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放射能汚染を追う 給食編[東京新聞]
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2月 14, 2012 横浜ママパパの放射線だより
牛乳 検査厳格化へ 「神経質では」戸惑う業界
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「牛乳は10ベクレル、5ベクレルといった数値が(学校給食現場などで)基準になりつつあります」「神経質過ぎるのではと思うくらい」
東京都内で7日、放射性物質のリスクをテーマに、食品業界関係者や市民らが集まった意見交換会。乳業大手メグミルクの日和佐信子社外取締役は、業界の焦りを代弁した。
牛乳に含まれる放射性セシウムの国の暫定規制値は、1キログラム当たり200ベクレル。4月から厳しくなる新規制値でも同50ベクレルの見込みだ。しかし、業界は、放射能汚染へ不安を抱く母親らの基準値の方が、はるかに厳しいことに、戸惑っている。
チェルノブイリ原発事故で甲状腺がんの子どもが増えた一因とされ、給食で毎日のように出される牛乳。不安な母親たちには、象徴的な存在でもある。
「牛乳を飲まない子どもは毎月数人ずつ増えています」。給食現場で起きている異変を、東京都武蔵野市の担当者が説明する。
武蔵野市は昨年10月、小学校で出す予定だった牛乳から同7ベクレルのセシウムを検出。今、全児童約5000人のうち38人が牛乳を拒否している。
町田市でも、市議の独自の検査で6ベクレルを検出し、全児童約2万3800人のうち約220人が飲むのをやめている。
「再び安心して子どもに飲ませるため、産地を西日本に限定してほしい」と、世田谷区の母親(46)は訴える。同様の要望は学校や地元自治体に寄せられるが、牛乳の供給体制を変えることは容易ではない。東京であれば年間1億本以上も必要とあって、安定的な確保のため、供給元を決めるのは都道府県だからだ。都は市区町村を14区域に分け、複数のメーカーから納入してもらっている。都は産地の変更も「風評被害を招く」として、メーカーに求めていない。
それでも、父母らの思いは業界を動かしている。
都内の小中学校に納入している牛乳メーカー6社でつくる東京学乳協議会が今月2日、検査結果を初めて公表した。業界も、独自検査をせざるを得なくなり、今月末にも結果を発表する予定だ。
そもそも、酪農家が搾る原乳から製品化するまでの工程で、汚染された乳を取り除けないのだろうか。
牛乳は、複数の酪農家が搾った原乳を、各地に設置された「クーラーステーション」と呼ばれる大きなタンクに集めた後、検査している。
消費者からは「クーラーステーション単位の検査では、汚染された原乳が、大量の原乳に混ざって薄まっているのでは」と、ステーションに集める前に検査すべきとの指摘もある。これに対して、業界団体の日本乳業協会は「原発事故前からの検査方法で、批判には当たらない」と理解を求める。一方で、酪農の現場では「ゼロベクレル」に挑む動きが出始めている。
「クーラーステーションの検査では1ベクレル未満まで調べている。少しでも検出されれば、農家に出向いてエサの指導をしている」。前橋市内で約40年間酪農を営み、酪農組合代表理事を務める細野勝美さん(61)は覚悟を語る。「『不検出』でないと消費者はイエスと言わない。酪農家はゼロを目指して努力している」
牛乳の検査結果
厚生労働省によると、昨年3月の福島第一原発事故の直後、福島、茨城両県の一部地域で、原乳計23件が、国の暫定規制値(放射性ヨウ素は1キログラム当たり300ベクレル、セシウムは同200ベクレル)を超えた。甲状腺に集まりやすい放射性ヨウ素は半減期が8日と短く、現在は食品からは検出されていない。セシウムについては昨年4月以降、現行の暫定規制値を超えた原乳はない。今月4月から適用予定の新規制値50ベクレルを超えた原乳もない。原乳とは乳牛から搾ったままの状態の乳で、加工されて牛乳になる。牛乳も原乳も規制値は同じ。
平成24年2月14日
同じ献立で弁当 不安ぬぐえぬ母、牛乳拒否も
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東京都大田区内の会社員の母親(35)は毎朝5時半に台所に立ち、長男(5つ)と長女(3つ)が通う区立保育園の給食献立表に目を落とす。
「中華丼とピクルスに春雨スープね」。園の給食の食材が放射能に汚染されていないか不安で、弁当を持たせ始めたのは昨年11月。園との約束で弁当は給食のメニューと同じにしている。「週末は食材探しに奔走する」と笑う。
白菜は「15グラムで短冊」、「ニンジンは「拍子木切り」。見た目も給食に合わせるための細かい指示に沿って、包丁を入れてゆく。
昨年3月の東京電力福島第一原発の事故以来、給食が心配だった。区内の小学校の給食で放射性セシウムに汚染された疑いのある牛肉が使われた。「検査すると言っても、すり抜けた食材がわが子の口に入るかもしれない。まるでロシアンルーレット」と母親は危機感を抱く。
当初、園が「無用な混乱を招く」と食材の産地公表を拒んだことも不安に拍車をかけた。一方で、「弁当は仕事を持つ自身の負担が大きい。子どもが園で浮いてしまうかもしれない」。葛藤した。
園内で弁当持参はこの家の2児だけ。給食時は、園職員が2児の弁当を温めた上、園の食器に移し、皆と同じ給食に見えるようにする。いじめやトラブル防止のためという。
母親の祖父は「心配ないのに」とあきれ顔だ。周りの目も気になる。「でも何年もたたないと安全かどうか分からない。取り越し苦労でもいい」
給食時の弁当持参を認める自治体も各地で増えている。都庁の1月末までの聞き取り調査では、認めているのは32市区町村。16市区町村は自治体としての判断をしておらず、このうち10市区は学校長の判断に委ねている。認めていないのは13市区だ。
岩手県一関市の母親(27)は、昨年10月に市立保育園に通う長女(4つ)の尿からセシウムが1キログラム当たり4.6ベクレル検出されてから、給食の牛乳を飲ませていない。「長女の数値なら、健康に影響はないという人もいて、牛乳を飲ませないことが正しいことなのか分からないけれど」
福島第一原発から160キロ以上離れている一関市。関東の水戸市や宇都宮市の方が原発には近い。
母親が放射能を意識したのは同6月に地元の原乳からセシウムが1キログラム当たり24ベクレル検出されてからだ。
園に牛乳を出さないよう頼んだが、「暫定規制値(同200ベクレル)以下」の一点張り。母親は「原発事故前を考えれば、セシウムが検出されても『大丈夫』という感覚の方がまひしていると感じる」。
給食の牛乳を続けさせるかどうかで夫や祖母ともめたが、尿検査後は理解してくれた。
長女の被ばくの原因が牛乳かどうかは分からない。ただ食材に気をつけたことで、1月の2回目の検査で数値は4分の1に。「ホッとした」と母親。
都内でも、尿からセシウムが検出され、給食の牛乳を拒否している小学生がいる。
福島第一原発事故で大量の放射性物質が放出され、食品汚染はジワリと広がっている。食の現場で何が起きているのか。子どもたちの給食をめぐる現状を取材した。
食事による内部被ばく
厚生労働省は東京都、宮城、福島両県で流通している食品を購入し、平均的な食生活をした場合の放射性セシウムによる内部被ばく線量を推計している。年間で東京は0.0026ミリシーベルト、宮城は0.078ミリシーベルト、福島は0.0193ミリシーベルト。公衆被ばくの限度とされる1ミリシーベルトを下回っている。現在の暫定規制値より厳しい新規制値が4月から適用されると、内部被ばく線量はより下がるとされる。
平成24年2月12日
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