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福島第1原発:飯舘村、心の荒廃懸念 5割が家族別離
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20120129k0000e040102000c.html
毎日新聞 2012年1月29日 8時48分(最終更新 1月29日 10時23分)
東京電力福島第1原発事故で計画的避難区域に指定され、全村避難を強いられている福島県飯舘村の菅野典雄村長が毎日新聞の取材に「ストレスで避難民にいがみ合いが生じている」と述べ、村民の「心の荒廃」に懸念を示した。別々に避難している家族も多く、村のアンケートでは「自分や家族の健康状態が悪くなった」との回答が60%、「イライラすることが増えた」は39.9%。放射能汚染で先を見通せない避難生活が大きく影響しているとみられ、原発震災の深刻さが浮かんだ。
飯舘村は昨年4月22日に計画的避難区域となり住民の大半は県内外で避難生活を送る。菅野村長は「心の痛み、家庭の崩壊が進んでいる。戻りたい人と戻れない人、家族同士、世代間の葛藤がある」と指摘した。
特に、仮設住宅で暮らす約3割の村民と、県の借り上げ住宅などに点在する村民との対立が目立ち「なんで仮設ばかりに支援物資が行き、借り上げに来ないのか、と言い合うようになり、『差別だ』との声まで出ている」という。村民のうち2708人を対象に行い1743人から回答を得て村が先月まとめたアンケートでも「仮設住宅以外にも公平な支援を」との訴えが80人に上った。
飯舘村民の避難生活に関する実態調査報告書(2011年12月)より このアンケートによると、震災前と同様に「全ての子供と一緒に暮らしている」のは55.7%にとどまり、「避難に伴い全ての子供を別の場所に避難させた」は21.3%、「一部の子供を別に避難させた」は15.4%。3分の1以上は親子が別々に暮らし、祖父母も含めて同居していた家族が別々に暮らす割合は50.1%に上る。
また、収入は5割かそれ以上減った人が34.7%。体調の変化では「睡眠があまりとれていない」が36.8%、「たばこやアルコールを飲む回数や量が増えた」が17.9%。
自由回答では「急に飯舘村のことを思うと悲しくて涙がとまらなくなり、途方に暮れ不安になる。子供が突然涙を流し帰りたいと言う」「県外に避難したと非難され、友人との仲が悪くなった」「生きていることがつらくなった」「やる気が起きない。食欲がない」などの悩みが多数寄せられた。
菅野村長は「天災ではなく人災、何も悪いことをしていないのに無理やり避難させられたという思いが村民にはある」と指摘。「以前は冷害で苦しんでもお互い様で、助け合う意識があった。天災なら苦しい時期があってもゼロからのスタートができる。だが、放射能汚染相手だと3年先、5年先でもスタートを切るのは簡単ではない」と、気持ちの整理をつけられない村民の思いを代弁する。
「これが放射能(という目に見えない災害)の特殊性。だから除染はここ1、2年が勝負。本気になって『帰れるんだな』という思いを作らないとダメなのに、国の認識は非常に甘い」と語った。【北村和巳】
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