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疫学について 津田敏秀著「医学者は公害事件で何をしてきたか」(2004年岩波書店)を読んで
http://www.asyura2.com/12/genpatu20/msg/171.html
投稿者 宮島鹿おやじ 日時 2012 年 1 月 12 日 04:03:41: NqHa.4ewCUAIk
 


疫学というと「疫病の学問」という語感から、なんとなく怖いだけのイメージがあるが、歴史的事実はそうではないことが本書では明らかにされる。

19世紀、イギリスのロンドンにおいてコレラが大流行した。そのとき、ジョン・スノウという医師が、疫学的手法を用いて、原因は市内にある「井戸」であることを解明し、その使用を中止させることによって疫病の蔓延を終息させた。この事件は、ロベルト・コッホがコレラ菌を発見する30年前の出来事であるという。

つまり、病気の発生するメカニズムが解明される前であっても、疫学的・統計的手法を用いれば、災厄の拡大を阻止することができるという有名な史実である。

疫学とは、端的に言えば、ある「原因」を浴びた人々と、浴びていない人々を集団として比較して、どれだけの割合で結果として、どちらにより多く病気が発生しているかということを数値で明らかにしようとする学問である。この方法は、過去の判例においても、事実認定の主要な方法として採用されている。

ところで、過去の水俣病などの公害事件において、加害者の国や企業の側に立つ御用学者の発言の要点は、「疾病の発生メカニズムについてはまだ十分に解明されていない」とすることであった。

ある疾病の発生メカニズムについて研究し、確定する学問を「病理学」という。

明らかに、ある特定の地域において、ある共通の食品を食べていることによって発生している疾病に対して、御用学者は「病気発生のメカニズムが明らかでない」とすることで、国・企業側を擁護し、被害者への補償を否定してきた。

つまり、現実に発生している、悲惨な事態を前にして、御用学者たちは「病理学」を盾にして、加害者(原因企業、国など)を免責しようとしてきた。

当然、病理学は医学の本道であり、長い時間をかけて人類の福利のために研究されるべき学問だと思うが、今まさに、巨大な事故が発生し、それによる多大な疾病が発生する危険性を回避しなければならないような緊急時に、「前面」に、「悠長」に、持ち出す学問ではないと考える。

今、この時点でこの投稿を行う理由は、ここにある。つまり、今回の原発事故を受け、将来的に広範な地域で様々な疾病が発生した場合に、今後、国や、それを代弁する御用学者らが、何をコメントするかが、水俣病など、従来の公害事件における御用学者らの振る舞いから十分すぎるほど予想できるからである。この点に関し、本書は「予言の書」のような様相を帯びている。

もう、すでに現時点において、放射性物質による内部被曝の影響を意図的に無視するような、もっともらしい意見がこのサイト上においても散見される。

今、何よりも重要なことは、福島を中心とした地域において、「従来とは違う」何らかの疾病・症状が発生していないかという現状把握である。この具体的方法を担うものが疫学となる。

そして、それを、「県民健康調査」として、福島県立医大が実施していることになっている。その中心となっている者が、山下俊一氏であるが、彼は、原発事故発生直後に、地域住民に対して、事実上「安心して、ここにいなさい。」と伝道して回った者である。疫学のテキストには、このような行為を「有害な暴露を与える人為的なコホート研究」=「人体実験」と記している。

また、3年に一度の実施で、昨年が実施年であった厚生労働省による「患者調査(傷病名に関する調査)」が福島県だけ全域除外となっている。

より、公正で、客観的な調査を実施しうる組織・団体による、一刻も早い疫学調査の実施を強く望む。


最後に、過去の御用学者らの「手口」が詳細に明らかになる本書の一読を阿修羅諸氏に強く勧める。
 

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コメント
 
01. 恵也 2012年1月12日 11:45:36 : cdRlA.6W79UEw : ctV91Y5c8Q
>> 「患者調査(傷病名に関する調査)」が福島県だけ全域除外となっている。

俺にはこれは信じられない蛮行。
厚労大臣の罷免要求に値する行為だ。

災害というものは全域に平均してあるものではなく、確かに調査が今のままでは不
可能な場所もあると思うけど、無理して厚労省が専門家を雇ってでも調べるべき
ことで、それが公務員の仕事であり、福島県全域を調査しないとは言語道断!

