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住民たちはトラックが入るのを止めようとして、警察隊と激しい揉みあいになった。=22日午後5時30分、北九州市日明積出基地。写真:筆者撮影=
【放射性がれき・北九州編〜下】警察隊投入、住民排除しトラックで搬入
http://tanakaryusaku.jp/2012/05/0004341
2012年5月22日 22:43 田中龍作ジャーナル
何としてでも西日本で一番に瓦礫の焼却をしたい――なりふり構わぬ野田政権と北橋健治・北九州市長の姿勢が露わになった。22日、北九州市は警察に出動を要請、住民の抵抗を押し切って瓦礫を市内のゴミ焼却場に搬入した。
この日、宮城県石巻市から放射性瓦礫80トンが持ち込まれる『日明ゴミ焼却場』(※厳密には日明積出基地)の搬入口には、瓦礫の焼却に反対する住民が朝から大挙押し掛け警察とにらみ合いを続けていた。
膠着状態がわずかに動いたのは午後2時頃だ。警察が強制排除にかかり、搬入口前で体を張っていた2人の市民を公務執行妨害で逮捕した。その後もにらみ合いは続いた。瓦礫を積んだ大型トラック6台が一列に並び、今や遅しと入構を待った。
ピケを張る警察隊の足元でギターを奏で抵抗のフォークソングを歌う青年たちも現れ、緊張感の中にもかすかに和んだ雰囲気が漂った。門扉の前にしゃがみ込み般若心経を唱える女性(65歳)の姿も。「こうなったら仏様に頼るしかない」。女性は悲しそうな顔で一人つぶやくように語った。
午後5時過ぎ、事態が大きく動く。警察が増強部隊を送り込み、ピケはより強力になった。大型トラックのエンジンがかかる。
住民たちはトラックを止めようとするが、警察隊が力づくで押し返す。トラックは次から次へと構内へと吸い込まれて行った。あっという間だ。「お前ら人殺しの手伝いをするのかあ」。男性住民が忌々しそうに警察をなじった。
焼却場からは車で1分と離れていない場所に北九州市中央卸売市場がある。北九州市民の台所だ。子供の体内被曝を心配する住民が、瓦礫焼却に反対するのは当然の感情と言えよう。
これまで市民側の要求に満足な説明をしてこなかった北九州市環境局は、この日の午後6時30分から市内で説明会を開いた。瓦礫搬入から1時間後のことだった。
※
厳密には日明積出基地。日頃は焼却灰を最終処分場に向けて船に積み込む基地として使われている。今回は放射性瓦礫が仮置きされる。瓦礫は23日から隣の焼却工場で一般ゴミと共に燃やされる。
◇
【放射性がれき・北九州編〜上】 23日から試験焼却 「西日本を安全な食糧基地に」
http://tanakaryusaku.jp/2012/05/0004337
2012年5月21日 23:03 田中龍作ジャーナル
福島原発事故の放射能が付着した瓦礫が、関門海峡を越えて九州に持ち込まれる。宮城県石巻市から木屑が中心の可燃物80トンが22日、北九州市に到着する。同市では翌23日から試験焼却する予定だ。
環境省は「バグフィルターによって放射性物質は99%除去される」との見解を示している。だが瓦礫を焼却している静岡県島田市で計測したところ60〜70%しか除去できないことが明らかになった。細野豪志環境相のお膝元でさえ、このありさまだ。国民が不安に陥らないはずがない。
西日本に瓦礫が搬入されるのはこれが初めてとなる。到着前日にあたる21日、市民たちが動いた。「健康に関わる重大な問題であるにもかかわらず、十分な説明がないのは納得できない」として、大挙、北九州市役所に詰めかけたのである。
福岡県内だけではない。隣県の山口県や大分県などから足を運んだ市民が目立った。宇部市からはバスをチャーターして30人が訪れた。駆けつけた市民は総勢400人近くにのぼった。
西日本の玄関にあたる北九州市で「放射性瓦礫」が入ってくるのを堰止めたい、とする危機感の表れだ。北九州市が瓦礫を受け入れてしまえば、他県の自治体も「右へならえ」する恐れがある。
市役所訪問に先立ち市民討論会が開かれた。宇部市代表の安藤公門さんによれば、偏西風が北九州から山口県に向かって吹いている。「宇部は(北九州の)焼却場から目と鼻の先だ」と大きな手製の地図を見せながら説明した。
「西日本を安全な食糧基地として確保しておきたい」。安藤さんは力を込めた。
焼却灰が海に降り注げば下関名物の「ふぐ」も被害を受ける。九州の自治体が放射性がれきを受け入れればどうなるか。福岡市代表の原豊典さんは「九州全域の農産品が風評被害に遭う」と唇を噛みしめた。
「焼いたらいけん」。和紙に墨で書いたメッセージを紋付袴に張り付けているのは、大分県豊後大野市から来た男性だ。「大分県も知事や県議会が受け入れる方向じゃけんね」。男性は表情を厳しくさせた。
放射能に県境がないように、受け入れ自治体が次から次へと広がっていくことを市民は恐れ、怒っているようだった。
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