http://www.asyura2.com/12/genpatu20/msg/498.html
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福島で会社によっては、避難した人まで、放射能が拡散しているまっ最中に業務命令で作業につかされた労働者がいた。
「まさに放射能が拡散している最中の緊迫した時期で、モニタリング体制も整備されてはおらず、一体どの地域にどれだけの放射能が降り注いでいるのか専門家でも把握できなかったはずなのに、一律「大丈夫」としている」
この「専門的見地」や「公的機関の見解」という「神話」を突き出して問いたい。
3月21日には、関東平野にまで達する放射能が以前にもまして拡散していたのだった。
ちょうどその時、東京の官僚や官僚学者や会社のトップ達は、安全宣言を作成中だったのだ。何も分かってなかったのが「専門家」だった。利用した奴もいた。その責任を、郵便屋の場合が載っている頁から振り返って見て、追求したい。
「ウソとまやかしの郵政業務再開指示文書 」(「伝送便 11月号」から)
伝送便編集部は10月に福島現地調査を行ったが、その際に郵政グループから発出された原発事故に関する業務運行指示文書が手に入った。日付は3月22日。東電も原子力安全委員会も政府も、この時点では事故の規模を意図的に小さく発表し、「ただちに人体に〜」と言い続けていた時期だ。当時の郵政の指示文書もこれに習い、安全だから業務運行に支障はない、と。
http://densobin.ubin-net.jp/
「 ウソとまやかしの郵政業務再開指示文書
長崎大学山下俊一氏の講演を引用し安全より業務を優先させる
http://densobin.ubin-net.jp/headline11/1101_genpatu.html 」
3月23日に出された「福島原子力発電所の避難指示エリアにおける日本郵政グループの業務運営の考え方」を見ると、郵政会社の人命軽視の姿勢に唖然とする。
基本的な考えとして、冒頭に「社員の人命を最優先に考え対応するとともに、当該地域における他の企業動向を把握し、ユニバーサルサービスの確保の観点から対応する」とある。
初めの「人命」は枕詞で、本音は後の「他の企業動向」「サービス確保」でであるのは明らか。
そして「今後の対応」では
「参考資料のとおり、原子力安全委員会から避難・屋内退避区域外で雨に濡れても健康に影響を及ぼさないとの見解が示されるなど、安全性が確認されているほか、周辺地域の状況を鑑み、屋内退避要請エリアの外の地域においては、本日以降、準備でき次第業務を再開する」
とし、後は業務再開の支店名、局名が列挙されているのみ。
根拠として各種「参考資料」の抜粋を添付している。
長崎大学医学教授であり、放射線影響等の権威」と紹介する山下俊一氏の講演内容と記者会見内容が二つも引用されている。
山下氏は「100ミリシーベルト以下の被ばくなら心配ない」「放射能は笑っている人のところには来ない」などと公言して、福島県民から氏の「福島県放射線健康リスクアドバイザー」職の辞任要求が出ているほどの人物である。
その内容は、
「いわき市における放射線測定値は健康に影響を与えない極めて低い数値で推移しており、まったく安全で雨の日に外出し濡れたとしても健康に影響を与えません」(3月20日いわき市での講演)、
「1時間あたり20マイクロシーベルトの放射線が降り注いだとしても人体に取り込まれる量は約10分の1、24時間受け続けたとしても約50マイクロシーベルトにしかなりません。世界中には1年間に10ミリシーベルトや50ミリシーベルトの被ばくを自然界から受ける地域があり、その環境下に住んでいる方々でも、将来ガンになるリスクは、他の地域の方と全く変わりません」(3月19日記者会見)というもの。
一方、「福島県知事から総理大臣あての緊急要請書」(3月16日)の引用、「物流を担う事業者の皆さまには地域の実態をご理解いただき、ご協力をいただきますよう心からお願い申し上げます」。
官房長官記者発表の引用、
「屋内退避の出ている地域においても、当該地域で屋外で一定の活動をしても、それが直ちに人体に影響を及ぼすような数値ではありません。過剰な反応をすることなく、しっかりと地域の皆さんに物流で物を届けていただきたい」(3月16日)。
これが冒頭の「当該地域における他の企業動向を把握しユニバーサルサービスの確保」の根拠となるのである。
ヤマト運輸が先陣を切って救援物資を届けに入ったことに危機感を覚えた日本郵政が、遅れをとるまいと社員の健康・人命は二の次で「業務再開ありき」で発した文書であることはあきらか。
だが、その後、政府も原子力委員会の見解も変化し、現在では年間「1ミリシーベルト目標」までに基準値が下げられている状況にあっても、郵政グループが3月に発したこの「見解」はそのまま。一度出した「安全宣言」はよほどのことが無い限り取り消さないのである。
この文書の特にひどいのが「参考5」の山下俊一氏の記者会見答弁の後に、郵政が独自で付け加えた箇所である。
