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「4号機」今なお緊迫 再稼働より事故処理を
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東京新聞 平成24年4月17日 :横浜ママパパの放射線だより
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福島第一 冷却トラブル 燃料棒1535本入りプール 崩壊不安
関西電力大飯原発の再稼働に耳目が集まっている間、東京電力福島第一原発では4号機の使用済み核燃料プールが一時、冷却不能に陥った。地震のたびに「大丈夫か」とささやかれている、このプール。倒壊すれば、首都圏からの避難すら問われる「不測事態シナリオ」が現実になりかねない。いま、4号機プールはどうなっているのか。現在の事故対策で安全は確保されるのか。 (出田阿生、中山洋子)
12日と翌日、民主党の谷岡郁子参議院のツイッターには4号機関連の書き込みが殺到した。使用済み核燃料プールの冷却が停止した件で、原子力安全・保安院に状況を確認した内容をつぶやき続けていたためだ。
「次から次に書き込みが続いて、読むのも追いつけないほど。スロットマシンを見ているようでした」(谷岡議員)
東電によると、12日午後2時45分ごろ、燃料プールの冷却システムが自動停止。冷却水の配管接合部で水漏れがあり、部品を交換。13日午後4時に冷却システムを再起動した。この間、燃料プールの水温は当初の28度から、37.6度まで上昇した。腐食防止剤として冷却系統に注入している猛毒のヒドラジンも漏れていた。
谷岡議員は「接合部の部品がゆるんでいると説明された。ただ、保守点検が簡単にできない場所で、地震も続いている」と事態を懸念する。
1535本の燃料棒を保管する4号機プールの危険は事故当初から指摘されていた。昨年3月15日に4号機は5階屋根付近が崩壊。火災や爆発が繰り返されたとみられ、建屋上部の壁や天井が吹き飛ばされた。
海外から危ぶむ声
米原子力規制委員会(NRC)が公開した会議録によると、事故当時、米国が4号機の燃料プールを深刻視していたことがみてとれる。「東京にも影響が出る」と危ぶんで、避難範囲をめぐる議論が白熱していた。
著名な米国の原子力技術者アーニー・ガンダーセン氏も、事故直後出演した米CNNテレビで広範な避難を強調。その後もネットメディアなどで、余震による4号機の倒壊を危惧。「その場合は、日本の友人のみなさん、逃げてください」と呼び掛けている。
原子力委員会の近藤駿介委員長が昨年3月25日にまとめていた「不測事態シナリオ」でも、4号機プールで燃料棒が溶けた場合を仮定。半径170キロ圏が強制移住の対象となり、東京など250キロ圏でも避難を認めると試算した。
東電は今後、原子炉建屋に燃料棒を取り出す機器を取り付け、3年ほどで燃料を取り出す方針だが、それまで4号機の構造が耐えられるかを不安視する声は多い。
東電は昨年5月末、設計時に想定した最大の揺れにも耐えられると試算し、国に報告。7月末までにプールの底を鋼鉄の支柱とコンクリートで補強する工事をした。
東電の広報担当者は「工事はなくとも問題はなかったが、補強で安全裕度が2割増した。余震の備えはできている。これ以上の補強は考えていない」と話している。
現場「3年で取り出し完了 無理」
この補強で、本当に安全は担保されたのだろうか。芝浦工大の後藤政志講師は「支柱を支える床の強度が保たれれば、簡単には崩れないと思う。しかし、大規模な余震がくれば、それも分からない」と心配する。
最悪のシナリオはプールの底が抜け、核燃料が飛び散ること。後藤講師は「近づけば必ず死ぬ使用済み核燃料をどう回収し、水の中に戻すのか。現在の科学では対処は不可能だ」と話す。
京都大原子炉実験所の小出裕章助教も「再稼働うんぬんの前に、4号機の使用済み核燃料を一刻も早く安全な場所に移すことが最優先課題。次の地震がいつ来るか分からない」と不安視する。
東電は先月7日、4号機の原子炉建屋外にクレーンや核燃料取扱機を備えた逆「L」字形の骨組みを設置し、来年末から使用済み核燃料の取り出しを始める−という工程表を発表した。
爆発で壊れた既設のクレーンは先月撤去。秋ごろまでに、作業の支障となる骨組みや壁、鉄骨、がれきを撤去する。東電によると「取り出しは2年程度」。3年後には、使用済み核燃料を安全な場所に移すという。
しかし、米ゼネラル・エレクトリック(GE)元社員で、東電の協力会社「東北エンタープライズ」の名嘉幸照社長は「3年で取り出しを終えるのは無理だ」とみる。
「4号機プールについては、現場の感覚でいえば、準備に約3年間、取り出し完了は最低でも5年後では。水面から燃料が頭を出せば、近くの人間は即死する。クレーンひとつとっても正確なコンピューター制御が必要だ。簡単じゃない」
沖縄出身で事故後、福島県富岡町からいわき市に移った名嘉さんは、政府が早々と避難指示区域を再編したことを疑問視する。「4号機のプールで起きうる最悪の事態を回避する作業が終わっていないのに、帰還させてよいのだろうか」
水漏れや温度計が壊れるといったトラブルが相次ぐが、「仮設の機材や設備で事故処理に当たっているのだから、多少のトラブルは織り込み済み」と名嘉さんは言う。
「それよりもまず改善すべきなのは、事故処理を東電任せにしているせいで、現場の足が引っ張られていること。国が主導して、予算と人員を投入しなければ」
東電が巨額の賠償問題から経費節減を進めている影響は、事故処理の現場にも及んでいる。
「口頭発注であっても動かなければならない緊急事態にもかかわらず、東電から経費が回収できるのか分からない状態。民間企業としては、新たな機材開発を進めたり、大胆な工事をしたりといった挑戦ができない」
前出の谷岡議員も「設計上の耐震性はもはや意味がない。保守点検もなく、余震が続く状況で4号機の”体力”がどれほど残っているのか。東電に事故現場を任せていることに無理がある。東電の事故収束部門を切り離すなど、国がバックアップする態勢を考えなければならない」と説く。
名嘉さんは東電と政府の情報公開が不十分と指摘。加えて、現場の熟練技術者の減少も深刻な問題だという。一定の技術がある作業員が被ばくの限度量から、次々に現場に入れなくなってきている。人員確保には、東電以外の電力会社からの応援が必要と提起する。
「原発と共存してきた一人として、これ以上、福島、日本、世界に迷惑をかけられない。東電任せにせず、国を挙げて知恵を出し合い、事故処理に取り組むときです」
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