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福島4号機燃料プール危機を考える
http://www.asyura2.com/12/genpatu24/msg/313.html
投稿者 palクン 日時 2012 年 6 月 01 日 16:20:59: mWJq7xP6mpLMg
 

http://tanakanews.com/120530fukushima.htm

 4月6日、米国民主党のロン・ワイデン上院議員ら、米議会上院のエネルギー天然資源委員会の委員たちが、福島第一原発を訪問した。ワイデン議員らは、福島訪問後に報告書をまとめて発表した。(Wyden calls for quicker cleanup in Japan)

 報告書によると、福島原発の状況は報じられているよりはるかに悪い。特に、4号機の格納容器の脇の地上4階の高さにある使用済み核燃料プールが、今後の大きな余震によって倒壊したり亀裂が入ったりして、プールに入っている1565本の使用済み核燃料が放射性物質をまき散らす事態になりそうだという。福島原発が貯蔵している燃料棒は全体でチェルノブイリ以上の量の放射性物質を含み、余震で燃料プールが倒壊すると、最悪の場合、上空の気流に乗って北半球全体に放射能がまき散らされ、日本が壊滅するだけでなく、米国の国家安全をも脅かす。日本政府は、燃料プールを含む福島原発の事態を早急に改善すべきであり、海外に支援を求めた方が良いと、ワイデンらは指摘した。(Senator: Fukushima Fuel Pool Is a National Security Issue for AMERICA)

 昨春の震災と津波で冷却装置が止まり、水素爆発が起きた福島原発では、外壁の損傷が激しい4号機の燃料プールが外気にさらされており、4号機が特に危ないという話になっている。ワイデン議員の警告を機に、福島の燃料プールが余震で倒壊して北半球が壊滅するのが時間の問題だといった話が、インターネットなどを通じ、米国の市民団体などの間に広がった。(Which Will Collapse First, the Economy or the Spent Fuel Pool at Fukushima?)

 米国は西海岸をのぞき、地震の起きない地域が多く、地震列島日本の原発が世界を壊滅させる構図は米国人の目に衝撃的であり、311震災後、米国のネット上で繰り返し語られてきた。ここにきて、それが発展し、4号機のプールが「人類最大の脅威」として語られ出した。「フクシマのプールが倒壊したら、放射能が米国に到達するまで数日かかる。その間に家族を南半球に避難させるつもりだ」と米国の学者が言ったりした。(The Top Short-Term Threat to Humanity: The Fuel Pools of Fukushima)

 米政府の原子力安全委員会(NRC)は、昨春の福島事故の2週間後に作成した調査報告書の中で、福島原発の燃料プールが当初の推定よりもひどく損傷していると指摘している。これが、米国側が最初に燃料プールの危険を指摘したケースだが、当時は燃料プールよりも、原子炉(圧力容器)が余震で倒れて中の燃料が再臨界を起こして放射能をまき散らす懸念の方が、起こりそうなこととして指摘されていた。(U.S. Sees Array of New Threats at Japan's Nuclear Plant)

 その後、福島は何度も余震に見舞われたが、原発の施設が倒壊するほどのものでなく、格納容器内の再臨界は起きていない。もはや余震で原子炉が再度壊れて世界に大損害を与える可能性が減っているためなのか、今回の「大危機」は、燃料プールへと焦点が移っている。(日本は原子力を捨てさせられた?)

▼燃料プール倒壊の確率は非常に低い

 ワイデン議員の福島訪問を機に、米国の運動家やネット市民の間で「福島の燃料プールが世界を滅ぼす」という危機感が強まり、それは日本のネット界にも飛び火した。福島の燃料プールが倒壊したら、首都圏から南東北にかけての3500万人の避難が必要だとか、日本は国家として機能しなくなるといった見方が飛び交っている。東京電力は、昨春の事故後、4号機のプールの下に鉄骨を入れてコンクリートを流し込む補強工事を行い、プールの強度を20%高めたと発表したが、もはや大半の人が東電を信用していない中、人々の納得は得られなかった。

 東電は、来年末までに4号機に隣接して土台を作ってクレーンを建て、その後3年ほどかけて、プール内の使用済み核燃料を取り出し、より安全な場所に移送する計画を進めている。しかしネット界では「3年以内に余震が起きて燃料プールが倒壊するに違いない」「燃料プールが倒壊する可能性が低いと言う人は東電の回し者」といった言い方が目立つ状態だ。

 将来の地震を予測するのは非常に困難だと私は考えているので、4号機のプールを大損傷させる余震が起こらないとは言い切れないが、起こる可能性が高いとも言えない。とはいえ、大きな余震が起きて4号機のプールに亀裂が入って水が抜けても、空気の対流によって冷却が行われ、プール内の使用済み燃料棒の温度は170度ほどで止まると、テレビ朝日が東北大学に依頼した概算で判明している。テレビ朝日の番組では、プール事態が瓦解して燃料棒ががれきの下で密集して埋もれた場合、もっと温度が上がり、溶融と再臨界が起きるかもしれないと、北半球壊滅的な「最悪の事態」を描いているが、そうなる確率は、プール内の水が抜ける可能性よりずっと低い。(テレビ朝日 報道ステーション「徹底検証:福島第一原発4号機」)

 4号機のプールの水が抜けて燃料棒がむき出しになることは、震災直後にも起きた。放射線の放出量が増加したが、放水や注水の努力を経て、再びプールは水で満たされている。震災後、原発からの放射性物質の漏洩が続き、福島県内などで蓄積された放射線濃度が高まり続けている。だが、関東圏を含む広範囲な避難が必要になるかもしれないという懸念が現実のものになりかけたのは、震災直後、福島原発が放射性物質を含んだ蒸気放出(ベント)を繰り返した時の数日間だけである。

 一般に、稼働中の原子炉の事故より、停止中の原子炉の事故の方が軽微に終わることが多いし、原子炉より燃料プールの事故の方が軽微に終わることが多い。世間では「余震で事故が起きないと言い切れない」という点だけが強調され、人々をいたずらに不安に陥れている。私が見るところ、今後の余震で4号機のプールが倒壊する確率は、非常に低い(ゼロではないが)。「4号機プールはたぶん倒壊する」といった言い方をする人は、事態を客観的に見ず、人心をかき乱す扇動をしている。

 震災時から現在まで、南東北や関東地方で生活してきた人々(私たち)の多くは、原発事故がもたらした危険性だけでなく、多様な情報によって不安が掻き立てられることを体感し、その上で、自分なりに納得した心の状態を再確立し、生きている。この生活の知恵が、今回の新たな危機に対しても生かせるはずだ。

 今回の4号機プール危機は、昨春の原発事故直後に、事故の評価が4から7に引き上げられた時と同様、米国が福島事故の重大さを大きめに評価し、表(国家間)と裏(ネット界)から日本に影響を及ぼした結果として起きている。今回の危機は、ワイデン上院議員の福島訪問に端を発している。テレビ朝日などの報道では、今回の危機が自然発生的に関係者たちが懸念を高めた結果として起きていると説明したが、私が見るところ、もっと国際政治的な動きである。

 なぜ米国当局が福島原発事故の重大性を大きく評価し続けているかという理由について、私は、オバマ政権の核廃絶構想と関係があるのでないかと考えている。これについては、以前の3本の記事で分析したので、そちらを読んでいただきたい。(日本の全体にとって特に重要な事案なので、4月に書いた有料記事を無料版に切り替え、誰でも読めるようにした)(日本の原発は再稼働しない)(日本も脱原発に向かう)(日本は原子力を捨てさせられた?)

▼燃料プール危機は脱原発につながる

 脱原発派の人々は、4号機の燃料プールの危機を扇動することで、日本での原発の再稼働に反対する世論を盛り上げ、国内の原発をすべて廃止に持ち込みたいのだろう。日本の原発を全廃する脱原発の目標は、たぶん達成される。もともと「原発を止めると夏場にひどい停電が起きる」という電力業界の主張には誇張がある。日本の電力需給バランスにはかなりの供給余力があり、原発がなくても日本はやっていける。国内のすべての原発が停止したまま、今年の夏を乗り切れてしまうと、日本の世論は「原発がなくてもやっていけるじゃないか。もう稼働しなくてよい」という方に傾き、事態は原発の全廃に近づく。

 5月5日の北海道電力の泊原発3号機の停止を前に、日本の政府や財界は、関西電力の大飯3、4号機の再稼働に必要な地元の同意を得ようと動いたが、政府が(おそらく意図的に)迷走する動きをしたため、地元の同意が得られず、再稼働は実現していない。原発の再稼働は決定から実施まで2カ月近くかかる。今夏、大飯原発を稼働させ「原発ゼロ」の事態を避けるには、6月中旬までに再稼働を決めねばならない。まず無理だ。

 4月に書いた「日本の原発は再稼働しない」などの記事で分析したように、米当局は、覇権体制の転換に付随する世界的な核兵器廃絶との関係で、日本の原発の再稼働を歓迎せず、日本の原発の危険性を大きく見積もり、原発廃止の方向の圧力をかけている。官僚機構や財界など、日本国内の「原子力村」は、再稼働に躍起なので、政府民主党の政治家は再稼働に向けて努力するふりをして右往左往してみせるが、大事なところで下手を打ち、住民を怒らせたり不安にさせたりして、再稼働が実現しないようにしている。

 こうした土台の上に、今回さらに米国発で扇動された福島4号機の燃料プールの危機が加わり、日本の世論はさらに脱原発の方に傾いている。脱原発派のうしろには、米当局という強力な助っ人がいる。燃料プール危機は、日本人を不安に陥れる点で困りものだが、日本の原発の全廃につながる点で「良いこと」でもある。

 米国には、福島原発と同じGE(ゼネラルエレクトリック)のマーク1型と2型の沸騰水型軽水炉が31機ある。日本の原発が全廃されていくなら、いずれ米国でも原発廃止の動きが強まるかもしれない。日本の原発がすべて停止するのをしり目に、韓国では2機の原発が新たに稼働している。中国も原発建設を再開することを決めた。こうしたアンバランスな状態が今後どうなっていくかも注目される。

 また、野党の自民党は5月22日、党の原子力政策として「新原発技術が登場しない限り脱原発は不可避」という方針をたたき台として出した。党内の原発推進派の横やりで「新たな技術的対応が可能か否かを見極める」という文言に替えられたが、たたき台の中の「新原発技術」が、私の記事「日本の原発は再稼働しない」で紹介した、使用済み核燃料を燃料として使えて事故の可能性が低いという触れ込みの「進行波炉」など第4世代の原発の実用化のことを指しているのだとしたら、それもまた米国が日本を誘導したい方向性と同じであり、興味深い。  

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コメント
 
01. 2012年6月01日 17:06:25 : b5ZnvoiMso
「4号機プールはたぶん倒壊する」といった言い方をする人は、事態を客観的に見ず、人心をかき乱す扇動をしている。 
田中宇という人は裏読みを得意とする評論家(?)だと思う。そんな彼からみて、4号機の不安はあまりないそうだ。東京の土地、売ろうか売るまいか迷っていたが、当面ホールドしよう。

