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低線量・内部被ばくどう向き合う@こちら特報部
http://blog.livedoor.jp/ryoma307/archives/5830589.html
2月3日 東京新聞・こちら特報部 :Nuclear F.C : 原発のウソ
福島県川内村が原発事故の避難自治体としては初めて帰村宣言を出した。4月1日に役場や学校、保育園などを再開する方針だが、やはり気になるのは放射能汚染による健康被害。
年間20ミリシーベルト以下ならば居住できるというのは、本当なのか。向こう数十年にわたって続く低線量被ばくや内部被ばくとどう向き合えばよいのか。内外の専門家に聞いた。(秦淳哉、小坂井文彦)
「がんの発生数2万2409件のうち、850件はチェルノブイリ原発事故によって放出された放射能汚染によるものだった」。
スウェーデンから来日したヨーテボリ大学のマーチン・トンデル博士(49)は先月31日、福島市内で開かれた講演会で、スウェーデンでのチェルノブイリ原発事故の健康影響についての調査結果を報告。低線量被ばくでもがん発症のリスクがある可能性をこう「警告」した。
トンデル博士は1986年4月に旧ソ連(現ウクライナ)で起きたチェルノブイリ原発事故の後、スウェーデン北部に降下したセシウム137の堆積量と、その後に住民が発症したがんとの関係を研究していることで世界的に有名だ。
島国の日本と違い、陸続きで国境を接する欧州では、原発事故の影響が直接隣国などに及ぶ。トンデル博士の研究はチェルノブイリ事故が約千五百キロ以上離れたスウェーデンにどう影響したのかを解明するのが目的だった。
スウェーデンではチェルノブイリ事故から2〜3日後に大雨が降った。このとき、事故で原発から放出されて風に乗ったセシウム137の約5%が、スウェーデン国内に降下したとみられている。
上空から放射線を測定した結果、「放射能の汚染はスウェーデン北部一帯に広がっていたが、汚染の程度は均一ではなかった。1平方メートル当たり10万ベクレルの場所もあれば、20万ベクレルの所もあった」(トンデル博士)という。
そこでトンデル博士は、スウェーデン国内21州のうち、比較的汚染の程度が高い北部の7州を選び、85年から87年にかけて同一の場所に住み続けたゼロ歳から60歳までの住民約114万人を対象に調査した。ただし、ストックホルムなど人口密度が高い都市部は生活習慣などでがんの発症率が高くなる傾向があるため除外し、内部被ばくは考慮しなかったという。
汚染の程度に応じて調査対象地域を6つに区分し、88〜96年のがん発生数を解析した結果、トンデル博士は「理論的にはチェルノブイリ事故の影響で、通常よりも発生数が3・8%増加したことになる」と説明。「低線量の被ばくでもがんを発症したと考えられる。最も線量が高い場所では11%の増加もあり得る」と指摘した。
一方で、トンデル博士は「調査では同地域の人が同じ被ばくを受けたと単純化して計算した。本来は個人の生活スタイルなども考慮して数値を補正する必要がある。低い線量の影響は研究者もまだ明確な答えを持っておらず、もっと研究する必要がある」と強調する。このため、このデータを東京電力福島第一原発事故の汚染地域にそのまま適用することには否定的だ。
講演会でトンデル博士の通訳を務めた京都大原子炉実験所の今中哲二助教も「低レベルの被ばくの影響は非常に分かりにくい。しかし、福島の現状を考えれば、広範な地域で子どもの健康状態を定期的に検査し、その変化を追跡できるシステムをつくることが重要だ。将来的に何か影響が出た時にデータがなければはっきりしたことが言えなくなる。健康に影響が出た後では遅い」と指摘する。
内閣府の「低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ(共同主査=前川和彦東京大名誉教授、長滝重信長崎大名誉教授)」は昨年12月、年間20ミリシーベルトを避難区域の設定基準としたことを妥当とする報告書をまとめた。政府はこれを受け、年間20ミリシーベルト以下なら居住可能として、除染を進める方針だ。
これは、国際放射線防護委員会(ICRP)が緊急時の被ばく限度を年間20〜100ミリシーベルトと定めていることなどを参考にしている。100ミリシーベルトでは0・5%の発がんリスクが高まるが、100ミリシーベルト未満では明確な健康影響は認められないという考え方に基づく。ただ、このICRPの基準設定は科学的根拠に問題があるとの指摘が出ているのも事実だ。
川内村では、大部分の地域で年間推計一〜五ミリシーベルトに収まるとされている。それでも、子どもの保護者らからは不安の声が漏れる。
こうした中、放射線の専門家らが内部被ばくの問題について、政府に頼らず市民と一緒になって取り組もうと動き始めた。
「市民と科学者の内部被曝問題研究会」で、原爆症の研究で知られる肥田舜太郎医師や沢田昭二名古屋大名誉教授、矢ケ崎克馬琉球大名誉教授、市民団体「市民放射能測定所」(福島市)の岩田渉理事らが参加。
岩田氏は川内村の帰村について「高線量の場所には近づかない。汚染土壌には触らない。風の吹く日はマスクをする。農作物は放射線を測定するなどの必要がある」とする。
肥田氏は、小さな生き物ほど放射線の影響を受けやすいとした上で、「代謝のよい子どもはより影響を受ける」と指摘。内部被ばくの影響をきちんと把握することの重要性を強調した。
沢田氏は、原発事故後、政府が被ばく限度を法定の年間1ミリシーベルトから20ミリシーベルトに引き上げたことを問題視し、「事故が起きたら、人の免疫力が20倍に急に上がるなんてことがあるわけがない」と批判。
「低線量でも健康への影響はゼロではない」とし、「内部被ばくの影響は、世間で思われているより深刻で、欧州放射線リスク委員会(ECRR)は年間0・1ミリシーベルトを基準にしている。日本は命と暮らしを守るという基本姿勢が薄い」と言う。
沢田氏は「村に早く帰りたいという気持ちは痛いほど分かるが、本来は政府が代替地を用意して、別の場所で暮らせるようにするべきだ」と指摘。それでも、帰村が進む場合、「村内全域の放射線をきちんと測定して結果を公表する必要がある。除染を進めて、村の将来計画を立てなければならない」と話した。
<デスクメモ>
「戻れる人は戻る。心配な人はもう少し様子を見てから戻る」。遠藤雄幸村長は、こう話した。村を復活させたい村長の気持ちは分かる。だが、このままでは不安はいつまでもなくならないだろう。正確なことが分かっていない以上、慎重にならざるを得ない。つくづく原発事故の罪を思う。(国)
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