「文部科学省が3月22日に公表した測定結果では、降雨時も含んだ30キロ圏内以遠の地域の数値が0.5〜20.4マイクロシーベルトとなっており、上記見解(山下氏が主張する「人体に取り込まれる放射線量は10分の1以下」)に沿えば、1日7時間、1月(22日)屋外作業に従事しても、最も高い地域で1月当たり約300マイクロシーベルト(20.4×1/10×7×22)であり、胃のエックス線集団検診の数値(600マイクロシーベルト)を下回っています」という一文。
まさか外務員は屋外作業時だけしか放射能を浴びてないとでもいうのだろうか。通勤時間はもとより、家に居る時、休日の時も放射能は容赦なく降り注ぐ。
国が示している年間被ばく限度量の計算値の基となるのは一時間あたりのマイクロシーベルトであり、体内に取り込まれる量は10分の1だからといって基本値を10分の1にする計算は聞いたことがない(積算量の計算方法はまちまちであるが)。ましてひと月だけの積算値で1回の胃の検診数値と比較するのは論外である。
原子力委員会は7月19日に「放射線防護に関する基本的な考え方」としてICRPの勧告に従って、現存被ばく状況に適用される基準の年1〜20ミリシーベルトの下方の線量を選定することとし、長期的には一ミリシーベルトを目標とすることとした。
外務員に適用する場合、一般人に比べて長時間の屋外作業である上に、側溝や軒下等の放射能値の高いポスト周辺での作業による被ばく、さらに降雨時、積雪時、砂塵等でのほぼ無防備にちかい作業実態等を加味すればその積算量は2倍近くに達するのではないか。
仮に、放射線量を2倍として先の郵政文書の計算になぞって試算してみると(20.4×2×24×365)実に年間357ミリシーベルという驚くべき数値になる(内部被ばく、自然放射線は含めない)。
基準値の毎時20.4を現在の福島市での平均値に近い1マイクロシーベルトとしても年間17.8ミリシーベルトとなり国の上限値20ミリ近くになる。
そしてこの文書の最後には「参考資料」(別紙一)として「避難・屋内退避区域外にお住まいの皆さまへのQ&A(抜粋)」が添付されている。
発行は3月23日付原子力安全・保安院とあるが冒頭には、「原子力安全委員会から3月22日付で避難・屋外退避区域外にお住まいの皆さまへのQ&Aが届きましたのでお知らせします」とあり、最後には問い合わせ先として「放射線医学総合研究所」とあり、一体どこが作成した資料なのかよくわからないもの。
内容は、「問1.雨に濡れてしまいましたが、健康に影響があるのですか?」の答えは、「避難・屋内退避区域外の地域おいても、微量な放射能が検出されている地域がありますが、雨に濡れても健康に影響を及ぼすレベルではありません。気になるようでしたら頭髪、皮膚はシャワーなどで洗い流し、濡れた衣服は洗濯してください」といったぐあいに、ほとんどの回答が「大丈夫です」「問題はありません」で締めくくられている。
最後の問、「心配なので被ばく検査を受けたいのですが?」には、「微量な放射能が検出されている地域がありますが、健康に影響を及ぼすレベルではありませんので、被ばく検査を受ける必要はありません」と結論づけている。
文書が出された3月22日といえば、4号機が爆発してまだ6日しか経過していない時期、当時メルトダウン事象も発表されておらず、「健康に影響を及ぼすレベルではない」と断定する根拠などなかったはず。
まさに放射能が拡散している最中の緊迫した時期で、モニタリング体制も整備されてはおらず、一体どの地域にどれだけの放射能が降り注いでいるのか専門家でも把握できなかったはずなのに、一律「大丈夫」としているのにはあきれる。
ましてホットスポットとして30キロ圏外でも飯館村のような高レベルの線量が出る地域があることなどこの時点ではあまり知られてなかったはずである。
しかし、郵政会社はこのQ&Aを根拠として「原子力安全委員会から避難・屋内退避区域外で雨に濡れても健康に影響を及ぼさないとの見解が出されるなど安全性が確認されている」と屋外業務再開を指示したのである。「健康に及ぼすレベルではない」との「答え」を郵政は「健康に影響を及ぼさない」と言い換えているのだ。
あきれるのは、この郵政の「参考資料」を、
さらに輪をかけて
「専門的見地における公的機関の見解」
としてこの郵政文書を何の検証もなく同日了承し、組合員を無防備なまま屋外作業にさらすことに手を貸したJP労組である。
今回の原発事故で問われているのが、この「専門的見地」や「公的機関の見解」という「神話」ではなかったか。
かつて旧全逓労組が合言葉のように説いた「安全なくして労働なし」というスローガンはもはや完全に否定されたも同然である。
今年6月のJP労組全国大会では代議員の要求を頑なに突っぱねて「原発論議はしない」とした本部だが、現下に進行する外務員の被ばく問題に対しては緊急の労働安全問題として郵政会社に、福島県内外務員全員の被ばく検査をはじめ早急な対策をとることが求められる。
(編集部)
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