政府の4号機への公式見解はどうなんだろう。


02. 2012年6月01日 17:49:22 : PYIR6uTX6c
アメリカの立場が真逆のような2つの投稿です。

【本文より】
米当局は、覇権体制の転換に付随する世界的な核兵器廃絶との関係で、日本の原発の再稼働を歓迎せず、日本の原発の危険性を大きく見積もり、原発廃止の方向の圧力をかけている。官僚機構や財界など、日本国内の「原子力村」は、再稼働に躍起なので、政府民主党の政治家は再稼働に向けて努力するふりをして右往左往してみせるが、大事なところで下手を打ち、住民を怒らせたり不安にさせたりして、再稼働が実現しないようにしている。


【経新聞社が解説する「原発再稼働」も「東電賠償軽減化」も米国支配層の差配という現実】http://www.asyura2.com/12/genpatu24/msg/187.html
「米エネルギー省(DOE)などは日本当局に、ほぼ全面停止状態に陥った原発の再稼働に向け、技術や人的支援の大幅な拡大を打診。再稼働に絡み、関係閣僚と地元自治体の折衝などを抱え慎重な日本の背中を押した」

「東京電力に過重な補償責任を負わせれば、原発ビジネスが立ちゆかなくなるのでは」。日本当局筋は複数の米政府高官に責められた。日本の原発が衰退すれば米も共倒れになる相互依存の構図で、イニシアチブは米の焦りの裏返しでもある。



03. 2012年6月01日 18:07:39 : npansWPdOA
今後大きな地震は来ないだろう、多分、おそらく、プールの水が抜ける可能性は高いとは云えない、倒壊する確率は非常に低い。「おそらく、たぶん」この田中さんは優れた、非常に優秀な預言者だ。

04. 2012年6月01日 18:21:15 : ouB5XID97o

ただちに地震はこないでしょう by枝野


05. 2012年6月01日 19:03:58 : Py5Z7phwaA
建物がそんなに長くもたないことはわかってる。
写真みても酷い状態。なので、建物の寿命前に燃料を移動しないとダメなのはあきらか。

最近4号機まじめなのは、アメちゃんからの圧力かな?

アメちゃんに頭脳になってもらって、処理進めた方が良いかも。
その場合、さらに日本の軽視が発生するかもしれないけど(アメリカの被害最小に動くから)


06. 2012年6月01日 19:25:53 : GLXVWhn5jj
>04

この一言で、コロリと騙される、馬鹿国民かな!  

直ちには被害はない、この一言に、コロリと騙される、日本国民かな!  

04さんに ざぶとん3枚!


07. 2012年6月01日 20:22:41 : MHvbufWOig
>>大きな余震が起きて4号機のプールに亀裂が入って水が抜けても、空気の対流によって冷却が行われ、プール内の使用済み燃料棒の温度は170度ほどで止まると、テレビ朝日が東北大学に依頼した概算で判明している。

真顔でかようなおもろかしい御説をのたまわれる「幸せ」な人に私もなりたいWW・・


08. 2012年6月01日 20:46:22 : SANQx8fFBs
@ 健全性は損なわれた間接的に認めたにも関わらず震度6強にも耐えると強弁する、東電主張の矛盾。
東電は今年1月1日の地震によって、燃料プールと原子炉ドライウェルを仕切っているプールゲートに不具合が生じて、プールから原子炉ドライウェルに漏水することによってスキマサージタンクへの流量が減り、その水位が下がったことを認めている。
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/info/images/120213_info-j.pdf (3ページ)

NRCの資料、188ページの右側のグラフを見てください。
http://pbadupws.nrc.gov/docs/ML1114/ML11147A075.pdf 
グラフにある 0.3m pool level(bottom of refueling gate)とはプールゲートのことです。紫の点線はtop of rack、使用済み核燃料体ラックの上端を示している。
つまり、プールゲートの底は、使用済み核燃料体ラックから30センチ上にあると言うことを示している。
3m pool level(pool penetration)は、原子炉から核燃料を取り出して、燃料プールに収納する作業を行う時の水位を示している。
full poolとは通常の水位を示している。

すでに、地震によって燃料プールの健全性が損なわれ漏水が起きていることを示しています。

A 田中氏の詭弁。
「将来の地震を予測するのは非常に困難だと・・・考えている」にも関わらず、それが、何故、「起こる可能性が高いとも言えない」、つまり低いのだろうか?
2011年3月11日以前には、宮城県沖地震は相当な確率で予測されていた。しかし、それは今回福島原発事故につながった東日本大震災を引き起こした地震ではない。予測困難と言いながら、何故、低いと予測するのか?

B 東電の曖昧な言葉使い。
>東京電力は、昨春の事故後、4号機のプールの下に鉄骨を入れてコンクリートを流し込む補強工事を行い、プールの強度を20%高めたと発表した・・・

何を基準にして20%強度が高まったと言っているのか?
先ず地震、次に爆発によってボロボロに破壊された原子炉建屋。燃料プールは、原子炉建屋から独立したものではない。その構造物の一部であるにすぎない。一部を補強したから破壊された全体が安全になると言うことはあり得ない。原子炉建屋の健全性が損なわれた以上、プールの補強工事とは取って付けたようなものである。

C 「プール内の使用済み燃料棒の温度は170度ほどで止まると、・・・概算」はできないこと。
NRCが行った使用済み核燃料プールにおける事故の危険性を研究の一部を引用する。

数々の条件を課すことなしに、ジルコニウムの火災が物理的に起きない、一般的な崩壊熱のレベル(その故、崩壊時間)を確立することは不可能である。
>[I]t was not feasible, without numerous constraints, to establish a generic decay heat level (and therefore a decay time) beyond which a zirconium fire is physically impossible.
http://irss-usa.org/pages/documents/11_1Alvarez.pdf (17ページ)


09. 2012年6月01日 21:37:05 : Jb26LcokIQ
なんだ。田中宇は原発推進派だったのか。
もっとも、元共同の経済部記者だから、原発反対のわけもないか。

原発の話まで、米国の意図のままに動いていくようなことを言うのは、もう止めなよ。米国陰謀説じゃないか。
とまあ、元革マルと自称する副島も、あっという間に、「放射能は危険でない」とか言い出すし、こういう国際情勢アナリシストとかいう連中は、どうしようもないな。もう、こいつらの本を買うのをやめよう。


10. 2012年6月01日 23:52:39 : uz4zqg3c5L
ネットの他の場所で4号機プールの燃料棒は秘密裏に移動する予定と書いてた人がいたが真実は不明。4号機にちゃんと燃料棒があったという確証もないけどな。事前に減らしてたかだな。4号機は停止して点検中だったのに爆発したとはやっぱり核爆発テロの可能性も調べてみないと。

そうなると、4号機ではなくて他の原発を爆発さすテロをする可能性もある。イスラエルの警備会社に警備させるのは、怪しいから駄目だよ。


11. 2012年6月02日 06:58:24 : fgll74197c
福島第一原発は手遅れです。人類は終わります。
また戦争があり数多くの人類が悲しい事ですが死ぬでしょう。
残った僅かな人類が最後の救いを求めてETの名を呼び地球に
公式にET大使館を建てそこに彼らを迎えるでしょう。
その時、一晩で世論は変わるでしょう。
もしそれも無いとしたらお終いです。

12. 2012年6月02日 07:27:44 : nSWH5tWpEY
-----福島は何度も余震に見舞われたが、原発の施設が倒壊するほどのものでなく、格納容器内の再臨界は起きていない。

原発の施設が倒壊していたら、のんびりPCで記事を書いていられなかったでしょう。余震がそれほど大きくなかっただけ。しかし、その余震で痛みはましている。

-----プールの強度を20%高めたと発表したが、もはや大半の人が東電を信用していない中、人々の納得は得られなかった。

これは常識があればわかることです。あんな廃墟のような建物の強度など誰にも測れない。構造の専門家もそう言っている。

-----4号機のプールを大損傷させる余震が起こらないとは言い切れないが、起こる可能性が高いとも言えない。

大地震のあとにはそれなりの規模の余震が必ずと言っていいくらいあるそうだ。小さな余震なら頻繁におこる。その小さな余震でもあれだけ痛んだ建物(廃墟)は持たないかもしれない。

-----水が抜けても、空気の対流によって冷却が行われ、プール内の使用済み燃料棒の温度は170度ほどで止まると、テレビ朝日が東北大学に依頼した概算で判明している

アメリカの研究では、もっとはるかに高い温度になるとみていますよ。その温度では、燃料棒の被覆管が壊れて放射能が噴出すようです。それに170度までの温度上昇ですむなら、もう使用済み燃料の冷却は必要ないということになります。世界のどこであれ、使用後数年で冷却をしないなどということはありません。
解析した人が原子力の専門家でないからかもしれません。しかし、いずれにせよ水が抜ければ、もろに放射線がでてきて、誰も4号機には近づけなくなります。たぶん燃料棒が痛んでいるでしょうから放射能が噴出すでしょう。それで、福島第一全体が放棄されます。それで東日本の終了。

-----「4号機プールはたぶん倒壊する」といった言い方をする人は、事態を客観的に見ず、人心をかき乱す扇動をしている。

事態を客観的に見れば、倒壊の確率はなんともいえません。しかし、その事態が起きたときの破滅的事態は予想できます。注意を喚起するのはよいことでしょう。


13. 2012年6月02日 08:19:44 : XzkvbXr4LY
原発事故の原因は、単に津波や地震などの自然災害なのか、いやテロではないかと取りざたされてきた。
 民主党は政権与党任期1年余りとなり、来年は選挙となるが、詐欺のようなことばかりやってきた民主党が再び与党になることは、まず無い。
巷では、再び災害を起こして「今は選挙どころではない」という状況を作り出して与党に居座るのではないかととの噂もある。
 大飯原発再稼働は、再び人々が避難しなくてはならないような事故を起こすのではないか・・・・福島原発の事故がテロであったのなら。
原発は「安全でクリーン」の大宣伝を、すっかり信じてきた国民・・今となって、それが大ウソだったことが明らかになった。

14. 2012年6月02日 09:51:19 : Py5Z7phwaA
1-3号のプールも問題。3号機は4号機よりも酷かったのでは、建物の破損。

どうすんだろ他のプールにある燃料。


15. 2012年6月02日 10:10:28 : i37fD8kRRc
>-----水が抜けても、空気の対流によって冷却が行われ、プール内の使用済み燃料棒の温度は170度ほどで止まると、テレビ朝日が東北大学に依頼した概算で判明している>>170度までの温度上昇ですむなら、もう使用済み燃料の冷却は必要ないということになります。

>>12殿。御意なり。

プールに入れておく必要もないのだから、さっさと燃料棒を取り出せばよい。

それができないことは、現実の作業が遅々として進まないこの状況を見れば明らかなこと。

そもそも、そうでなくても足りない作業員を被曝させながら燃料プールの補強工事を行い、莫大な金を投入して、相変わらずプールに水を張って冷却し続けている、頭狂電力は、やはり頭が狂っていると言うことの証明にしかならない、ハズだ。

こういう、墓穴を掘る以外に何の意味もないデタラメをいうから、大学狂授と蔑まれるのである。

頭狂大学を筆頭に、大学狂授の権威など、中世の大審問官の顰め面と同じで、実に滑稽で唾棄すべき代物である。

まあ、実力がないからこそ、既得権益の提灯持ちとして生きるしか他に選択肢がないのだろう。

啓蒙のために存在するはずの学問の府で、蒙昧主義に邁進するしかないという、自己矛盾も甚だしい、実に怪体な存在なのである。

専門家の威を借りたい既得権力の金にたかる御用学者を仰ぐ国民、というものにはなりたかないな〜


16. 2012年6月02日 16:11:38 : kejlwA5Rsw
仮に4号機が阿修羅で騒がれているほどは危険ではなくても、
今の原発事故に対するいい加減な対応では危険になりかねない。

福一でまた何かあったら想定外で逃げるんだろうね、
原発推進派の懲りない面々は。


17. 2012年6月02日 17:15:55 : hOEfMUQc7T
-----水が抜けても、空気の対流によって冷却が行われ、プール内の使用済み燃料棒の温度は170度ほどで止まると、テレビ朝日が東北大学に依頼した概算で判明している

温度が170℃で止まろうが300度になろうが、水から外に出た使用済み燃料棒は、空気に晒されることで、人間が近ずけないほどの放射能を出すのでしょう。

外に出た放射能はどうするのだろう? 放射能を誰が処分してくれるのだろう?

