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リスクと向き合う:「食」の周辺 食品セシウム、4月新基準 自治体検査機器、精度不足に苦慮
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20120219ddm001040063000c.html
毎日新聞 2012年2月19日 東京朝刊
食品に含まれる放射性物質の新基準値が4月から適用されることで、全国にある検査機器の多くが改良や使用法の変更を迫られている。新基準値は現行の暫定規制値より厳しくなるが、これまでの機器や使用法では検出精度が不足するためだ。検査を担う都道府県は財政面などから苦慮しており、福島第1原発事故が生んだ新たな「食」のリスクに対応する困難さが浮かんだ。
◇「予算・時間、足りない」
「予算がなく機器の買い直しはできない。今あるものを有効活用するしかない」。茨城県の担当者は嘆く。
食品の放射性物質検査は、主に(1)ゲルマニウム(Ge)半導体検出器(2)ヨウ化ナトリウム(NaI)シンチレーション検出器−−の2種類が用いられている。「Ge」は食品1キロあたりで数ベクレル単位まで精密に測定できるが価格は1000万〜2000万円。「NaI」は通常の測定下限値が数十ベクレルと精度は下がる一方、価格は300万円前後だ。
昨年12月時点で、国と都道府県が使っている検査機器は「Ge」216台に対し「NaI」227台。昨年3月から今年1月までに全国で10万738件の検査が実施され、内訳は「Ge」5万7381件、「NaI」4万3357件だった。
新基準値は野菜や肉などの一般食品について放射性セシウムを1キロあたり100ベクレルとし、暫定規制値の500ベクレルから大幅に厳しくなる。検査では結果の信頼性確保のため測定下限値を基準値の10分の1とするのが原則とされ、新基準値に対応するには10ベクレルまで測れる能力が必要だ。これだと、ほとんどの「NaI」が対応できない。
茨城県生活衛生課は今、「Ge」1台で週15〜20検体の水道水、「NaI」5台で週500〜600頭の牛肉を検査している。牛肉の全頭検査が始まった昨年8月は機器の納入が間に合わず、「Ge」1台を2カ月間、24時間フル稼働させた。「職員は寝ずの番で夏休みもなく測定を続けた。新基準値になると同じことをしなければならないのか」。担当者は不安を募らせる。
厚生労働省は新基準値に合わせ、「NaI」の測定下限値を1キロ当たり25ベクレル以下に緩める方針を打ち出した。ただ、検査機器メーカー「日立アロカメディカル」(東京都三鷹市)は「それでも測定時間を現在の10〜15分から60〜70分にしなければならない」と説明する。時間短縮には対象物を入れる容器の形を変え感度を上げる改良などが必要という。
宮城県は「NaI」の改良などで対応する予定だが、総額約1300万円かかる見込み。担当者は「『Ge』を持つ民間企業に検査を委託するのも手だが1検体数万円かかる。国から改良費の補助が出るとありがたいが」と、ため息をついた。
◇
毎日欠かさず口にする生命の源。そこに潜むリスクから目を背けて、私たちは生活していけない。シリーズの第2部は、「食」の周辺を見つめたい。
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八田浩輔、秋山信一、山崎征克、斎藤有香、田中裕之、北村和巳が担当します。
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