http://www.asyura2.com/12/genpatu21/msg/499.html
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福島エクソダス〜原発事故は何をもたらしたのか〜【第1回】「学童疎開」の実情と論理、募る親たちの不安〜【第4回】まで
http://soba.txt-nifty.com/zatudan/2012/03/post-33f0.html#top
【第1回】「学童疎開」の実情と論理、募る親たちの不安
http://www.jiji.com/jc/v?p=fukushima-exodus00001-01&rel=y&g=phl
「この4カ月、家族が腹の底から笑える状態になかった。(子どもには)夏休みだけでも県外で思いっきり楽しんで来てほしい」−。福島県出身の知人から、原発事故による放射性物質の子どもへの悪影響におびえる県民の「肉声」を聞いてほしいという申し出が筆者にあった。原発震災直後から子どもたちの県外「脱出(Exodus)」ともいうべき現象が起きている。夏休みに入ってから子どもの一時避難が「流行現象」のように取り上げられているが、冒頭のような親たちの切実な願いが背景にある。
政府見解やマスメディアの「安全」報道と、ネット上で知る福島県民らの怒りの落差に戸惑いを感じていたこともあり、原発震災によって普通の市民生活に何が起きているのかを確かめることができればと、7月中旬に同県中部の郡山市を訪ねた。
(時事通信社国際室・山本俊明)
家族連れでにぎわうモール
郡山市は人口約34万人。宮城県仙台市に次ぐ東北地方第2の中核都市で、商業だけでなく、「東北のウィーン」と呼ばれる音楽都市でもある。
30度以上の蒸し暑さの中、市役所周辺でNPOの協力で放射線量を測定してみた。セシウム濃度は、開成山公園では地表付近で毎時0.93マイクロSv(シーベルト)、陸上競技場周辺で表土を集めたとみられる青いビニールシートをかぶせた盛り土の表面では毎時6.999マイクロSv(年換算約60ミリSv)という高い数値に、思わず腰が引けた。その横を何事もないかのようにジョギングする市民が走り抜けていく。
東日本大震災で被災し、使用できなくなった市庁舎前では、毎時1.3〜2.8マイクロSvという結果だった。案内してくれた主婦は「この辺は少し丘陵地形でホットスポットになっているみたいです。これでも3月の原発の水素爆発直後よりは、だいぶ下がったんです」と説明してくれた。
野球場の外には14〜16歳と思われる少年少女ら4人がたむろしている。「放射能は怖くないのか」と尋ねると、「別に。安全だと言われている。何にも感じねーシ」と今どきの若者らしい返事が返ってきた。球場周辺では高さ1メートル付近で毎時0.2マイクロSvを記録していた。
しかし、近くの大型ショッピングモールは、放射能汚染などないかのように家族連れでにぎわいを見せていた。本来あってはならない放射能汚染が続く中、表面上、市民生活は何事もないかのように落ち着いているのだが。
「不安あおるな」と学校が圧力
http://www.jiji.com/jc/v?p=fukushima-exodus00001-02
市内で開かれたNPOなどが主催する無料の母子医療相談会で、主婦らに話を聞いた。この日の相談会には19組の母子が訪れ、ボランティアの医師や看護師らが鼻血などの症状を訴える子どもたちからの聞き取り調査と生活上の指導を行っていた。
畑野真理子さん=仮名=(37)は、夫と子ども3人(小学生2人、2歳児)に加え、義父母同居の7人家族。3月12日の福島原発1号機の爆発の際は「テレビは直ちに健康被害はない」と報じていたし、地震被害とガソリン不足で逃げることなど考える余裕がなかったという。
14日に3号機が爆発し、東京の伯父から「早く逃げろ」と電話が入った。近隣市に住む弟たちも逃げる準備をしていると聞き、「一家で東京避難」を考える。しかし、テレビは「大丈夫」を繰り返し流し、義父母は「残る」と主張。結局、「高齢の両親を置いていけない」ということで残留を決めた。弟も結局、母親と介護の必要な90代の祖母を置いていけないことで避難を断念した。
