http://www.asyura2.com/12/genpatu22/msg/154.html
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「3月15日未明の菅前首相「東電本店訪問劇」の真相:“全面撤退阻止”ではなく、真逆の“一時退避要請”が目的の一つ」(http://www.asyura2.com/12/genpatu21/msg/883.html)のコメント欄03.で UWMb43k1dwさんが紹介してくれ、新規スレッドも立っているカレイドスコープの「4号機の奇跡」に対する評価である。
予め、MRさんが転載してくれた「4号機の奇跡」(http://www.asyura2.com/12/genpatu22/msg/121.html)の内容をお読みいただければ幸いである。
「4号機の奇跡」のベースになっている3月8日掲載の朝日新聞記事は、有料化されているためすべてを参照することはできなかったが、説明で引用する内容は次に示す朝日新聞記事からである。
@ 「4号機、工事ミスに救われた 震災時の福島第一原発」2012年3月8日03時00分
http://digital.asahi.com/articles/TKY201203070856.html
A 「震災4日前の水抜き予定が遅れて燃料救う 福島第一原発4号機燃料プール隣の原子炉ウェル」2012年03月08日
http://astand.asahi.com/magazine/judiciary/articles/2012030800001.html
■ カレイドスコープ「4号機の奇跡」に見える重大な誤読
カレイドスコープの「4号機の奇跡」は、「使用済み燃料プールの水は、3月11日以降も、燃料棒の上まで満ちた状態を維持しており、結果として燃料棒は、ほとんど無傷の状態のまま保たれたのです。これは、3月11日に地震が起こったときに、原子炉ウェルと使用済み燃料プールとの間を仕切っている壁が、地震の震動によってズレて、そこから原子炉ウェルの水が使用済み燃料プールに流れ込んだからです」と書いている。
朝日新聞が本当にそんな下手をうったのかと、ベースになっている朝日新聞の記事を読んだが、参照できる範囲に、プールの仕切りの壁が“地震の震動によってズレた”と判断できる内容は見当たらなかった。
朝日新聞の記事@は、「意図しない仕切り壁のずれ」とか、「実際には、燃料プールと隣の原子炉ウェルとの仕切り壁がずれて隙間ができ、ウェル側からプールに約1千トンの水が流れ込んだとみられることが後に分かった」とぼんやり書いているだけで、“仕切り壁のずれ”が、いつの時点で何によって起きたのかについて一切の説明をしていない。
“仕切り壁のずれ”がいつできたのかという問題は、実のところ、“奇跡”にとって重要な意味を持っている。
“仕切り壁のずれ”が大震災当日に起きていたら、それだけで、“奇跡”はたんなる“ホラ”になってしまうのである。
「4号機の奇跡」のベースになっている朝日新聞の記事@は、「東京電力福島第一原発の事故で日米両政府が最悪の事態の引き金になると心配した4号機の使用済み核燃料の過熱・崩壊は、震災直前の工事の不手際と、意図しない仕切り壁のずれという二つの偶然もあって救われていたことが分かった」という文章で始まる。
日本を壊滅に追いやりかねなかった4号機の使用済み核燃料プールの危機が回避できた説明に、「4号機の奇跡」や“4号機の偶然”を持ち出するのは、別段新しい手法ではなく、昨年4月末段階から幾度も用いられている手法である。当該朝日新聞記事と同工異曲の内容はこれまでいくつも語られているのである。
「4号機の奇跡」のベースになっている3月8日付朝日新聞の記事内容にもっとも近い話は、昨年6月19日に掲載された 読売新聞記事である。
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【引用】
二つのプールから水流入、4号機の燃料溶融回避
東京電力は19日、東日本大震災が発生した直後、福島第一原子力発電所4号機の核燃料一時貯蔵プールに、別の二つのプールから大量の水が流れ込んで危機を脱していた可能性が高いと正式に発表した。
二つのプールの水位が震災発生当時より4・6メートル下がっていることが確認できたためで、東電は同日、二つのプールに注水を開始した。
4号機燃料プールに沈められた燃料からは、計算上、数日でプールが沸騰するほどの熱が出ていたにもかかわらず、3月22日に注水を開始するまで十分な水が残っていたため、燃料の溶融が起きずに済んだ。
