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かみ・まさひろ/東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門特任教授。1993年東京大学医学部医学科卒業。2005年より現職。東日本大震災以降、福島県での被爆調査や健康相談などで活躍している。
Photo by Kiyoshi Takimoto
【第18回】 2012年3月30日
http://diamond.jp/articles/-/16856
福島第一原子力発電所の爆発事故による放射能汚染に苦しむ福島県は、放射能を恐れて医師たちが逃げたことで、医師不足に拍車がかかっている。行政の対応も遅く、被爆調査も進んでいない。そんななか、気概のある医師が福島を勤務地に選ぶ動きも出て来た。福島で活動を続けてきた上昌広氏に現状と今後の展望を聞いた。(聞き手/週刊ダイヤモンド編集部 津本朋子)
福島県民はチェルノブイリよりも
内部被ばくは低く抑えられている
――福島県で医療支援活動をしておられますが、被ばくの現状は。
南相馬市立総合病院では、およそ1万人にホールボディカウンターという装置を使って、内部被ばくの調査を行い、結果を発表している。体重1キログラムあたり20ベクレル以下が36パーセント。およそ6割の人は検出限界以下だった。チェルノブイリでは半数もの人が20ベクレル以上だったから、これに比べれば、福島の内部被ばくはかなり低く抑えられている。
体重1キログラムあたり20ベクレル以下であれば、健康を心配する必要はまずない。この結果を知って、安堵した県民は多いはずだ。
ただし、ごくわずかだが、数値の高い人もいる。こうした人の生活習慣をヒアリングした結果、家庭菜園の野菜を食べているか、県内の農家から、放射能に汚染された果物を箱で買って大量に食べたなどが原因だったことが分かった。生活指導をすることで、こうした人たちも数値が下がりつつある。
しかし、ごく一部に、なぜ内部被ばくの数値が高いのか、原因が分からない人もいる。引き続き診察をしながら検証していく必要がある。
被ばくレベルは低いが
10年単位での警戒が必要
――大きな心配はしなくてよいということか。
福島県民の多くがとても慎重に食材を選んでいることと、日本は流通網が発達していてチェック機能が働いているため、汚染された食材が出回らないようになっていることが良かったのだと思う。
ただ、チェルノブイリでは、食物による内部被ばくのピークは事故後10年も経ってからだった。セシウムは水や風に乗って地域を循環する。これからも気を抜かずに計測し、汚染された食材が出回らないようにすることが重要だ。また、福島の食材が東京などに運ばれることもあるだろうから、福島県以外の都道府県も気を抜くべきではない。
また、被ばくと健康被害の関係については、まだ分からないことも多い。明らかに関係があると医学的に立証されているのは甲状腺がんのみだ。国は基準値作りに腐心しているが、医師の立場から見れば、一律に基準値を作ることはあまり意味がなく、家族病歴などに応じた、1人ひとりのオーダーメイドのカウンセリングが必要だ。
たとえば、高血圧の症状がある患者さんで、家系にはあまりがん患者がおらず、年齢も高齢であれば、僕は「被ばくを気にしすぎずに好きなものを食べて、散歩しなさい。ただし、食材はよく洗ってね」と指導する。年齢が若かったり、家族にがん患者が多数いるなら、また違った指導になる。
やる気のある医師が
福島勤務を志す
――南相馬以外での健康チェック体制は。
福島県内の医療状況は非常に悪い。原発事故後、被ばくを恐れた医師たちが県外に逃げ、とにかく医師が足りない状況だ。
また、国や県の動きも遅く、内部被ばくの調査や、結果の公表など、しなければいけない作業がすべて後手に回っている。その結果、県民は被ばくの現状すら分からず、やみくもに恐れが募るという状況に陥っている。
さらに悪いことに、動きが遅いくせに、民間の動きを牽制したがる。もっと民間にまかせて、どんどんホールボディカウンターを入れ、検査をすべきだ。
また、医師不足の解消も急務だ。といっても、ボランティア的な目的で福島に来る必要はない。むしろ、福島県での勤務は、志のある医師にとっては非常にやりがいのあるもので、夢の舞台といっても過言ではない。今や福島は、世界中の医師から注目されている。丁寧に臨床データを積み重ねれば、放射能被ばくについて、後世に素晴らしいものを残せるからだ。
現在、僕の知り合いでも、非常に優秀な医師たちが続々と福島での勤務を決めている。家庭の事情があるなら、週に数日だけの勤務でもいい。やる気のある医師たちに、ぜひ福島での勤務を考えてもらいたい。
世論調査
質問1
福島県産の食材について、どう考えているか。
積極的に食べている
食べているが積極的ではない
避けている
絶対に食べない
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