その後、夫が会社で放射線測定器を借り、自宅で測ったところ室内で毎時0.3マイクロSvという高い値が出て驚いた。「テレビの大丈夫というのは信用できるのか」疑問が湧いてきた。
学校も全く動かない。1つは給食。「地産地消」で福島県産の牛乳を使っている。教頭に産地を聞くと、野菜は「業者との信頼関係」としか答えてくれない。近隣の市町村でストロンチウムやプルトニウムが検出されたといううわさが流れるが、テレビでは何も報じられない。確認のしようもなく、不安だけが募る。
「情報操作されている」のではないかと不信感を募らせた畑野さんは、ネットで子どもを守る方法を探るうちに、同じ思いの保護者と相談し合うようになった。だが、情報を集める畑野さんに対し、学校側は「(他の親の)不安をあおるような言動は止めてほしい」と圧力を掛けてきたという。
畑野さんは「放射能で心配と質問すれば、『神経質すぎる』と言われ、避難した人には『逃げた』という中傷が浴びせられる。どうして傷つけ合わなくてはならないのか、責任は東京電力や国にあるのに。傷つけ合いたくないので、皆、無口になってしまう。もう昔の福島の素晴らしいのどかな生活に戻れない」と嘆く。
やっぱり違うんじゃないか
http://www.jiji.com/jc/v?p=fukushima-exodus00001-03
市民団体「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク(以下=福島ネットワーク)」が6月末に、福島市の6〜16歳の子ども10人を対象に行った尿検査で全員から放射性物質が検出されたと発表したが、畑野さんは「やっぱり出たかという感じ」で、「安全」を繰り返す国や県への不信感が増幅されたという。「福島が安全だなんて、やっぱり違うんじゃないかと思わざるを得ません」。子どもの将来を考えるといらだちが募る。
畑野さんは「主人は(経済的理由もあり)この土地を離れられない。『お前が子どもたちを連れて逃げてもいいから』と言ってくれるんですが。郡山では転勤族や高学歴で県外でも転職可能な人たちは皆、もう出て行ったんじゃないでしょうか。残っているのは仕事やら、年取った親を捨てて行けない人ばかりだ」と語ってくれた。
「郡山から知識人や役所の幹部家族は真っ先に逃げたといわれています。マスコミも私たちの訴えをなかなか取り上げてくれない」と嘆く。
園田和子さん=仮名=(41)は8カ月の身重。中学生と小学生の母親でもある。大震災直後は停電で、原発で何が起きているかも知らなかった。心配した東京の身内から連絡があったが、仕事もあるし、子どもの学校のこともあり避難の決心がつかず、室内退避のままずるずると4月の新学期に入ってしまった。学校からは「何の指導もない」状態だった。
新学期後、屋外活動については学校から「確認書」にサインしろと文書が来た。給食では野菜は福島県産を使っていないということのようだが、牛乳は県産を使っている。子どもたちには鼻血や口内炎が増えている。不安でたまらず、医師相談ができると聞いて来たという。
「原発事故の前に妊娠は分かっていたが、生まれてくる子への放射能の影響も心配。加えてクラブ活動が大好きで転校を嫌がる中学生と、鼻血や口内炎に苦しむ小学生の子の健康も不安です」とストレスがたまっている様子だった。返す言葉もなく、無事の出産を祈るだけだった。
(次回へ続く)
※お断り:取材に応じて下さった方々の保護のため仮名扱いとします
【第2回】夏休みだけでも避難の願い
http://www.jiji.com/jc/v?p=fukushima-exodus00002-01
文部科学省は当初、年間20ミリSvまでなら福島の学校の安全に問題ない(4月19日付「福島県内の学校の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について」=以下、「暫定的考え方」=注)としていた。しかし、その後、親たちの猛反発を背景に市民団体「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」などとの5月下旬の話し合いで、「『20ミリシーベルトまで放射線を受けてよい』という基準ではありません」と、ようやく低減化に努めることを確認した。
