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投稿者関口博之msehi
http://d.hatena.ne.jp/msehi/
戦後の躍進する日本にとって、光る東芝の歌「光る光る東芝、回る回る東芝、走る走る東芝・・・」は未来への希望であった。
(注1)シーメンスは戦前の反省から人類への貢献を掲げ、ユダヤ人の賠償にも積極的に取り組み、新自由主義に強く感化されるまではドイツ市民にも愛されていた。
(注2)http://www.siemens.com/entry/de/de/
(注3)http://www.siemens.com/innovation/de/publikationen/buchtipp-zukunft-2050.htm
(注4)http://www.toshiba.co.jp/index_j3.htm
(注5)米国バージル・C・サマー原子力発電所建設運転許可の承認について
(注6)仙谷、前原が参画するベトナムプロジェクト
(注7)週刊金曜日 http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/?p=705
(注8)ランディス・ギア社の株式取得について
(注9)韓国の風力発電機器メーカーとの業務提携および転換社債の引受について
それはシーメンス同様戦争に協力してきた反省からであったとしても、戦後の日本に光を与えた。
しかし現在は福島原発の原子炉製造メーカーとして事故の陳謝や反省もなく、世界の原発新設に邁進しており、あたかも新自由主義の悪霊に捕りつかれたように人類の未来を滅ぼそうとしているように見える。
それは東芝のホームページと、新自由主義の悪霊を克服したシーメンス(注1)のホームページを比較すれば一目瞭然である。
シーメンスのホームページでは(注2)、代表の「今、私たちが適正な責任を担うなら、エネルギー転換に成功するだろう」という言葉が大きく掲げられ、将来像の宣伝サイトでは「2050年の未来」という冊子(PDF)とフィルムで、果敢なイノベンションを通して人類の未来を創ろうとする姿勢が見えてくる(注3)。
これに対して東芝では(注4)、家電製品から原子力発電に至る幅広い業務が紹介されいるが、未来への具体的な目標が見られない。
そしてニュースリリースには、「米国バージル・C・サマー原子力発電所建設運転許可の承認について」と題して、2006年に買収した子会社ウェスチングハウス社の新型加圧水型原子炉AP1000が中国で4基建設され、米国で6基の建設契約の締結がなされたことを誇らしく掲げている(注5)。
このウェスチングハウス社は1905年に電球の発売で創業し、1950年代以降加圧型原子炉の開発製造を主導し、原発の世界市場を制覇した巨人であった。
その栄華も1979年のスリーマイル島原発事故で経営的に行き詰まり、1980年代から事業部門の売却や分離が進み、1998年には最後に残された原発製造部門が英国原子力巨大企業BNFLに売却された。
しかしBNFLも英国及EU内で新設が進まないことから経営的に行き詰まり、2006年東芝に売却したのであった。
世界の原発産業が経営的に行き詰る中で、東芝がウェスチングハウス社を6000億円の高額で買収した背景には、日本の一貫した原発推進政策と国家戦略があった。
すなわち日本には、原発ルネサンスを自ら主導し、産業の建て直しと同時に世界をリードする目論見があったからだ。
事実2010年には、官僚主導で官民共同出資の「国際原子力開発」を発足させ、菅首相自ら原発受注の売り込みに当たる国家主導で、インドや中東で交渉にあたり、べトナムでは2基の原発受注し、マスメディアが述べるように170兆円市場の原発受注ウォーズを開花させようとしていた(注6)。
しかもこの国家主導の受注ウォーズでの主役は東芝であり、元最高判事などを含めてこれまでに20人の官僚が天下りし、国との太いパイプで結ばれていた(注7)。
しかし福島原発事故が起きると、状況は一変した。
何故なら原発ルネッサンスは「原発事故は起きない」という前提によって成り立っており、原発事故リスクがあるなら、受注契約でなされた低利融資や長期安全保障ができなくなり、世界を金融危機に陥れたサブプライムローン同様に破綻を免れないからだ。
もし福島原発が60年間という長期保障契約であれば、原子炉販売者のゼネラル・エレクトリック(GE)社は、避難地域の住民保障、産業の損害保障、除洗などの費用、長期に渡る低線量被ばくによる被害補償などで、数百兆円を支払わなければならなくなり、どのような巨大企業、そして国でさえも支払いが困難である。
恐らく東芝は福島原発事故で、天と地が引っ繰り返るほどの衝撃を受けた筈である。
それは、福島原発事故後の業務展開の激変を見れば明らかであり、5月にスイスのスマートメーターの世界的大手企業ランディスギアを買収し(注8)、さらに韓国の風力発電のユニスン社の株式を転換社債の3分の1収得で業務提携した(注9)。
スマートメータは家庭や企業の瞬時の電力消費情報を発電施設に送信し、効率的発電を実現するものである。
その世界的メーカの子会社化は、電力の節電への戦略シフトであり、再生可能エネルギー普及への戦略シフトを意味している。
もし従来の路線を踏襲するのであれば。原発が稼動している間絶えず同じ一定の莫大な発電をすることから、スマートメータによる効率発電や再生可能エネルギーの実需がなくなり、再生可能エネルギーの電力割合も少量に制限されることから、そのような買収や提携は有り得ないからだ。
東芝は太陽光発電や蓄電池技術では既に世界的レベルにあることから、風力発電とスーマートメータ技術を組み合わせれば、未来を創る世界の覇者となることも可能である。
すなわち太陽光発電や風力発電は、それを補う天然ガスの熱併合発電が必要であり、その際スマートメータや蓄電池が不可欠となり、熱併合発電の蒸気タービンも得意の分野であり、どの分野でも秀でていると言えるだろう。
しかし再生エネルギーへの転換を阻む最大の要因は原発であり、原発ルネサンスを世界に推し進めることは、好機を逸するだけでなく、自らを滅ぼすことである。
それは、20世紀の幕開けに電球の発売で光を点し、世界の原発市場を制覇することで逆に原発に飲み込まれていき、21世紀を待たずして光を消したウェスチングハウス社の末路を見れば明白な筈だ。
しかしドイツ統一で、アメリカ資本が東ドイツの財産を公務員の買収で合法的に掻っ攫ったように、つい最近までのシーメンスは相手国の公務員の買収を経営戦略とするほど酷く、ドイツ人なら誰でも知っているほど悪名高かった。(日本語資料シーメンス贈賄 http://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/09061101_ishikawa.pdf)
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2012_03/pr_j3101.htm#str-header
170兆円市場「原発受注ウォーズ」最前線【2】
http://president.jp/articles/-/2119
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2011_05/pr_j1902.htm
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2011_05/pr_j2302.htm
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