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(書評)ウェード・アリソン『放射能と理性 なぜ「100ミリシーベルト」なのか』−−原爆投下を正当化する著者による原発擁護
http://www.asyura2.com/12/genpatu21/msg/398.html
投稿者 西岡昌紀 日時 2012 年 2 月 26 日 13:57:36: of0poCGGoydL.
 

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http://blog.livedoor.jp/nishiokamasanori/archives/5243590.html
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1825211405&owner_id=6445842

(書評)

放射能と理性 なぜ「100ミリシーベルト」なのか [単行本(ソフトカバー)]
ウェード・アリソン (著), 峯村利哉 (翻訳)
ttp://www.amazon.co.jp/%E6%94%BE%E5%B0%84%E8%83%BD%E3%81%A8%E7%90%86%E6%80%A7-%E3%81%AA%E3%81%9C%E3%80%8C100%E3%83%9F%E3%83%AA%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88%E3%80%8D%E3%81%AA%E3%81%AE%E3%81%8B-%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%82%BD%E3%83%B3/dp/4198632189/ref=cm_cr-mr-title

5つ星のうち 1.0

原爆投下を正当化する著者による原発擁護論−−被曝者の線量は正しく推定されて居るか?, 2012/2/25

By 西岡昌紀 -(2012年2月25日)

 ひどい本です。先ず、これをお読み下さい。

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 1945年の原子爆弾による広島と長崎の破壊により、連合軍は軍事的、政治的な成功を収めた。日本への地上侵攻を避けることで、敵味方の双方での膨大な人的損害を防ぐことができた。科学技術分野の事業としても、勝利と言えた。まったく新しい物理学的発見に基づく、これほど壮大なプロジェクトは、過去に試みられたことさえなかったのである。

(本書13〜14ページより)

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 お読みの通りです。この本の著者は、広島、長崎への原爆投下を「敵味方双方での膨大な人的損害を防ぐことができた」として美化し、更には、「科学技術分野の事業としても勝利と言えた」とまで言って賞賛して居るのです。反論は容易です。トルーマンは、日本にポツダム宣言を出して、日本に降伏を勧告する前日に(!)、日本への原爆投下の命令を出して居るからです。他にもこの主張に対する反論の論拠と成る事実は沢山有りますが、この事一つを取って考えても、原爆が、日本が降伏しないから投下されたのでなかった事はとっくに明らかなのです。
 この本は、原爆投下の是非を論じる本ではありません。ですから、この事だけでこの本全体を判断する気は有りません。しかし、トルーマンが、ポツダム宣言を出す前日に原爆投下の命令を出して居たくらいの事実にも言及せず、一方的に原爆投下を正当化、美化して居るこの箇所を読んで、著者の知的誠実さを疑ふのは、私だけでしょうか?
 同じ事は、著者の「地球温暖化」に対する姿勢についても言へます。「二酸化炭素による地球温暖化」が、科学的根拠を欠いた未証明の言説である事は、この問題の世界的権威であるアラスカ大学の赤祖父俊一教授をはじめとする多くの科学者から指摘、批判されて居ますし、原発支持派のジャーナリストである櫻井よしこさんなどからも指摘、批判されて居ます。ところが、この本の著者は、今日では、そんな批判の的に成って居る「二酸化炭素による地球温暖化」を自明の科学的真理ででもあるかの様に語り、原発支持の理由に挙げて居るのです。

 さて、原爆投下の是非も、「二酸化炭素による地球温暖化」の信憑性も、本書の主たるテーマではありませんでした。本書の中心的主題は、電離放射線の安全基準は、何故100ミリシーベルト以下とするべきなのか?でした。医師の一人として、私は、本書著者が、何を根拠にして、「100ミリシーベルトまでは安全」と断定するのか、注意深くこの本を読んでみました。本書の論理を要約すると、その最大の根拠は、広島、長崎の被爆者に関する疫学的研究から、100ミリシーベルトまでは大丈夫と判断出来るから、と言ふ論理にほぼ要約出来ます。しかし、著者が依拠する広島、長崎の被爆者に関する疫学研究については、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)から、以下の様な批判が加えられて居ます。