(時事通信社国際室・山本俊明)
1万人超の子どもが脱出
福島県では既に、児童の「自主避難」という名の事実上の脱出が進んでいる。同県によると、児童生徒数は、平成22年度の学校基本調査報告(5月1日時点)では約27万人だった(今年度の調査は大震災の影響で行われていない)が、文科省などによると、今年5月1日までに県外に転学した児童生徒は計9998人に達している。
県教育庁のデータによると、5月1日現在で、県外に転出したと確認された小学生は5785人、中学生は2014人という。学校経営支援課は「このうち9割は被災地の子どもたちではないか」とみている。
福島県の人口推計統計(年齢階級別移動者数)でもう少し細かく実態を見てみたい(表、注=昨年秋の国勢調査の影響で2010年9月のデータは欠落。11年4月が最新データ)。
それによると、県外流出は11年3月と4月で0〜4歳が416人と713人。幼稚園から中学2、3年までの5〜14歳の児童生徒ではそれぞれ1056人と1069人。3〜4月は平年でも転勤族の移動があると思われるが、震災前の前年同時期と比べても県外への流出は顕著と言える。
15〜19歳は高校卒業後に県外への進学や就職があるのか、超過分では変わらないように見えるが、実数でみると、11年3月は流入が96人に対して、流出が1698人、4月も流入196人に対して流出は1393人で、圧倒的に流出が上回っている。
10年3月、4月は流入がそれぞれ243人、432人と3ケタを記録しており、原発事故後の子どもたちの県外「脱出」が数字の上で裏付けられた格好だ。
(注)文科省
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/04/1305174.htm
http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/syousai/1307458.htm
福島県県外人口流出入状況(福島県人口調査結果から作成)
http://www.jiji.com/jc/v?p=fukushima-exodus00002-02
転入から転出を引いた超過分
(↓クリックすると拡大します)
(注)10年9月分は国勢調査のため欠落
※SOBA:元記事でテキストベースの表だったのをキャプチャしました。元もと転勤の関係で3月は転出、4月は転入の月です。しかし、3・11震災、それに続く原発事故のあった2011年は3月の転出が約39.7%増とそれなりの数字としても、特に発災翌月、4月の県外への転出が際立っているのが分かります。
自主避難という二重基準
http://www.jiji.com/jc/v?p=fukushima-exodus00002-03
取材に応じる夫妻(プライバシー保護のため一部画像処理しています)(筆者撮影)
文科省や福島県教育庁は「親の判断で子どもたちが自主避難するのはご勝手にどうぞ」というスタンスだが、ここには「落とし穴」がある。「逃げたくても逃げられない」という現実だ。夏休みだけでも県外へ一時避難という「流行」ともいうべき現象が起きるには理由があるのだ。
一時的に子どもを県外か放射能濃度の低い県内地区に避難させようとしている家族の例だ。会社員の山川悟さん(42)、妻の恵子さん(39)夫妻=仮名=宅を訪問した。夫妻には2人の小学生がいる。近所では一時、高い放射線量が測定された。
恵子さんは「仕事を辞めて県外ということも考えたが、主人の年齢では県外で新しい仕事を見つけ、現在のような収入は得られないでしょう。住宅ローンの支払いもあるし。近所は皆そうだ。私も看護師で、介護の仕事をしており、お世話をしているお年寄りを置いていけない」と、家族そろっての脱出を断念せざるを得なかった訳を話した。
「毎日、放射能の影響について不安で何とかしないといけないと思い、知り合いから情報をもらい、子どもを一時的に疎開させるプログラムがあることを知ったので、飛びついた」のだという。