東電が計器を復旧させたところ、発生当時は満水だった「原子炉ウェル」と「機器仮置プール」という二つのプールから、約1000トンの水がなくなっていることが判明。地震の揺れか水素爆発による衝撃で、プールの間を仕切っていた鉄板がずれて燃料プール側に十分な水が流れ込んだとみられることがわかった。
(2011年6月19日23時02分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110619-OYT1T00558.htm?from=top
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読売新聞の記事も、「地震の揺れか水素爆発による衝撃で、プールの間を仕切っていた鉄板がずれて燃料プール側に十分な水が流れ込んだとみられる」と、水が流れ込んだタイミングについては特定していない。
“火災”もしくは“爆発”が起きた3月15日に隣接するプールから燃料プールに水が流れ込んだと説明するほうが、奇跡としての真実味は増す。
逆に、地震の揺れで奇跡が起きたと断定してしまうと、一気に眉唾物に転落してしまう。
なぜなら、カレイドスコープが書いているような“奇跡”が起きていたら、4号機の使用済み核燃料プールの水温が14日朝の時点で84℃まで上昇することはないからである。
(※ 今回の投稿シリーズで4号機燃料プールの14日朝の水温を83℃と書いてきたが、84℃が正しい温度だったのでお詫びして訂正させていただく。また、3月11日時点の4号機燃料プールの水温も、およそ30℃ではなく、およそ40℃と訂正させていただく)
4号機の燃料プールには10万本を超える膨大な使用済み核燃料が保管されており、その崩壊熱は、1日当たり100トンほどの水を蒸発させる大きさであった。
このような崩壊熱の見積もりは、3月20日以降に行われた4号機使用済み核燃料プールへの注水量に照らすと妥当性がチェックできる。
【3月20日〜30日の注水量】
20日:160トン
21日: 90トン
22日:150トン
23日:130トン
24日:150トン
25日:150トン
27日:125トン
30日:140トン
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合計;1095トン
政府・東電は、“ゾウ”や“キリン”と呼ばれた生コン圧送機も使い、20日から30日の10(11)日間に1095トンの注水を行った。
4号機燃料プールの崩壊熱で生じる温度上昇を抑制するためには、1日当たり100トンの注水が必要であり、逆に言えば、1日当たり100トンの注水を継続すれば燃料プールの温度を上昇させず維持することができるのである。
(※ 1〜3号機の原子炉も、このような考え方に基づき時間当たりの注水量を計算している)
4号機の使用済み核燃料プールは、全電源喪失による冷却システム停止後、1日当たり100トンの水が蒸発し、1日当たり水位がおよそ80cmずつ低下していくことになる。
4号機燃料プールに外から水が入ってこなければ、“火災”もしくは“爆発”が起きた15日朝の時点では、350トンの水が蒸発し、水位が280cm(3m弱)低下していたはずである。
このような条件下で、プールの仕切り壁が3月11日の地震でずれていれば、機器類プール&原子炉ウェルプールの水は、燃料プールの水位変化にシンクロするかたちで両方のプールの水位が平衡するまで燃料プールへと流れ込む。
機器類プール&原子炉ウェルプールの水温は季節や停電を考えると20℃未満と考えられるから、40℃を超える燃料プールに流れ込んだ冷たい水は、燃料棒集合体が浸かっている底に向かって下がり、暖められると水面に向かうという対流を継続する。
これは自然にある程度の冷却が維持されていることを意味するから、実際の経過のように、60数時間後(14日明け方)に水温が84℃になるようなことはないのである。
昨年6月の読売新聞の記事も、「地震の揺れか水素爆発による衝撃で、プールの間を仕切っていた鉄板がずれて燃料プール側に十分な水が流れ込んだとみられる」と曖昧に説明するのではなく、燃料プールの水温変化に照らせば地震当日に仕切り鉄板がずれたと考えることはできないから、“爆発による衝撃”でずれたと説明したほうが“賢明”だったのである。
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