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(2012年03月02日19:28)
(書評)
「放射能は怖い」のウソ 親子で考える放射能Q&A [単行本]
服部 禎男 (著)
http://www.amazon.co.jp/%E3%80%8C%E6%94%BE%E5%B0%84%E8%83%BD%E3%81%AF%E6%80%96%E3%81%84%E3%80%8D%E3%81%AE%E3%82%A6%E3%82%BD-%E8%A6%AA%E5%AD%90%E3%81%A7%E8%80%83%E3%81%88%E3%82%8B%E6%94%BE%E5%B0%84%E8%83%BD%EF%BC%B1%EF%BC%86%EF%BC%A1-%E6%9C%8D%E9%83%A8-%E7%A6%8E%E7%94%B7/dp/4270006676/ref=cm_cr-mr-title
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5つ星のうち 1.0
博士の異常な愛情−−いかにして私は恐れる事をやめ、アメリカを愛する様に成ったか?, 2012/3/2
By 西岡昌紀 -(2012年3月2日)
いやあ、面白い本でした(笑)。何が面白かったかと言ふと、先ず、この本の冒頭(本書6〜9ページ)にマンガで描かれた、服部禎男先生とラッキー博士の論文の出会いがとても面白い物でした。
この本に依ると、本書の著者である服部禎男先生は、1984年に電力中央研究所に居らした時、低線量放射線が人体にとって非常に有益であるとするアメリカ・ミズーリ大学のトーマス・ラッキー教授の論文を偶然見つけたのだそうです。それを読んだ服部氏は、ここが非常に面白いのですが、「よし!アメリカに聞いてみよう!」(本書7ページ)と決め、アメリカの電力研究所本部(EPRI本部)にラッキー教授の論文についての「回答が欲しい」(本書8ページ)と言ふ要請をしたのだそうです。
私にはさっぱり分かりません。科学者が何故、自分が読んだ論文が正しいかどうかをアメリカに聞くのでしょうか???それもアメリカの電力研究所(EPRI)本部に!!!科学者と言ふ物は、自分の頭で物事を考え、判断するのが仕事なのではないのでしょうか?そして、更に面白いのは、服部氏が、アメリカの電力研究所本部に、ラッキー論文について手紙を送って問ひ正した結果、「私の手紙がきっかけでアメリカのエネルギー省が動き世界中の専門家が集まりついには国際会議が開かれたのです」(本書8ページ)と書いておられる事です。つまり、低線量放射線の有益性を強調する「ホルミシス理論」の研究は、電力中央研究所(日本)の服部禎男氏が、アメリカの電力研究所本部(EPRI)にラッキー論文についての判断を委ねた結果、アメリカのエネルギー省(DOE)が主導する形で本格的に開始、展開された事が、ここに書かれてある訳です。凄いですねえ!まるで、原爆製造の切っ掛けに成ったとされるルーズヴェルトへの「アインシュタインの手紙」の様です。服部氏が、嬉しかったのも無理は有りません。服部氏は、嬉しくてたまらなかったのでしょう。それで、この本に、この逸話を書かれたのだと思ひますが、それが、こうして、「ホルミシス理論」の研究が、自然発生的な物ではなく、非常に政治的な物であった事を暴露して居る事は皮肉です。
又、この逸話は、服部氏がラッキー論文を「発見」してアメリカに手紙を書くまでは、当のアメリカでもラッキー論文が相手にされて居なかった事を語って居る点でも面白い物だと思ひます。服部氏とラッキー教授のこうした「出会ひ」については、86〜87ページで再度言及がされており、そこには、何と、こうまで書かれてあります。
「1984年にこの論文(ラッキー教授の論文)を見つけてね。アメリカの電力研究所の所長さんが僕のアメリカ留学時代の上司だったので、連絡して、ラッキーさんが言ってることが正しいのかどうか、責任ある回答を出してもらうようにお願いしたんだ。」(本書86ページ)
「・・・アメリカのお墨付きが出たので各種方面に働きかけてね、・・・」
(本書87ページ)
日本の科学者が科学を研究するのに、何故、アメリカの電力研究所の「責任あるコメント」が必要なのか?そして、何故、「アメリカのお墨付き」が必要なのか?日本の科学者は、「アメリカのお墨付き」無しでは、放射線について研究してはいけないのでしょうか?
さて、次に本書の医学的内容についてです。先ず、私は、「ホルミシス理論」の名の下で語られて居る培養細胞や動物による実験、或いは、疫学研究の全てを否定する積もりは無い事を明確にしておきます。それどころか、自然放射線が、有害な作用と共に、生命活動に何らかの有益な影響を与えて居る可能性自体は十分有ると思って居ます。(これは、矛盾する言説ではありません)しかし、その上で言ひますが、本書で服部氏が書いておられる事やラッキー博士の書いて居る事を読むと、おかしいと思ふ事が幾つも有ります。それらのほんの一部を、この本の記述に即して、以下にまとめて述べます。
1.本書の10ページにおいて、服部氏は、マウスに対する放射線照射によって、「SOD、GPXが飛躍的に増えた」、「ガン抑制遺伝子p53の活性化」が認められた、と書いておられます。しかし、それでは、そのSOD、GPXの増加、p53遺伝子の活性化は何故起こったのでしょうか?確かに、SODとGPXは、服部氏がこのページで書いておられる通り、活性酸素を「やっつけてくれる」酵素です。又、p53遺伝子には、ガン抑制遺伝子としての働きも有ります。しかし、そのSOD、GPXが増えたのは、生体に有害な活性酸素が増えたからなのではないでしょうか?そうだとしたら、その放射線照射が、総体として有益であったかどうかは分からない筈です。活性酸素を怪獣に、SOD、GPXをウルトラマンに例えると分かり易いと思ひます。確かにウルトラマンは人間の味方です。しかし、ウルトラマン(SOD、GPX)は、怪獣(活性酸素)が暴れて居るから現れるのです。ですから、SOD、GPXと言ふウルトラの兄弟が来たと言ったって、それに先立って怪獣(活性酸素)が増えて居たなら、この現象が総体として生体にとって有益かどうかは分からないではありませんか。
2.1と同様の事が、服部氏が単純に「ガン抑制遺伝子」と呼んだp53遺伝子についても言へます。服部氏は、もちろん熟知しておられると信じますが、p53は「ガン抑制遺伝子」であるだけではありません。p53は、他にも多彩な役割を持って居ます。そして、ここが重要ですが、p53は、特に、ストレスから生体を防御するのに大いに活躍します。そこでクエスチョン。放射線照射によってp53遺伝子の活性が高まったと言ふのは、その放射線照射が、マウスにとってストレスだったからではないのでしょうか?だとすれば、その放射線照射は、マウスにとって有害であった事が逆に示されて居るのではないでしょうか?ですから、この実験の解釈は、服部氏が言ふ程単純な物ではないと思ふのですが、いかがでしょうか?