夫妻は「誰も経験したことのない状態だから、家族が一緒にいることも大事だと考えたが、少しでも子どもの被曝(ひばく)リスクを下げてやりたい。(1986年の)チェルノブイリ原発事故の時は、短期でも転地によって放射性物質が体外に出るとともに精神的にストレスから解放され、健康を取り戻せたと聞いて決心した」と話し、長女を9月中旬までイタリアに国外脱出させ、次女は夏休み中、北海道にショートステイさせる計画だ。
一方、児童ら約500人の県外脱出を支援している「ハーメルン・プロジェクト」の志田守代表(60)は「県教育庁に何度も電話し、避難のことを聞いた。その中で担当者に『あんたは子どもはいるのか。避難させないのか』と聞いたところ、5人中3人がもう避難させたと答えた」と語った。
「役人は、公式には(「暫定的な考え方」を根拠に)避難しなくても大丈夫と言いながら、自分の子どもだけはしっかり避難させている。これが現実ですよ」と憤懣(ふんまん)やる方ない。「中には母親が子どもを連れて逃げるために、離婚する家庭も増えているようです」と明かしてくれた。
経済的社会的優越者やチャンスに恵まれた子どもは県外脱出や一時避難ができるのに、そうでない「弱者」は残留するしかないのが現実だ。原発震災で日ごろ見えなかった「経済的社会的格差」が子どもたちにも顕在化しているのだ。福島の学校では、安全なので避難する必要はないという建前と、自主避難はOKという「ダブルスタンダード(二重基準)」が堂々とまかり通っているのだ。
(次回へ続く)
※お断り=取材に応じて下さった方々の保護のため、一部の方を仮名扱いとします
【第3回】親と国の論理の違い
http://www.jiji.com/jc/v?p=fukushima-exodus00002-02
出典:NPOセイピースプロジェクトのリーフレット「放射線被ばくから子どもを守るために」
市民団体「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」など親たちの切望する避難要請と、政府・県の見解の差は埋めようがないかのように見える。少し双方の言い分を整理してみたい。(時事通信社国際室・山本俊明)
政府が「安全」という根拠は、国際放射線防護委員会(ICRP)の緊急時の「公衆の防護のための助言」にある(注1)。ICRPは「事故継続等の緊急時の状況における基準である20〜100ミリSv/年を適用する地域と、事故収束後の基準である1〜20ミリSv/年を適用する地域の併存を認めている」ので、文科省は「暫定的考え方」(第2回「夏休みだけでも避難の願い」参照)の通達を出したのだ。
一方、微量でも放射能の影響があるというのは欧州放射線リスク委員会(ECRR)などの見解だ。NPOセイピースプロジェクトが作成したリスクのとらえ方を概念図で見てみよう。
日本政府は斜線から右側の色の付いていない領域しかリスクがないという見解のようだ。ピンクや黄色で表示された部分は、放射線と被害の因果関係(法的には「相当因果関係」)が証明されていないとされてきた。
しかし、1986年4月のチェルノブイリ原発事故をめぐっても、「放射線による死亡が4000人」(国際原子力機関=IAEA)という非常に少ない評価のものから、「事故から15年だけで98万5000人と推定」(A・ヤブロフコフらの研究=注2)というものまである。2つの陣営が「過小評価」「過大評価」と互いに批判しているのが実情だ。
(注1)文科省
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/04/1305174.htm
http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/syousai/1307458.htm
(注2)ヤブロフコフらの「チェルノブイリ=人々と環境の破局の帰結」(2009年)はhttp://www.strahlentelex.de/Yablokov%20Chernobyl%20book.pdf で公開されたPDF版で全文を見ることが可能。2011年の改定版も出ているとの情報がある※
※SOBA:全326頁(←空白ページも含めてpdf349頁)の資料。後ろで、表紙とチェルノブイリ原発事故総犠牲者数について書いている頁を紹介しておきます。
避難求めるのは「非国民」?
