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原子力の安全確保の切り札として、政府が、今年4月の設置を目指している「原子力規制庁」のあり方に大きな疑問符が付きつけられた。
問題を提起したのは、国会の東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)の黒川清委員長だ。同委員長は今月2日、異例の声明を公表し、野田佳彦内閣が先月末、規制庁設置関連法案を閣議決定したことに対して、「行政組織の見直しを含めて提言する国会の事故調が調査をしている最中であるにもかかわらず、(政府が)組織のあり方を定めた法案を決定したことは理解できない」と厳しく批判した。
黒川委員長の批判は的を射た議論だ。しかし、問題は、そうした設置手続きにとどまらない。
というのは、規制庁は組織としてのステイタスが低いうえ、非常時の指揮命令系統が複雑で、福島原発事故と同じ失敗を繰り返す恐れが大きいからだ。これでは、原子力の安全は「絵に描いた餅」である。
2月2日の黒川委員長の声明文は、事故調ホームページに掲載されているので、詳細はそちらを参照して頂きたい。
福島原発事故を巡っては、作業員全員が退避せざるを得なくなった場合に断続的な放射性物質の大量放出が1年程度続くとされた「最悪シナリオ」(内閣府の近藤駿介原子力委員長が作成)をなかったものとして封印していた問題や、事故の対応のために設置された「原子力災害対策本部」の議事録がまったく残されていなかった問題が1月下旬に相次いで露呈し、政府への信頼は地に堕ちている。
そうした中で、黒川・事故調は、昨年10月の「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会法」の成立を受けて、ようやく同12月から本格的な事故の実態調査を開始したばかり。その役割には、「事故の直接、間接の原因」「講じた措置の内容、経緯、効果」などを究明するだけでなく、「原子力に関する基本的な政策」「行政組織の在り方の見直し」の提言も含まれている。
それにもかかわらず、野田政権は先月31日、見切り発車で、原子力規制庁の設置を定めた「原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案(原子力組織制度改革法案)」と「原子力安全調査委員会設置法案」を閣議決定。そのうえで、細野豪志環境大臣兼原発事故の収束及び再発防止担当大臣名で談話を公表し、「国会において早期にご審議いただき、是非とも4月1日発足を目指したい」と公言した。
このため、黒川委員長は、前述の異例の声明文を公表するとともに、内閣総理大臣、衆・参両院議長、衆・参両院全議員に声明文を提出、国会の権威を盾にとる形で、政府に再考を迫ったのだ。これでは法的な使命を果たせないと黒川委員長が危機感を募らせ、こうした問題提起を行うのは当然と言えば当然の行動と言えよう。
とはいえ、問題は、手続きにとどまらない。重要なのは、「原子力ムラ」などと言われてきた産、官、学、政がもたれ合う慣れ合いの構造を打破して、真の意味で原子力発電の安全を確保できる組織を構築できるかどうかである。
この点で、法案に盛り込まれた「原子力規制庁」は、生温い存在と言わざるを得ないのだ。というのは、問題の環境省設置法改正案をみると、「原子力規制庁」は、環境省の外局に過ぎないからだ。長となる原子力規制庁長官は、環境大臣が委任するとなっている。加えて、旧原子力安全委員会に相当する「原子力安全調査委員会」は、「原子力規制庁」の下部組織とされている。
つまり、原子力規制庁はもちろん、その下部組織の原子力安全調査委員会の長もそろって、環境大臣の部下にななる。そして、当たり前だが、環境大臣は内閣総理大臣の部下である。ということは、規制庁も安全調査委員会も、安全より、環境大臣や内閣総理大臣の意向に従わざるを得ない宿命を負うことになるのだ。安全を最優先するならば、総理が長を兼ねるか、少なくとも総理直属の組織とするのが筋である。
さらに気掛かりなのは、規制庁を平時の規制機関とし、今回の行政組織の見直しを、形ばかりの法整備にとどめた結果、今回の事故で明らかになった「危機対応の拙さ」が手付かずのまま放置されようとしている点だ。
例えば、原子力災害対策特別措置法のポイントはこれといった見直しがほとんどない。
