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[写真] 風評被害を心配し栽培をあきらめたシイタケ農家に保管された原木=岩手県一関市で、湯浅聖一撮影
毎日新聞 4月15日(日)15時35分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120415-00000013-mai-soci
食品に含まれる放射性セシウムの新基準値(一般食品は1キロ当たり100ベクレル)が4月から施行され、各地で連日、農水産物の基準値超えが判明している。出荷停止や風評被害は関東にも広がり、新たな課題も浮かんでいる。
◇シイタケ数値超え 全国的な原木不足に
新基準値超えが目立つのは原木シイタケで、13日までに茨城、栃木、千葉、宮城、岩手5県の計31市町で出荷停止。生産者や自治体からは「予想以上に厳しい」「終わりが見えない」と悲鳴が上がる。
5市が出荷停止となった茨城県。高橋恭嗣さん(53)が栽培する古河市では基準値を超えていないものの、「注文数は例年の半分以下」と風評被害に頭を抱える。
独立行政法人・森林総合研究所(茨城県つくば市)によると、シイタケはキノコ類の全国年間生産量(約36万トン)の3分の1を占める。キノコ類は植物の根に当たる「菌糸」が集まってできているため、葉や茎などもある他の農産物と比べ、セシウムを含む割合が重量当たりで高くなる。
菌を植える原木にはコナラやクヌギが使われるが、良質として各県に流通していた福島産で昨秋、当時の指標(1キロ当たり150ベクレル)を超えるセシウムを検出。4月からの食品基準厳格化に合わせ、林野庁は原木にも新基準(同50ベクレル)を設けた。その結果、業界は全国的な原木不足に陥っている。林野庁の調査では、他県に供給可能なのは全国9道県のみで、120万本が足りない状態。西日本では余裕のある地域もあるが、「輸送コストが高いうえ、木の品種が異なり、役に立てない」(熊本県椎茸農協)という。
「東日本原木しいたけ協議会」事務局長も務める高橋さんは「生産者は出荷という出口、原木という入り口の両方で苦しめられている」とため息をつく。茨城県林政課は「原木を除染している業者もいるが、森林の除染が進まなければ、今後も木が汚染される。対策の立てようがない」。おがくずを用いる菌床栽培にすればセシウムの影響を低減できるものの、原木栽培は個人農家が多く、転換するには栽培施設の整備費がネックになる。
栃木県ではほとんどの市町で原木シイタケが出荷停止となった。担当者は「100ベクレルは生産者にすると非常にハードルが高いが、それでも消費者は安心しないだろう」と話す。
基準値を超えたシイタケやタケノコの多くは露地栽培だ。農家の規模が小さく自治体が販路を管理しにくいため、千葉県では出荷停止後に一部が誤って出荷されるケースも起きている。船橋市では、市の通知を開封しなかった農家が中央卸売市場にタケノコを出荷。市場への市担当者の連絡も不徹底で、青果店などへの流通を食い止められなかった。
国は出荷停止の範囲を原則として都道府県単位としているが、自治体が出荷管理を徹底することを条件に、市町村など狭い区域に絞ることを認めている。自治体のミスが続けばその条件が崩れかねず、森田健作知事は12日の記者会見で「市町村にはしっかりとふんどしを締めてもらいたい」と強調した。
だがある自治体担当者は「主に自家消費のために生産している農家から市場に流通することもあり、情報を完全に把握するのは難しい」と漏らす。
群馬県中之条町では9日、野生のフキノトウから291ベクレルを検出し、地元JAが栽培ものも含むすべてのフキノトウを自主回収した。県林業振興課は「野生のものは管理できない。中之条町は温泉地が多く、たった一つのフキノトウが町全体に風評被害を広げはしないか」と懸念する。【井崎憲、酒井雅浩、田中裕之、中村藍】
◇流通自粛の動き 東電の賠償額は膨張必至
農林水産物の出荷停止や風評被害に対しては、国が損害賠償の指針を示している。これに基づき東京電力が生産者と協議し、支払いに応じているが、対象の拡大に加え、消費者の信頼確保のため法的基準より厳格な対応をする動きも出ており、賠償額が一気に膨らむのは必至だ。
昨夏、餌の汚染が問題となった牛肉について、厚生労働省は9月まで旧来の暫定規制値(同500ベクレル)を適用する経過措置を設けた。3月まで500ベクレル以下だった牛が放射性物質を含まない餌を食べ続けて100ベクレル以下になるまでに、半年は必要というのが理由だ。さらに牛肉は冷凍で長期保存が可能なため、3月までに出荷された500ベクレル以下の肉の在庫がなくなるのを待つ意味もある。
だが農林水産省は「風評被害や消費者の安心を考える」として、4月以降に出荷した牛肉に新基準値を「前倒し」することを決定。これを受け、群馬県は106ベクレルの牛を出荷した渋川市の農家に対し、この牛の焼却処分を要請した。
この農家では他の3頭から82〜86ベクレルを検出、いずれも新基準値以下だったものの、「販売先を見つけるのは難しい」としてすべて流通させなかった。法的には流通可能な肉だが、県畜産課は「東電に損害賠償請求するつもり」という。
茨城県は独自の判断で新基準値の半分(50ベクレル)を超えた魚の出荷を自粛している。担当者は「東電からは(独自の出荷自粛分も)賠償に応じると回答をもらっている」と説明するが、「いかに速やかに支払われるかが一番の課題だ」とクギを刺す。
実際、福島県では支払いの遅れで畜産農家が困窮し「このままでは廃業に陥る」との声が出ている。【神足俊輔、奥山はるな】
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最終更新:4月15日(日)18時2分
毎日新聞
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