http://www.jiji.com/jc/v?p=fukushima-exodus00003-02
避難求めるのは「非国民」? 専門家でもない筆者には、ICRPとECRRのどちらの説が正しいのか判断する材料はない。しかし、ヤブロフコフの研究に示された「チェルノブイリ後」に生まれた障害を抱えた子どもたちの写真が、「過小評価」派の専門家たちの主張を打ち砕く(注)。
がんなど医療の世界でも、かつては「お医者さまの判断に従えば間違いはない」とされていたものが、近年は「セカンド・オピニオン」を求めることが当たり前になった。複数の見解がある時、普通の市民がわが子を守るために取るべき「合理的な選択」とは何だろうか。
福島の親たちの言い分は「少しでもわが子にリスクがあるかもしれないなら、避けたい、減らしてやりたい」というものであり、科学的な確実性を求めているわけではない。リスクがあるかもしれないなら子どもに「予防的措置」を取るというのが親としての「合理的選択」なのではないか。
政府や県と、親たちの「対立」(あるいは立場の違い)は非常に不幸なことと考えざるを得ない。知人によると、「県内避難の子どもを受け入れている人が『なぜそんな子ども受け入れているのですか』と学校から詰問された」という、「非国民」扱いされた事例もあるそうだ。
「子どもを人体実験に使われているようなものだ。福島の親たちの我慢も限界に近づいている」。児童らの県外脱出を支援している「ハーメルン・プロジェクト」の志田守代表はそう語る。
(次回へ続く)
(注)98万5000人の推定は、「チェルノブイリ=人々と環境の破局の帰結」(2009年)
http://www.strahlentelex.de/Yablokov%20Chernobyl%20book.pdf の7章7項(犠牲者の全体の数は?)の210ページで示されている
4000人説の見解としては、金子正人氏の解説(2007年)がコンパクトにまとめられている http://www.aesj.or.jp/atomos/popular/kaisetsu200701.pdf
【第4回】「学童疎開」の実情と論理
http://www.jiji.com/jc/v?p=fukushima-exodus00004-01
何事もないかのように家族連れでにぎわう郡山市内のショッピングモール店内(筆者撮影)
逃げるに逃げられない子どもたちがいる中で、注目されるのが6月下旬に郡山市で提起された前代未聞の「学童集団疎開」訴訟だ。遺伝子組み換え(GM)作物の裁判を手掛けた弁護士グループが「放射能は遺伝子に影響する同じ問題」と、同市内の親たちの相談に乗る中で、市教育委員会を相手取り、市内の児童生徒14人について毎時0.2マイクロSv(年換算1ミリSv)を下回る環境下で教育活動をさせるよう仮処分を求め、福島地裁郡山支部に申し立てたものだ。
(時事通信社国際室・山本俊明)
安全に教育を受ける権利
原告の柳原敏夫弁護士は「国は『暫定的考え方』を事実上撤回しながら、年間1ミリSvを超えることが明らかな学校の児童生徒を避難させようとしない。言行不一致を問いたい」と狙いを明らかにする。
行政訴訟ではなく、民事、しかも仮処分請求した理由は、「暫定的考え方」は国家権力の行使である「処分性」を意図的に薄めて、裁判所が「門前払い」できるようにしている仕掛けが見え隠れしていたので、いじめ問題で判例の積み重ねがある民事、しかも子どもたちを救う上でスピードが求められるため仮処分という異例の形態を取ったと解説してくれた。
法律の論理としては、まず憲法26条1項の「すべての国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」により、「安全に教育を受ける権利保障」が含まれることが大前提となる。
具体的な法律としては、学校教育法12条(学校においては、別に法律で定めるところにより、幼児、児童、生徒及び学生並びに職員の健康の保持増進を図るため、健康診断を行い、その他その保健に必要な措置を講じなければならない)で、児童生徒と保護者は「適切な保健措置」を講じるよう求める権利がある。
また、児童の権利に関する条約(第3条1項)でも「児童の最善の利益」が考慮される必要があると規定されている。
子どもの生命を守るため
http://www.jiji.com/jc/v?p=fukushima-exodus00004-02
野球場の外で取材に応じるティーンエイジャー(一部画像処理しています)(筆者撮影)
これを受けて、国と地方公共団体は「児童生徒の生命・身体・健康を守るために必要な措置を取る『安全配慮義務』」を負うことになる。
さらに学校教育法では「区域内に学齢児童を就学させるに必要な小学校(中学も準用)を設置」する義務があるとされるが、文科省は「やむを得ない場合には区域外に設置することが可能」という例外を通達(昭和34年4月23日付、初中局長回答)している。
郡山市の原告が通う学校では、3月12日から5月25日までで既に3.8〜6.67ミリSvに達しており、児童生徒の生命・身体・健康に重大な影響を与える状況であり、「やむを得ない理由」に当たる。
原告側は、地方公共団体の費用により、早急に「危険地域外に学校ごと移転させて学校教育を行う、すなわち集団疎開措置を講じる」ことでしか子どもの生命・身体・健康を守ることができないと結論づけた。
争点を簡明にするため、外部被曝(ひばく)だけを俎上に載せ、争いのある内部被曝の可能性をあえて外している点も特徴的だ。
柳原弁護士は「原告の請求が認められれば、差別的取り扱いの禁止から事実上、他の児童生徒にも効果が及ぶことになる。裁判所には真剣に子どもたちのことを考えていただきたい」と語る。
友達も全員一緒に
http://www.jiji.com/jc/v?p=fukushima-exodus00004-03
自宅の外で放射線を測定する主婦と見つめる子どもたち(一部画像処理しています)(筆者撮影)