野田首相が「責任」を持つとでも言うのでしょうか?


18. 2012年6月02日 18:00:40 : SlD1SV9VuA
田中宇は、数年前、フランスとイギリスは経済的に没落した国だと書いていました.
つまり、経済成長を続ける国が正しいと言うのが、彼の考え方のようで、彼の考え方に従えば、原発は必要なのでしょう.

19. 2012年6月02日 21:07:13 : FEC1zKK4NY
2ヶ月ぐらい前だったか、東電自らが4号機の南側地面が北側より80cm
低くなっていると発表した。
しかし、東電らしいのは、「しかし、建物は傾いていない」という強引な
主張だった。
相応に傾いているといってくれるほうが、安心できた。

東電はこわい。


20. 2012年6月03日 04:28:43 : bxpn3CGfZI
>>19
>しかし、東電らしいのは、「しかし、建物は傾いていない」という強引な主張だった。

目視でプールの水面の位置を見て確かめた、といったのです。そこで、世間からせせら笑われたので(そこいらの木造だってレーザーで水平を見てる)、今度はレーザーを使ったと言っていたけど。

よっぽど軽い建物なんでしょうね。地面が沈下しても傾かないとは。笑い。


21. mainau 2012年6月04日 15:53:07 : GgaPs4QXWLwO2 : 85rTG3hiJk
>>>とはいえ、大きな余震が起きて4号機のプールに亀裂が入って水が抜けても、空気の対流によって冷却が行われ、プール内の使用済み燃料棒の温度は170度ほどで止まると、テレビ朝日!!!が東北大学!!!!に依頼した概算で判明している>>>。

あなたはその問題教授の計算式を分析もしないでうのみにするのだろうか。
あほらしいの極地。
4号機の危険性については、すでに三月半ばにはドイツの専門家が指摘していた。
水なしで空気の対流だけで、使用済みでものすごい放射能を出している燃料棒をじゅうぶん冷やせると主張しているこの東北大の教授は、頭がどうかしている。
それとも御用系なのだろうか。
おそらく御用だろう。
水がなければ、むきだしで空中にさらせないほどの危険な放射能を出しているからこそ、取り出しも水中で行うのに。

テレビ朝日!!!を信用しているのだろうか。馬鹿らしい。

じゅうぶん冷やせるというその仮定を計算式で出して、世界にネットで公開してください。
世界中の笑い物になるだろう。


22. 2012年6月05日 00:27:50 : C09J6i5sZ6
日本の原発は再稼働しない
2012年4月5日  田中 宇

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 関西電力の大飯原発3号機と4号機を再稼働するかどうかをめぐり、日本政府が迷走を続けている。大飯3号機は昨年3月から、4号機は昨年7月から定期検査に入っている。原発(軽水炉)はすべて1年から2年に一度、運転を止めて、燃料棒の交換と定期検査を行う。福島原発事故後、日本の原発は、定期検査に入ったものから順番に、事故に対する耐性検査(ストレス試験)を行い、政府(原子力安全保安院)やIAEAから安全と評価されてから再稼働することになっている。

 大飯3、4号機は昨秋、耐性検査の1次評価で合格し、政府内や財界から「早く再稼働せよ」という要求が強まる一方、地元や近隣の福井県や京都府、滋賀県、また政府内にも「急いで再稼働するな」「2次評価を待つべき」という慎重論があり、対立している。野田政権内では、野田首相が再稼働に前向きな半面、枝野経産相は再稼働に反対の姿勢を示していたのが、4月4日になって反対論を撤回した。だが同時に政府は4月5日、再稼働について新たに30項目の条件を発表し、再稼働に対するハードルを引き上げた。

 大飯など関西電力の原発は加圧水型で、福島など東京電力の沸騰水型の原発よりも格納容器が大きい。圧力容器が壊れて冷却水が減り、水素が発生しても、格納容器の容量が大きいので、福島事故の際に起きたような水素爆発まで至りにくい。福島事故の教訓を沸騰水型に全面適用しても、加圧水型にそのまま適用する必要がないという考え方もできるはずだが、そのような議論は政府内外で目立った形で起きていない。IAEAも大飯の安全性に疑問をつけていない。再稼働が技術的な問題でなく、政治的な問題であることがうかがえる。

 大飯3、4号機の再稼働問題が重要なのは、このまま今夏、日本の原発が全く再稼働せずに夏の電力ピーク時期を乗り越えられることがわかると、原発がなくてもやっていけることが国民にわかってしまい、原発の再稼働がますます困難になるからだ。大飯が再稼働しないと、5月以降、日本の54機の原発はすべて停止する。3月25日、東京電力の柏崎刈羽原発の6号機が定期検査のため停止し、5月5日には北海道電力の泊原発3号機も定期検査に入って止まる。そのまま夏を越すと、原発不要論が強まる。政府などが発表する日本の電力需給バランスには、かなりの供給余力が隠されており、原発がなくても日本はやっていける。それが暴露されてしまう。これまで原発を推進してきた勢力は、大飯を再稼働させようと躍起になっている。(原発 全54基ストップ この夏、電力は大丈夫なのか)

 このような時期に、野田政権は大飯の再稼働をめぐって迷走している。迷走するほど、地元の反対が強まり、再稼働が難しくなる。「常識」的なマスコミの論調は「野田政権は、またもや無能ぶりをさらけ出した」となるのだろう。だが実際には、そのような論調しか書けないマスコミの方が無能をさらけ出している。野田政権の迷走は、無能に起因せず、おそらく意図的なものだ。

 昨年7月、その半年前から定期検査をしていた九州電力の玄海原発2、3号機(加圧水型)の再稼働について、地元の佐賀県玄海町の岸本町長が了承した。するとその2日後、当時の菅政権は「原発の再稼働はストレス試験に合格してからとする」と、唐突に新たなルールを発表し、再稼働に向けた動きを潰した。玄海2、3号機は、今も停止したままだ。唐突に新たなルールを作って再稼働を潰す政府の手口は、1年経っても変わっていない。当時の官房長官だった枝野は今、経産相となり、迷走を引き起こして再稼働を隠然と阻止する役回りを演じ続けている。(日本も脱原発に向かう)

 菅前首相は、脱原発に賛成だと言い続け、それが日本政府が原発再稼働に慎重な原因とされた。だが野田現首相は脱原発派でない。私が見るところ、日本政府が311後に原発を全廃していく方向を進んでいるのは、日本側の意志でなく、米国のオバマ政権の意志だ。民主党の上層部で最も対米従属色が濃い前原誠司は昨年、早々と脱原発の方針を掲げた。(日本は原子力を捨てさせられた?)

 政財官界には、原発推進の勢力が強い。だから政府は、米国の意を受けて国内原発の再稼働を潰すのに、正面から脱原発の政策を掲げず、無能ぶりをさらけ出して地元の反対を誘発する裏道の戦略をやっている。この私の分析が正しければ、今後も日本の原発は再稼働しないだろう。官邸周辺が演じる迷走劇がうまく機能せず、1機か2機が再稼働しても、それが他の原発へと広がらないだろう。

▼原発は沖縄基地問題と同じ構図

 オバマ政権の米国が、日本の原発を潰したい理由は、原発が軍産複合体の傘下にあって核兵器製造の分野とつながっているからだ。軍産複合体は、世界の反米諸国(北朝鮮など)に核兵器製造の技能を密かに流し、米国に脅威となる敵国に仕立て、米国内で軍産複合体が重視される状況を持続する「敵を作る作戦」を続けている。この戦略は、イスラム諸国の反米感情を煽ってアルカイダを強化して永く米国の敵として機能させる「テロ戦争」でも使われている。

 こうした敵を煽って大きくする軍産複合体の世界戦略は、この10年ほどの間に行われたが、やりすぎのために失敗した。テロ戦争は、イラクとアフガニスタンからの米軍撤退で終わりつつある。米国は、核兵器を開発した北朝鮮の面倒を中国に見させ、朝鮮半島に対する覇権を手放しつつある。核兵器開発の濡れ衣をかけたイランも、中露の支援を受け、米国は譲歩に転じようとしている。英国の植民地支配の置きみやげだったインドとパキスタンの対立と核武装も、中露など上海協力機構の仲裁で和解していく道筋で、米国の覇権から外れつつある。(立ち上がる上海協力機構)

 米国は、敵を煽って大きくする世界戦略に失敗し、財政再建や覇権の縮小(中露など新興諸国への覇権譲渡)をやろうとしている。その際に、軍産複合体が米政界で強い力を持ったままであることは、米国の建て直しの阻害要因となる。日本は1970年代以来、米国の軍産複合体のために挺身的な貢献をし続けてきた世界で唯一の国だ。複合体は共和党と結託しているので、民主党のオバマ政権は、複合体を弱体化させたい(クリントン政権もそうだった)。

 米国は、冷戦構造を脱却しようとし始めた70年前後に、日本に対米従属をやめさせて自立させようとした。米中が接近し、沖縄が返還された。だが、日本を支配する官僚機構は、対米従属をやめることを望まなかった。軍事面では、在日米軍に毎年巨額の「思いやり予算」を贈賄的に支払い、米軍の全世界の海外駐留費の半分近くを日本一国で出し続けた。贈賄構造のもう一つが、73年の石油危機後に加速した原発の建設だった。(日本の官僚支配と沖縄米軍)

 原子力発電が米国でさかんになったのは1950年代からで、それは原発(軽水炉)を稼働させることで核兵器の材料となるプルトニウムを作れるし、核燃料を作るウラン濃縮の工程は、核兵器を作る工程とほとんど同じで、濃縮度が違うだけだった。原子力発電の方法は軽水炉以外にも各種発明されたのに、軽水炉だけが世界で普及したのは、ウラン濃縮とプルトニウム生成があるからだった。

 50年代以降、日本にも原発が作られたが、ウラン濃縮はすべて米国で行われ、プルトニウムを含む使用済み核燃料も全量が米国に返還されていた。米国が日本に自立をうながし始めた1968年の日米協定で、日本国内でもウラン濃縮や使用済み核燃料の再処理ができるようになったが、その後もウラン濃縮の7割は米国で行われており、日本政府が電力会社にそれを義務づけている。日本の原発はすべて米国の2社が開発したものだ。

 以前の記事に書いたように、米国ではイスラエル系の勢力(軍産複合体の一部)が、米国の戦略を中東に引きつけておくために、米国が中東の石油を必要とする構図を定着させる必要があり、1979年に起きたスリーマイル島原発事故で必要以上の大騒ぎを起こし、それ以降30年間、米国で原発が全く新設されないようにした。その穴を埋めるように、軍産複合体の傘下にある原子力産業が日本に原発を次々と作って儲けられるようにしたのが、日本の官僚機構による原発急増政策だった。(日本も脱原発に向かう)

 しかし、日本が軍産複合体を献身的に支えている構図は、米国でオバマ政権などが軍産複合体の力を弱めようとしている時に、阻害要因となっている。そのため米政府は、日本政府が思いやり予算やグアム移転費補助として出している在日米軍への贈賄的な支払いを振り切って、沖縄の海兵隊をグアム島や米本土などに移転させる話を進めている。それと同様の動きとして、米政府は、福島原発事故直後、事故の評価を世界最悪の「7」まで引き上げるよう、日本政府に圧力をかけたり、その後の原発の全停止、再稼働の事実上の禁止などの圧力をかけていると考えられる。(日本は原子力を捨てさせられた?)

