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[こちら特報部] 「福島原発 下請け作業員苦闘」 2012/01/27(東京新聞)  
http://www.asyura2.com/12/genpatu20/msg/536.html
投稿者 赤かぶ 日時 2012 年 1 月 28 日 00:25:00: igsppGRN/E9PQ
 

【こちら特報部】「福島原発 下請け作業員苦闘」 2012/01/27(東京新聞)
http://ameblo.jp/heiwabokenosanbutsu/
2012-01-27 16:21:26  平和ボケの産物の大友涼介です。


東京電力福島第一原発での事故処理の苦闘が続いている。野田佳彦首相は昨年暮れ、事故収束を宣言したが現実はほど遠い。そこで働く大半の人たちは東電が「協力企業」と呼ぶ下請け会社の労働者たちだ。賃金も安全管理も不十分な中、現場では「この夏には作業員不足になる」と危ぶむ声が上がり始めた。作業には向こう数十年続くが、机上の皮算用にはほころびが見え隠れする。(佐藤圭・秦淳哉・田原牧記者)


■「心筋梗塞」で急死

「おとうちゃんが福島の原発に行くとは知らなかった。知っていれば止めていた」。静岡県御前崎市のアパートで、タイ人の大角カニカさん(53)は目に涙を浮かべた。

「おとうちゃん」と呼ぶ夫の大角信勝さん=当時60歳=は昨年五月、福島第一原発での作業中に亡くなった。東芝の四次下請けの作業員だった。東電の発表では、死因は心筋梗塞。作業を始めて二日目のことだった。

カニカさんと大角さんは一九九九年、タイで知り合った。現地人とトラブルになった大角さんをカニカさんが「早くホテルに戻りなさい」と助けたのがきっかけだ。

一年後にタイを訪れた大角さんと再会し、その後、来日。二〇〇二年に結婚した。大角さんの仕事は溶接工。カニカさんも弁当製造のアルバイトをした。大角さんは浜岡原発(静岡県)や志賀原発(石川県)などで数ヶ月単位の作業に従事してきた。昨年五月、カニカさんに「今度は長い仕事になりそうだ」と告げて出掛けたという。

「おとうちゃん、良かったねと話した。出掛ける前日には下着や靴下、作業着をカバンに詰めた。おとうちゃんの爪や髪もカットした」。その日の夕食には大角さんの好きな刺身、カレー、肉じゃがが食卓に並んだ。ビールで乾杯し、ささやかな祝宴を開いた。

二人には夢があった。「一、二年頑張ったら、田んぼの車(耕運機)を買ってタイに帰ることにしていた。たくさんのお金は欲しくない。普通の生活が幸せと思った」

五月十四日夕方、カニカさんが携帯電話の電源を入れると何件もの着信があった。夫を派遣した建設会社からは「大角さんが亡くなった」との書置きもあった。

翌日、警察署で変わり果てた大角さんと対面した。顎に黒いアザがあり、顔には引っかいたような傷もあった。カニカさんに建設会社の社長は「五十万円やるからタイに帰れ」と言ったが、カニカさんは拒んだ。地元の無料法律相談で知り合った弁護士と話し合うと、社長からは「裏切り者」と罵られた。


■タイ人の妻 労災を申請

カニカさんは七月、横浜南労働基準監督署に労災を申請した。請求申立書によると、大角さんは集中廃棄物処理施設内で同僚と重さ約五十キロの工作機械を二階から一階に運搬する途中、体調が急変。福島県いわき市内の病院に約二時間四十分後に搬送されたが、間もなく死亡が確認された。

「東電や東芝からは何の連絡もない。お線香一つ送ってこないし、電話すらない」(カニカさん)。東電は大角さんの死亡と被曝の因果関係を否定している。


■低賃金

大角さんの死因と被曝の関係は不明だが、事故収束現場の労働者にとって最も懸念されるのは被曝だ。その線量限度は昨年十二月十六日、通常時の「一年で五〇ミリシーベルト」「五年で一〇〇ミリシーベルト」に戻された。野田首相の「事故収束」宣言を受けての措置だ。

限度量は事故直後、特例として二五〇ミリシーベルトへと一気に引き上げられた。厚生労働省は当時、国際基準での重大事故時の被曝限度が五〇〇ミリシーベルトであることなどを根拠に挙げたが、狙いは延べ作業時間や作業員数の増加による事故処理の迅速化だった。

それが「事故収束」をアピールしたい首相の思惑もあって、通常時の基準に戻された。

東電によれば、労働者の被曝線量は事故直後には二五〇ミリシーベルトを越えるケースもあったが、四月以降は一〇〇ミリシーベルト以内で推移しているという。

ただ、現場の声は安全管理への不安で溢れている。下請け労働者の一人はこう語った。

「今、現場の七割は全国からの出稼ぎ労働者らで、大半が原発作業の初心者。賃金は日給で八千円から一万三千円ほど。年齢層は就職難の二十代と他の現場を『卒業』した六十代が多い」

安全管理については「原発で働く前に受けなくてはならない『管理区域入域前教育』は儀式のようなもの。テキストに書いてある想定と非常事態の現場が一致しない。字の読めない受講者もいたが、最後のペーパーテストは誰かが代わりに書き込んでいた」と話す。


■休む場所で 毎時12マイクロシーベルト

「その後、現場に出るが、放射線量が高いところで線量を測りつつ、作業員に警告、指示する放射線管理員の数が足りない。収束の現場だから作業員が多すぎる。そのせいもあり、危険な場所でもマスクを脱いだり、一服している作業員もいる。内部被曝が心配だ」

弁当を食べたり、喫煙する場所でも、毎時十二マイクロシーベルトの放射線量がるという。「作業員同士では線量の話はしない。しても仕方がないからね」

この作業員は「今は全国から作業員をかき集めているが、夏には足りなくなると業者の親方たちは皆、言っている」と漏らした。地元の建設業者もそのことを認める。

「長年、福島原発に携わってきた地元業者は現在、第一原発には行かない。危ないし、原発以外にも仮設住宅建設などの仕事があるからだ。全国の原発を渡り歩く職人たちも福島第一は避けている。賃金が特別良いわけでもないのに、わざわざ高い線量を限界まで浴びて、他で作業する機会を失いたくないからだ。素人中心で作業をしているが、早晩、人材供給も途切れてくるだろう」

東電の広報担当者は下請け作業員の労働環境や賃金水準について「元請け企業が適切な指導をしていると思う」と説明する。作業員の確保については「現時点で作業員の数に支障は出ていない。今後も作業状況に応じ必要な人員を確保していく」と強調する。

しかし、原発労働者の健康問題に取り組む飯田勝泰・東京労働安全衛生センター事務局長は「労働者たちは危険な環境で働かされている。賃金水準はダウンし不払いも起きている。人員確保が難しい状況になりつつある」と指摘する。

さらに東電だけでは安全管理は徹底されないとし、国に対してもこう求めた。「下請け労働者を含めた管理体制を作る必要がある。労働環境、労働条件を徹底的に守っていかなければ、いつ終わるかわからない事故収束作業に対応できない」


※デスクメモ 福島第一原発での作業員は命懸けだ。それを一日八千円の報酬でこなしている労働者たちがいる。東電に籍のある「お抱え議員」は年収一千万円以上。原子力ムラの天下り役員たちも未だに健在だ。脱原発とは単なるエネルギー問題ではない。こうした「不条理」を放置するのか否かという問いでもある。(牧デスク)

 

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