今回、取材に応じてくれた親たちも「自分たちの子どもは県外に一時出られるチャンスに恵まれたが、本当は友達も全員一緒に集団疎開できたら一番良い」という立場だ。
「中高校生は学校が開いていると友達と離れたくないことや、クラブ活動があり、自分だけ逃げたくない」という事情もあり、国や地方公共団体が避難を決めない限り、結果的に残留という選択につながるケースもある。首都圏に一時避難したが、再び戻った事例もある。福島地裁郡山支部がどのような判断を下すのか注目される。
「黒い雨」と「白い雪」
ある人は「原発事故の直後、福島では情報がなく、給水車を待って高い濃度の放射性物質の含まれた雪が降る中を、親子が何時間も外で何日も待っていたんですよ。福島県民の怒りを分かってほしい」と語り、避難は当たり前と訴える。
ヒロシマでは「黒い雨」(井伏鱒二)だったが、フクシマでは「白い雪」が人々の被曝への恐怖をかき立てる。
エクソダスは、旧約聖書に書かれたエジプト王による子殺しなどさまざまな弾圧からイスラエルの民が逃れた大脱出劇だが、決して楽な旅ではなかった。福島の子どもたちが脱出できたとしても、彼らに苦難と試練が待ち受けているのはほぼ確実だ。日本社会の在り方が問われている。
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ヤブロフコフらの「チェルノブイリ=人々と環境の破局の帰結」(2009年)http://www.strahlentelex.de/Yablokov%20Chernobyl%20book.pdf
Chernobyl
Consequences of the Catastrophe for People and the Environment
Alexey V. YABLOKOV
Vassily B. NESTERENKO
Alexey V. NESTERENKO
CONSULTING EDITOR Janette D. Sherman-Nevinger
ANNALS OF THE NEW YORK ACADEMY OF SCIENCES VOLUME 1181
ON THE COVER
Pine trees reveal changes in wood color, density, and growth
rate following irradiation from the Chernobyl disaster.
T.A. Mousseau, University of South Carolina (2009)
Published by the New York Academy of Sciences
最初の頁。記事中で紹介されていた訳が分かり辛いので僕が以下のように訳し直しました→「チェルノブイリ=人々、そして環境への破局の帰結」。
←この画像紹介では、2頁目のコメントを訳し以下のように追加。「チェルノブイリ原発事故で木の色も、密度も、成長度合いも変わってしまった松の木」
←210頁(231頁←白紙含むpdfの総頁、以下同じ)の所に、チェルノブイリ原発事故後の総犠牲者数として98万5千人の数字が出て来ます。
以下、テキストを採録。
以下の209頁(230頁←白紙含むpdfの総頁、以下同じ)からチェルノブイリ原発事故後の犠牲者について書いいて、209頁(230頁)の下記右カラムの最後の所から211頁(232頁)まででチェルノブイリ原発事故総犠牲者数について書いています。
7.7. What Is the Total Number of Chernobyl Victims?
The Chernobyl Forum (WHO, 2006) calculated a total number of 9,000 cancer deaths in Belarus, Ukraine, and Russia that can be attributed to the Chernobyl catastrophe for a period of 90 years after the meltdown.
Table 7.9 showed forecasts of the expected number of additional instances of cancer owing to the Chernobyl catastrophe. All projections are based on risk factors for cancer. It is well known, however, that cancer is not the only and not even the most frequent lethal effect of radiation (see, e.g., Table 7.7).
ここまでが、209頁(230頁)。
◎ここに
TABLE 7.11. Number of Additional Deaths in Belarus, Ukraine, and the European Part of Russia, 1990--2004, that Can Be Attributed to the Chernobyl Catastrophe (Khudoley et al., 2006)
で以下表が入る。
The assumptions concerning nonmalignant radiation risks differ even more than for radiation-induced cancers. Risk projections based on observed increases in the general mortality are more meaningful, and they are likely to be more realistic than calculations that only use individual and/or collective doses together with risk factors for fatal cancers.
