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「東電解体」はすでに始まっている
http://www.jiji.com/jc/v?p=foresight_8901&rel=y&g=phl
東京電力福島第一原子力発電所の原子炉建屋。(左から)3号機、4号機=2011年11月12日午前、福島・大熊町[代表撮影]【時事通信社】
東京電力の「一時国有化」が視野に入ってきた。福島第1原子力発電所の事故発生から10カ月が経過。15万人に及ぶ避難住民や風評被害を受けた周辺地域への損害賠償、福島県内の原発10基の廃炉費用、長野や山梨、静岡など遠隔地の県にまで広がりつつある除染のコスト――。膨らむ一方の事故処理費用が東電の資産を容赦なく食い潰している。「円滑な損害賠償」を大義名分に昨年9月に発足した原子力損害賠償支援機構も倒産阻止の「救世主」にはなり得ない。政府やメディアは意図的に言葉遣いを避けているが、「国有化」とはつまり「破綻」であり、すでに国内最大の独占企業解体のシナリオが着々と進みつつある。
国有化=破綻
事業者向け料金値上げについて、記者会見する東京電力の西沢俊夫社長(左)=2012年1月17日、東京・内幸町の東京電力本社【時事通信社】
昨年末から東電を巡るマスコミの報道合戦が一段と熾烈になっている。この1カ月余り、東電ネタの各紙のスクープは以下の通り。
「東電、火力発電所売却へ 賠償費捻出 『自前で発送電』転換」(2011年12月7日付読賣新聞)
「東京電力、実質国有化へ 資本注入1兆円 政府、改革を主導」(12月8日付毎日新聞)
「東電、実質国有化へ 官民が2兆円支援」(12月21日付読賣新聞)
「東電、企業向け値上げ 来年4月、2割前後 家庭向けも検討」(12月22日付日本経済新聞)
「東電の経営権取得検討 原賠機構、普通株で資本注入」(2012年1月7日付日本経済新聞)
もちろん、報道の背後には東電自身や政府、金融機関など関係筋の活発な動きがある。火力発電所の売却や値上げについては東電がすでに認めているが、「国有化」(事実上の破綻)については、事態はまだ流動的。経営の自立性(民営形態)を何としても維持したい東電に対し、事故責任を盾に東電を屈服させて国民の支持を得たい政府、一方で約4兆円に達する東電向け貸出債権の回収しか頭にない金融機関。そこから透けて見えるのは、事態の深刻さを矮小化し、目先のハードルを越えることだけを考えているようにしか見えない、相も変わらぬ関係者や当局の姿勢である。
完済まで45年
枝野幸男経産相(右端)から「緊急特別事業計画」の認定を受ける(左から)西沢俊夫東京電力社長、原子力損害賠償支援機構の杉山武彦理事長、下河辺和彦運営委員長=2011年11月4日、東京・霞が関【時事通信社】
拙稿「『東電倒産』は止められない」(2011年5月25日)で予告したように、どんなにあがいても、策を弄しても、この会社は資本の論理によって市場から退場を迫られることが避けられないのである。マスコミが報じているように、年末から年明けにかけて東電の先行きを巡る動きが加速しているのは、損害賠償や廃炉、除染の手続きや作業が具体的に進み始め、これまで漠然としていた事故処理費用の全体像がぼんやりと姿を現しつつあるからだ。
まず損害賠償。10月3日に東京電力に関する経営・財務調査委員会(委員長・下河辺和彦弁護士、通称「下河辺委員会」)が発表した報告書では、東電が事故発生から2年目までに債務として抱えることになる損害賠償金額を合計4兆5402億円と試算した。内訳は一過性の損害分が2兆6184億円、毎年度発生しうる損害分の初年度(2011年3月11日−2012年3月31日)分が1兆246億円、2年目以降の単年度分が8972億円となっている。ということは、今期(2012年3月期)ざっと3兆6430億円の賠償負担が東電に発生することになる。
