最後は、脱・原発論になっていきます。すごい。

【聴き取りメモ】
■吉本隆明氏の「自立の思想」とは
　「大衆なるものがどういうものなのか」ということを社会的文脈全体を参照しながら徹底して考察して、あぶりだした理念的な「大衆」に、よりそった行動をとる。
（エリート主義は拒絶し、一般大衆が自立できるための根拠となるための思想を示そうとした）

ところが…
私たちの社会は変わらなかった。戦中、日本人は「短期決戦なら勝てる」という根拠なきデタラメを信じたふりをして戦争を続けたが、これと同じ事を現在の原発政策でしている。２００４年、原子力村では、原子力の合理的な議論はタブーになって、目をつむって前に進むしかないという状態である。

どこに問題があったのか…
吉本隆明氏には２つ欠点があったからだ。
　（１）ポスト・モダン哲学（現代思想）に対して、知識と造詣とセンスがなかった。
　　　※ポスト・モダン思想の基本は「根拠はない」ということ。それが分かっていない。
　　　※外国語ができなくて、論文を読まなかったのかもしれない。
　（２）資本主義を肯定する姿が、あまりにも軽薄すぎた。
　　　※ボードリヤールをふまえれば、それでは自分たちが何をしているのかさえ分からなくなってしまう。
　　　※ガルブレイスによれば、消費を喚起する欲望さえ、大企業の広告戦略によって作られてしまう。

商品を次々と消費する経済によって、私たちは資源を枯渇させてしまった。そういう資本主義を持続可能にするためにも欲望の構造を変えないといけなくなってしまった。
（そういう問題に吉本氏は無頓着だった。特に原発問題について）

原発がもつリスクは「残余のリスク」である。
１９８６年にウルリッヒ・ベックが「原発の事故は予測不可能で、計測不能、収拾不能で、事故の生起確率も分からないし、それがもたらす我々へのマイナスの利得も分からない」と言った。そのようなリスクは保険が作れないし、作ったとしても４人家族で毎月３２万円の保険料がかかることになる。

吉本氏が共産党を批判したことは正しかったが、決して知の巨人ではなかった。