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捨て場がない「核のゴミ」
2012/03/12
山根 小雪,大竹 剛
国論を二分する原子力発電所の行方はまだ見えない。脱原発かどうかに関係なく我々が解決しなければならないのが、原発が生み出す放射性廃棄物、いわゆる「核のゴミ」の処分だ。この問題を日経ビジネスは2012年1月30日号の特集『原発の後始末』で取り上げている。福島原発事故を巡る状況などで当時から変化している部分もあるが、問題に対する理解の一助になると考え、この記事を4回に分けて掲載する。
福島県庁に隣接する福島県自治会館1階。昨夏に急遽、設置した除染対策課の電話は、1日中鳴りっぱなしだ。
「なぜ除染した土を自分の町に保管するのか。福島第1原子力発電所に持っていってくれ」。最近多いのは、汚染土壌に関する苦情。長い時は1件当たり1時間を超える相談に、約20人の職員が辛抱強く答え続ける。
東京電力の福島第1原発事故は、おびただしい量の放射性物質を外部に放出した。政府は、放射線による健康被害が出ないレベルまで、表土を剥ぎ取るといった除染を進める方針を固めている。だが、除染に伴って発生する放射性廃棄物の行き場が、ない。
進まない除染
政府は2011年8月に「放射性物質汚染対処特別措置法」を制定し、今年1月1日に施行した。特措法が指定した102の市町村と政府で除染を進め、1兆円超の除染費用は東京電力が賠償する。除染を進めるための環境は整った。
だが、特措法の下で除染を開始しているのは、2011年1月12日時点で福島市と福島県伊達市、同県川内村の3自治体だけだ。福島県除染対策課の鈴木克昌課長は、苦しい胸中を明かす。「除染すべき範囲を100としたら、1もできていない。仮置き場が決まらなくて、除染したくてもできないんです」。
当初のシナリオでは、除染で生じる土などを、市町村が準備する仮置き場に持ち込む。3年後には、政府が福島県内に建設する「中間貯蔵施設」へ移送。政府は、30年間を上限に中間貯蔵施設で保管し、放射線レベルを引き下げた後、最終処分すると説明している。
まずは仮置き場を確保しないと、除染しても土を持っていく場がないわけだ。放射線は距離を置けば減衰する。ある自治体は、住宅地から離れた国有林に大型の仮置き場を造ろうと試みたが、近隣住民からの反対で頓挫した。
除染を開始した3自治体も、十分な仮置き場を確保しているわけではない。「数十世帯程度から成る地区単位で、小さな仮置き場を造るので精いっぱいだ」(鈴木課長)。
放射能は怖い。放射性物質が付着したゴミを、自分の住んでいる町に持ち込むなんて、絶対に認められない──。こうした感情が、仮置き場の設置を妨げ、「福島第1原発へ持っていけ」という県庁への苦情につながっている。
このままでは、中間貯蔵施設の候補地を見つけるのも至難の業だ。環境省によれば、除染で生じる土壌など放射性廃棄物の量は、東京ドーム12〜25個分に上る見込み。汚染土壌を10メートルの高さに積み上げるとして、中間貯蔵施設には2キロメートル四方に近い土地が必要で、日本原子力学会の試算では3兆〜4兆円の費用がかかる。政府の計画通り、3年後に建設するには、年内にも候補地を決めなければならない。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120301/229304/?mlp&rt=nocnt
政府は、福島第1原発にほど近い双葉郡8町村に中間貯蔵施設の受け入れを打診している。だが、1月12日に開催された福島県と双葉郡8町村の初会合にすら、受け入れ反対を表明し参加しない自治体があった。
放射能への恐怖は、実際には放射線が検知されない瓦礫の受け入れまでも拒絶させている。宮城県や岩手県の沿岸部には、今も処理し切れない瓦礫が積み上がる。環境省は、ほかの都道府県に受け入れを呼びかけているが、住民の反対で、思うようには進まない。
図解 日本版「核のゴミ」の処分
発電前後のウラン燃料の組成の変化
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核のゴミはこうして生まれる
日本の原発のスキームと発生する廃棄物
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http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120301/229304/?P=2
放射性廃棄物、つまり核のゴミは、主に原子力発電所と再処理工場から発生する。定期点検などで生じる放射線レベルの低い廃棄物は、ドラム缶などに入れ、低レベル廃棄物処分場に埋設する。処分が困難なのが、再処理工場から生じる高レベル廃棄物だ。
原発は、ウランが核分裂する際のエネルギーを利用するため、発電の前後で燃料の組成が変わる。発電後にはプルトニウムや核分裂生成物ができる。「死の灰」と呼ばれる核分裂生成物は放射線レベルが非常に高い。再処理工場は核分裂生成物を分離し、ガラスで閉じ込めて「ガラス固化体」を作る。
ガラスは放射線を遮ることはできない。ガラス固化体は、近づけば数秒で致死するほどの高い放射線を発しており、発熱量も多い。そのまま地層処分すると、熱がこもった状態で保管することになる。これを避けるため、約50年間地上で管理し、温度が下がるのを待って地下へ埋設する。
「TRU(超ウラン元素)廃棄物」も地層処分する。TRU廃棄物とは、放射線レベルはさほど高くないが、半減期が数十万年〜数億年と非常に長い放射性物質のことを指す。
世界で再処理を手がける国は、フランスやロシア、日本など少数。米国やドイツやフィンランドは、使用済み燃料を発熱量が下がるまで約50年間貯蔵し直接、地層処分する方針だ。
日本では地層処分の候補地すら見つかっていないのは前述の通り。ただし、 50年間地上で管理し、温度が下がるのを待って地下へ埋設する。
「TRU(超ウラン元素)廃棄物」も地層処分する。TRU廃棄物とは、放射線レベルはさほど高くないが、半減期が数十万年~数億年と非常に長い放射性物質のことを指す。
世界で再処理を手がける国は、フランスやロシア、日本など少数。米国やドイツやフィンランドは、使用済み燃料を発熱量が下がるまで約50年間貯蔵し直接、地層処分する方針だ。
日本では地層処分の候補地すら見つかっていないのは前述の通り。ただし、地下の特性を理解するために、日本原子力研究開発機構は岐阜県瑞浪市と北海道幌延市に地下実験施設を保有する。100〜300メートルの立坑と、数十メートルごとに横坑を掘り、掘削の手法や、掘削が地層に及ぼす影響、地下水の動態や特性などを調査している。
日経ビジネス 2012年1月30日号60ページ
−原発の後始末 捨て場がない「核のゴミ」− より
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120301/229304/?P=3
※図はリンク先を参照ください
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