これだけで、昨年9月末時点の純資産が9635億円に目減り(2010年9月末には2兆5138億円あった)している東電は債務超過に陥るはずだが、政府が用意した原子力損害賠償支援機構が賠償費用を肩代わりする。とはいえ、東電支援の枠組みを定めた原発賠償支援法では、肩代わりしてもらった援助資金は返済義務があり、福島第1原発事故を起こした東電は年1000億円程度の「特別負担金」を機構に支払い、機構はこれを交付国債で調達した公的資金の返済に充てることになっている。
周知のように、2011年4−9月期に純損益が6273億円の赤字(特別損失は1兆759億円)となり、原発の停止で燃料費が前期比8300億円も増加している東電に年1000億円を返済する余力はない。そもそも、下河辺委員会が見積もる4兆5402億円を、金利を考慮せずに1000億円ずつ単純返済するだけでも完済まで45年を要する。
さらに膨らむ「風評被害」
都内で開催された福島県の農産物、加工品などをPR,販売する「がんばろう ふくしま!」イベント。東京電力の福島原発事故の影響による風評被害を防ごうと開催された=2011年5月13日、東京都豊島区【PANA=時事】
なお悪いことに、損害賠償は当初の見通しよりも膨らむ可能性が日を追うごとに高まっている。東京電力は12月28日、福島第1原発事故による観光業の風評被害について銚子市や勝浦市、九十九里町など千葉県内16市町村も賠償対象に含めることを決めた。観光業の賠償はこれまで福島、茨城、栃木、群馬の4県を対象地域とし、その他の地域は外国人宿泊客の減少分に限定する方針だったが、観光庁のサンプリング調査で昨年4−6月の宿泊客数が前年同期比43.2%減少した千葉県は具体的な数字を列挙して強く訴え、東電を押し切った形だ。
この千葉県への対象地域拡大を受けて、山形県でも賠償を求める声が強まっている。山形県旅館ホテル生活衛生同業組合は1月11日に山形市内で開かれた東電との協議で県内23支部の昨年3−6月の売上高が前年同期比40.5%減少したと指摘、「千葉県ではサンプリング調査で原発事故と観光客減少の因果関係を認めたのに、なぜ現実に売り上げが減っている山形県が認められないのか」と賠償対象地域に含めるよう迫った。
こんな具合に風評被害の賠償対象地域は広がる気配だが、それが一過性の損害として処理できるならまだしも、観光業の場合、客足が早期に回復する見込みは薄い。昨年12月16日、野田佳彦首相が記者会見で福島第1原発の1−3号機が「冷温停止状態」に達し、「発電所の事故そのものは収束に至った」と宣言したが、この収束宣言の狙いの1つは、限りなく膨らみそうな損害賠償の適用範囲に歯止めをかけることにあったとの見方もある。
ところが、3つの原子炉はメルトダウン(炉心溶融)を起こし、核燃料の大半が圧力容器から溶け落ち、炉内の様子もいまだ把握できていない状況。学者や内外のメディアはいずれも「『事故の収束』と言うのは時期尚早」と政府の姿勢を批判している。実際、放射性物質の放出は続いており、観光業や農林漁業、食品産業などへの風評被害(ハイレベルの放射性物質が測定されていれば、もはや「風評」とはいえない)は、政府がいくら「収束」を叫んでも、一過性でやり過ごせるものではない。
米オレゴン州レーニアのコロンビア川沿いにあるトロージャン原発の冷却塔(高さ151メートル)が解体される瞬間。大規模な商業用原発としては米国で初めて廃炉となった。同原発はオレゴン州の電力会社ポートランド・ゼネラル・エレクトリックが建設した=2006年5月21日【AFP=時事】
膨らむのは損害賠償だけではない。原発の廃炉費用も大幅な増加を余儀なくされそうな状況だ。下河辺委員会は福島第1の1−4号機の廃炉費用を1兆1510億円と見積もっており、東電は11年3月期までに6333億円を計上、今期(12年3月期)は追加費用として1660億円を見込んでいる。ただ、前述のように、事故はいまだ収束とは言えず、メルトダウンを起こして核燃料が溶け落ちた状態の原子炉を廃炉にする費用は通常の廃炉の数倍はかかると専門家は指摘している。
さらに福島県議会が10月20日に「福島県内すべての原発の廃炉を求める」請願を賛成多数(県議53人中5人が採決前に退席、残った48人が賛成)で可決、その採択を受けて佐藤雄平知事は「第1、第2原発の再稼働はあり得ない」と表明した。事実上、再稼働への道は閉ざされ、下河辺委員会の試算した福島第1原発1−4号機に加え、同原発5、6号機、福島第2原発1−4号機の計10基の廃炉が免れない事態になっている。