▼地球温暖化を捏造し原発延命を図ったが

 すでに述べたように、原発(軽水炉)は、米ソが核兵器製造競争を展開した冷戦構造の遺物である。冷戦の終結とともに、軽水炉や核兵器の政治的な必要性が大幅に低下した。しかし、80年代末の冷戦終結時には、すでに世界に多数の軽水炉が存在し、世界の原子力産業は、政治的な後ろ盾なしに、経済的に自転していくことを模索した。これが90年代の「原子力のルネサンス」と呼ばれる動きで、原子力産業の民営化と再編、新興諸国での原発新設、核燃料サイクルの確立、事故に強い第3世代の原発の開発などが進められた(日本の原発のほとんどは第2世代)。この時期、米国では軍事産業の民営化、再編も進んだ。(Nuclear renaissance From Wikipedia)

 90年代に京都議定書が国際決議され、実は捏造にすぎない地球温暖化が喧伝され、温暖化対策が必須のものとされたのも、原子力のルネサンスと関係している。原子力発電はコストが安いという触れ込みで世界的に普及したが、使用済み核燃料の処分や、大事故が起きたときの被害を含めてコストを再計算すると、非常に割高になる。核兵器製造との関係で政治的な後ろ盾があった冷戦時代には、ゆがんだコスト計算でかまわなかったが、民営化するとなると、現実的な計算を余儀なくされる。(地球温暖化問題の歪曲)

 原子力のコストを下げるのが難しいので、軍産複合体お得意のマスコミを使った言論操作(戦時に行うものを平時に発動)の機能を使い、地球温暖化問題を世界的にでっち上げ、石化燃料の使用を制限する動きや、石化燃料の使用に炭素税を課してコスト高にするような工夫が行われ、原子力発電が割安になるような設定が試みられた。しかし結局、米議会が批准せず京都議定書の体制は瓦解し、その後は覇権多極化の一環として、温暖化問題の主導権が中国や途上諸国に乗っ取られ、温暖化対策費は、先進国が途上国への支援金として支払うものに変質した。温暖化問題で原発をテコ入れする策は失敗した。(地球温暖化めぐる歪曲と暗闘)

 そこに至る過程の2006−07年に、米国の原発大手2社が、日本企業に買収されたり日米連合体になったりして、日本が米国の原子力産業を傘下に入れる状況になった。これを単体で見るとすごいことだが、裏を返せば、この時すでに米英の上層部の人々は、原子力のルネサンスが失敗して原発メーカーは儲からなくなると予測し、無知な日本企業に売りつけたことになる。

 原子力のルネサンスが失敗したもう一つの理由は、核燃料サイクルの確立が国際的に失敗したことだ。プルトニウムを燃やす高速増殖炉が日本やフランスなどで開発されたが、事故や不具合が相次ぎ、世界的に頓挫したままだ。日本の原発から出た使用済み核燃料は、英仏の再処理工場に再処理が委託されているが、そこで出たプルトニウムが増えて行き場に困っている。

 国際社会から核武装を疑われたくない日本政府は、プルトニウムを英仏に置いたままにしてきたが、ずっとそのままというわけにいかず、プルトニウムを混ぜた燃料を既存の原発で使うプルサーマルが、世論の反対を押し切って試みられている。日本でも青森県の六ヶ所村で核燃料の再処理を行う計画だが、大幅に遅れている。六ヶ所村は、各地の原発から出た使用済み核燃料の置き場としての意味しかない。核燃料サイクルの挫折は、原発のシステム的な破綻を意味するが、破綻状態は世界的に無視されている。(衆議院議員・河野太郎――虚構の核燃料サイクルで日本の原子力政策は破綻)

▼途上諸国で続く原子力ルネサンス

 米国の隠然とした圧力を受け、日本では原発が廃止されそうな状況だが、対照的に中国では、福島事故から1年間凍結されていた原発の新設計画の推進が再開されている。中国では既存の15機の原発に加え、26機が建設中、51機が計画中、120機が構想中となっている。福島事故後、中国政府は原発新設をいったん凍結しつつ、既存の原発に改良を加え、建設中や計画中の原発の一部を、日本と同じ第2世代の軽水炉から、安全性をより高めた第3世代の軽水炉に変更した。その上で、福島事故からちょうど1年すぎた今年の全人代(国会)で、原発建設の再開を宣言した。(China nuclear protest builds steam)

 途上諸国の中では、ベトナム、バングラディシュ、アラブ首長国連邦、トルコ、南アフリカなどが、初めての原発を建設する計画を進めている。韓国では2月に2機の原発が完成し、発電を開始した(韓国の原発は23機になった)。途上諸国では、日米、フランス、中国、ロシアのほか、韓国の原子力企業も建設の受注に動いている。途上諸国は福島事故の影響を1年で脱却し、原発建設を再開している。原子力のルネサンスは、途上諸国に場を限定して続いている。(SA called for France-China nuclear bid)(Nuclear power back from the grave)

 途上諸国と対照的に、先進諸国では原発の新設が頓挫する傾向だ。欧州ではドイツ、イタリア、スイス、オランダなど大陸諸国の多くが原発廃止を決めている。英国は8機の原発の新設を計画しているが、2機を担当するドイツの2社の合弁企業が、ドイツ本国の原発廃止を受けた財務状況の悪化から撤退することになった。英政府が財政難で、原発の新設はフランス、スペインなどの大企業に任されているが、この国際民営化方式自体の継続が危ぶまれている。(Could China run Britain's next nuclear reactor?)

 英政府は、ドイツが抜けた分の穴埋めを、ロシアや中国の政府系原子力企業に頼むことすら検討している。新興国が、先進国の原発を作ってやるという、従来の常識をくつがえす新たな展開だ。新聞は「チェルノブイリを英国に作ってもらいたいのか?」と批判記事を出している。(Would you buy a reactor from the firm that gave you this?)

 米国では数年前まで15社の電力会社が29機の原発建設を計画していたが、そのうち建設が進んでいるのは2機だけで、残りは棚上げの状態だ。米国では、これまで掘っていなかった地層から天然ガス(シェールガス)を掘る技術が進み、天然ガスの供給が増えて価格が大幅に下がった。原発は1キロワット当たり5339ドルのコストがかかるが、ガス火力なら978ドルですむ。発電所の建設工期もガス火力の方がかなり短い。棚上げされた原発建設に代わり、米国では2015年までに258カ所のガス火力発電所が作られる予定だ。(Cheap Natural Gas Unplugs U.S. Nuclear-Power Revival)

 日本の原子力産業は米国と合体して日米連合になっている。日米連合は米国の軍産複合体の傘下だが、フランス、ロシア、中国など、その他の政府系原発メーカーは、むしろ軍産複合体と対立する存在だ。日本は、世界で最も軍産複合体に貢献している国だ。英国やイスラエルは、軍産複合体に貢献するのでなく、複合体を自国に都合の良いように使おうとしてきた。日本だけが、対米従属の国是を満たすため、複合体に片務的、献身的に貢献している(韓国の李明博政権も日本と似た戦略だったが、失敗して政治力が低下した)。複合体を弱体化させたいオバマ政権は、表向き日米同盟を重視していると言いながら、在日米軍撤退や原発廃止へと事態を動かし、日本と複合体の関係を切ろうとしている。

▼多極型世界に必要な軽水炉廃止

 今後、世界の覇権体制が多極型に転換し、従来の国連安保理常任理事国5カ国体制(P5)に代わり、BRIC+EU+米国という新体制になっていきそうなことを考えると、今までP5諸国だけが核武装を許された状況を変える必要がある。歴史を見ると、米国がフランスに、英国がロシアに、ロシアが中国に核兵器技術をこっそり譲渡しており、P5だけが核武装する世界体制を意図的に作った観がある。(US secretly helped France develop nuclear weapons, documents reveal)

 今後、インドとブラジルと南アフリカに核武装を許せば、BRIC+EU+米国が核武装するので、それで良いじゃないかという見方もできる。しかし、大国が談合して世界を運営する「世界政府」的な体制は非公式なものだ。国際社会の建前は「すべての国家が対等であり、国家を超える権力は存在しない」というものであり、インドやブラジル、南アの核武装が許されて、パキスタンや北朝鮮やイスラエルの核武装が許されないのは理屈が通らない。5大国だけが核武装を許される今のNPTの体制自体が、すでに破綻している。(核の新世界秩序)

 となれば今後、いずれかの時期に米国で金融危機が再燃するなどして、米国の覇権体制が崩壊して多極型の体制へと移行するなら、それを機に、世界のすべての核兵器保有が悪である新しい世界体制を作り、NPTを廃止せねばならない。これは「あるべきだ論」でなく「分析」ないし「予測」である。オバマが以前に進めていた米露核軍縮などの世界的核廃絶の政策は、この転換の先駆けとなることを目指したのだろう。(中国が核廃絶する日)

 核不拡散を徹底するには、核兵器転用が比較的容易な第2世代と第3世代の原発システムを、ウラン濃縮や核燃料再処理を含め、廃止していく必要がある。第2世代が52機、第3世代が2機ある日本の原発が今後、全廃されるとしたら、それは期せずして世界の流れを先取りしている。どうせいずれ軽水炉が全廃されるなら、今年日本が全廃しても良いと考えることもできる。(オバマの核軍縮)

 オバマの核廃絶策は、ノーベル平和賞を受けたものの米政界の共和党右派から受けが悪く、共和党との協調を重視するオバマはその後、核廃絶策を棚上げしている。だが、今秋の大統領選で再選されるであろうオバマは、2期目に再び米露核軍縮などの核廃絶策を進めようとするだろう。オバマが先日ロシアのメドベージェフと会ったとき「再選されたら自由度が高まるので、それまで待ってくれ」と述べた声が意図せずマイクに拾われ、世界に報じられた。(Obama Set for 2nd Term Spouting `This is My Last Election, After My Election I Have More Flexibility')