Based on data presented in Section 7.6, it is possible to estimate the total death toll from the Chernobyl catastrophe:
. When we apply the additional mortality of 34 extra deaths per 1,000 population within 15 years (1990--2004), which
was derived above, to the cohort of liquidators not living in contaminated zones (400,000), to the evacuees and to people whomoved away fromcontaminated areas
(350,000), then we expect another 25,500 deaths in this period. The overall number of Chernobyl-related deaths up until 2004 in Belarus, Ukraine, and Russia was estimated to be 237,500.
. Assuming that 10 million people in Europe, outside the Former Soviet Union, live in territories with a Cs-137 ground contamination higher than 40 kBq/m2 (>1.08 Ci/km2) and that themortality risk is only half that determined in the Chernobyl region, that is, 17 deaths per 1,000 inhabitants (better food and better medical and socioeconomic situations), up until 2004, we can expect an additional 170,000 deaths in Europe outside the Former Soviet Union owing to Chernobyl.
. Let us further assume that for the other 150 million Europeans living in territories with a Cs-137 ground contamination below 40 kBq/m2 (see Chapter 1 for details) the additional mortality will be 10-fold less (i.e., 1.7 deaths per 1,000 in 1990--2004). Then we can expect 150,000 × 1.7 or 255,000 more deaths in the rest of Europe.
. Assuming that 20% of the radionuclides released from the Chernobyl reactor were deposited outside Europe (see Chapter1) and that the exposed population was 190 million, with a risk factor of 1.7 per 1,000 as before, we could have expected an additional 323,000 cancer deaths outside Europe until 2004.
◎ここの所で、98万人の数字が出て来る。
Thus the overall mortality for the period from April 1986 to the end of 2004 from the Chernobyl catastrophe was estimated at 985,000 additional deaths. This estimate of the number of additional deaths is similar to those of Gofman (1994a) and Bertell (2006).A projection for a much longer period―for many future generations―is very difficult. Some counter directed aspects of such prognoses are as follows:
. Given the half-life of the two main radionuclides
(Cs-137 and Sr-90) of approximately
30 years each, the radionuclide
load in the contaminated territories will
decrease about 50% for each human generation.
The concentrations of Pu, Cl-36,
and Tc-99 will remain practically the same
virtually forever (half-lives consequently
more than 20,000 and 200,000 years), and
the concentration of Am-241, which is a
decay product of Pu-241, will increase over
several generations.
. Given the half-life of the two main radionuclides (Cs-137 and Sr-90) of approximately 30 years each, the radionuclide load in the contaminated territories will decrease about 50% for each human generation.
The concentrations of Pu, Cl-36, and Tc-99 will remain practically the same virtually forever (half-lives consequently more than 20,000 and 200,000 years), and the concentration of Am-241, which is a decay product of Pu-241, will increase over several generations.
ここまでが、210頁(231頁)。
Yablokov: Mortality after Chernobyl 211
. The genetic damage among descendants of irradiated parents will propagate in the population and will carry through many (at least seven) generations.
. Fertility is known to decrease after exposure to radiation (Radzikhovsky and Keisevich, 2002).
. A radiation adaptation process may occur (the effect is known from experiments with mammals) (Yablokov, 2002).
7.8. Conclusion
There are many findings of increased antenatal, childhood, and general mortality in the highly contaminated territories that are most probably associated with irradiation from the Chernobyl fallout. Significant increases in cancer mortality were observed for all irradiated groups.
A detailed study reveals that some 4% of all deaths from 1990 to 2004 in the contaminated territories of Ukraine and Russia were caused by the Chernobyl catastrophe. The lack of evidence of increased mortality in other affected countries is not proof of the absence of adverse effects of radiation.
The calculations in this chapter suggest that the Chernobyl catastrophe has already killed several hundred thousand human beings in a population of several hundred million that was unfortunate enough to live in territories affected by the Chernobyl fallout. The number of Chernobyl victims will continue to grow in the next several generations.
References
(以下略)
ここまでが、211頁(232頁)
(始めに戻る)
今こそ、「主権者は私たち国民」、声をあげよう!!!、浜岡原発と危険な駿河湾トラフ・南海トラフ
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