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森永卓郎 : 政府が原発再稼働に踏み切れないワケ――問われる合理的な判断力
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20120215-00000000-fukkou-bus_all
復興ニッポン 2月15日(水)12時40分配信
■原発寿命、原則40年の方針を決定
政府が原発の寿命を原則40年とする方針を示した。国内原発54基のうち、40年超が3基。他の原発が順次再稼働しても、このまま原発の新設・増設がないと、10年後に運転できるのは35基、20年後は16基にまで減る。そして日本の原発は2050年までにすべてなくなることになる。
この政府の方針に対して、原発容認派と脱原発派の双方から批判が集中している。
原発容認派からは、日本が原発を捨てて、本当に電力の安定供給が可能になるのかという不安の声があがっている。確かに、現時点では火力以外の有力な代替電源は開発されていない。政府は、代替エネルギーの開発を急いで、原発の穴を埋める方針だ。
一方、脱原発派からは、福島第一原発でこれだけの事故を起こしたのだから、すべての原発をすぐに廃炉にすべきだという批判が出ている。
■全原発を直ちに廃炉にするのは、現実的か?
私は、政府の考え方は一定の合理性を持っていると思う。原発を新設するのは、いまの国民感情からみてとても無理だし、古い原子炉から廃炉にしていくという考え方も、安全性を考えたら合理的だ。
だが、脱原発派の言うように即刻すべての原発を廃炉にするのは、現実問題としてはかなり難しい。
一つは、廃炉の費用だ。原子炉の廃炉にどれだけのコストがかかるのかについては、意見が分かれているが、およそ1000億円から5000億円程度だ。仮に3000億円だとすると、54基の原発をすべて廃炉にするためには、16兆2000億円ものコストがかかる。消費税率を10%に引き上げても税収は13兆円しか増えないことを考えると、このコストは膨大だ。それを一気に負担するのは、ほぼ不可能と言っていいだろう。
もう一つは火力に依存しすぎるリスクだ。日本は石油の87%を中東に依存している。天然ガスの中東依存度は25%だが、インドネシア、マレーシア、オーストラリアに2割程度ずつ依存しているため、これらの国で何かあったときの供給不安は残る。また、価格も乱高下する。石油価格は2007年の1月から2008年の7月にかけて、1年半でほぼ3倍になった。
つまり、化石燃料は供給量も価格も極めて不安定なのだ。そこに集中しすぎると、何かあったときにはすべて電気料金に跳ね返ってくる。最悪の場合、停電という事態も起こりうる。
■原発を停止しても事故リスクはゼロにはならない
だから、新エネルギーを開発しながら徐々に電源を分散し、中長期的に脱原発を図るという政府の施策は、ギリギリ現実に採りうる妥協案なのだと思う。
ただ、政府のやろうとしている原発政策には重大な問題がある。もし寿命は40年と決めたのだったら、停止中の原発で40年を経過していないものは、再稼働すべきではないか。もちろん、きちんと安全確保策を講じる必要があるが、停止中の原発を放置してはならない。
停止中の原発は炉内に使用中の核燃料が入っているので、原発事故のリスクがゼロになるわけではない。実際、福島第1原発の4号機は冷温停止中だったにもかかわらず、水素爆発を起こし建屋が大きく損傷した。
一方、停止中でも減価償却費やメンテナンス費などのコストはかかる。さらに、経済産業省は全原発が停止して、その分を火力でまかなおうとすると、年間3兆円ものコストがかかると試算している。また、エネルギー経済研究所の推計では、家庭の電気代が18%上昇するという。
■ストレステストを経たのちの原発再稼働を宣言せよ
そうした事態を先取りするように、東電は4月から、工場やオフィスなど大口契約者向けの電気料金を平均17%値上げする予定だ。家庭向けも値上げを検討している。
電気料金の上昇は生産コストにも跳ね返り、企業の経営体力と競争力を弱める。家計の負担も増え、消費などの内需を冷やす。
さらに問題は、電力不足だ。全原発が停止していても、今年夏のピーク時需要が昨年並みであれば、電力不足は生じないという。しかし、昨年の需要は、国民や企業の血のにじむような節電努力によって達成された低い電力消費だ。このまま行ったら、また昨年のような厳しい節電を繰り返さなければならなくなるのだ。
政府は、いま行っているストレステストを可能な限り早急にまとめて、国民にきちんと安全な原発は再稼働すると宣言すべきだ。
■国民に再稼働と稼働停止のコスト比較を示せ
こうした事情は野田政権は十分理解しているはずだ。それなのに、なぜ再稼働に踏み切らないのか。それは、再稼働をすると国民の間に感情的な反発が沸き起こり、次の選挙で敗北してしまうからだ。
それでも、安全な原発については基本的に40年は使用すると決めたのならば、原発を再稼働するのと一切稼働を停止するのとでは、どれだけ電力コストが変わり、どれだけ電力料金に跳ね返るかをきちんと試算・比較して国民に示すべきだ。
原発は今年が正念場だ。総合エネルギー調査会をはじめ、原子力委員会や中央環境審議会でも分野別の議論を進めつつある。それらを反映させ、夏までにエネルギー・環境政策を策定する手はずである。この中で中長期的に電源構成をどうするか、核燃料サイクルを含む原子力政策がどうあるべきかがきちんと打ち出されることを期待したい。
■野田内閣は消費税だけでなく、原発再稼働でも国民の信を問え
だが、中長期的視点ももちろん大事だが、日本の電源をどうするのかは、まさに今問われている問題なのだ。
使用中核燃料を炉内に入れたまま稼働を停止し、その結果電気代を10%上げるという政策パッケージと、安全性の確認と共に停止中の原発を再稼働させ、電気料金を据え置くというパッケージの両方の選択肢を国民に示して、それを選挙で問えばよいのだ。
野田内閣は、消費税率の引き上げだけでなく、原発再稼働でも国民の審判を受けるべきなのだ。野田政権がこうした決断に踏み切らないならば、原発事故リスクがさほど減らないのに電気代だけが跳ね上がるという最悪の結果を招くだろう。
森永卓郎(もりながたくろう)
森永 卓郎 1957年東京都生まれ。東京大学経済学部卒。日本専売公社、日本経済研究センター(出向)、経済企画庁総合計画局(出向)、三井情報開発総合研究所、三和総合研究所(現:UFJ総合研究所)を経て2007年4月独立。獨協大学経済学部教授。テレビ朝日「スーパーモーニング」コメンテーターのほか、テレビ、雑誌などで活躍。専門分野はマクロ経済学、計量経済学、労働経済、教育計画。そのほかに金融、恋愛、オタク系グッズなど、多くの分野で論評を展開している。日本人のラテン化が年来の主張。
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