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再稼働へ続く 情報操作/結論ありき 原発安全評価/電力6%余裕試算 非公表/災害対策本部 議事録なし
東京新聞 2012.01.24 日刊紙 「こちら特報部」
原発の安全評価(ストレステスト)を助言する国際原子力機関(IAEA)調査団が23日、来日した。再稼働へのプロセスだが、安全評価は不明確な基準や担い手の点で「はじめに結果ありき」とみられがちなうえ、18日には「妥当」評価が強引に下された。一方、政府は今夏の電力不足を訴えていたが、余力があるとする別の試算が未発表だったことが分かった。強引な「情報操作」は東京電力福島原発事故の後も続いている。 (秦淳哉)
今回、IAEAが与える助言を踏まえ、保安院は関西電力大飯原発(福井県)3、4号機の運転再開に向けた最終的な評価をまとめ、原子力安全委員会に提出する。
ただ、安全評価については福島原発事故の原因が不明なまま実施されても無意味で「安全を演出する儀式」という指摘がある。さらに、この2基の安全評価については18日、保安院が市民の傍聴を保証するよう訴えた井野博満、後藤政志の2委員を除いて意見傍聴会を強行。関西電力による安全評価を「妥当」と判断している。
一方、政府は昨年7月、今夏の電力需給について「9.2%不足する」という試算を発表した。しかし、この試算に対し、「最大6%の余裕がある」とする別の未公表試算があったことが判明。発表された試算は再生可能エネルギーの発電量を盛り込まず、電力供給力を低く見積もっていた。
こうした不透明さは枚挙にいとまがない。例えば、政府の原子力災害対策本部は昨年3月11日以降23回も開かれているが、これまで議事録が1度も作成されていなかったことが新たに暴露されている。
福島原発事故後、「情報隠し」「情報操作」が原発推進の流れを推し進めてきたことが、多くの事例で指摘されてきた。にもかかわらず、この手法は事故後も依然、改められていない。
文部科学省の緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)のデータが公表されたのは3月23日。事故から10日以上も経過していた。早期にデータが公開されていれば、不必要な被ばくは避けられた。
政府がIAEAに提出した原発事故の報告書にも、国民が知る以前に溶け落ちた燃料が圧力容器の底から流れ出て、格納容器にたまる現象のメルトスルー(溶融貫通)の言葉が登場していた。
九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の再稼働に向けた国主催の県民向け説明番組でも、やらせメール事件が発覚した。
こうした国民間での議論や合意を避けようとする手法が大事故を招いたのに、いまも再稼働に向けて維持されている背景には何があるのか。
神戸女学院大の内田樹名誉教授(フランス現代思想)は「できるだけ多くの危機をリストアップし、何が起きるかに備えることが危機管理の基本だ。だが、原発推進派は国民に真実を伝えないうちに、自らが作り上げた安全神話のプロパガンダ(宣伝)を逆に信じ込んでしまった」と話す。
そのうえで、こう皮肉った。「政治家や官僚たちは『国益のため』と称して策謀をめぐらす。それでも人をだますには覚悟がいる。原発のうそが絶対ばれない唯一の方法は、事故を起こさないことだった。しかし、国民をだまし切るだけの力がなかったために事故を起こしてしまった。だったら、『今後は自分のできる範囲にしておけ』と言ってやりたい」
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