機構からの支援資金の使途は損害賠償向けに限られており、廃炉費用は対象外。繰り返しになるが、東電の昨年9月末時点の純資産は9635億円、これに対し廃炉費用は10基全部で少なくとも4兆−5兆円にはなるといわれている。となるともはや、廃炉費用をいつ計上するか、というタイミングの問題ではない。廃炉費用の想定だけでも、東電の債務超過は不可避だということが容易に理解できるはずだ。
福島県の浪江町役場で、側溝の泥や落ち葉を手ですくって除染作業を行う自衛隊員=2011年12月8日【時事通信社】
加えてもう1つ。ここに来て除染費用も輪郭が見えてきた。当初、政府は被曝線量が年間5ミリシーベルト以上の地域一帯を面的に除染するとしていたが、10月10日に環境省が1ミリシーベルト以上の地域についても国が財政措置を施して除染する基本方針を決定した。この結果、除染対象地域は関東から中部東海地方の一部にまで広がる見通しとなった。
政府は最終的に東電に賠償請求して除染作業の国庫負担分に充当する方針(だが、下河辺委員会は除染費用を賠償金額から除外した)。この1ミリシーベルト以上の地域への拡大を決めた時点で、政府は除染費用を2兆円規模と見ていたが、屋根瓦など建築材によっては放射性物質の除去が難航し、作業が計画通りに進んでいない。
作業の長期化は必至で、政府の原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会(小委)の委員を務めた伴英幸・原子力資料情報室事務局長は広域除染の費用を福島原発事故の損害額に算入していない現状を批判し、除染費用を含めると事故の損害額は48兆円に達すると独自の試算結果を明らかにしている。
東京電力川崎火力発電所で建設中のコンバインドサイクル発電設備の排熱回収ボイラー=2011年12月14日、神奈川県川崎市【時事通信社】
政治的配慮や関係者の思惑などを排除して、信頼できる研究者やアナリストの試算を冷静に積み上げて行けば、これから東電にのしかかる原発事故処理費用は50兆円内外という気の遠くなるような金額になることが浮き彫りになる。これでは、いくら支援機構を置いたとはいえ、金融機関が追加融資に二の足を踏むのも無理はない。昨年6月末時点の東電への融資残高をみると、三井住友銀行(9345億円)をはじめ、みずほコーポレート銀行(6768億円)、日本政策投資銀行(4545億円)、三菱東京UFJ銀行(4270億円)、三菱UFJ信託銀行(2235億円)とメガバンクの突出ぶりが目立つ。
一方、東電は約4兆5000億円の社債発行残高があり、来期(2013年3月期)に約7500億円、14年3月期に約5900億円の償還期限を迎える。資金繰りは「綱渡り」どころではなく、まさに「破綻」が目の前にちらついている状況だ。昨年末にマスコミが報じた政府の「一時国有化」案では、機構が1兆円規模の公的資金を東電に注入し、金融機関も1兆円規模の追加融資を実施、官民合計で2兆円の資金支援を想定している。
しかし、廃炉や除染のコストを正確に見通せば、たかだか2兆円は付け焼き刃的な効果しかもたない。「東京電力」という組織の器はこれ以上の延命に耐えられそうにない。「結局は東電を法的処理し、発電所や送電設備、ビルや保養所などあらゆる資産を売り払ってできるだけ債務を弁済し、あとは金融機関に泣いてもらうしかない」といった声がアナリストたちの間から聞こえてくる。電気料金の値上げや除染費用の政府の肩代わりなど、国民に負担を求めるとすれば、その後であるべきだろう。12月に打ち出した火力発電所の売却方針は、「発送電一体」の原則を維持できない現状から生じたものであり、従来の電力業界では「禁じ手」。巨額の事故処理費用のプレッシャーに耐えかねて、東電(電力業界)の解体がすでに始まっているといえる。
今こそ、「主権者は私たち国民」、声をあげよう!!!、浜岡原発と地震活動期プレート
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