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疫学というと「疫病の学問」という語感から、なんとなく怖いだけのイメージがあるが、歴史的事実はそうではないことが本書では明らかにされる。
19世紀、イギリスのロンドンにおいてコレラが大流行した。そのとき、ジョン・スノウという医師が、疫学的手法を用いて、原因は市内にある「井戸」であることを解明し、その使用を中止させることによって疫病の蔓延を終息させた。この事件は、ロベルト・コッホがコレラ菌を発見する30年前の出来事であるという。
つまり、病気の発生するメカニズムが解明される前であっても、疫学的・統計的手法を用いれば、災厄の拡大を阻止することができるという有名な史実である。
疫学とは、端的に言えば、ある「原因」を浴びた人々と、浴びていない人々を集団として比較して、どれだけの割合で結果として、どちらにより多く病気が発生しているかということを数値で明らかにしようとする学問である。この方法は、過去の判例においても、事実認定の主要な方法として採用されている。
ところで、過去の水俣病などの公害事件において、加害者の国や企業の側に立つ御用学者の発言の要点は、「疾病の発生メカニズムについてはまだ十分に解明されていない」とすることであった。
ある疾病の発生メカニズムについて研究し、確定する学問を「病理学」という。
明らかに、ある特定の地域において、ある共通の食品を食べていることによって発生している疾病に対して、御用学者は「病気発生のメカニズムが明らかでない」とすることで、国・企業側を擁護し、被害者への補償を否定してきた。
つまり、現実に発生している、悲惨な事態を前にして、御用学者たちは「病理学」を盾にして、加害者(原因企業、国など)を免責しようとしてきた。
当然、病理学は医学の本道であり、長い時間をかけて人類の福利のために研究されるべき学問だと思うが、今まさに、巨大な事故が発生し、それによる多大な疾病が発生する危険性を回避しなければならないような緊急時に、「前面」に、「悠長」に、持ち出す学問ではないと考える。
今、この時点でこの投稿を行う理由は、ここにある。つまり、今回の原発事故を受け、将来的に広範な地域で様々な疾病が発生した場合に、今後、国や、それを代弁する御用学者らが、何をコメントするかが、水俣病など、従来の公害事件における御用学者らの振る舞いから十分すぎるほど予想できるからである。この点に関し、本書は「予言の書」のような様相を帯びている。
もう、すでに現時点において、放射性物質による内部被曝の影響を意図的に無視するような、もっともらしい意見がこのサイト上においても散見される。
今、何よりも重要なことは、福島を中心とした地域において、「従来とは違う」何らかの疾病・症状が発生していないかという現状把握である。この具体的方法を担うものが疫学となる。
そして、それを、「県民健康調査」として、福島県立医大が実施していることになっている。その中心となっている者が、山下俊一氏であるが、彼は、原発事故発生直後に、地域住民に対して、事実上「安心して、ここにいなさい。」と伝道して回った者である。疫学のテキストには、このような行為を「有害な暴露を与える人為的なコホート研究」=「人体実験」と記している。
また、3年に一度の実施で、昨年が実施年であった厚生労働省による「患者調査(傷病名に関する調査)」が福島県だけ全域除外となっている。
より、公正で、客観的な調査を実施しうる組織・団体による、一刻も早い疫学調査の実施を強く望む。
最後に、過去の御用学者らの「手口」が詳細に明らかになる本書の一読を阿修羅諸氏に強く勧める。
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