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日刊ゲンダイ本紙記者がまざまざと見た 福島原発廃炉作業の絶望
http://gendai.net/articles/view/syakai/136769
2012年5月29日 日刊ゲンダイ
30〜40年では到底ムリ
<東電は電力事業から手を引くべきだ>
福島原発事故から1年2カ月余り経った今月26日、東京電力が原発施設の一部を報道陣に公開した。同行取材した日刊ゲンダイ本紙記者があらためて感じたのは、廃炉実現に向けた作業の難しさである。野田首相は昨年12月に「収束宣言」し、政府は廃炉までに「30〜40年」と公表している。だが、現地を取材した印象は「絶望的」だ。「30〜40年」どころか、今世紀中に廃炉できるのか。それすら怪しいのが実態だ。
記者を乗せた大型バスが福島原発の「免震重要棟」を出て真っ先に向かった先は4号機。バスを降りて原子炉建屋の南西70〜80メートルの位置から見上げた地上約50メートルの建物は、水素爆発で屋根が吹き飛び、無残な姿をさらしている。事故後、ガレキを一部処理したとはいえ、ほとんど手付かずの状態だ。厚さ1〜2メートルの分厚いコンクリートの壁はボロボロで、辛うじて残った壁や柱も、ちぎれた鉄筋があちこちから飛び出している。事故直後のような生々しさだ。
東電は「4号機建屋は震度6強の地震に耐えられる」と説明しているが、次に大地震や津波の直撃を受けたら「倒壊」は避けられないことは容易に想像がつく。「メルトダウンしたら世界が終わる」と世界を震撼させている計1535本の核燃料が、そんな“ボロ屋”に今も保管されている。
東電は来年末から、4号機の燃料取り出しを始める計画を立てている。7月にも、使用前の燃料をクレーンで試験的に取り出す方針だ。使用前の燃料は、核分裂させた使用済み燃料とは異なり、取り出す際のリスクが低い。“本番”の使用済み燃料の取り出しは、建屋南側に屋根を覆う形の「L字形建物」を造り、燃料を1本ずつ引き上げる予定だ。ところが、建設予定地には震災時に発生したガレキや鉄骨などがごちゃごちゃに埋まっていて、工事は「ようやく基礎工事に入った段階」(東電関係者)。燃料取り出しどころか、建物建設計画すら怪しいのだ。
<線量計は鳴りっぱなし>
しかも、今回の現地取材であらためて分かったのは、怖いのは4号機だけではないということだ。
取材バス車内で、記者たちが自前で持ち込んだ線量計が一斉に「ピーピー」と大きな警告音を発したのは、3号機から2号機のタービン建屋裏の海側の道を走っていた時だ。
「線量は、1500マイクロシーベルト(1.5ミリシーベルト)です」
同行した東電担当者が叫び、バス内に緊張感が走った。1.5ミリシーベルトといえば、通常の年間基準線量(1ミリシーベルト)を1時間で軽く超える。4号機は事故当時、定期検査中だったために原子炉が損傷せず、線量もそれほど高くない。重機を使った作業も可能だ。しかし、1〜3号機は線量が今も高く、人の作業はムリだ。敷地や建屋周辺には「即死レベル」の高線量地域がゴロゴロある。
となると今後、もっとも懸念されるのは、作業員の確保になる。福島原発では現在、1日約2500〜3000人が復旧作業に当たっている。しかし、全面マスク、防護服を着た作業のつらさは想像を超える。
記者も全面マスクをかぶり、防護服を着たのだが、気密性を高めたマスクは、骨格が合わないと顔の左右のこめかみ部分を“ウメボシ”されて痛くなる。そのうえ、常に息苦しい。大声で話さないと言葉を伝えられないし、相手の声も聞きにくい。少し歩いただけで汗が噴き出す。たった2時間、着ただけだったが、最後は酸欠状態で、生アクビが出る始末だ。
防護服に慣れたベテラン作業員でも、「作業は連続2時間程度が限界」(東電関係者)という。夏場の作業は過酷極まりない。積算線量が高くなれば、オーバーした作業員はどんどん現場からいなくなる。
<チェルノブイリでは6万〜8万人が作業した>
京大原子炉実験所助教の小出裕章氏はこう言う。
「86年のチェルノブイリ事故では、事故から石棺までの間に(7カ月間で)6万〜8万人が作業に当たったといわれています。チェルノブイリはたった1基の事故だったが、福島原発は4基同時に事故を起こした。今後、どのくらいの作業員が必要になるのか想像もできないし、日本だけで作業員を集められるのかどうか分かりません。そんな状況で30年後、40年後の廃炉など不可能です」
こうなったら、東電は電力事業からさっさと撤退し、福島原発廃炉作業に全力を傾注するべきだ。今のように片手間の作業でケリがつかないことは現場の東電関係者、作業員がよく分かっている。
勝俣会長や清水前社長以下、事故当時の役員を全員引っ張り出し、東電グループの社員を「徴兵」してかき集め、復旧作業に当たらないとダメだ。
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