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(書評)
放射能を怖がるな! [単行本]
T.D. ラッキー (著), 茂木 弘道 (翻訳)
http://www.amazon.co.jp/%E6%94%BE%E5%B0%84%E8%83%BD%E3%82%92%E6%80%96%E3%81%8C%E3%82%8B%E3%81%AA-T-D-%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AD%E3%83%BC/dp/481740728X/ref=cm_cr-mr-title
5つ星のうち 1.0
博士の異常な愛情−−いかにして私は恐れる事をやめ、原爆を愛する様に成ったか, 2012/3/6
By 西岡昌紀 -(2012年3月6日)
始めに、私は、内科医であり、放射線生物学の専門家ではない事をお断りしておきます。その上で、私のこの本についての意見を述べますが、以下に述べる私の意見は、あくまでも本書の内容についての意見である事をお断りしておきます。この書評を書いて居る現時点において、私は、まだ、ラッキー教授の原著と成る英文の論文は読んで居ないからです。その事に留意して、お読み下さい。
1)ホルミシス理論全般について:先ず、私は、自然放射線が、地球上の生物に対して、有害な作用ばかりではなく、有益な作用をも与えて居るとする仮説自体を否定する者ではない事を明確にしておきます。それどころか、この仮説が妥当な部分を含む可能性は相当有ると考えて居ます。それは、地球上に生命が出現する以前から、地上には放射線が降り注いで居た事に加えて、本書でも紹介されて居る自然放射線の遮断実験には、それらが正しい方法で行はれたのであれば、その仮説を支持する論拠としての意味が有ると思ふからです。ただし、これらの遮断実験がこの仮説の論拠として意味を持つのは、あくまでも、その遮断された自然放射線の線量においてです。又、こうした自然放射線の遮断実験は、多数の様々な人間について、長期に渡っては行なはれて居ない様ですので、人体にとっての低線量放射線の影響を論じるには、なお不十分です。そして、以下に述べる様に、ラッキー教授は、遮断実験の結果を拡大解釈し過ぎており、その拡大解釈の道具として、広島・長崎の疫学研究が、無批判に、恣意的に利用されて居る事を批判したいと思ひます。
2)ラッキー教授の論文について:あくまでも本書に収められた3つの論文についてだけ述べるなら、これらの3論文は非常に粗雑です。そして、論理的な自己矛盾すら含んで居ます。具体的には、ラッキー教授は、原爆の被曝によって被爆者の寿命が延びて居るとして、それを「原爆の健康への効用」と呼ぶ訳ですが、それで居て、本書84〜85ページにおいて、ラッキー教授は、こう書いて居るのです。−−「日本の被曝生存者のうち軽い被曝線量であった人々の平均寿命が増加していることは、被曝者に対する医療行為の効果かも知れないし、放射線ホルミシス効果によることかもしれないし、あるいは両方の効果によるものかもしれない。」(本書84〜85ページ)これでは、自身の作業仮説(原爆の低線量放射線によって一部の被爆者の寿命が延びて居るとする仮説)が証明されて居ない事を、自ら認めて居るのと同じではありませんか(!)。実際、生存した被爆者の寿命については、男性の場合、被爆者健康手帳を早期に取得した被曝者ほど、長生きする傾向に有るある事を、広島大原爆放射線医科学研究所(原医研)の大谷敬子研究員、大滝慈教授たちが、2007年に報告しており、「ホルミシス効果」ではなく、被爆者手帳による医療の無料化が、被爆者の寿命延長の原因である事が示唆されて居ます。もし、被爆者の長寿化の原因が放射線の「ホルミシス効果」だと主張するならば、当然、医療によって被爆者の寿命が延長して居る可能性を否定しなければ、そんな事は言へません。ところが、大谷敬子研究員らの研究は、被曝者が、被曝者手帳の取得が早いほど長生きして居ると言ふ疫学的事実によって、ラッキー教授が「原爆の健康への効用」なる仮説に反証を突きつけて居る事に成ります。それに対して、ラッキー教授が、2008年のこの論文で、大谷敬子研究員らのこの研究に反論して居るかと言へば、全く言及が無いばかりか、「医療行為の効果かもしれない」と、自分で言って居る(笑)のですから、杜撰な論文と言はれても仕方が無いのではないでしょうか?(アクセプトする方もする方ですが)又、広島、長崎の被爆者に関する疫学調査では、建物の遮蔽効果を無視した線量推定が行なはれて居る事を国連の科学委員会(UNSCEAR)は指摘して居ます。つまり、被爆者の線量は、過大に推定されて居ると言ふ批判ですが、ラッキー教授は、何故、UNSCEARのこの批判に言及して居ないのでしょうか?次に、コバルト60を含んだ建材で建てられた台湾のマンションの事例は「ホルミシス理論」関連の本で良く出て来るのですが、そのマンションの住民と一般台湾住民の間に有る危険因子の違いは、コバルト60だけではありません。そのマンションの住民の方が、癌死亡率が低かったそうですが、先ず、比較するなら死亡率ではなく発生率でなければいけない筈です。そして、そのマンションの住民と他の台湾人の間に、経済力の差などから来る医療へのアクセスの差は無かったのか?異癌の原因と成り得るヘリコバクター・ピロリ菌の保菌率に差は無かったのか(水道水を飲むのと井戸水を飲むのとで、この菌の保菌率は大きく変化します)、喫煙率に差は無かったのか?更には、本省人と外省人の遺伝的素因の差は無かったのか?等、多くの因子が検討されなければなりませんが、ラッキー教授は、そんな事には全く触れて居ません。まだまだ有りますが、スペースの理由で、ラッキー教授の論文についてはここまでにします。