 こうした政治的な面だけでなく、技術的にも、核燃料サイクルが確立できないため、今の原発(軽水炉)のシステムはいずれ行き詰まる。軽水炉の大量新設を目論む途上諸国でも、反原発運動が強まっている。中国では、初の内陸部の原発建設に関し、直接の地元である江西省が建設を認めたものの、隣接する安徽省で、原発建設の利権的な恩恵を受けず風評被害や事故の不安だけを負わされるため反対論が強まり、北京の中央政府に建設中止を正式に要請した。インド西部では、フランスに発注した原発建設に対し、地元の人々が強く反対している。中国もインドも、福島事故の影響で人々が原発への懸念を強めている。(China nuclear protest builds steam)

 人為的な地球温暖化が起きておらず、シェールガスなども見つかっているので、人類が今後もエネルギーを化石燃料に頼り続けるのは可能だ。しかしそれと別に、軽水炉の核燃料を作る際に大量に排出されるし、使用済み核燃料の中身の9割以上を占めて、世界的に蓄積されて行き場がない劣化ウラン(ウラン238)を燃料に使える進行波炉(TWR)や、プルトニウムを燃やせるトリウム炉などの「第4世代」の原発を世界各地に建設することも「軽水炉後」の人類のあり方として可能だ。軽水炉は毎年燃料棒の交換が必要だが、進行波炉などは百年ぐらい燃料棒の交換なしに運転し続けられるとされる。(Traveling wave reactor From Wikipedia)

 第2世代と、その改良型である第3世代の原発は、ウラン濃縮とプルトニウム生成をともなう核兵器時代のシステムだが、第4世代の原発だと、ウラン濃縮を必要とせず、プルトニウムも減らせるので、核兵器禁止後の世界に向いている。進行波炉は、マイクロソフトのビルゲイツを会長に招いた米国のテラパワー社が開発している。同社は、米国で進行波炉が認可されることはないと判断し、中国やインドなど新興諸国に売り込んでおり、多極化を見据えた事業展開をしている。(Bill Gates, China jointly developing nuclear reactor)

 同社は311より前、日本にも売り込みにきた。日本は、使用済み核燃料として劣化ウランを持て余しているのでちょうど良いはずだが、軍産複合体の傘下で対米従属の維持をめざす日本では軽水炉しか眼中になく、見向きもしなかった。(TerraPower - with the backing of Bill Gates - has a radical vision for the reactors of tomorrow)

 進行波炉は、使用済み核燃料というゴミを燃料に使えるものの、この炉自体も運転後は使用済み核燃料を排出する。その点についての突っ込んだ説明を探したが見つからない。曖昧にされている感じだ。原子力の先行きは不透明であり「燃やしてゴミを減らす」なとどいうことすら考えず、医療用以外のすべての原子力利用を禁止・廃止した方が良いという考え方もできるが、そうした全廃論もまた、どこからか扇動された軽信という感じもする。

http://tanakanews.com/120405nuclear.php

日本も脱原発に向かう
2011年7月8日  田中 宇

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 FT紙が7月3日、菅直人首相の後がまを狙う前原誠司前外相が、同紙のインタビューに対し、新たな原発の建設を原則として中止し、今後10−20年かけて原発に対する依存を低下させ、段階的にすべての原発を廃止すべきだと述べたと報じた。次の首相の有力な候補である前原が原発廃止の立場に立ったことは、日本のエネルギー政策が全面転換していきそうなことを示しているとFTは書いている。(Ditch nuclear power, says Japan PM contender)

 前原は6月26日に神戸で講演した際にも、20年後までに原発をなくすことに賛成だと表明した。だが、日本のマスコミや市民運動家の多くは、前原の発言のこの点よりも、この日の講演で、脱原発に向かっている菅首相の政策を性急なポピュリズム(大衆迎合)だと批判した点だけを重視し、前原が脱原発を批判する原発推進派であると描いている。(前原前外相「急激な脱原発はポピュリズム」 首相を批判)

 前原は菅を追い出して自分が首相になりたいのだから、菅を批判するのは意外でない。経済への悪影響をなるべく少なくしつつ原発を全廃するなら、今から20年かかるのは当然だ。前原がFTに語った10−20年という期間は妥当であり、それよりも急いで脱原発をやるのは性急で無理がある。ドイツは10年後の2022年までに原発を全廃すると決めたが、ここまで来るのに脱原発を前提とした10年以上の議論があった。

「脱原発は首相になるために前原が放っているウソだ。実際に首相になったら自分の発言を反故にして脱原発などしないはずだ」などと考える人も多いだろう。しかし昨今の日本政界では、ほぼすべての政治勢力が何らかの脱原発を掲げている。自民党も民主党も、公式な党是では原発推進の看板を下ろしていないが、民意が固まってきたら脱原発を正式な方針にできるよう、多くの政治家が日々の発言を曖昧化している。佐賀県の玄海原発の再開には、自民党も猛反対した。

 今の日本では、原発事故に対する国民の不安が煽られる構図ができあがっている。3月11日の福島事故直後、原子力安全委員会が事故を過小評価し、原発推進役の経済産業省の言いなりであることが国民の目に明らかになった。安全委に対する国民の信用はその後も崩壊したままだ。たとえば安全委は7月4日、福島原発周辺の子供たちの放射線被ばくについて調査したところ、45%が甲状腺に被ばくしていたことを明らかにしたが、同時に、精密検査が必要なほどの被ばくでないので、何も手を打たないと表明した。もし安全委が国民の信頼を得ているのなら、このような曖昧な言い方でも「安全委が言っているのだから大丈夫」とみんな思うが、安全委が信頼されていない現状では「安全委は被害隠しをしているに違いない」と、国民は逆に不安を煽られる。

 マスコミは、安全委の姿勢を批判する反対論者の意見を記事の後ろの方に載せたりするが、これまた短いものなので、読者は全体像がつかめないまま、さらに不安を煽られる。不安扇動の構図が打開されるメドはなく、今後も国民の原発への不信や反感は増え続けるだろう。そうした流れが予測される以上、原発推進の立場を堅持する政治家は減る一方だ。誰が次の首相になろうが、原発推進の方に舵を戻すことは日に日に難しくなる。

 前原を首相にしたい仙石由人官房副長官は、東京電力を発電部門と配電部門に分社化し、発電部門のうち原発は国有化して廃炉していく構想を出した。日本は戦前、発電会社と配電会社が分かれていた時期があり、その時代の体制に戻そうというものだ。これは「悪の権化である東電を救うことになる」などと批判されている。だが実際のところ、東電が分社化されると、日本の財界を支配してきた東電の権力も分割され、東電の政治力は大幅に落ちる(経済面では、すでに東電の格付けはジャンクに落とされている)。東電を分割すると、原発推進はますます困難になる。前原や仙石が原発推進派なら、東電の分割を提案しなかっただろう。

 代替エネルギー案のない脱原発の動きは非現実的であり、話だけに終わるという説がある。しかし、原発の代わりに石油や天然ガスを高値であってもより多く輸入すればすむ。「地球温暖化人為説」は根拠が薄い話だ。かつて人為的な二酸化炭素増による地球温暖化の予測を流し続け、太陽の活動の低下(太陽黒点の減少)によって今後むしろ地球の気候が寒冷化すると予測していた学者らをトンデモ扱いしていた英国BBCも、今では太陽活動の低下で寒冷化を予測する学説を真っ当なものとして紹介している。(UK faces more harsh winters in solar activity dip)

 石油やガス、石炭の燃焼は、気候変動に関係ないのだから、できるだけの節電をしつつ、原発より安全な火力発電を多用すればよい。石炭火力を多用するのも一計だ。自然エネルギーの開発は結構だが、それだけにこだわる必要はない。地球温暖化人為説のプロパガンダ性が世界的に確定しつつある中で、中国やロシア、米国は、モンゴルなどの石炭利権を買い漁っている。(Chinese win bulk of Mongolia coal project)(地球温暖化めぐる歪曲と暗闘(1))

▼日本を脱原発に追いやる米当局

 話を元に戻す。前原が脱原発の姿勢を表明したことの重要性は、彼が有力な次期首相だからというだけでない。彼は、民主党諸派の主導役の中で最も積極的な対米従属を打ち出している人だ。前原は昨年9月、国交相から外相になる時期に起きた、尖閣諸島における日中衝突時、中国側の船長を起訴するように動き、日中間の緊張感を意図的に高めた。米国が日本を中国と戦争させたいなら、開戦につながる状況を積極的に作ることも辞さずという姿勢だ。(日中対立の再燃)

 前原は今年6月、米国の有力上院議員3人が、普天間基地の辺野古とグアムへの移転計画について、金がかかりすぎるのでやめるべきだと提案した時、急いで米国に行き、他の上院議員らと話をつけて、移転計画を表向きだけでも維持するようにした。米軍グアム移転費やその他の思いやり予算を賄賂に米軍を日本に駐留してもらうことは、日本の対米従属策の根幹だ。前原は、米国の軍産複合体の日本支部として機能しているともいえる積極的な対米従属派だ。そんな彼が、ここにきて脱原発の方向性を掲げた意味は大きい。(日本が忘れた普天間問題に取り組む米議会)

 米オバマ政権の原子力安全委員会(NRC)は、3月11日の事故発生の直後から、福島原発の事故は日本政府の発表よりもひどい状況だという方向性の示唆や発表を行い続けている。日本の安全委が20キロ圏内の避難指示を決めたのに対し、米国の安全委は20キロでなく80キロ圏内に非難指示を出すべきだと発表し(あとで米政府の主張には根拠がないとわかった)、日本の国民に自国の安全委を信用できないと思わせる一因を作った。日本政府が浜岡原発の停止を決めたのは、米政府筋から浜岡を止めろと圧力がかかったからだという話もある。米当局は、日本に脱原発せよと求めている感じだ。だから、積極対米従属派である前原が、脱原発の姿勢を打ち出すのは当然ともいえる。(日本は原子力を捨てさせられた?)

