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再稼働の危険見えた 大飯原発 ずさん安全評価 多すぎる「検査対象外」 ボルト壊れても問題なし
東京新聞 2012.02.21 朝刊 「こちら特報部」
福井県高浜町の関西電力高浜原発3号機が定期検査入りし、国内の全ての原発停止が秒読みに入った。一方、関電大飯原発(同県おおい町)3、4号機について、経済産業省原子力安全・保安院は関電の安全評価(ストレステスト)を妥当とし、再稼働を急いでいる。保安院は四月に「原子力規制庁」へ改編されるが、この姿勢で門番役が務まるのか。脱原発への重要な局面が続く。(上田千秋、中山洋子)
意見聴取会で異論
再稼働への手続きが進む関電の大飯原発3号機奄ニ4号機=福井県おおい町で、本社ヘリ「あさづる」から
二十日午後に経産省で開かれた保安院の安全評価についての意見聴取会。冒頭、後藤政志委員(芝浦工大非常勤講師)が、事務方の保安院職員に詰め寄った。
「福島の事故を繰り返さないためにどうするのか、を話し合っていたのではなかったのか」
前回の意見聴取会は議論半ばで打ち切られ、大飯原発3、4号機の安全評価(一次評価)を「妥当」とする審査書がまとめられた。この進め方を批判したのだ。
すでに大飯原発3、4号機を含め、十六基の原発の安全評価が提出され、順次、意見聴取会にかけられている。
「妥当」と判断されれば、原子力安全委員会が審査の手順などに間違いがないかをチェツクし、地元の了解を得たうえ、政府が最終的に再稼働の可否を判断する。
ちなみにこの日、保安院は福井県に審査書の説明を開始。今後、県議会やおおい町などでも説明する。一方、安全委の班目春樹委員長は十七日に続き、一次評価だけでは安全評価として不十分」と発言。政府は定期点検で停止中の原発は一次評価が一定レベルに達していれば、安全性を保証できるとしており、安全委と政府の見解の食い違いが露呈した。
では、一次評価を「妥当」とされた大飯原発3、4号機の場合、どんな点に不安が残されているのか。二十日の参院議員会館での集会で、後藤委員と井野博満委員(東京大名誉教授)が列挙した問題点をみると―。
「数が多くて 算定は困難」
まず、耐震性。関電は設計時に想定する最大のゆれ(基準地震動)の一・八倍の地震に耐えられる(耐震裕度がある)と報告したが、原発を構成する各パートには「一・八倍」も余裕がない場所があると指摘する。
井野委員は、とりわけ「基礎ボルト」の安全性を危ぶむ。冷却器や海水ポンプなどを固定するボルトの耐震裕度は、一・三〇〜一・三六にすぎないという。
「つまり、基準地震動の約一・三倍の地震で個々のボルトは壊れるが、関電は構造物を固定する機能には影響がないという。だが、ボルトが全部壊れて本当に安全性が保たれるのか」
さらにボルトを打ち込んでいる基礎部分の強度については「数が多くて算定は困難」とチェックの対象から外した点を問題視する。
同じように地震が起きた際、炉心に制御棒がうまく挿入されるかどうかについても、関電はチェックから外した。井野委員は「結局、一・八倍の地震での安全性さえ、検討されていないに等しい」と厳しく評価する。
<デスクメモ> 東京・杉並の脱原発デモをのぞいた。「前に詰めて」と若い警官が参加者に連呼する。でも、すき間はない。どこを詰めるのかと聞くと黙った。上司の指示に従っただけなのだろう。その姿が再稼働を急ぐ電力会社や保安院の職員と重なる。ひたすら組織に身を委ねる。行き着いた先は福島事故だった。(牧)
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規制庁も看板替えのみ 新機関でもチェックに不安 外部人材で体制強化を
東京新聞 2012.02.21 朝刊 「こちら特報部」
震動1.8倍まで 想定甘すぎる
事故後の大飯原発3、4号機の緊急安全対策はどうか。関電は最悪のケースでは、重機で地震のがれき撤去や道路の復旧をして、11.5時間以内には海水を投入できるとしている。しかし、井野委員は「台風や大雪が重なれば、作業時間は延びるはずだ。そうした想定がなされていない」と懸念した。「想定外」はあってはならない。
後藤委員も「ストレステストでは、水素対策が評価されていない。沸騰水型の原子炉が壊れた福島原発事故では、格納容器の中に窒素を封入してあるので容器内で爆発は起こらず、水素が漏れた建屋内で爆発した。だから、あの程度で済んだ。だが、大飯原発3、4号機は格納容器に窒素を入れていない加圧水型。つまり、容器内で水素爆発が起こり得るのに、その想定がなされていない」と警鐘を鳴らす。
さらに、津波でガレキが流れてきたり、周囲が火の海になるなど、実際に起こりそうな複合的な災害の耐久性も安全評価から「対象外」としていることを疑問視する。
「そもそも、基準地震動の一・八倍の余裕で事足りるとする評価が妥当なのか。大飯原発では海側の二つの断層だけではなく、陸側の断層も連動する可能性がある。この想定もない。津波も地震波も共振することで、何倍にも増幅する」
「福島事故に何も学ばず」
後藤氏は「福島のように過酷事故が同時多発することも十分考えられるのに、ほとんど省みられていない。福島の事故に何も学んでいないと言われても仕方がない」と憤りを隠さなかった。
ニ十日の保安院の意見聴取会も会場から傍聴者をシャットアウトして開かれた。傍聴者は経産省別館一階の会議室でモニターを通し、委員らのやりとりを見守った。
モニター「傍聴」は、先月六日の聴取会で一部の傍聴者が委員に詰めよるなどしたための措置という。それでも事前申し込みが必要で、マスコミも同様の扱い。今回の締め切りは十六日だった。
保安院は大飯原発3、4号機については議論を尽くさないまま、安全評価に「妥当」のお墨付きを与えた。福島原発事故の反省はどこにやら、原発推進のためのやらせが暴露されても、その姿勢に変化はない。
深刻なのは、その保安院の大半の職員が四月に発足する原子力規制庁に横滑りすることだ。
「推進する側と規制する側が同じ役所にあるのはおかしい」との批判を受け、環境省の外局となる。政府外ではない。さらに職員数約四百八十人のうち、三百六十人が保安院、四十人が文部科学省、七十人が原子力安全委員会からとなる。
元日本原子力研究所研究員で技術評論家の桜井淳氏は「組織にいる人間が同じなら何も変わらない」と批判する。
安全審査のために原発の解析に携わった経験を持つ桜井氏は「電力会社の技術者と同等かそれ以上の知識がないと誤りは指摘できない。保安院の技術者にはそれができず、申請内容をうのみにするだけ。簡単な計算ミスすら相手が言わないと分からない」と話す。
細野豪志環境相は、規制庁の職員を出向元の省庁に戻さない「ノー・リターンルール」を採用する方針を明らかにしているが、対象は一定の役職以上の幹部のみになりそうだ。桜井氏は「数年で元の役所に戻ると分かっていたら、職員は難しい課題に積極的に取り組むようにはならない。今のやり方では、これまでのような無責任な体制が続く」と懸念する。
「規制庁が看板の掛け替えだけに終わらせないようにするには、技術に精通した人間を外部から連れてくるしかない」
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