現在の厚労省幹部と大臣に罷免を要求したい。

ーーーー引用開始ーーーー
日本国憲法第十五条 
公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
http://www.ron.gr.jp/law/law/jp_kenpo.htm


02. 宮島鹿おやじ 2012年1月12日 12:47:05 : NqHa.4ewCUAIk : JqoeGTgIOg

訂正

誤 医学者は公害事件で何をしてきたか
正 医学者は公害事件で何をしてきたのか


>恵也さん

コメントありがとうございます。有力な組織による公正な調査を強く望むと言いましたが、実現される希望はあまりありません。なぜならば、公的機関であれば、福島県立医大のテリトリーを侵すことになるからです。つまり、他の大学、研究所は尻尾を丸めてみているしかないという構図があると思います。マスコミも同様です。

かくなるうえは、市民・市民団体による独自調査を行うべきと思っています。是非、ご意見を賜りたいと思います。すでにそのようなことを行っている団体などについての情報があったらご教示ください。なお、「みんなのカルテ」さんにはすでにご相談しました。貴重な意見をいただきました。



03. 2012年1月12日 18:40:17 : ZbEkMfgIXY
>>2さん、いつも貴重な投稿ありがとう。
>希望はあまりありません
同意です。
首都圏、
たとえば群馬県を例に取ると、みんな日常生活に疲弊してしまっています。
なんとか暮らしの道筋をつけているのに、放射能汚染がやってきて、しかも高濃度
汚染なんですね。どのくらいかっていうと、ばれたら、農産物の出荷、流通の
停止です。生活が立ちゆかなくなる。それで、居住市民の多くは、
現実の汚染を知ることから逃げています。関わりたくないのです。
自治体の公表する汚染度数値は、低いものだけ公表されています。除染なら除染の
範囲が少なくなるよう見積もられ、いかにも文科省航空機モニタリング結果に
と矛盾の少ない形で、公表されています。
事実は、1.0マイクロ毎時を超えるホットスポットが至る所にあるのに、です。
土壌調査もおざなりなのが、自治体に批判的ですらある市民の現実、
ましてや健康調査は追いついていません。空間線量を線量計で測って
安心してるのが現実です。土壌のセシウム分析しようとしません。
今後も期待できません。
自治体職員もどなたかコメントされていましたが、知識もやる気もおぼつかないの
です。資質としても実態としても文科省のいいなりです。
文科省が安全というのだから、子どもに給食を食わせるのが学校の先生です。
文科省にたてつく県教委、市教委、校長、みられません。
ご提案である、市民による独自調査ということに、異論の余地はない、
しかし、悪い時代なのです。手足もがれた市民があるだけ。
そして、テレビと新聞による安心安全キャンペーンによる洗脳、麻酔です。
敏感な人から順に逃げるしかありませんよ。どうあがいても、幼稚な喧嘩するばかりです。そりゃ、覚悟を決めて飽くまでも現地で、土壌と健康の調査をやるのだ、
と言う人があれば、止めません。カンパするだけです。

04. 2012年1月12日 21:11:09 : xCKC9rBowQ
宮島鹿おやじさん恵也さん貴重な投稿及びコメントありがとうございます。

政府及び権力者たちは我々貧民を食い物にしておいしい生活を送ることのみを考えています。
格差社会は今後ますます広がってゆきそうな雲行きですが、皆さんの力で少しでも不平等に泣く人が少なくなりますよう。
我々の知恵及び力を集めよりよい社会を作るよう努力しましょう。


05. 宮島鹿おやじ 2012年1月13日 07:34:33 : NqHa.4ewCUAIk : bJP2BsBk96
03さん 04さん コメントありがとうございます。

03さんのコメントが「今」の実情を遍く表現されていると思います。
日常生活の疲れ、現実を見ることからの逃避、そのことの意味することすら考えない。しかし、心の中での葛藤。疲れているので何かに頼りたくなる。行政も教育委員会も「何事ともなかったかのように」今までどおりに動いていく。
「あ、今までどおりでいいんだ」と自分を信じ込ませる。それは、あまりに大変なことが起きたからだと思います。なお、私が主張している市民による調査の最終目的は、「避難」に向けての一つの根拠を作るためです。「何かが起きている」ということを明らかにしたいのです。「何も起きていない」のならばこれに越したことはありません。

04さんのおっしゃる、「よりよい社会を作る」という言葉がこれほど切実な響きを持ったことは私自身ありませんでした。しかし、思うのですが、水俣病やイタイイタイ病が国民の一部を襲っていた時期のことを、今、私は、レトロな時代=古き良き時代と懐かしがっています。本当に、苦しみというものは自分が体験しないとわからないものですね。しかし、今回ほど、為政者たちのデタラメさが多くの国民生活に影響を与えているときはありません。最後の戦機かもしれません。私にとってキーワードは、「もう、頼らない」ということです。


06. 2012年12月19日 07:42:55 : RtHpc6Pa3U
津田敏秀『医学者は公害事件で何をしてきたのか』紹介
http://togetter.com/li/281560

07. 宮島鹿おやじ 2013年1月12日 13:27:51 : NqHa.4ewCUAIk : XGQASt2yVc
お、RtHpc6Pa3U さん

こんなところに。
今年もヨロシクです。


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