まず、「主務大臣は、原子力緊急事態が発生したと認めるときは、直ちに、内閣総理大臣に対し、その状況に関する必要な情報の報告を行うとともに、公示及び指示の案を提出しなければならない」(第十五条、原子力緊急事態宣言等)との報告が最初にありきで、これを受けて、「内閣総理大臣は、直ちに、原子力緊急事態が発生した旨及び次に掲げる事項の公示( 以下「原子力緊急事態宣言」という) をするものとする」(第十五条二2)ほか、「内閣総理大臣は、原子力緊急事態宣言をしたときは、当該原子力緊急事態に係る緊急事態応急対策を推進するため、臨時に内閣府に原子力災害対策本部を設置するものとする」(第十六条)、「原子力災害対策本部の長は、原子力災害対策本部長とし、内閣総理大臣をもって充てる」(第十七条)といった流れがそのまま継承されているのだ。
唯一の変更点が、これまで「原子力災害対策副本部長は、主務大臣をもって充てる」(第17条4)などとなっていた部分で、これについて「副本部長や本部員の拡充により原子力災害対策本部の強化を図る」ことが盛り込まれている程度なのだ。
そうした中で、黒川・事故調は、昨年10月の「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会法」の成立を受けて、ようやく同12月から本格的な事故の実態調査を開始したばかり。その役割には、「事故の直接、間接の原因」「講じた措置の内容、経緯、効果」などを究明するだけでなく、「原子力に関する基本的な政策」「行政組織の在り方の見直し」の提言も含まれている。
それにもかかわらず、野田政権は先月31日、見切り発車で、原子力規制庁の設置を定めた「原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案(原子力組織制度改革法案)」と「原子力安全調査委員会設置法案」を閣議決定。そのうえで、細野豪志環境大臣兼原発事故の収束及び再発防止担当大臣名で談話を公表し、「国会において早期にご審議いただき、是非とも4月1日発足を目指したい」と公言した。
このため、黒川委員長は、前述の異例の声明文を公表するとともに、内閣総理大臣、衆・参両院議長、衆・参両院全議員に声明文を提出、国会の権威を盾にとる形で、政府に再考を迫ったのだ。これでは法的な使命を果たせないと黒川委員長が危機感を募らせ、こうした問題提起を行うのは当然と言えば当然の行動と言えよう。
とはいえ、問題は、手続きにとどまらない。重要なのは、「原子力ムラ」などと言われてきた産、官、学、政がもたれ合う慣れ合いの構造を打破して、真の意味で原子力発電の安全を確保できる組織を構築できるかどうかである。
この点で、法案に盛り込まれた「原子力規制庁」は、生温い存在と言わざるを得ないのだ。というのは、問題の環境省設置法改正案をみると、「原子力規制庁」は、環境省の外局に過ぎないからだ。長となる原子力規制庁長官は、環境大臣が委任するとなっている。加えて、旧原子力安全委員会に相当する「原子力安全調査委員会」は、「原子力規制庁」の下部組織とされている。
つまり、原子力規制庁はもちろん、その下部組織の原子力安全調査委員会の長もそろって、環境大臣の部下にななる。そして、当たり前だが、環境大臣は内閣総理大臣の部下である。ということは、規制庁も安全調査委員会も、安全より、環境大臣や内閣総理大臣の意向に従わざるを得ない宿命を負うことになるのだ。安全を最優先するならば、総理が長を兼ねるか、少なくとも総理直属の組織とするのが筋である。
さらに気掛かりなのは、規制庁を平時の規制機関とし、今回の行政組織の見直しを、形ばかりの法整備にとどめた結果、今回の事故で明らかになった「危機対応の拙さ」が手付かずのまま放置されようとしている点だ。
例えば、原子力災害対策特別措置法のポイントはこれといった見直しがほとんどない。
まず、「主務大臣は、原子力緊急事態が発生したと認めるときは、直ちに、内閣総理大臣に対し、その状況に関する必要な情報の報告を行うとともに、公示及び指示の案を提出しなければならない」(第十五条、原子力緊急事態宣言等)との報告が最初にありきで、これを受けて、「内閣総理大臣は、直ちに、原子力緊急事態が発生した旨及び次に掲げる事項の公示( 以下「原子力緊急事態宣言」という) をするものとする」(第十五条二2)ほか、「内閣総理大臣は、原子力緊急事態宣言をしたときは、当該原子力緊急事態に係る緊急事態応急対策を推進するため、臨時に内閣府に原子力災害対策本部を設置するものとする」(第十六条)、「原子力災害対策本部の長は、原子力災害対策本部長とし、内閣総理大臣をもって充てる」(第十七条)といった流れがそのまま継承されているのだ。
唯一の変更点が、これまで「原子力災害対策副本部長は、主務大臣をもって充てる」(第17条4)などとなっていた部分で、これについて「副本部長や本部員の拡充により原子力災害対策本部の強化を図る」ことが盛り込まれている程度なのだ。
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