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2号機の温度上昇で再臨界の危険性が指摘され始めているが、じつは本当の危険はすでに始まっている。それは、福島原発の今の状態はけっして収束することなく今後数十万年にわたり続くからだ。その理由を説明してみる。
まず2号機は圧力容器が損傷して、溶融した核燃料が格納容器の側に落下するメルトスルーを起こしていることがわかっている。東電もこの可能性を認めている。核燃料のうち落下した割合は定かではないが、90トンある核燃料のほとんどが格納容器の底に置かれたコンクリートを侵食している状態が予想される。
底に溜まった核燃料は表面こそ上から注がれる水で固まっているが、内部は2000度以上に加熱されて、溶けた状態が維持されている。崩壊熱はメルトスルーから1年ほど経つ現在でも約5MW(3〜6の間で予想の差がある)あると予想されている。崩壊熱は核燃料全体から出ているので、熱による対流は起きていないはず。しかし、重力が作用しているため、わずかな比重差で沈殿作用が起きていると考えられる。
採掘されたウランは遠心分離機で精製されるが、これは比重差を利用してウラン238と235を分離する。内部がどろどろの核燃料の塊の中では、遠心分離機と同じ現象が重力によって起きている。プルトニウム239,240,ウラン235は、次第に沈殿していきながら、比重の違いにより濃度の高い層が形成されていく。
核燃料内部に存在する放射性元素は、自発的核分裂を行う。中性子を発生させて、その中性子は確率的にほかの元素の核に衝突を起こし連鎖的に核分裂反応が起きる。
さて、ここで殆どの人は減速材である水が無いので臨界には達しないと思うだろう。臨界が生じるには水で減速された熱中性子が不可欠だと思い込んでいるからだ。ところが高速中性子でも核分裂反応は起きる。もんじゅがそうである。もんじゅはプルトニウム239とウラン238を主体にして高速中性子による核分裂を利用した高速増殖炉だ。
そこでまた原子炉に詳しい人は、ウラン、プルトニウムの密度が低いので臨界しないというだろう。ところで臨界という用語は原子炉工学の専門用語で、ほかに未臨界、超臨界という用語がある。超臨界とは核分裂連鎖反応がものすごい速度で起きることを意味する、核爆発のことだ。臨界状態というのは制御棒などでコントロールしない限り維持できない、非常に不安定な状態だ。未臨界とは核分裂反応が持続しないで次第に減少していく状態を意味する。崩壊熱が出続けている核燃料の塊も未臨界状態にある。
じつは未臨界状態での核分裂反応が数十万年続いた例が発見されている。ガボンのオクロ鉱山では20億年前に自然に原子炉となったウラン鉱脈が発見されている。
オクロの天然原子炉
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E7%84%B6%E5%8E%9F%E5%AD%90%E7%82%89
天然原子炉のメカニズムは、「ウランに富んだ鉱床に地下水が染み込んで、水が中性子減速材として機能することで核分裂反応が起こる。核分裂反応による熱で地下水が沸騰して無くなると反応が減速して停止する。鉱床の温度が冷えて、短命の核分裂生成物が崩壊したあと、地下水が染み込むと、また同じサイクルを繰り返す。」と考えられている。ここで重要なことは、臨界反応が持続しなくても未臨界のまま核分裂反応は起き続けるということだ。
じっさい、加速器駆動未臨界炉というアイデアもある。加速器で発生させた中性子をウランやプルトニウムに打ち込んで核分裂反応を起こさせるというもの。
福島原発事故は、核燃料が崩壊熱を出しきって冷えてしまえば収束できると多くの人は考えているだろう。崩壊熱が殆どなくなるには約10年かかると予測されている。しかしこの予測は、核燃料が燃料集合体の中に維持された状態でのことだ。上記で説明したように内部で再濃縮が起き、さらに自発的核分裂での中性子密度が上昇した場合は、未臨界状態での熱放出も高いレベルで維持され続ける。
オクロの天然原子炉は数十万年にわたって稼動した。その間に5トンのウランが反応したと言われている。2号機には約90トンの核燃料がある。そのほとんどが反応を終えない限り、現在のように一時的に高温を発しては下がり、再び高温になる、という状態を繰り返す。それは数十万年以上続く。未来永劫にわたり放射能は絶え間なく放出され続けるのだ。
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