▼米国の中東戦略の余波で日本が原発列島に

 米政界では第二次大戦後、軍産複合体の力が強い。原子力発電のシステムは、軍産複合体が無数に作り続けた核兵器の製造工程が「発電にも使えますよ」という「核の平和利用」の象徴として生まれた。発電を口実として原発を動かし続けることで、核兵器の原料となるプルトニウムを作れるし、核兵器の製造工程として必須なウラン濃縮の技術も維持発展できる。ソ連を恒久的な敵として冷戦構造を確立し、核兵器の大量生産を開始した米国では、各地に原発が建設された。

 この状況は、1970年代に一変した。67年に英国が中東(スエズ以東)から撤退した後、覇権国から取り残されることを恐れたイスラエルは、米政界を牛耳ることで米国がイスラエルに有利な中東戦略を採るように仕向けた。これに対する反動として73年にアラブ諸国が結束して石油危機を起こした。石油価格が高騰した米国では、石油火力発電の代わりに原発を多用する構想が出てきたが、米国の発電が原子力中心になって石油輸入に頼らなくなると、米政府は中東を重視しなくなって孤立主義に向かい、イスラエルは後ろ盾を失って取り残されてしまう。(イスラエルの戦争と和平)

 それはまずいということで、79年に起きたスリーマイル島原発事故を機に、米国内で反原発運動の盛り上がりが誘発され、それ以来、今に至るまで米国では原発の新規着工がほとんど行われず、米国は原油の輸入に頼らざるを得ない状況が続いている。米国は放っておくと孤立主義の傾向が強くなる地政学的な特性を持っているが、エネルギー政策上、孤立主義を採れず、中東や中南米(ベネズエラ)など産油国を中心に世界に介入し続ける国際主義を採らざるを得ない態勢が作られ、イスラエルや軍産複合体を利している。

 とはいえ、米国で原発が作られなくなったことで、軍産複合体の一部門だった原発産業は仕事を失った。代替策として考案されたのが、日本や西欧など対米従属の同盟諸国に米国の技術での原発増設を加速させ、原発産業が米国で儲からなくなった分を同盟諸国での商売で取り戻す策だった。対米従属が戦後の最重要の国是である日本では、米国からの依頼(命令)であれば、活断層などあらゆる危険性を軽視して原発が増設された。対米従属の国是を推進する右派(右翼)が原発を強く推進する構図ができた。

 このような流れの結果として、日本は、地震大国であるのに原発大国となった。しかし、今回の震災後に米政府が日本に脱原発を押し売りしていることから考えて、すでに米国側は、同盟諸国に原発を売って自国の原発産業の儲けを確保する戦略をやめた可能性が高い。西欧諸国も次々と脱原発している。いまだに原発に強くこだわっているフランスは、米国と別の独自利権だ。フランスは、1960年代に対米従属をやめて自主独立の国是を開始して以来、米国から自立した独自の原発産業を持っている欧州で唯一の国だ。(フランスの変身)

 米国の原発産業の2大企業は、ゼネラル・エレクトリック(GEエナジー)とウェスティングハウス(WH)だが、いずれも2006−07年に日本企業に事実上身売りされている。WHは06年に東芝に売却された。GEエナジーは07年に日立との企業連合体(GE日立ニュークリア・エナジー)に変身した。東芝の買収額は、WHの企業価値をかなり上回る高値買いだったが、当時は、これから中国など新興市場諸国が原発をどんどん建設するはずなので、東芝のWH買収額は高くないと言われた。

 しかし今になって考えてみると、新興諸国の原発建設が増えてWHが儲かるのなら、そもそもWHが身売りに出されることもなかったはずだ。WHは、00年に英国の国営核燃料会社(BNFL)に買収されたが、BNFLは6年後に東芝にWHを売却した。BNFLを所有する英国政府は、00年にWHを買ったときは新興諸国の原発が増えて儲かると考えたはずだ(BNFLはWHと同時にスイスのABBの原発部門を買収した)。だが、06年にWHを売却したとき、英政府は、もはや原発が儲かるとは考えていなかったことになる。(Westinghouse Electric Company From Wikipedia)

▼覇権構造めぐる暗闘と核の関係

 ここで注意すべきは、原発産業が軍産複合体(核兵器製造業)の傘下にあり、市場原理でなく政治原理で動く分野だという点だ。核兵器は究極の兵器として、第二次大戦後の世界体制(覇権構造)を形成する国際政治の道具である。戦後の世界体制は、米英覇権型のデザインを推進する勢力と、多極型のデザインを推進する勢力との暗闘的・諜報的なせめぎ合いの中で形成されてきた。核兵器は、米英同盟のマンハッタン計画によって戦時中に開発されたが、戦後、英国の要員がソ連に核兵器の技術を漏洩させてソ連を核武装させ、米英とソ連が核兵器で対立する冷戦構造が作られた。

 半面、フランス(1960年)と中国(64年)に核兵器技術が漏洩され、米英仏露中という国連安保理の5大国が核武装して核の均衡状態を作る多極型の動きも起こった。5大国だけが核武装を許され、他の国々の核武装は許されない国際社会の規則が68年の核拡散防止体制(NPT)で作られた。核兵器は、表(国連などでの外交)と裏(米英露など各国機関による諜報)の国際政治活動の中で、米英覇権の維持を目指す勢力(冷戦派。軍産複合体)と、多極型への覇権転換を目指す勢力(キッシンジャー、CFRといったロックフェラー系が主力。多極派)の両方が違った方向に使う、世界体制のデザインの道具の一つだった。

 ニクソンやレーガン時代の多極派の画策が功を奏して冷戦体制が崩れた70−90年代にかけて、冷戦派は、5大国以外の国々がどんどん核兵器を持つように仕向け、その結果、イスラエル、インドとパキスタン、北朝鮮などが核兵器を持つに至り、イラクやリビア、韓国、台湾なども一時は核武装を目指した。米ソ冷戦が終わっても、印パや朝鮮半島、中国台湾、中東(イスラエル対アラブ)などで、冷戦型の恒久分断が続くようにする画策が行われた。対立する双方の国々が究極の軍事力である核兵器を持てば、双方は和解を拒否して譲らなくなり、国際社会が両国に核を破棄させるのが至難の業となり、事態は恒久分断に近づく。

 01年の911以後、冷戦派は「テロ戦争」の構図を世界的に作って米英覇権を維持する策を開始した。だが、米中枢に潜り込んだ多極派のスパイたるネオコンなどによるイラク戦争など過剰で自滅的なな軍事戦略の結果、テロ戦争は05年ごろから崩壊の様相を示した。08年のリーマンショック以後、米英の経済力の源泉だった債権金融システムが崩壊し、米英覇権は経済面でも崩れだした。同時に、BRICや上海協力機構など、中露主導の多極型の新世界秩序が静かにユーラシアの内側から立ち上がり、世界体制が多極化していく傾向が続いている。

 このような米英覇権派と多極派との世界体制をめぐる暗闘、米英覇権の崩壊傾向、多極派の優勢などの状況と、核兵器という道具のあり方を合わせて考えると、核兵器をめぐる将来像が見えてくる。それは、オバマが核兵器の廃絶を目標として掲げていることにも関係しているのだが、この先、米英覇権が不可逆的に崩れて多極型の世界体制が確立した場合、大国だけが核兵器保有を許されるかたちの、以前に模索された多極型世界ではなく、大国も含めて核兵器の全廃が模索されるのではないかということだ。(オバマの核軍縮)

 一部の国だけが核兵器保有を許されると、英国あたりの諜報機関の地下化して生き残った勢力が、核技術を他の国々に漏洩させて多極型の世界秩序を壊そうとするだろう。だからすべての核技術を規制しないと意味がない。核兵器の全廃には、核技術の全廃が必須だ。ウラン濃縮やプルトニウム製造といった、核兵器製造と同じ工程を持つ原発産業は、世界的に終了させていく必要がある。

 欧州ではフランスがまだ原発を積極推進しているが、フランスは今後EUとして、脱原発を決めたドイツやイタリアなどと国家連合を強化していかねばならない。フランス以外のEU加盟国の多くが脱原発の方針になると、フランスもいずれ原発をやめる方向に転換せざるを得ない。中国は福島事故後、来年まで原発建設の凍結を決めたが、その後どうするかが注目される。原発を世界的に全廃すると、より困窮するのは、低成長に入った先進国よりも、これから電力需要が増える新興諸国だ。しかし石油ガスの世界的な利権の大半は、すでに新興諸国の国営企業が持っている。(反米諸国に移る石油利権)

 こうした歴史の流れと、英政府の核燃料会社(BNFL)が米国の原発会社WHを00年に買収して06年に売却したことを重ね合わせると、一つの推測が浮かび上がる。BNFLがWHを買収した00年は、テロ戦争の開始によって軍産複合体が再拡大していきそうな(テロ戦争の原型は米国がタリバン敵視に転じた98年ごろに始まった)時期であり、WHを東芝に売却した06年は、イラク戦争の失敗が確定して軍産複合体が崩壊し始めた時期だった。覇権暗闘の当事者でもある英政府は、多極派が勝つと原発産業が潰されていくことを知っており、裏の事態を何も知らない日本の東芝にうまいこと言って、潜在価値の減ったWHを高値買いさせたのではないか。

 日本政府(外務省など)は、米英に対する「覇権を二度と追い求めません」という誓いの意味で、戦後一貫して諜報的な活動を自粛している。国際野心を再燃させて米英に潰されるより、騙されても米英の言いなりになった方が日本国にとって良いという敗戦の教訓からだ。だから、東芝が英政府の売却の意図など全く知らずWHを高値買収してババをつかまされたのは、仕方ないことだった。

 東芝のWH買収から5年後の今年、福島原発事故が起こり、それを引き金(トリガー)として、米当局が日本に対し「こんなひどい事故が起きたのだから日本は原発を全廃した方が良い」と圧力をかけ始めた。テロ戦争のトリガーとなった911事件は、数々の怪しげな点があり、米当局の自作自演くさいが、いくら世界最先端の米軍でも、大地震や大津波を思ったように起こせる技術があるとは考えられない(米軍地震発生説をいくつか読んだが信憑性が薄いと感じる)ので、自然災害として起きた311の大震災を待ってましたという感じで、米政府が日本に圧力をかけ始めたのだろう。

▼誰がストレス試験をやれと言ったか

 7月4日、全国各地の原発立地の市町村長に先駆けて、佐賀県の玄海町の岸本町長が、地元の九州電力・玄海原発の再稼働を了承した。その直後の7月6日、日本政府は、すべての原発のストレス試験(耐性テスト)を実施すると唐突に宣言した。前週に海江田経産相が現地を訪問し、ストレス試験などせず原発を再稼働しても安全だと太鼓判を押して町長や知事を説得したばかりだった。町長は、いったん了承した原発再稼働を撤回せざるを得なくなるとともに、面子を潰され、今後ストレス試験で玄海原発の安全性が認められても、簡単に再稼働を了承することはできなくなった。同じ日には、九電が子会社の社員らに原発推進のやらせ投稿を要請していたメールが暴露された。九電の権威は失墜し、原発の再稼働を地元に強く求めることができなくなった。

 一週間前に現地を説得した海江田経産相も面子を潰された。ストレス試験は、政府の中で経産省よりもさらに上層部の意志決定ということになる。以前IAEAが日本に原発のストレス試験を提案した時、日本政府は断わっていたが、今回は一転して急にやることになった。誰の意志決定なのか。菅首相が独断で決めたと考えるより、これまでの経緯から考えて、また米政府の原子力安全委員会(NRC)あたりが画策し、絶妙のタイミングでオバマが菅首相に電話して、ストレス試験をしろと要求した可能性がある(米NRCは、自国の原発についてのストレス試験について、やる必要はないと言っている)。

 今回のドタバタ劇は、全国の他の原発立地の市町村長たちに、地元の原発の再稼働を簡単に承認しない方が良いと考えさせ、日本の脱原発を上から促進する効果がある。福島原発事故を受けて、日本人の多くは原発に対する懸念を一気に強めたが、それが反原発の市民運動の大きな高まりにつながる流れはあまり起きていない。我慢を美徳とする日本人の習性があるためか、日本では草の根からの脱原発が進まない。その分、日本を脱原発させたい米当局は、上からの謀略的な動きをせざるを得ない。