3)茂木弘道氏の見解について:先ず、経済学部出身の茂木氏が、良く勉強された事は認めます。認めますが、残念ながら、書いておられる事は滅茶苦茶です。具体的に述べると、(1)茂木氏は、低線量放射線の照射によって、活性酸素を無害化する酵素であるSOD、GPXなどが活性化する事を挙げ、だから低線量放射線は体にいいと言ふ趣旨の論理を展開しておられます。(38〜39ページ)しかし、それでは質問しますが、そのSOD、GPXが、低線量放射線の照射によって活性化するのは何故なのでしょうか?その有害な活性酸素が増加するからではないのでしょうか?つまり、SODやGPXが活性化したと言ったって、それに先立って活性酸素が増加して居るなら、その放射線照射が総体として生体に良いとは限らないのに、何故、この現象を一方的に有益な物と見なすのか、理解出来ません。(2)p53も同じです。茂木氏は、p53を単純に「ガン抑制遺伝子」と呼んでおられますが(38ページ)、p53遺伝子は、そんな単純な遺伝子ではありません(!)p53遺伝子は、確かに癌抑制遺伝子としての役割を持ちますが、それがすべてではなく、実に多彩な働きを持つ遺伝子です。特に重要な事は、p53遺伝子は、生体にストレスが加わった際に活性化する事です。つまり、茂木氏はこの点を理解しておられない様ですが、p53遺伝子が活性化されると言ふ事は、矢張り、その放射線照射が、生体にストレスを与えて居る証拠とも解釈できるので、これは、皮肉にも、低線量放射線の危険を反映した現象なのかも知れないのです。(3)DNA修復についても、同じ事が言へます。低線量放射線の照射によってDNA修復が増えるのだとしたら、それは、DNA損傷が増えたからではないか?と考えるのが当然の道筋で、茂木氏は、この事に気付いておられません。ウルトラマンがしょっちゅう地球にやって来たとしたら、怪獣が増えて居るからではないか?と考えるべきなのに、その可能性を考えて居ないのです。DNA修復は、又、癌細胞にとっても強力な武器である事も重要な視点です。即ち、癌細胞も又、DNA修復によって、自らを増殖させ、正常組織を破壊して居ます。もし、低線量放射線の照射が癌細胞のDNA修復を活性化させたとしたら、それを人体にとって有益な「ホルミシス効果」と呼べるでしょうか?だからこそ、京都大大学の武田俊一教授(放射線遺伝学)らのグループは、逆に、DNA修復酵素の一つであるUBC13と言ふ酵素を抑える事で癌の増殖を抑えられないか?と言ふ研究を行なって居ます。武田教授この研究をラッキー教授はどう見て居る事でしょうか?まだまだ言ひたい事は沢山有りますが、スペースの理由で、ここまでにします。
4)アメリカ占領軍と原爆資料の問題について:茂木氏は、本書63〜64ページにおいて、占領中、アメリカ軍が広島、長崎の被曝者に関するデータを隠し、持ち去った事を「デマ」と呼んで居ますが、これは明らかに史実に反します。アメリカ軍が、1945年9月19日に発したプレス・コードの事を茂木氏ほどの方が知らないとは思へませんが、例えば、東京大学の都筑正男教授が、原子爆弾災害調査研究特別委員会の医学科会の会長として、放射線による被曝者の健康被害を、医師の立場から発表しようとした時、都筑教授は、アメリカから発表の中止を強制されて居ます。被爆者を写したフィルムの没収の事例も有名で、この事例などは、アルペロヴィッツの著作などでも言及されて居ますが、リンドバーグ日記に詳しい茂木氏が、こんな事を書いて史実を否定して居る事を私は残念に思ひます。まだまだ言ふべき事は有りますが、スペースが限られて居るので、A.マキジャニとJ.ケリーの著書『原爆投下のシナリオ』(教育社・1985年)の一節を茂木氏と読者に紹介して、この書評を閉じます。
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原爆からの推定放射能レベルと、放射能死者数とは米国と全世界の民間人口の放射能基準の基礎となってきた。この放射能関連の被害が相当に過小評価された証拠がある。ハッカーの未発表報告は次のように述べている。
ウォレン〔主任医務官〕は日本から帰国後議会で証言し、同市では
放射能による死亡が8パーセント未満だったと主張した。専門家の多く
はこの数字があまりに低過ぎると思った。このマンハッタン計画の見解
に対する公けの反論は戦略爆撃調査の中にあり・・・同調査は放射能死
が同市の死者の20パーセントにのぼったと結論した。この数字がもっ
と高くなってもまったくおかしくない。建物倒壊、火災その他で即死し
た者も多いが、そうでなくても彼らは致死量の放射能を浴びて数日ない
し数週間で死んだであろう。
広島と長崎の調査の結果決められた放射能(安全)基準は、こののちの放射能のすべての人への影響を過小評価したという相当の証拠がある。その結果どれほどのがんと死が発生したかは大きな論争点となろう。
その上、過小評価は、マンハッタン計画の指導者が放射能の害をなるべく認めまいとした態度の直接の結果だったという証拠もある。その理由の一つはおそらく、放射能被害の補償訴訟を最小限にすることだったろう。放射能調査に参加した物理学者ドナルド・コリンズは、ファレル将軍が広島と長崎の調査団に「われわれの仕事は原爆に〔残存〕放射能がなかったことを証明することだ」と、あけすけにいい渡したと述べた。(48)
(A.マキジャニ/J.ケリー著・関元訳『原爆投下のシナリオ』(教育社・1985年)108〜109ページ)
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(西岡昌紀・内科医)
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