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日本原子力学会が1月に議決した使用済み核燃料などの輸送容器に関する検査基準(学会標準)が、容器設計・製造会社「オー・シー・エル」(東京都)と、同社から多額の寄付を受ける有冨正憲・東京工業大教授が主導する形で審議され、国の規制より緩い内容にまとめられていたことが分かった。原発を巡っては、学会や業界団体が定めた内容が国の基準に採用される例も多いが、「原子力ムラ」内部で自分たちに有利な基準を作り上げていく構図が浮かんだ。【日下部聡】
学会議事録や関係者によると、議決したのは「使用済燃料・混合酸化物新燃料・高レベル放射性廃棄物輸送容器の安全設計及び検査基準」。一般からの意見募集の後、今年中にも正式に制定される見込みという。
学会標準は分科会が原案を作成し、専門部会と標準委員会でチェックする仕組みで、10年に輸送容器分科会で検討が始まった。同分科会はオ社の会議室で開かれ、原案の文書化もオ社から参加した委員が行ったという。
有冨氏は同分科会の主査、上部組織の原子燃料サイクル専門部会の部会長で、議決機関・標準委員会の副委員長でもある。東工大の記録によれば、有冨氏は06〜10年度、オ社から1485万円の奨学寄付金を受けた。分科会に参加するもう1人の研究者(東工大准教授)も10年度、オ社から100万円の奨学寄付金を受けている。
審議の焦点は、使用済み核燃料などの発する熱が容器にどう伝わるかを調べる「伝熱検査」を、新造容器全てに実施するか否か。原案はメーカーに製造実績があればサンプル検査で可としたが、経済産業省原子力安全・保安院の通達は全数検査を求めている。昨年6月の専門部会では、保安院の安全審査官が反対意見を述べた。
しかし、昨年12月23日〜今年1月19日に行われた標準委の投票の結果、研究者や電力会社社員らの賛成多数で可決された。反対は保安院の委員1人。独立行政法人・原子力安全基盤機構の委員が賛否を保留した。
容器メーカー関係者によると、大きな輸送容器なら38本の使用済み核燃料集合体を収納できる。伝熱検査は、集合体と同じ本数の電熱ヒーターを内部にセットしなければならず、負担が大きいという。
有冨氏は「オ社の味方をしているつもりはない。全て検査していたら出荷が滞り、使用済み燃料の処理が進まない。学会としてサンプル検査でいいと判断した」と話す。だが、審査の全段階に関与していることについては「中立性に疑念を持たれても仕方がない。少なくとも分科会主査か標準委副委員長のどちらかは辞めた方がいいと思っている」と話す。
ただ、有冨氏は「容器は原子炉などと違って論文の書ける分野ではなく、研究者が少ない。審議体制に問題があることは分かっていたが、他になり手がいない」とも話した。
オ社の川上数雄常務は「公平、公正、公開の原則にのっとった委員会で活動しており、疑念を招くようなものではない」との見解を示した。
保安院関係者は「輸送容器は市民の近くを通ることもあり、厳しい基準が必要。このまま国の基準にはできない」と話している。
有冨氏は東京電力福島第1原発事故直後、当時の菅直人首相に内閣官房参与に任命されている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120212-00000006-mai-soci
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