 米当局が日本に脱原発させたがっている前提で考えると納得できる動きのもう一つは、ソフトバンクの孫正義社長が、資金を投じ、脱原発としての自然エネルギー開発を猛然と開始したことだ。孫は、事故後の福島を訪問して衝撃を受け、脱原発に目覚め、自然エネルギー財団を設立することにしたと説明している。その説明自体は、それなりに納得できるとも感じる。

 だが「米当局が日本に脱原発をさせようとしている」という前提で孫の動きを見ると、もしかして孫は米国中枢の誰かから「米国は日本に脱原発をさせたい。日本は脱原発せざるを得なくなる」と聞かされ、これをビジネスチャンスと考えて、脱原発的なエネルギー開発に取り組むことにしたのではないかとも思える。米国側としては、日本の財界人の中に脱原発の旗振り役や出資者がいれば、日本の脱原発の動きが加速されて好都合だ。しかし、旧財閥や大手メーカーなど「財界村」で生きている企業の経営者がやると、東京電力から抑止や嫌がらせを受けるかもしれない。その点、孫のような財界村の外にいる新興勢力なら自由に動ける。楽天の三木谷浩史会長も、福島事故への対応を批判して経団連を退会したが、この動きも、孫と同じような背景かもしれない。

 日本人の多くは、社会で起きている出来事の裏読みや、いわゆる謀略の存在(諜報的観点)に慣れていない。謀略はイスラエルやロシアの話で、日本は無縁だと思っている。しかし今、日本のいろいろな政治的出来事が、確度の高いことしか言わない優等生的なマスコミの説明で納得できない事態になっている。これはおそらく戦後日本にとっての「お上」である米国の覇権体制の崩壊が進んでいることと関係している。この状態は、今後さらにひどくなるだろう。

http://tanakanews.com/110708nuclear.htm

日本は原子力を捨てさせられた?
2011年4月16日  田中 宇

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 米国の原子力規制委員会(NRC)のグレゴリー・ヤツコ委員長が、日本の福島原発事故が起きた3月11日以来、NRCの他の4人の委員の意見を容れず、独断でNRCの意志決定ができる独裁的な非常事態の体制を作っていることが、最近、米議会で問題になっている。(Senators Accuse NRC Chair Of Unnecessarily Invoking Emergency Powers)

 ヤツコはNRCで独裁的な態勢を作った後、3月16日に「日本の放射能は非常に高い」と発表し、福島原発から80キロ(50マイル)圏にいる米国民に避難を命じ、これによって、首都圏の外国人が恐怖に駆られて一斉に関西や国外に逃げ出す風評被害的な状況が作り出された。その後NRCは、日本政府の20キロ圏をはるかに上回る米国の80キロ圏の避難指示が、炉心の完全破損という現実より過大な事態を前提としたものだったことを認めている。(Gregory Jaczko Says Radiation in Japan 'Extremely High')(Gregory Jaczko Escalates Fukushima Nuclear Power Plant Warning)

 またヤツコは3月26日、福島原発事故について、日本政府が発表しているよりも事故の状況が悪いとする報告書を、NRCとしてまとめている。「1号機は圧力容器に全く水が入っていないようで、冷却の進展が疑問。2、3号機も1号機ほどではないが問題。燃料棒が溶け続けている恐れがある」「圧力容器は地震や爆発で脆弱化しているので、うまく冷却が進んで満水になると、こんどは特に余震時に自重で自壊しかねない」「使用済み燃料プールは、予想よりはるかに損傷している」「炉心への注水と汚染水の漏洩を無期限に続けねばならない」「一部がうまく機能しないだけで、再びひどい状況に戻りかねない」といった内容だ。(U.S. Sees Array of New Threats at Japan's Nuclear Plant)

 この報告書は重大な内容だが、それは日本政府が隠して発表しない新事実を根拠に述べているのでなく、日本側が発表した情報をもとに、事態を重大な方向に見積もっている感じだ。今では日本のマスコミなどもこの報告書に影響され、事態を重大な方向に見積もっているが、炉心がどのような状況になっているかは、何年か後に調査できるようになるまでわからない。

▼ヤツコに頼り切りのオバマ

 NRCは、原発に対する許認可など、米国の原子力発電をめぐる安全管理を監督する政府機関で、大統領が指名し、議会が承認した5人の委員で構成される。政府から独立した機関と位置づけられているが、原子力関連で重大な事態が起きたときには、大統領の代理人として機能する。カーター政権時代に起きたスリーマイル島原発事故の時がそうだった。(Nuclear Regulatory Commission From Wikipedia)

 現在のNRCの5人の委員のうち、民主党系はヤツコ一人だ。あとの4人は、共和党系(共和党議員の元科学顧問)、米軍系(海軍の原子力潜水艦の専門家)、米政府エネルギー省系(元同省技術者)、学者系(MIT教授)である。ヤツコはコーネル大学などで物理学を大学院まで学んでいる。(NRC The Commission)

 ヤツコは以前、米民主党のハリー・レイド上院議員の科学顧問だった。原発の安全強化を主張し、05年にNRCの委員に就任したが、その際、原子力業界からヤツコの就任に反対する声が出た。09年に就任した民主党のオバマ大統領は、同年5月にヤツコをNRC委員長に就任させたが、大統領が委員の中から委員長を選ぶ行為は、議会の承認を得る必要がないので、ヤツコの委員長就任に際し、原子力産業との結託度が強い議会共和党も反対するすべがなかった。(Gregory Jaczko From Wikipedia)

 そして今回の福島原発事故が起こり、ヤツコは即日、NRCの意志決定について独裁的な非常事態の体制を敷き、福島原発事故を厳しく見積もる作業を開始した。共和党系や米軍系など、国際的な原子力産業を擁護しそうな委員は、事故を厳しく見積もることに反対しそうなので、反対を封じるため、独裁体制を敷いたのだろう。非常事態は他の委員たちに伝えずに敷かれ、2週間以上経って議会が「福島の事故が、米国に汚染など何の悪影響も与えていない事故発生直後から非常体制を敷いたのは職権乱用だ」と問題にするまで、委員たちはヤツコに権限を剥奪されたことを知らなかった。(US Nuclear Chief Invoked Emergency Powers After March 11 Japan Quake: Sen Inhofe)

 オバマ大統領は、原発推進派である。79年のスリーマイル島事故の後、ほとんど止まっている米国内の原発新設を、「地球温暖化対策」や「中東石油依存脱却」を理由に再開することを目指している。オバマは、福島原発事故後も原発推進の態度を変えていない。

 しかしオバマは、福島原発そのものに対し、事故を厳しく評価するヤツコを信頼し、事故直後からヤツコから直接に福島事故について報告を何度も受け、ヤツコの記者会見はワシントンDC郊外のNRC本部ではなくホワイトハウスで行われた。福島原発事故に対するヤツコの発言は、オバマ大統領のお墨付きを得て、権威あるものになった。ホワイトハウスは、福島原発事故への評価について、ヤツコに任せ切り、頼り切りになっていると指摘する記事も米国で出た。(White House: In Gregory Jaczko we trust)

▼日本を「世界最悪」におとしめる作戦?

 ヤツコは、米大統領の権威を得て、原発事故に対する日本政府の認識が甘すぎるという趣旨の主張や情報発信を続けた。その流れから考えて、4月12日、日本政府が福島原発事故に関する国際評価尺度(INES)を唐突に5から7に引き上げたことに関しても、ヤツコがオバマの代理人として日本政府に圧力をかけた結果であると思われる。

 原発事故のひどさを示すINESは、0から4までの5段階について、地震のひどさを示すマグニチュードと同様、事故施設からのヨウ素131の放出量が10倍増えるごとに、評価の1つ格が上がる仕掛けになっている(死傷者数など、他の要素もある)。しかしINESの5から7までの重大な事故に関しては、避難指示の有無など、地元政府による対策が十分だったかどうかや、事故直後の風向きが放射能の拡散をひどくしたかどうかといった自然条件などを加味して決定される。地震と異なり、原発の大事故は、解釈によって5から7までの評価が変わってくる。(International Nuclear Event Scale From Wikipedia)(How can Fukushima crisis be rated as severe as Chernobyl?)

 福島事故の評価は最悪の7が妥当だという解釈を、日本政府が行ったことで、世界で最も安全な原発を作っていたはずの日本が、チェルノブイリと並ぶ「世界最悪」の原発事故を起こしてしまったという認識が、世界的に確定することになり、原子力産業に対する風当たりが、一気に世界的に強まることになった。ロシアやフランスといった原発技術の輸出国からは「福島事故に7に評価を与えるのは厳しすぎる。福島はチェルノブイリの10分の1の放射能しか放出していない。重大性が誇張されている」という反論が出された。これと対照的に、ヤツコのコメントは「7の評価が妥当だ」というものだった。(Fukushima's "red alert" sparks questions about rating system)

 日本政府(原子力安全保安院)自身が、福島事故の重大性を最悪の7に位置づけたことは「日本の原発は非常に危険です」と日本政府自身が認めたことになり、日本の原子力産業の自滅を意味している。今や、日本国内で原発立地を擁する自治体のトップの9割が、安全基準の見直しをしない限り、地元の原発の運転継続や再稼働を認められないと考えている。

 計画停電を早く終わらせたい東京電力の社長が「(07年の中越地震以来止まっている)柏崎刈羽原発の3号機を年内に再稼働させる手続きに入りたい」と言ったところ、地元の柏崎市長が猛反対を表明した。九州電力では、玄海原発で定期点検中だった炉の再稼働が、地元の反対を受けて延期せざるを得なくなった。再稼働すら困難なのだから、国内に新たな原子炉を建設することは、ほとんど無理な話になった。

 福島の事故は、まだ継続中の話だ。通常体制の冷却水循環の復活は無理だろうが、炉心に注水して漏洩する汚染水をできるだけ回収して放射性物質の放出を減らし、数カ月後に避難指示区域を縮小することは、まだ不可能と決まった話ではない。それが不可能になった時点で「7」に格上げするのが、より適切なやり方だった。(How Bad Is Fukushima Crisis?)

「余震で炉心がさらに壊れ、惨事が再発するに違いない」という予測に基づき「だから最悪の事故なのだ」とする考え方もあるが、今のところ、余震で炉心がさらに崩壊したとは確認されていない。INESは、すでに起きた事象に対する評価であり、予測や不確実性に対する評価ではない。現時点では、複数の炉の事故であることを勘案しても「6」が妥当だろう。そのような意見が国際的に専門家の間で強い。なぜ7なのかを解説した米国の記事は「潜在的な7だ」「7には上と下があり、チェルノブイリは7の上で福島は7の下だ」といった複雑な説明を強いられている。(Q&A: Is Fukushima as bad as Chernobyl?)

 事故への対策と、事故の重大性に対する評価は別なものだ。評価が軽い事故に対して万全の対策を行うことは十分できる。対策はできるだけ手厚く行うのがよいが、事故のひどさについて過剰な評価を行うことは、国内や世界の人々の懸念を掻き立て、過剰な反応を誘発して悪影響が大きい。日本は「世界最悪」を早々と自認したことで、国内で原発を増設することも、海外に原発を売ることも非常に難しくなった。こんな自滅的なことを、日本政府が自己判断のみで決めるとは考えにくい。(How Bad Is Fukushima Crisis?)