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 日本の原爆犠牲者を除いては、線量効果曲線を引き出すことのできる実験集団はなかなかない。医学のX線及び放射線関係の医師、看護師と患者から、重要なデータデータの入手をしようとするのも非合理なことではない。ただし、研究のためにはこれらの集団は規模が小さ過ぎ、線量の範囲が狭く、線量レベルがあまりにも低すぎる。いかなる場合でも広島、長崎の被爆者の研究は、最良の情報源であり続けるし、実際それは、放射線防護の貴重なバイブルになっている。しかし、それは深刻な欠点を持っている。

a 被爆者の被曝線量は、以下にUNSCEARが指摘するように、正確なものではない。

  継続調査がされていても、被曝線量は、爆心地から被爆した場所の距離から推定する以外に知る方法はない。従って、線量は極めて不確実であり、この不確実さが線量効果の関係に反映されてしまっている。

b 被爆した日本人の身体組織の感受性は、一般的な母集団には適応できない。UNSCEARはこの点で以下のように述べている。

  生存被爆者は、被爆の致命的な影響の厳しい条件のもとで淘汰された人々なので、放射線起因の発ガン性という点で、生存被爆者は必ずしも典型的な被曝人口の母集団にはならない。

そして、ICRPはさらに追加している。
  
  当時の日本における人口集団も、全体として「普通」であったわけでもない。健康な成人男子は兵役のために欠如していたからである。
  
c さらに、ICRPとUNSCEARは、日本人は一様に被爆したのではなかったと指摘している。被爆者によっては、家屋の中や壁の背後にいたなどの例である。公称値で6.5グレイ以上を受けた3分の1から3分の2の人々が、放射線からかなり遮蔽されていた。

d 被爆者の研究が、原爆から5年後の1950年まで行われなかったという事実は、いろいろな誤解が生まれる原因になっている。原爆の破局的影響の結果、最も弱い集団は既に死亡していた。もしも、彼らがその期間生き延びたとしたら、放射線被曝の結果、より多くの人々がその後死亡したに違いない。今日の癌の統計学はこのことを考慮に入れていない。
 
 これらは、我々の放射線防護法がおかれている土台の、不確かさの一部を示しているに過ぎない。

(ラルフ・クロイブ、アーネスト・スターングラス著 肥田舜太郎、竹野内真理訳『人間と環境への低レベル放射能への脅威』(あけび書房・2011年)90〜91ページより引用)

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 お分かりでしょうか?私の言葉で要約すると、広島、長崎の研究は、原爆投下(1945年)から調査開始の1950年までの空白によって、被爆者と言っても、その5年間に生命を落とした人々に関する研究が不足して居る事、実際の線量は、建物による遮蔽効果などにより、推定される線量よりも低かった場合が多かったと見られる事などが、国連のこの研究機関から指摘、批判されて居るのです。つまり、「100ミリシーベルトまでは安全だ」と主張する著者が根拠とする線量の数値は、実際よりも過大である可能性が高く、「100ミリシーベルト被曝した」とされて居る被爆者も、本当は、それより低い線量しか被曝しなかったから、健康上の問題を生じなかった可能性が強いと言ふ事です。
 いかがでしょうか?更には、DNA修復や発癌のメカニズムに関する著者の理解も浅い事を医者のはしくれとして指摘しておきます。例えば、この本は、2000年代に入ってからの研究を反映して居ません。(具体的には、例えば、京大原子炉実験所の渡邊正巳博が、2000年代に入って、[放射線による細胞がん化の主たる標的はDNAではない」と言ふ問題提起を行なって居る事が挙げられますが、こうした議論については、永田親義著『がんはなぜ生じるか』(講談社ブルーバックス・2007年)などの通読をお薦めするに留めます。)まだまだ批判したい事は沢山有りますが、余り長く成るとアマゾンに御迷惑をかけるので、この辺にしておきます。

(西岡昌紀・神経内科医)


 

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コメント
 
01. 2012年2月26日 14:40:26 : Bcml9vh5QU
アマゾンで「放射能と理性」と入れてみたら、「放射能を怖がるな」だとか高田純の本
だとか「低量放射線は怖くない」やら、しまいには副島まで出てきて、どれもそこそこ
売れていて、おまけに評価も高め。本を買い込んで高い評価つけているのが工作員
ならいいんだけどね。おそらくは徹底的に馬鹿な一般の日本人だろう。とりあえず
レビューに一票入れておきました。

02. 2012年2月26日 19:47:23 : CEOKaAQFKQ
米国は勝者であり金甌無欠の神国はボロ負けの敗者だからな。
この件は君の言う通りだろうが、何処にもおかしな奴はいるものだ。
ホロコーストは無かったと言う奴がいるように。

03. 西岡昌紀 2012年2月27日 19:05:29 : of0poCGGoydL. : tqyJvleUaw
御意見をありがとうございました。それぞれにお答え申し上げておきます。


