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(レビュー)
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チェルノブイリ後の人類への問い−−我々は、何故、死の灰から逃げられないのか?, 2006/4/26
By 西岡昌紀 -(2006年4月26日)
私が、初めてこの映画を観たのは、1970年代の東京の映画館においてであった。その時から、私は、この映画の虜(とりこ)であった。だが、私が、この映画が描く物の意味を本当に理解したのは、1986年のチェルノブイリ原発事故の後の事であった。−−私は、この映画を観る皆さんに、この映画における「水爆実験」をチェルノブイリ原発事故に置き換えて、この映画の会話を聞いてみる事を勧める。
「核」の問題は、黒澤明監督が、終生こだわり続けた主題の一つである。余り知られて居ない事だが、黒澤監督は、原子力発電に強く反対する人であった。又、黒澤監督が、晩年、原爆投下への抗議として作った『八月の狂詩曲』が、公開当時、試写会で、原爆投下を正当化しようとする外国人特派員の攻撃を集めた事は、黒澤監督の正義感を証明しこそすれ、何ら不名誉な事ではなかったと、私は、思って居る。
この映画の特異な物語を通じて、私達は、正常なのは、実は、この、老人であり、この老人の死の灰への恐怖を共有出来無い私達こそが、生きものとして、異常である事に気が付かせられるのである。
チェルノブイリ原発事故から数年経った或る時、私は、この映画を思ひ出し、その事に気が付いた。−−私たちが、死の灰から逃れられない本当の理由は、私達が、私達の日常生活を捨てて、逃げる事が出来無いと言ふ、ただそれだけの理由であると言ふ事。−−これこそが、この映画が描いて居る、私達全員の悲劇なのである。
(西岡昌紀・内科医/チェルノブイリ原発事故から20年目の日に)
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