 政府は最近まで、福島事故に対する評価を、できるだけ低めに出そうとしていた。その日本政府が、突如として「2階級特進」の5から7への評価替えを発表した。そしてNRCのヤツコは、事故直後から、事実上の大統領の代理になって強大な権威を獲得した上で、日本政府は甘すぎるという批判を繰り返していた。対米従属の日本は、米政府からの圧力をはねのけることができない。そう考えると、日本政府が5から7に評価を変えたのは、ヤツコを筆頭とする米政府からの圧力を受けた結果である可能性が大きい。

 ロシアの原子力業界の重鎮は「7の評価は悪すぎる。日本政府は、保険金など財政がらみの理由で7にしたのだろう」と述べている。しかし私が見るところ、日本政府が一時的な保険金の授受で有利になるために、日本の原子力産業の長期的かつ広範な自滅につながる過剰評価に踏み切るとは思えない。(Level 7 for Fukushima overstated)

 世界最高の原発技術を持っていたはずの日本が、世界最悪の事故を起こしたという話になったことで、ロシアやフランスだけでなく、世界最多の原発を持つ米国でも今後、オバマが推進する原発の新規建設が困難になるかもしれない。福島と同様の「GEマークI型」の原発は、米国にもたくさんあり、同型の原発は35年前の開発時から格納容器が脆弱だと技術者から指摘されていた。オバマが原発を推進するつもりなのに、日本の原子力を自滅に追い込んだヤツコに事実上の大統領代理としての権威を与えてしまったのは矛盾する。

 ヤツコは、米政府内で福島原発事故に関する情報を日本政府から取ってきて評価する権限を自分だけに集中した上で「事態は日本政府の発表よりはるかに悪い」とオバマに繰り返し報告して信用させ、福島事故に対するオバマの頭の中のイメージ作りの過程を支配したのかもしれない。歴代の米国大統領の多くは、側近による情報判断歪曲の被害を受けている。ホワイトハウスとは、大統領をたらし込むための場所だと言っても良いぐらいだ。イラクを簡単に支配できるとネオコンに思わされ、米国の軍事力を大きく浪費したブッシュ前大統領が好例だ。

 事故後、米議会で議員が「福島の2号機の圧力容器の底が抜け、溶融した燃料が格納容器の底まで落ちているようだとNRCが言っていた」と発言し、日本でも大騒ぎとなったが、その後NRC自身が「そんなことは言っていない」と否定した。これもひょっとすると、ヤツコが議員に誇張情報を言い、騒ぎになって尋ねられたら否定するという扇動作戦だったのかもしれない。(Congressman: Reactor Number 2 Has Melted Down)

▼反原発の英雄?、イスラエル筋?、隠れ多極主義?

 ヤツコが日本政府に福島原発事故を過剰に悪く評価させ、日本の原子力産業を自滅させつつあるのなら、なぜヤツコがそんなことをしたのだろうか。まず出てきそうな反論は「ヤツコはそんな謀略をしていない」というものだ。「事故隠しをしていたのは日本政府や東電であり、ヤツコら米国側は、それを見破って是正させただけだ」「ヤツコがNRCに非常事態を敷いたのは、共和党など軍産複合体系の原発推進派からの妨害を防ぐための当然の行為だった」「福島に関するレベル7の評価は妥当だ。6が妥当と考える奴は原発推進派に毒されている」といったものだろう。私自身、そういう考え方はあり得ると思っている。(私は、日本の原発をすべて廃止していくことに賛成であるものの、福島事故の評価は6が妥当だと思っているが)

 原発を作るかやめるかという問題は、推進派と反対派との二者択一的な政治対立であり、相互に、自分が「正義」で相手が「悪」である。中立な専門家がいたとして、その人が言っていることが正しいと考える人がいるが、それは幻想である。事故後の炉内の状況は、放射線量の高さゆえ、専門家でもわからない。原発事故に対する評価には、政治的な色彩が不可避に入り込む。推進派と反対派の真ん中を取るという「中庸」もありうるが、それも政治的バランスに基づいており、政治色のない評価ではない。INESの事故評価も、政治的な判断である。

 ヤツコの行為をまっとうなものと考える立場は、原発反対派のものだ。ヤツコが原発反対派であるなら、福島事故の評価を重くするよう日本に圧力をかけるのは当然だ。この場合、原発推進派のオバマからうまく信用されたヤツコは、米政府内の「隠れ反原発派」と言える。

 とはいえ、米政界で原発を潰そうとする勢力は、原発が危険だと思っている人だけでない。米国がエネルギー源を原発に依存できるようになると、中東など産油地域に軍事力や外交力を行使して支配する必要が減る。米国の世界支配の枠組みの中で自国の力を保持している英国やイスラエルは、米国が原子力に傾注して石油を必要としなくなり、中東などから出ていくことを恐れている。スリーマイル事故後、米国で原発建設が進まなくなるよう、反対運動を扇動した人々(マスコミなど)の中には、親イスラエルの人も多かった。イスラエルにとって、サウジアラビアなどアラブ産油国は御しやすい。原発大増設の方が、イスラエルには脅威だ。つまりヤツコは、イスラエル筋からの要請に応え、米国を含む世界での近年の原発推進の流れを止めるべく、福島事故を機に、原子力で世界に冠たる日本に「世界最悪」のレッテルを貼った可能性もある。

 もう一つあり得るのは、私が前から推測してきた「隠れ多極主義」との関係だ。日本が原発をやめていくと、その後の日本は、世界から石油やガスを買う度合いを強めねばならないが、世界の石油ガスの利権は、BRIC(中露)やイラン、ベネズエラなど非米反米の諸国に支配される傾向が強まっている。日本が頼りにする米英系の石油会社が持つ利権は減り続けている。日本は、固執する対米従属の国是と裏腹に、非米反米的な諸国に頭を下げ、たとえ割高になっても、石油ガスを売ってもらわねばならない。フランスや米国など、原発を多用してきた他の先進諸国も同様だ。(反米諸国に移る石油利権)

 世界で計画中の原発62基のうち27基を手がけている中国の政府は、福島の事故を受け、新たな原発建設の許可を来年まで出さず、すでに進んでいる原発の建設も遅らせていく方針を発表した。これだけだと、福島事故が中国にとっても打撃であるように見えるが、同時に中国は、中東やアフリカなど世界中で石油ガスの利権をかなり獲得している。原発が世界的に廃止されていく場合、困るのは中国など新興諸国よりも、日米欧の先進国の方である。世界的な原発の廃止は、経済面での覇権の多極化を押し進める。(China suspends approval of nuclear plants)

 私の「隠れ多極主義」の推測とは、覇権国である英米の中枢で「世界体制をどうデザインするか」をめぐり、英米だけが覇権国であり続ける体制を好む勢力(帝国の論理)と、複数の大国が並び立つ多極型体制を好む勢力(資本の論理)の間で暗闘的対立があり、二度の大戦(ドイツに英国を潰させようとした)、国連の設立(安保理は5大国の多極型体制)、冷戦(米ソを対立させ、国連の多極型体制を壊した)などが、いずれも暗闘の副産物であるという見方だ。資本家は、米英単独覇権体制下で経済成長を封じ込められてきた途上諸国や中露などの成長を引き出すため、多極型への転換を狙っている。(隠れ多極主義の歴史)(資本の論理と帝国の論理)

 米政界では、米英単独覇権派の方が強いので、多極派は、単独覇権派のふりをして中枢に入り込み、イラク戦争や債券バブルの拡大と崩壊などを通じ、覇権拡大戦略を過剰にやって失敗させ、米国を自滅させることで、多極型への転換を目指している。このような多極化の道筋から見ると、福島事故を奇貨として世界の原発増設を退潮させ、石油ガス利権を持っている非米反米諸国を有利にすることは、隠れ多極化戦略の一つかもしれないと思えてくる。(多極化の本質を考える)

 ヤツコの思惑がどうあれ、ヤツコ個人が一人で考えて挙行したことではないだろう。非常事態を宣言し、後で考えると非常識だとわかる戦略を突き進むことは、911で始まったテロ戦争と同じ構図だ。ヤツコは実行役の代理人にすぎない感じだ。誰が意志決定しているのか、他の覇権的な事件と同様、全く見えないが、だからといって覇権的な戦略や暗闘そのものがないとは言えない。国際情勢の中には、隠れた覇権戦略の存在を推量しないと理解できない出来事が多い。

▼清貧で内向的な国力弱体は「悪」なのか?

 福島事故に「7」のレッテルが貼られ、東京電力や東芝、日立は「世界最悪」の原発を作って動かしていたことになった。原発推進を支えていた東電の権威や宣伝力は失われた。日本は原発廃止の方向に動いていくだろう(まだ確定的でないが)。原発の喪失は、日本の産業コストを引き上げ、経済成長を鈍化させ、失業や貧困を増やし、アジアにおける日本の凋落と中国の台頭に拍車をかける。世界的には、米国の覇権が経済、政治(軍事)の両面で凋落している。米国という後ろ盾を失う日本は、単独で中国と対峙する意志が少ないので、弱体化を容認し、内向的、国際政治から鎖国する傾向を強めるだろう。

 これまでの、明治維新以来の日本と世界の近代の価値観では「経済成長の喪失」「国力の低下」「弱体化」「内向化」「再鎖国」は、良くないことである。しかし大震災後、日本人に見えてきていることは「無理矢理に消費して、経済成長をしていかなくても良いのではないか」「外国から弱体化とか内向的とか見られても、日本人が自分たちの社会を良いものと思っていれば、それで良いのではないか」「外国人が逃げて行きたいなら、どうぞご自由に」といったことではないか。経済成長や国際社会での地位向上こそ最善・最優先という従来の価値観から、人々がそっと背を向けている感じだ。割高な石油を輸入するより、経済成長を鈍化させても節電して生きていく方が「清貧」を好む日本人の民族性に合致している感じもする。

 世界は、このまますんなり米英覇権が崩壊して多極化していかず、混乱が続くかもしれない。その場合、日本がしばらく(数年から数十年?)世界から背を向け、世界の中で「いないふり」を続けることは、変な戦争など(日本に多い無自覚的米英傀儡の人々が、米英に引っかけられ中国と戦争させられるとか)に巻き込まれにくくなる分、良いことともいえる。日本は、社会の安定と、工芸職人的な器用さでは、世界一級である。しばらく不活性な休眠状態が続くとしても、その後でまた、何らかのダイナミックな状況が国内に出てくる可能性も大きい(曖昧で精神論風の終わり方ですみません)。

http://tanakanews.com/110416japan.php


23. 2012年6月07日 14:36:30 : rbcmS8T3iM
地震よりも恐ろしいのが、テロ行為です。こないだ細野大臣がマスコミとともに4号機のプールのそばまで行きましたが、本来この建屋自体、周囲を重装備の兵士に守らせ、工作員やテロリストの侵入から遮断すべきです。また、東電の職員の身元等もそのような不審者がいないかを継続的にチェックすべきです。携帯型の迫撃砲やロケット弾を数発打ち込むだけで、300Km四方は人が住めなくなる可能性があることを、日本人なら自分のこととして、理解すべきです。一番悲しくなるのが、政府も含めて、多くの人がこのことにあまり関心がないことです。米国や西欧の諸国では間違いなく国家安全保障の観点から最重要警備区域にするはずです。

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