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都内の子どもから0.5ベクレル。その原因は……
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=54594
2012年2月16日 読売新聞
子どもの尿を採取し、内部被曝をしていないかどうか調べる親たちは少なくない。中には、放射性物質が検出されたケースもある。
東京都世田谷区の女性A子さん(46)は2011年8月、小学5年生の長男と小学2年生の長女の尿を2リットル採取して調べた。長男は不検出だったが、長女から放射性物質セシウム−137が1キロあたり0.5ベクレル検出された。
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A子さんは「毎日食べる肉や野菜は、放射性物質を含んでいないと思われる九州産や外国産のものを選ぶなど、子どもたちには内部被曝をさせないように気をつけていたので、とてもショックでした」と振り返る。
家で食べている物が安全だとしても、給食が原因だということも考えられる。だが、2人は同じ小学校に通っている。A子さんは「同じ食生活をしているのだから、お姉ちゃんだけ検出されたことが不思議です」と首をかしげた。
同じ生活をしているきょうだいで、異なる結果が出たのはなぜなのか。NPO法人市民科学研究室代表で、低線量被曝の研究をしている上田昌文さんは「尿検査で内部被曝を調べる場合、尿の採取にどのくらい日数をかけたかということが結果に影響してくるのではないか」と推測している。
例えば、1回の食事による被曝量を1キログラムあたり1ベクレルと仮定しよう。1日3回食事をしたら、単純計算で、内部被曝は3ベクレルになる。10日後は30ベクレル、20日後は60ベクレルという具合に、取り込む量はだんだん増えていく。
体内に取り込まれた放射性物質は少しずつ尿や便とともに排出される。上田さんは「尿の採取に時間をかけるほど、その間に取る食事の回数が増えるので、検出される放射性物質の数値が高まる可能性は否定できない」と考えている。
A子さんに、2リットルの尿を集めるのにどれだけ時間をかけたか尋ねてみた。すると、正確には覚えていないものの、小学5年生の長男は7〜10日ぐらい、小学2年生の長女はさらに3日ぐらいかかったという。
この3日間の違いが「0.5ベクレル」と「不検出」の差になって表れたのであろうか。それを確かめる方法はなく、この点は定かではない。ただ、女児からセシウムが検出されたという事実は、東京電力福島第1原発から約200キロ離れた東京でも、放射能と向き合いながら暮らしていかなければならないという現実を突きつけたとは言っていいだろう。
◇
ところで0.5ベクレルという検査値は、どう評価したらいいのだろう。医師で元放射線医学総合研究所主任研究官の崎山比早子さんは「0.5ベクレルはかなり微量であり、時間をおいて測り直したら検出されない可能性もある」と説明する。
前回のコラムでも書いたが、そもそも尿検査では内部被曝を正確に測ることはできない。尿検査で微量の放射性物質が検出されたとしても、それほど気に病む必要はなさそうだ。
ただ、崎山さんは「内部被曝を減らす努力は続ける必要がある」と強調する。一定量の放射性物質を摂取し続けた場合、摂取量と排出量の差が体内に溜まっていくことになり、ある時期になると、摂取量に応じて常に同じ量が体内にある「平衡」状態になるというのだ。
崎山さんは「半減期が長く、現在、いちばん気にする必要がある放射性セシウムは、水に溶けやすい性質がある。野菜はよく洗ってゆでる、魚は煮て、煮汁は捨てるなど、調理の際の一工夫も必要だ」と説明する。
放射性物質による汚染が少ない食材を選ぶことはもちろんだが、市場に出回っているものは、汚染されていないのか、また、汚染されているとしたら、どの程度なのかははっきりわからない。調べるためには、実際に食材を測定してみるしかない。
原発事故以降、食材などの放射能を市民が測る「市民測定所」がいくつも開設された。今後、このコラムでも市民測定所について紹介しようと思っている。
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