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映画「イエロー・ケーキ」のチルナー監督/原発リスク 負うのは社会/世界のウラン採掘現場取材 被ばく実態など描く
東京新聞 2012.01.30 朝刊 「こちら特報部」
世界各地のウラン採掘の現場を丹念に取材し、その危険性に警鐘を鳴らすドイツのドキュメンタリー映画「イエロー・ケーキ クリーンなエネルギーという嘘」が、東京・渋谷の映画館「アップリンク」で上映されている。「核燃料開発の最初の段階から被ばくが始まっていることを、誰もが知るべきだ」と訴えるヨアヒム・チルナー監督(63)に話を聞いた。 (上田千秋)
イエロー・ケーキとは、ウラン鉱石を精製してできる黄色い粉末のこと。濃縮などのエ程を経て、核燃料になる。
映画は、旧東ドイツ区域の南部にあるビスムート鉱山の映像から始まる。同鉱山はかつて世界でも有数のウラン採掘量を誇ったが、東西ドイツ統一後の新政府は、危険だと判断して生産停止を決定。現在、膨大な量のウラン残土の埋め戻し作業が続いている。
「東ドイツ政府は情報を出さず、ブラックボックスのようだった。『平和のための利用』と伝えられるだけで、旧ソ連の原発に使われていたことすら当時は分からなかった」
ドイツ統一後も情報収集を続け、「労働者が被ぱくしていることに加えて、ウラン残土の処理は出口が見えない。このことを世界の人に知らせたい」と考えたチルナー氏は、二〇〇五年に撮影を開始した。ドイツのほかナミビアとオーストラリア、カナダでもロケを敢行し、ビスムート鉱山の元労働者の肺がん発症率が高いことを指摘。被ばくの危険も考えず単純に仕事が得られた喜びを語るナミビアの女性労働者や、鉱山開発を許さず自分たちの土地に住み続けているオーストラリアの先住民アボリジニーの姿も克明に追った。
撮影は一〇年まで五年間に及んだ。ナミビアとオーストラリアの鉱山の所有会社は申請から二年後にようやくカメラが入ることを認めたものの、カナダの鉱山では最後まで許可されなかった。そのため、当初は出演を了承していた労働者の男性が「会社がそう言うなら私も断る」と態度を変えた。
男性は鉱山近くに代々住む先住民で、「この仕事のおかげで失業率が下がり、子どもたちは大学へ行けるようになった。欧州から突然やって来た人間にあれこれ言われたくない」と主張していたという。チルナー氏は「ウラン鉱山には、人間が生きていくための役割があることも事実。それを否定することはできない。彼が協力してくれていれば、現実の別の側面を見せることができたのに」と残念がる。
福島第一原発事故についてチルナー氏は「最先端の技術を持っているはずの日本で起き、なすすべもなく状況が悪化していったことに大変な驚きを覚えた」と語り、こう呼び掛けた。
「原発のリスクは最終的に社会全体が負うことになる。果たして、これから先も原発を持ち続けていいのか。この映画を通して、そのことを一人一人が真剣に考えてほしい」
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東京での上映は三月ごろまで。来月以降、札幌、名古屋、京都、大阪、神戸、福井の各市でも上映される予定。問い合わせは配給会社「パンドラ」=電03(3555)3987。
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ヨアヒム・チルナー 1948年3月、旧東ドイツ・ビッテンベルク生まれ。大学で文化理論などを学び、75年にドキュメンタリー映画の編集者、80年に監督となる。これまでに環境問題などをテーマにした約30本の長編作品を手掛けた。
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