>Bcml9vh5QU様


ありがとうございました。高田純氏は、とにもかくにも現地に行って、放射能測定をしておられるので、その点については、立場を超えて敬意を払ひたいと思ひます。しかし、電離放射線の測定で得られる結果だけが、原発事故の被害を評価する上での指標でない事について、氏がいかなる姿勢でおられるのか、又、チェルノブイリについては、事故後の疫学調査に疑問の点が多々有る事に氏が触れて居ない事に、私は強い不信感を持って居ます。後日、氏の著作も取り上げる予定です。


>CEOKaAQFKQ様


お叱りをありがとうございます(笑)。私が、第二次世界大戦中、ヨーロッパのユダヤ系市民に起きた事柄について、1995年以来、私が異論を投じて居るのは、

1)ドイツはユダヤ人をただユダヤ人であるだけの理由で絶滅しようとした。絶滅である。

2)その手段として、ドイツはガス室による処刑を行なった。

とする二つの命題(主張)について、です。ドイツに第三帝国と呼ばれる政治体制が存在した時代に、当時のドイツ政府が、自国内及び周辺諸国のユダヤ系市民に不当な差別、迫害を加えた事自体を私が否定した事は一度も有りません。この事は、「マルコポーロ」の記事(1995年)でも、拙著「アウシュウィッツ『ガス室』の真実」(1997年)でも、重ねて強調しております。この問題については、この拙著(「アウシュウィッツ『ガス室』の真実』)の全文を阿修羅でも読めますので、御通読頂ければ幸いです。


04. 2012年2月28日 22:44:56 : pu1cCTw2Ec
02だが、返答有難う。
コメントが少しく乱暴だったのをお詫びする。
前書きは読んだが本文も読もうとしたが今日は止めたよ。
当方は五月で七十三だ、後日読後に「この投稿欄」に疑問や意見などを書こうかと思っている。
但しナチのユダヤ人大量虐殺について専門的に読んだことは無く、巷間言われている被害者600万人もの数字が本当なのだろうかと疑問に感じたことはある。
このことは50年以上の前のことだが。
ヒトラーに関する書物は30冊以上読んでいるが、ヒムラーがユダヤ人を絶滅させなければならないと発言しているとの記憶はあるが。
そしてヒトラー自身がユダヤ人を絶滅させよと命令した事実は無いことは知っている。
何れにせよ、本文を読んでからだ。

05. 2012年2月29日 21:17:01 : s8Ld05tvTk
04だが、君の論文を第4章迄読んでみた。
本と違ってパソコンは目が疲れて駄目だ。 歳のせいもあるが。
マルコポーロ事件は当時の新聞報道で知ったが、「ホロコーストは無かった」と君が主張しているとの認識しかなくその点で自分の不明を恥じる。
ただ俺はナチがユダヤ人を600万か300万人か知らないが意図的に絶滅を図ったのでないにしろ、結果的には数百万のユダヤ人が死亡したのは事実でありそれがホロコーストに当たるとの認識だ。
例えば独ソ戦でドイツ側の捕虜になったソ連軍は500万人を超えるだろう、その全部が死亡して帰国できなかったのだからこれも一種のホロコーストだ。
捕虜はユダヤ人のような虐待を受けなかったにしてもドイツ側は殆ど食事をさせず放置して死亡させたのだからな。

君がコメント03で@ナチがユダヤ人の絶滅を図った。 Aその手段としてガス室で
殺戮した。 この二点を否定している訳だ。
@絶滅に関する確たる文書は存在しないようだかナチスの郎党がユダヤ人を絶滅させたいと考えていたのは間違いない。 特に戦争後半には。
Aガス室に関して微に入り際に入り存在しなかったと主張しているが俺は矢張りガス室は存在していたと思う。
君は論文の冒頭で反論には証拠を出してからにしてくれと言っていたと記憶しているが、色々検索してガス室は存在していたとすることも可能だが結局は水掛け論にしかならない。
それにこの件では知識豊富な君に対抗してもかなわないしな、だが知識が豊富だから真実を捉えているとは限らない。
ただ数百万のユダヤ人の大半はガス室では無く、餓死もしくは栄養失調による疾病で死亡したのだろう。

最後に論文の明らかな間違いを指摘しておく。
それは第2章後半のブーフェンバルト強制収容所々長コッホが「ユダヤ人虐待」罪を問われてドイツ当局に処刑されたとのことだ。
俺はこのことを読んで即座に有り得ないことであり間違いだと分かった。 何故なら虐待や虐殺が日常化していた所内でその長がユダヤ人虐待の罪を問われるなど絶対に有り得ないからだ。 検索してご覧。
君はこの事実を何かで知った時俺と同じように即座に有り得ないと知るべきだっ
た。
このことは君が絶滅計画・ガス室は幻だとの一念に凝り固まり過ぎている象徴だと感じだ。


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