うが、すべての原発が止まった場合、各社少なくとも毎年1,000億円から2,000億円の赤字が見込まれる。依存度48%の関西電力に至っては、今年2,500億円の赤字、来年は4,000億円の赤字が見込まれ、数年すると九州電力も自己資本を食い尽くして債務過剰になる。
(5)異常な原子力予算
こんな事業計画と電気料金値上げを許してはいけない。事業計画にある「社内カンパニー制」などではなく、東電を国有化した上で将来に向けて発電と送配電の所有権を分離して売却、解体していくことが必要だ。それでも、賠償費用、除染費用、廃炉費用に足りない。その分は、原子力予算を組み替えればよい。
15年も動かず1兆円を費やしている「もんじゅ」。計画から20年経っても稼働できない六ヵ所村の再処理施設には建設費と運転費用合わせて3兆円がつぎ込まれている。核燃料サイクル事業もまた不良債権化している。
誰も責任をとっていない。
停止中の「もんじゅ」は、冷却費用だけで毎日5,500万円もかかる。
福島県民がこれだけ苦しんでいるというのに、どう見てもこの事態は異常だ。
以上、語り手:金子勝(慶應義塾大学教授)/聞き手・まとめ:片岡伸行(編集部)「原発は不良債権である 〜金子勝慶應義塾大学教授に聞く〜」(「週刊金曜日」2012年6月1日号)に拠る。
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