3.本書の11ページにおいて、ショウジョウバエの突然変異と放射線の関係に関するマラーの実験の話が出て居ます。そして、この実験によって、放射線は有害だと言ふ考え方が定着したかの様な記述が有ります。しかし、人類が放射線の危険に気が付いたのはマラーの実験の結果ではありません。又、マラーが研究したのは、光学顕微鏡で確認出来る範囲での突然変異でしかありませんが、近年の研究は、放射線による細胞の癌化と細胞の突然変異は並行しない事を明らかにして居ます。つまり、マラーの実験に批判されるべき点はもちろん有りますが、マラーの実験を否定しても、それは、突然変異についての研究であり、癌化についての研究ではなかったのですから、発癌について、低線量放射線にしきい値が有るとする主張の論拠には成りません。
4.本書の66〜71ページにおいて、服部氏は、広島・長崎で原爆に被爆し、生存した人々は、却って長生きして居る傾向が有る、と言ふ意味の記述をしておられます。しかし、この記述は、生存した被爆者が、被爆者手帳によって、全ての医療を無料で受けられる制度の存在を度外視し、又、被爆者の疫学研究が始まる1950年以前の被爆者について、医学統計が不足して居る事を無視して居ます。他にも理由は有りますが、これらの事からだけでも、原爆による被曝が、被爆者を他の日本国民よりも長生きさせる結果を生んだとする主張は、疫学的根拠を欠いて居ます。これは、服部氏が仰ぐラッキー博士すらが(!)、その論文中で可能性を認めて居るのですが、服部氏は、その事を御存知ないのではないでしょうか?(笑)
5.放射線の照射によってインシュリンの分泌が高まる事を挙げて、服部氏は、放射線の効用を主張して居ます。(本書90ページ)しかし、これは余りにも単純な見方です。(物理学者だなあ)糖尿病患者におけるインシュリンの作用不足を念頭においてこんな事を言っておられるのでしょうが、インシュリンの分泌が高まる事が生体に良いとは限りません。インシュリン分泌が必要以上に高まれば動脈硬化が促進される事を服部氏は知らないのでしょうか?糖尿病患者にとっては、インシュリン分泌が高まる事はいい事かも知れません。(これも本当はそれほど単純な問題ではありませんが)しかし、糖尿病でもない人の体内でインシュリン分泌が高まる事は、動脈硬化の促進や肥満の誘因に成り得る事で、むしろ有害です。又、放射線照射は、アドレナリン分泌も高めるそうです。(本書92ページ)しかし、アドレナリンの分泌亢進によって心拍数や血圧が正常以上に高まるとしたら、それが健康にいい訳が無いと思ふのですが、私のこの疑問はおかしいでしょうか?
6.低線量放射線は体に良いとする主張の根拠として、服部氏は、自然放射線の高い地域の住民の調査で、却って住民は健康であると言ふ主張を述べておられます。しかし、こうした自然放射線の線量が高い地域の調査では、例えば、ブラジルのポソス・デ・カルダスの様に、癌死亡率が高いなど、住民の健康に悪影響が出て居る可能性の有る土地も有り、報告の結果は相反して居ます。又、イギリスのセラフィールド、ドーンレイ核施設周辺では、子供の白血病と悪性リンパ腫の増加が報告されて居ます。こうした自論に都合の悪い事例に言及しない事は科学者として公正な態度と言へるでしょうか?(本書94ページ他)
7.住民がコバルト60の被曝を受けた台湾のマンションで、マンションの住民の癌死亡率が台湾全土のそれより低かったとする事例については、他の危険因子として、住民の年齢、職業、喫煙率、水道水と井戸水の違い(ヘリコバクター・ピロリ菌の感染率はこれによって変はる)、経済水準、医療へのアクセス等、多くの因子が検討されなければなりませんが、それら他の因子についての言及が有りません。(本書96ページ)
まだまだ指摘したい点が多々有りますが、スペースの理由で割愛します。最後にもう一つだけ。この本の66ページで、広島・長崎の被爆者が、原爆の被曝を受けた事を喜んで居る様に取れるマンガが掲載されて居ます。服部氏は、この本を書く事で、アメリカに「原爆を落としてくれてありがとう!」と、言ひたかったのでしょうか?
(西岡昌紀・内科医)
2012年03月02日19:28
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1826612459&owner_id=6445842
http://blog.livedoor.jp/nishiokamasanori/archives/5260706.html
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