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警察の摘発を受けた北京市内の高級クラブ。「黒社会」は中国の大きな社会問題となっている (共同)
【石平のChina Watch】黒社会に蝕まれている中国共産党 「劉漢事件」に見る深い闇
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20140306/frn1403061814005-n1.htm
2014.03.06 夕刊フジ
先月20日、四川省出身の劉漢という人物が起訴されたことが中国で大ニュースとなった。注目される理由の一つは劉漢が四川有数の大物経営者であることだ。彼が董事局主席(取締会会長)を務めた四川漢龍集団という財閥は数十の企業を傘下に置き、金融・証券・不動産・鉱業などの領域に進出して成功を収め、総資産額が400億元(約6680億円相当)にも上った。
地方財界の頂点に立つ劉漢は政治的にも日の当たる場所にいた。逮捕される前に彼は連続3期四川省政治協商会議の委員と常務委員に選出され、民間経営者ながら政権側のエリート層の一員ともなっていた。
しかし彼の正体は実は正真正銘の黒社会のボス、ヤクザの親分であった。新華通信社が2月21日に配信した関連記事によると、1990年代半ばに賭博専門のゲームセンターの経営から身を立てた劉漢はヤクザ組織を一から作り上げ、商売の競争相手を次から次へと、殺していく手口で事業の拡大を図ってきたという。2009年までの十数年間、彼の組織は三十数件の刑事罪を犯し、9人の人々を殺した。そして13年3月に摘発される前には、劉漢の手先となる「地下武装組織」は自動小銃・拳銃・手榴弾(しゅりゅうだん)などで武装する戦闘部隊に「成長」した。劉漢はこの戦闘部隊を手足に使って、自らの商売敵をたたき潰し、公共事業プロジェクトの入札競合者を徹底的に恫喝(どうかつ)することによって地元のありとあらゆる「おいしい仕事」を独占できた。
そこで吸い上げた潤沢な資金を持って、彼は、四川省の党・政府と公安の要所要所の幹部に賄賂を贈ってことごとく買収、共産党の地方政権そのものを自分の後ろ盾にした。だからこそ、彼の組織があれほどの凶悪な罪を犯しておきながらも、13年3月までには一度も司法から訴追されることがなかった。
それどころか、地方政権の上層部に深く食い込んだ劉漢は、自分の商売の邪魔をする地方政府の幹部を更迭に追い込む力まで手に入れた。逆に彼の「事業」に協力した幹部なら、劉漢の「推薦」のひとつで昇進することもあった。一黒社会のボス兼「民間企業家」の劉漢は、共産党政権独占の政治的人事権にまで首を突っ込むことができた。
このままでは、劉漢の黒社会組織が四川省の共産党政権を乗っ取ってしまう勢いだった。逆に言えば、四川省の共産党政権自体がそのまま黒社会に変質してしまう可能性さえあった。だが、劉漢の最大の後ろ盾であった共産党中央の某元最高幹部が政争に敗れて追及される身となった結果、「党中央と公安部」の直接指揮下で劉漢とその黒社会集団が摘発され、破滅の道をたどった。
しかし、件(くだん)の元最高幹部が権力闘争に負けていなければ、劉漢というヤクザのボスは今でも、四川の政界と財界に君臨し、ほしいままの暗黒支配を続けているはずだ。
こう考えてみれば、劉漢が破滅した今でも、彼と同様の大小のボスたちが依然、各地方で跋扈(ばっこ)していることは簡単に想像できよう。中国共産党の天下は半ば黒社会の天下ともなっているのだ。
もちろん、共産党政権の体内を侵食していく黒社会の存在が共産党自身にとっても命取りの「がん」であろう。だからこそ、今の習近平政権はこうした組織の撲滅に全力を挙げようとしている。そして体制内の「がん」と戦う傍ら習政権は体制外から中国を変えていこうとする民主派勢力とも戦わなければならない。
こうした中で、共産党の独裁体制はいずれ崩壊するだろうと思うが、しかしその後、中国が法的秩序の下で民主主義国家に変身するのか、それとも劉漢のごとく大小のボスたちが牛耳るような無秩序の暗黒社会となるのか、それがまた問題なのである。
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【プロフィル】石平
せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。
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